吟遊映人 【創作室 Y】

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2016.01.02
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カテゴリ: 映画/ヒューマン
【セッション】
20160102

「あなた、ショーン・ケイシーを知ってるかしら? 亡くなったの。先月、部屋で首を吊って」
「そのことと僕と、何の関係が?」
「彼は鬱病を患ってたの。フレッチャー先生の生徒になってからよ。彼の遺族は経済的に厳しいから裁判にはしないと言ってるわ」
「・・・じゃあ、何を望んでいるんだい?」
「二度と同じような生徒を出さないことよ」


新年最初の映画はこれ、『セッション』である。
昨年のうちに視聴する機会はいくらでもあったのに、いろいろとあって今に至る。
お正月、家族で見る映画としてはどうだろう?
たまたま私は一人で見た。居間のこたつに足を伸ばし、ミカンをパクつきながら。
アカデミー賞で5部門にノミネートされ、3部門で受賞したということなので、それはもう大絶賛の作品であることはよく分かる。(ウィキペディア参照)
とはいえ、軽いノリと初笑いの感覚で楽しもうと思ったら、この作品はエントリーミスである。
青春映画というカテゴリにはムリしても入らず、ヒューマンドラマと言うならあまりに壮絶で激痛が走る。
才能とは努力の積み重ねの上に成り立つものなのだという単純なテーマなら何も問題はない。
もっとパラノイア的な狂信性を伴うものだから厄介なのだ。



あらすじはこうだ。
19歳のアンドリュー・ニーマンは、名門シェイファー音楽院に入学し、偉大なドラマーになりたいと練習に励んだ。
ある日、ニーマンが一人でドラムを叩いていると、伝説の鬼コーチであるフレッチャー教授が現われた。
少しだけ期待を持ったニーマンだったが、フレッチャーはニーマンのドラムを数秒聴いただけですぐにその場を去ってしまう。
その後、ニーマンの所属する初等クラスにフレッチャーが突然顔を出すと、メンバーの音をチェックするかと思いきや、ニーマンだけを引き抜き、フレッチャーのバンドに移籍するのを命じた。
再びニーマンは期待感と優越感を抱きつつ、フレッチャーのバンドに参加するものの、そこは緊張と恐怖に支配された過酷な現場だった。
さっそくスティックを握ることになったニーマンは、テンポが違うとフレッチャーにさんざん罵られたあげく、ビンタされ、椅子を投げつけられ、矯正された。
ニーマンは悔しさから必死で練習を重ねた。
手の肉が裂け、血が噴き出し、何枚もの絆創膏を貼り直しながら、ドラムを叩き続けた。
やがて、ニーマンの努力が報われたかと思いきや、フレッチャーは有能な新人ドラマーをつれて来た。
ニーマンに心休まるヒマなどなく、フレッチャーによってギリギリまで追い詰められていくのだった。
20160102b



それだけ視聴者を夢中にさせる作品だという証拠だ。
主人公は、鬼コーチによって有頂天にもどん底にも突き落とされる。
個人的には、この鬼コーチの行為は虐待とかパワハラとかSMとも受け取れる。
血の滲むような練習が必ず花を咲かせるのだというメッセージが込められているのなら、100倍救われた。
だがこの作品は違う。

将来のことなど考えてはいけない。
親兄弟はもちろん、他人のことなどこれっぽっちも考えるな。
自分・自分・自分!
なりふりかまわず、開き直れ!
ラストのドラム・ソロからは、仏教でいうニルヴァーナを見たような気がした。

年頭に視聴するには多少ハードな作品だが、何かにギリギリまで打ち込みたいと思っている方ならば、骨の髄まで励まされること間違いなしだ。

本年も吟遊映人をよろしくお願い申し上げます。

2014年(米)、2015年(日)公開 
【監督】デミアン・チャゼル 
【出演】マイルズ・テラー、J・K・シモンズ


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最終更新日  2016.01.02 06:07:55
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