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2013.03.24
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カテゴリ: 映画/ヒューマン
【遥かなる山の呼び声】
20130324

「橋の下に首をつってぶら下がってる父さんを下ろして、リヤカーに乗せて、菰をかぶせて、兄さんと二人で引っ張って帰るんだけど、町の人がいっぱい見に来てな・・・おじさん悲しくて泣き出しそうになるんだけど、兄さんが小さな声で『泣くな、みっともないから泣くな』、そう言うんだ。だからおじさん必死になって我慢して、歯をくいしばって、涙こらえて歩いたんだ」
「ほんとに泣かなかったの?」
「ああ、泣かなかった。男が生きていくには・・・我慢しなくちゃならないことがいっぱいあるんだ」


この映画の魅力の一つとして、牧場を切り盛りする母と小学生の男児の健気な姿を描いているところだ。
今で言う“シングル・マザー”だが、いやもう倍賞千恵子と吉岡秀隆のコンビネーションが絶妙なのだ。まるで本物の親子だ。
夫を病気で亡くし、女手一つで息子を育て上げねばという気負いや、他人様に舐められてたまるかという意地のようなものが、演技の一つ一つに感じられる。
一方、小学生の息子も、北海道の大自然を背景にすくすくと育っていて、母を助けてあげたいという健気な姿勢がやんわりと伝わって来るのだ。
また、注目したいのは、罪を犯して警察に追われている主人公が、母子と知り合い、少しずつ閉ざされた心を開いていくプロセスだ。人は誰しも、一生懸命暮らしている姿に、心を動かされない者はいないのだ。

『遥かなる山の呼び声』のストーリーはこうだ。
北海道東部にある酪農の町が舞台。
風見民子は夫に先立たれ、まだ小学生の武志を育てながら牧場を切り盛りしている。
ある春の嵐の晩、見知らぬ男が民子の家を訪れた。


民子は警戒しながらも、納屋を提供し、晩御飯を出してやるのだった。
その晩遅く、牛のお産があり、男はまめまめしく手伝う。
翌朝、男は礼を言って立ち去るが、夏になると再び男が現れ、働かせて欲しいと頭を下げる。
民子は貧乏で、大して賃金を支払える立場ではなかったが、男手が不足しているため、思い切って雇うことにした。
こうして田島耕作と名乗る男を納屋に寝泊りさせ、どうにかこうにか牧場を切り盛りしていくのだった。

この作品に出演している役者さんの顔ぶれと言ったらスゴイ。チョイ役だが、渥美清とか武田鉄矢、それにムツゴロウさん(畑正憲)まで登場する。
邦画の良さは、ハリウッド物にはない、滲むような味わいがある。それは、気骨のある役者の演技だったり、あからさまではない心に残るセリフだったり、ゆっくりと流れる時間だったり、いろいろだ。
こういう作品をたくさん鑑賞して、改めて自分が日本人であることに感謝するのも良いし、しみじみ感慨に耽るのも良いだろう。きっと豊饒なひとときを過ごせるに違いない。

1980年公開
【監督】山田洋次
【出演】高倉健、倍賞千恵子

20130124aisatsu





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最終更新日  2013.03.24 06:25:59
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