《櫻井ジャーナル》

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2011.06.07
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 チリでは軍事政権下の出来事に対する調査が進み、ペルーでは「新自由主義経済」を拒否するオジャンタ・ウマラが大統領選で勝利したようだ。

 ペルーの選挙では、ウマラの対立候補で新自由主義経済、つまり「強者総取りシステム」を推進する立場のケイコ・フジモリにしても、最貧困層に配慮すると表明していた。ラテン・アメリカでは「民主化」の流れが続いているようだ。

 社会的に優位な立場にある一部の人間が富を独占する新自由主義経済を国の政策として最初に導入したのはチリ。国民の大多数にとって好ましくないはずの政策を可能にしたのが、オーグスト・ピノチェト将軍を中心とするグループが1973年9月11日に実行した軍事クーデターである。クーデターの黒幕は米大統領補佐官のヘンリー・キッシンジャーだということも明らかになっている。

 アメリカ政府が民主化を恐れる最大の理由は、自分たちのボスであり、スポンサーでもある富裕層の利権構造が揺らぐからにほかならない。ピノチェト体制はシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授の「マネタリズム」に基づき、大企業/富裕層を優遇する政策を実施していく。その手先として活動していたのが同教授の弟子たち、いわゆる「シカゴ・ボーイズ」だ。

 もう少し具体的に言うと、シカゴ・ボーイズは国有企業を私有化し、労働者を保護する法律を廃止していったのである。その結果、表面的には経済成長を達成したかのように見えたのだが、実態は違った。経済成長の恩恵を享受したのは富裕層だけで、しかも過大評価されたペソで購入された安い輸入品により、地場産業はダメージを受けた。(要するに、日本の政財官学報が推進しようとしている政策だ。)

 民主化を求め、外国資本の支配に反対するような人々、つまりアメリカやチリの富裕層にとって邪魔な存在を軍事政権はクーデター後に容赦なく弾圧、一説によると約2万人が虐殺されたと言われている。この当時の弾圧に関する調査が今、チリでは進行中だ。

 北アメリカの南アメリカ支配が本格化するのは19世紀の終盤から。当時の南アメリカはスペインの支配下にあったのだが、その支配体制を倒す切っ掛けが1898年の「メイン号爆沈事件」。キューバのハバナ港に停泊していたアメリカの軍艦「メイン号」が爆沈したのだが、アメリカ側はこれをスペインの破壊工作だと主張、「米西戦争」を始めて勝利し、このときにフィリピンも手に入れ、中国へ乗り込む橋頭堡にしている。

 1900年の大統領選挙で再選されたウイリアム・マッキンリーが翌年に暗殺され、副大統領のセオドア・ルーズベルトが跡を継ぐ。その新大統領は「棍棒外交」を展開し、ベネズエラ、ドミニカ、キューバを次々と「保護国化」してしまう。こうした政策は1933年にフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任するまで続き、1945年にフランクリンが急死すると復活した。その延長線上にチリのクーデターもある。

 ペルーの場合、アメリカだけでなくイスラエルと日本も重要なファクターだ。イスラエルがペルーに注目した最大の理由は、核兵器に必要な物質を入手することにあった。それまでイスラエルは南アフリカから手に入れていたのだが、南アフリカの白人政権がイラクのサダム・フセイン政権に接近したことから対立、別の入手先を探していたのだ。



 ケイコ・フジモリの父親、アルベルト・フジモリが大統領に就任したのは1990年のこと。フジモリ大統領の側近として治安/情報部門を指揮していたのが国家情報局の顧問を務め、「影の大統領」とも呼ばれていたブラジミロ・モンテシノス。1970年代からCIAの協力者として活動していたとも言われ、ペルーの軍部には信頼されていなかった。

 ペルーで核関連物質を産出する地域は反政府ゲリラ、センデロ・ルミノソが支配していた。イスラエルはゲリラの指導者、アビマエル・グスマン・レイノソと取り引きしていたのだ。グスマンは「ユダヤ系」だったこともあり、交渉はスムーズに進んだという。それに対してフジモリ政権はゲリラ掃討作戦を強化、1992年にグスマンを拘束した。つまりペルー政府は「原子力利権」を手にしたことになる。

 アルベルト・フジモリが「容疑者」になったあと、日本政府は彼を保護しているが、それは単に彼が「日系」だったためなのか、原子力利権が絡んでいたのか、今後、調べる必要があるだろう。

 ともかく、南アメリカでは自立、民主化への道を歩こうとする気運が高まっている。アメリカの巨大資本による支配は御免だということだ。勿論、今でもアメリカ企業の力は強く、独裁時代のネットワークが消えたわけではないが、庶民の力が大きくなっていることは確かであり、19世紀から続く支配構造は崩れつつある。





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最終更新日  2011.06.08 12:59:30


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