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2014.11.15
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カテゴリ: 読書案内
【姫野カオルコ/ハルカ・エイティ】
20141115

◆80歳のモダンガール・ハルカの一代記
今年のお盆にも、叔母のお宅へとおじゃまさせてもらった。
何てことはない。
お昼をご馳走になり、近況などをあれこれ話した後はお茶を飲んで、じゃあそろそろ、、、という具合で帰路につく。
叔母は、私の亡母と親子ほど年の離れた姉妹で、一番仲が良かったのだ。

「ねぇちゃんは結婚は遅かったけど、いつも誰かしらお付き合いしている男の人がいたよ」

それは本当に初耳だった。

「チビだし、太ってたし、相手はねぇちゃんのどこが気に入ってたんだか、、、?」

きっと昔はもっとおおらかな時代だったのだろう。そんな体型の母でも男の人からは好かれたらしい。
今は細身でガリガリぐらいじゃないと、キレイだとは言われない。


「ねぇちゃんは一家の大黒柱で、あたしらはみ~んなねぇちゃんの稼ぎで学校を出してもらった身だで、なんだかんだ言って結婚してもらったら困るっていう考えがあったんよ」

叔母は申し訳なさそうに、ポツリと言った。
昭和3年生まれの母が、何らかのきっかけで付き合うようになった男の人の中には、妻子ある身の人もいたらしい。
妻も子も捨てると言ってきかない人だったのか、あるいはそこまでの勇気はなかったのか、自然消滅だったのか、、、。
とにかく母は、その恋を中断した。
そうでなければ、今の私はこの世に生まれていないからだ。

『ハルカ・エイティ』は、大正生まれの女性が教育者の家庭に育ち、女学校時代の友人たちと青春を謳歌し、やがてお見合い結婚して子どもを生んで、、、という伝記小説のようなスタイルを取っている。
おもしろいのは、この時代の女性のあるべき姿という固定観念を覆すようなモダンぶり。
亭主も子もいながら、年下の男性と不倫をし、お金を貢ぎ、恋の潮時を心得た女の生き様。
この時代の女性が皆が皆、貞淑だったと思うのは大きな間違いなのだ。
人間として生まれた性なのか、いつの時代にも公にはできない秘密の恋があったのだ。


姫野カオルコと言えば、近年、直木賞を受賞した作家だが、正直なところ他の作品はまだ読んだことがない。
この「カオルコ」というペンネームが、何というか、若い(?)感じがして敬遠していたのだ。
ところがプロフィールを閲覧してびっくり!私よりもずっと年上で、50代半ばであった。
青学の文学部を卒業している。
代表作は『昭和の犬』『ツ、イ、ラ、ク』などがある。


1920年、持丸ハルカは教育者の家庭に生を受けた。
長女である。
その後、ハルカの母は二年ごとに受胎と出産を繰り返し、妹弟はハルカも含めて5人となった。
父親の昇進で、一家は引っ越すことになった。
女学校時代は、個性的な友人たちに恵まれて楽しい青春を謳歌した。
年ごろになると、ハルカはお見合いをすることになった。
陸軍士官学校を出た少尉候補生の、小野大介という青年が見合い相手であった。
ろくに話もせず、顔をまともに見ることはなかったが、次に会った時には祝言を挙げた。
戦時下での結婚はだいたいがそんなものだったからだ。
二人は西洋風のホテルに泊まり、順番に風呂に入ると、そのあとはすることをおこなった。
まるで、手術のような儀式だった。

内容は至って平坦なものである。
それなのにおもしろいし、新しさを感じる。
食糧事情の悪い戦時下でも何となく明るさが感じられるし、不倫の際中もドロドロしたいやらしさがない。
きっとモデルの伯母さんが気丈で活発な人物だったのだと思う。

何てことはない物語だけれど、80歳になっても生き生きとしたコケティッシュな雰囲気を醸し出すハルカみたいに年を取りたい、と思わせたら筆者の勝ち。
そういう小説なのだ。

『ハルカ・エイティ』姫野カオルコ・著


☆次回(読書案内No.149)は未定です、こうご期待♪


コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2014.11.15 05:49:49
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