アメリカのドナルド・トランプ大統領は麻薬対策という口実でベネズエラへ軍事侵攻する姿勢を見せているが、勿論、本当の理由は違う。石油利権を手にすると同時に、ラテン・アメリカの再植民地化から世界を支配するシステムを立て直そうとしているとしているのだろう。
そうした本音を公然と主張している人物がいる。 今年のノーベル平和賞受賞者、マリア・コリーナ・マチャドだ
。この人物は長年、ベネズエラの自立した体制を転覆させ、アメリカの巨大資本が支配する帝国主義体制を復活させるために活動をしてきた。

マチャドは今年11月5日から6日にかけてマイアミで開かれたアメリカ・ビジネス・フォーラムのイベントにリモートで登場、ベネズエラからニコラス・マドゥロ大統領を排除すれば、1兆7000億ドルの投資機会がアメリカの巨大企業へもたらされると主張していた 。言うまでもなく、投資先の中心には石油がある。マチャドは5日に現れたが、同じ日にトランプも登壇している。
そのトランプは麻薬がアメリカへ密輸されることを防ぐと宣伝しているが、世界最大の麻薬業者はCIAに他ならない。秘密工作の資金としてCIAは麻薬取引を利用してきたのだ。
例えば、ベトナム戦争の時には東南アジア(黄金の三角地帯)のヘロイン、アフガン戦争の際にはパキスタンからアフガニスタンにかけてのヘロイン、そしてラテン・アメリカではコカインだ。その源流はイギリスが中国を侵略するために仕掛けたアヘン戦争だと言えるだろう。いずれも研究者、ジャーナリスト、そしてアメリカ議会がその実態を暴き、CIAの内部調査でもこの事実を確認しているアメリカの先輩にあたる国がアヘン戦争で中国(清)を侵略したイギリスであり、麻薬資金を処理する拠点として香港は重要な役割を演じてきた。
麻薬資金は流動性が高いことから、米英を中心とする金融システムの中で重要な位置を占めている。国連の麻薬犯罪局長を努めていたアントニオ・マリア・コスタによると、麻薬取引の利益はリーマン・ショックのあった2008年の時点で3520億ドルあったと推定され、その資金に救われた銀行がいくつかあるという。(The Observer, 13 December 2009)
その2008年にはワコビアという銀行が破綻、ウェルズ・ファーゴに吸収されているが、このワコビアが2004年から07年にかけて3784億ドルという麻薬資金のロンダリングをしていたことが判明している。この事実に気づき、内部告発した社員は解雇されてしまった。
麻薬取引と関係している以上、CIAはマネーロンダリングにも関係している。実際、CIAの銀行はいくつも作られてきた。例えば、対キューバ工作と関係しているバハマ諸島ナッソーのキャッスル銀行、CIAに協力していたユダヤ系ギャングのメイヤー・ランスキーが違法資金のロンダリングに使っていたマイアミ・ナショナル銀行、ペリーン銀行、BWC(世界商業銀行)などだ。
このBWCとつながっているスイスの国際信用銀行はモサド(イスラエルの情報機関)へ資金を流していた。東南アジアのヘロイン取引と関係していたナガン・ハンド銀行、CIAのアフガニスタンにおける工作のために設立されたBCCI。1953年にイランのムハマド・モサデク政権を倒したクーデターでCIAが資金の調達に使ったディーク社は田中角栄を失脚させたロッキード事件でも登場する。
**************************************************
【 Sakurai’s Substack 】
【 櫻井ジャーナル(note) 】