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2014.07.07
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テーマ: コラム紹介(119)
カテゴリ: コラム紹介
【北國新聞 時鐘】
20140707

落語(らくご)の人間国宝(にんげんこくほう)、桂米朝(かつらべいちょう)さんのロボットを見たことがある。師匠(ししょう)そっくりの「しゃべる人形(にんぎょう)」といえば身(み)も蓋(ふた)もないが「米朝アンドロイド」は少々(しょうしょう)不気味(ぶきみ)だった。

アンドロイドとは人間型(にんげんがた)ロボットのこと。ロボットでも人形でも人に似(に)せると親(した)しみがわく。ところが、似すぎるとある時点(じてん)から怖(こわ)くなる。これを「不気味の谷(たに)」という。ロボットと人間の間には深(ふか)い谷があるということだろうか。

女の子と成人女性(せいじんじょせい)にそっくりなロボット「コドモロイド」と「オトナロイド」が話題(わだい)になっている。「米朝さん」と同じ研究者(けんきゅうしゃ)が開発(かいはつ)したロボットで、人工知能(じんこうちのう)で話もできる美人(びじん)だが、暗(くら)やみの中で対面(たいめん)したらかなり不気味だろう。

人間型ロボットより怖いのは「ロボット型人間」である。言(い)われた通(とお)りのことしかしない。自分で善悪(ぜんあく)の判断(はんだん)ができない。探(さが)せば周(まわ)りにいくらでもいる。「ロボット兵器(へいき)」も現実(げんじつ)になった。SFではコンピューターが土壇場(どたんば)で反乱(はんらん)を起(お)こす有名な映画(えいが)もある。

近い将来(しょうらい)、人間がコントロールできない人工知能が登場しないとはだれが断言(だんげん)できよう。ロボット開発の話は楽しいが「オチ」が怖い。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

うまいなぁ~。
流れるような文脈に身をゆだね、当意即妙の結びに思わず膝を打った。「座布団一枚!」

とはいえ、よくよく考えるに『ロボット型人間』や『人間がコントロールできない人工知能』よりも、もっと怖いことがあるのな気がしてならない。そしてそれは既に我々の社会を蝕みつつあるのだが・・・
この「時鐘」の起承転結を、特に結びの「オチ」を理解できた方(唸ったり膝を打ったりという程度)は、実はそう多くはないのではないか。そう思えてならないし、合わせてその割合は今後急速に増えると思うのだ。

だがしかし、それが現実的に何か問題なのかと言われるとそうでもない。不要な感覚は「時代」のうねりに淘汰されていくわけだ。そういう類の問題であろう。まあ憂いたところで

人の疝気を頭痛に病む

といわれるのが関の山であろう。そうはいってもここはオチではない。

ときに米朝師匠。噺のまくらで橘家圓喬(たちばなや えんきょう)の名演について語っている。
演目は「鰍沢(かじかざわ)」、真冬の話である。
かの圓喬はそれを真夏の高座にかけた。クーラーなどない時代、寄席はうだるような暑さの中で客は袖をまくり襟を開き、汗だくになりながら扇子や団扇をつかっていた。
しかし噺の佳境で圓喬が鰍沢の急流を語ると、寒気を催した客は扇ぐ手を止め、袖と襟をもどしたという。おまけに顔の汗も消えていた。そういう名演であったという。


蒸し暑くなるこれから、そんな経験をしてみたいものだが、圓喬のような名人はもういない。残念ながら我が志ん生師も「鰍沢」は残しているが、何度聞いても寒気は催さない。
さて、噺の方。オチは『お材木(お題目)で助かった』である。何事も最後が肝心、そういうことか。ではこのへんで。


20130124aisatsu





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最終更新日  2014.07.07 06:01:25
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