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2013.10.05
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カテゴリ: 読書案内
【伏見つかさ/俺の妹がこんなに可愛いわけがない】
20131005

◆オタク文化を理解するための入門書

これからますます純文学が先細りとなっていく中、ほぼ安定した読者層を維持しているジャンルがある。それが“ライトノベル”と言われる、軽いタッチの読み物である。
純文学と明らかに異なるのは、やけに長ったらしい風景描写や、取って付けたような比喩が使われておらず、会話など日常の話し言葉そのままをセリフにしている点だろうか。
内容も現代の世相を反映しているのがほとんどで、サブカルチャーについてざっくり知りたい時などは、今の時点で一番売れているライトノベルを読めば、概ね理解できる、かもしれない。
数年前からずっと気になっていた小説、それがこの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のシリーズである。(略して『俺妹』おれいも)
「とにかく売れに売れまくっているではないか。一体何なんだ?」
漠然とした感想だが、最初はそんな感じだった。
好奇心だけは人一倍旺盛の私は、友人にその話をしてみると、「あ、それなら持ってる」とのこと。
さすがはサブカルチャーの最大与党であるオタク文化を知り尽くした友人である(笑)

さっそくお借りして読んでみることにしたわけだ。

『俺妹』についても、表紙のイラストからイメージされるような、もえもえした内容ではなく、青春小説に代表されるようなギラギラした熱血漢を削除した、口当たりスッキリ爽やかな今どきの若者をモデルにした読み物となっていた。

あらましはこうだ。
主人公の高坂京介は、17歳。
ごく平凡な高校生である。妹・桐乃は14歳の中学生。
地味でフツーの兄に対し、妹の方は中学生に見えないぐらいの大人びた雰囲気、人目を惹く端正な顔立ち、茶髪にピアス、マニキュアを塗った、イケてる女子中学生だ。
とはいえ、学業は優秀で申し分のない優等生である。
ところがある時、京介は家の玄関の片隅で、桐乃が落としたらしいDVDを拾う。
そのDVDはR-18で、しかも「妹と恋しよっ♪」と題されたアニメパッケージであった。
頑固で堅物な父親に見つかったら大変なことになると、とりあえず京介が拾っておくことにした。
ほとんどこれまで兄妹で口をきくこともなかったのだが、このことがきっかけで桐乃は、誰にも言えなかった秘密を打ち明ける。
それはなんと、正真正銘のオタクで、コレクションしているDVDはぼう大な量だったのだ。

聞けば桐乃は、学校ではファッション・リーダー的存在で、オタクなんかこれっぽっちも興味のない体裁を取っている。
だから大好きなアニメについて思う存分話し合える友だちが一人もいないという悩みを抱えていた。
そこで兄として、どんなアドバイスをしてやったら良いものか、京介はあれこれ提案してやるのだった。

この小説のポイントはやはり、オタク文化への理解を促すものであろう。
とても単純なことのようだけれど、実際問題、アニメというのはピンキリで、ジブリの描くような世界的にも評価の高いものからいかがわしい成人向けアニメ、あるいはゲームアニメまで様々だ。

今や日本のアニメから世界のアニメとしてクール・ジャパンの代名詞ともなっている文化。
このサブカルチャーをざっくりと理解する上でも、一読する意味はあるかもしれない。

漠然とした感想で恐縮だが、あえて言わせてもらうなら、純文学にはなかった明るく前向きな世界観を、万人に広めてくれる役割を担うものに違いない。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』伏見つかさ・著

20130124aisatsu


☆次回(読書案内No.94)は原田宗典の「優しくって少しばか」を予定しています。


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最終更新日  2013.10.05 05:54:09
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