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「返事はいらない」(宮部みゆき:実業之日本社ほか)を読んだ。以下の6編の物語を収めた短編集である。「返事はいらない」 恋人にふられて自殺しようとした千賀子は、たまたま出会った森永夫妻の誘いで、銀行の欺瞞を暴く企てに加担することになる。かって問題となった、銀行のキャッシュカードシステムの不備をテーマにした良作。本当に、銀行は、きちんと対策をしているのか、心配になってくる。「ドルシネアにようこそ」 速記学校に通う篠原伸治は、伝える相手もいないのに、毎週六本木駅の伝言板に、「ドルシネアで待つ」と書いていた。ドルシネアとは有名ディスコだが、伸治は入ったこともない。ある日、その伝言に返事が。速記学校って、今でもあるのか?脚付ホワイトボード(片面)「言わずにおいて」 課長と衝突して職場を飛び出した聡美の面前で、自動車が炎上事故を起こす。その直前、運転していた男は、聡美を見て、「あいつだ、あいつだ・・・」と叫んでいた。自分がこんな事件に巻き込まれたら寝覚めが悪いだろうな。「聞こえていますか」 嫁姑の折り合いが悪く祖母と別居することになった勉一家だが、引越し先で、不思議な出来事が。どうしても折り合いをつけることのできない孤独な老人の心が痛ましい。「裏切らないで」 若い娘が歩道橋から転落して死亡。彼女にはローンで派手な生活をしていた。果たして自殺なのか?カード社会の問題点と孤独な女の心の闇を描いた作品。「私はついてない」 従姉の逸美が、借金のかたに、恋人からもらった指輪を先輩に取り上げられたと、高校一年の僕に泣きついてきた。こんなアホはほっとけば良いと思うのだが、人の良い僕は、従姉のために骨を折り、知らなくても良いことまで知ってしまう。○応援クリックお願いします。 「返事はいらない」(宮部みゆき:実業之日本社 )風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 29, 2008
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少し前のことだが、呉に行ってきた。JRで行くことも出来るが、船に乗ってみたかったので、広島港から、フェリーに乗った。このフェリーは、四国の松山と広島を結ぶ航路である。広島港から呉港までは、約45分である。瀬戸内海は、あまり船も揺れないし、寝転がっていれば、いいので、列車よりはかなり楽である。 ところで、呉は、明治時代に第二海軍区鎮守府が設置され、軍港として発展してきた。あの戦艦大和も呉の海軍工廠で建造されている。呉の海軍工廠には、亡くなった祖父が、勤めていたらしい。呉港の隣が、有名な「大和ミュージアム」だ。「呉中央桟橋ターミナル」 呉港の近くにはJR呉線の呉駅がある。呉線は、広島駅から三原駅まで、瀬戸内海に沿って走っている線路であり、呉駅は、その中心となる駅だ。「JR呉駅」 JR呉駅から、10分位歩くと、「呉市立美術館」に着く。市民ギャラリーとしても使われているこじんまりした美術館だ。この美術館の目玉である、ルノワールの「麦わら帽子の少女」は、展示物の中でも一際光っており、一見の価値がある。「呉市立美術館」 美術館の近くに、「入船山記念館」がある。旧呉鎮守府司令長官官舎を中心に、郷土館、歴史民俗資料館などがあり、呉の歴史を訪ねるには、欠かせない場所である。「入船山記念館」 この記念館の入り口から続く坂道に、入船山のシンボルである「時計台」がある。「旧呉海軍工廠塔時計」が正式な名称で、大正10年製という。「旧呉海軍工廠塔時計」 (続く)○応援クリックお願いします。 ○呉市のホテル 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 28, 2008
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私は、古代史に関する話が好きなので、時折この分野の本を読むのだが、たまたま、古本屋で「イエスキリストの謎」(斉藤栄:徳間書店)と言う本を売っていたので買ってみた。(105円だったし・・・) 青森県の旧戸来村に、イエス・キリストの墓と伝えられる場所があるのは有名な話だが、この作品は、その伝説と、現実の殺人事件を組み合わせたものである。しかし、日本に伝わるキリスト伝説と言う、ものすごく魅力的な素材を生かしきっていない。題名から、このキリスト伝説の謎を解き明かしてくれるものと期待していたが、巷に伝えられている伝説から抜け出していなかった。 たとえば、高木彬光 の「成吉思汗の秘密」などは、入院中のベッド・ディテクティヴ である神津恭介が、見事にジンギスカンの謎に迫っている。ところが、こちらにも入院中の刑事と言う、同じような役割の人物が出てくるが、かなり見劣りがする。また、殺人事件の方も、あまりひねりがきいていない。 ところで、私の買った本は、1980年初版なので、発表されて既に30年近く経っている。現在は、新装版が出ているので、案外売れているのだろうか。 ○応援クリックお願いします。 「イエス・キリストの謎」(斉藤栄:徳間書店)風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 27, 2008
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横山秀夫の小説は、圧倒的な筆力で、読者をぐいぐいと惹きつける。しかし、その分、一つ一つの内容が重いので、あまり続けて読もうという気にはならない。一つ読んだら、しばらく作風の違う作家のものを読んで、また読むというのが私には良いようだ。 ということで、今日も久しぶりに横山作品だ。「動機」(文芸春秋)という短編集である。収録されているのは、次の4篇である。 「動機」:J県警で、企画調査官で警視の貝瀬が発案した警察手帳の一括保管が裏目に出て、大量に紛失するという表題作。 「逆転の夏」:女子高生殺しで服役後まじめに働いていた山本のもとに、殺人を依頼する電話と銀行口座への振り込みが。 「ネタ元」:県民新聞の女性記者水島に、大手の東洋新聞から引き抜きの話が。彼女には意外なネタ元があった。 「密室の人」:裁判官が、裁判の席上居眠りをしてしまう。しかし、この居眠りには意外な裏が。 いずれも、人間の心の裏側までよく表現されているような作品ばかりだ。一番重かったのは、「逆転の夏」である。色々な意味で残酷な話だ。主人公の山本の悲惨な境遇に少し同情してしまった。○応援クリックお願いします。 「動機」(横山秀夫:文芸春秋)風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 26, 2008
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土曜の夜は、テレビ朝日系の土曜ワイド劇場で、「和菓子連続殺人事件」を観ていた。サスペンスドラマは、浅見光彦シリーズなど特定のものしか観ないのだが、副題に書かれている「佐賀~唐津~伊万里」だとか「唐三盆」といった文字に興味を引かれて見てみたのだ。 内容をごくかいつまんで紹介しよう。お話は、結婚式で花婿の和菓子職人・岩崎礼二(山崎銀之丞)に逃げられた赤坂の老舗和菓子屋『橘屋』の一人娘・橘菓乃子(高橋由美子)が、幼馴染で犯罪学者の千葉公平(葛山信吾)といっしょに、礼二が容疑者となった伊万里の老舗和菓子屋『清甘堂』での殺人事件の真相を追い求めるというもの。そこには、10年前に起こった、「唐三盆」を巡る因縁のドラマがあったのである。 お菓子のルーツやそれを奉った神社(菓祖中嶋神社[かそなかしまじんじゃ]と言うらしい)、そこに奉納する「寿賀台(すがだい)」、「和三盆」のルーツである「唐三盆」、唐津に伝わる「佐用姫伝説」など、興味深いことがたくさん織り込まれている。また、佐用姫が恋人を見送るために領巾(ひれ)を降り続け、とうとう石になってしまったという鏡山から見た風景がなんとも美しい。このあたりは、まだ行ったことがないが、一度訪れてみたいものである。 それにしても、秋本奈緒美、相変わらず年齢を感じさせない美しさだ。和三盆糖(監督)・岡本弘(出演)・高橋由美子(橘 菓乃子) ・葛山信吾(千葉公平) ・秋本奈緒美(堀内鞠子) ・前田耕陽(堀内 匠) ・山崎銀之丞(岩崎礼二) ○佐用姫伝説を簡単に紹介している「佐用姫伝説殺人事件」(内田康夫)に関する記事はこちら○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 25, 2008
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今日は、怪物王女の最新刊である、「怪物王女 6」( 光永康則:講談社)の紹介だ。もっとも最新刊といっても既に昨年の12月に発売されていたのだが。コミックスの感想は、ネタのないときや多忙で普通の本を読む暇がない時のためにとっておく傾向があるので、読んでからアップするまでが遅くなることが多い。 既に何回か紹介したとおり、このシリーズは、ゴスロリ衣装に身を包んだクールビューティ・「姫」と、姫の血の戦士・ヒロ、人狼とのハーフ・リザ、吸血鬼・令裡といった愉快な?仲間達が、姫が王位を争っている兄弟たちの放つ刺客と戦っていくというものだ。姫の高貴な感じ、リザのちよっとワイルドな感じ、令裡の天然な感じと、それぞれ違ったタイプの美少女ぶりがとても魅力的である。○それぞれ「姫」、リザ、令裡の服装のイメージ(あくまで、だいたいこんな感じの衣装だと言うイメージです) 今回のお話は「女囚王女」、「秘境王女」、「霧中王女」、「衝突王女」と4つのエピソードから構成されている。「女囚王女」では、リザが吸血鬼と決闘をする羽目になる。「霧中王女」王女では、「姫」や「リザ」、「令裡」のコピーが登場するが、他の者のコピーとは違い、「姫」のコピーだけは、その高貴な精神もコピーされていたというのが面白い。「衝突王女」では、邪悪な敵が現れる予感が。次の巻が発売されるのが待ち遠しい。○「怪物王女 5」の記事はこちら○応援クリックお願いします。 「怪物王女 6」( 光永康則:講談社)&DVD 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 24, 2008
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ちょっと異色のミステリーを見つけた。北森鴻による、蓮丈那智フィールドファイルと銘打ったシリーズである。以前紹介した東野圭吾による「ガリレオ」シリーズを物理学ミステリーと呼ぶなら、こちらは民俗学ミステリーと言ったものである。 主人公は、蓮丈那智という民俗学の大学助教授。年齢不詳だが、中性的で日本人離れした容貌の美女であり、その特異な研究方法で、「異端」の民俗学者と言われている。ちなみに、かなりの変わり者だ。そして、この那智のポチもとい下僕、いや助手として働いているのが内藤三國である。いつも研究室の予算を早々と使い果たしてしまう那智のため、教務のキツネ目の担当者と交渉するのに胃の痛い思いをしているが、那智に独特のイントネーションで「ミクニ」と呼ばれると、パブロフの犬よろしく、頭に閃くものがある。 この二人、民俗学の実地調査に訪れたところで、殺人事件が発生する。そして、民族学上の謎と殺人事件の両方を同時解決すると言うのが、基本的なパターンである。その点、高田崇史のQEDシリーズのように莫大な薀蓄を述べ、それが現実の事件と乖離しているということはない。 今日は、紹介するのは、その第1作目に当たる「凶笑面」(新潮社)だ。このシリーズは全部で3作出ているが、いずれも短編集である。本作に収録されているのは以下の5編。★★能面 小面 今村祥韻作★★「鬼封会」:那智の授業を受講している学生から、岡山県の旧家に伝わる「鬼封会」という奇妙な祭祀のビデオが届けられる。 「凶笑面」:民俗学者から蛇蝎のように嫌われている骨董屋から「凶笑面」という禍々しい笑いをたたえた面の資料が届けられる。「不帰屋」:ワイドショーでも活躍している女性社会学者から、実家にある「女の家」を調べて欲しいと言う依頼がある。「双死神」:地方史家からの依頼で、三國は、製鉄の遺跡を調査に出かける。「邪宗仏」:山口県のある村に伝わる秘仏について、二人の郷土史家からレポートが届き、興味を持った那智たちは調査に出かける。 いずれも、民俗学上の出来事と、実際の殺人事件がうまくマッチングして展開されており、非常に面白い。あと2冊も追々紹介していこう。○応援クリックお願いします。 「凶笑面」(北森鴻:新潮社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 23, 2008
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久しぶりに、土屋賢二のエッセイ集を読んだ。「ツチヤの口車」(土屋賢二:文藝春秋)である。著者の土屋氏は、知っている人は知っているが、ほとんどの人は知らないというお茶の水女子大学の教授である。以前にもツチヤセンセの「簡単に断れない」と「ツチヤ学部長の弁明」を紹介したが、同じような調子で、独特のユーモア感覚とレトリックに彩られた屁理屈と自虐精神に溢れていて、久しぶりに読むと抱腹絶倒、非常に面白い。なにしろ、題名が「ツチヤ」と呼び捨てである。ツチヤ教授でもツチヤ学部長でもない。自分で決めた題名のようなので、こんなところにもツチヤセンセの溢れる自虐精神が感じられる。 ツチヤセンセの作品は、続けて読むと、似たようなネタが多く、少々くどく感じて飽きてしまうので、時間をあけて読むのが、新鮮さを保つコツである。前に読んだことをリセットしてしまえば、ものすごく面白い。しかし、帯には「恐怖!!身の毛もよだつ理屈の数々!」とキャッチコピーが書いてあるが、別に身の毛はよだたないので念のため。○「簡単に断れない」の記事は こちら○「ツチヤ学部長の弁明」の記事はこちら○応援クリックお願いします。 「ツチヤの口車」(土屋賢二:文藝春秋) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 22, 2008
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広島大学は広島市にはない。正確に言うと、広島大学の本体は広島市にはなく、だいぶ前にお隣の東広島市に移転してしまった。広島市内には医学・薬学系と社会科学系の一部の学部と大学院が残っており、昔広島大学の本部があった「東千田キャンパス」には、現在社会科学系の学部・大学院のみが入っている。この東千田キャンパスは、「放送大学広島学習センター」も入っており、面接授業はここで受けることになる。「広島大学東千田キャンパス」 この東千田キャンパスに入ると、大きな岩がどんと置いてあるのに気がつく。古墳か何かかと思ったら、「広島大学原爆死没者追悼之碑」だそうだ。裏に回ってみれば、ちゃんと碑文がある。この碑のちょっと向こうに、「原爆死没者遺骨埋葬の地碑」も建っている。埋葬の地ということはお墓ということか。このあたり、いかにも広島らしい風景である。「広島大学原爆死没者追悼之碑」 近くには、「広島美容専門学校」もある。「広島美容専門学校」 近くを流れる「京橋川」(太田川の分流のひとつ)に、夕日が反射し、キラキラと綺麗だった。やはり、平和というものは良いものだ。「京橋川の川面」○応援クリックお願いします。 ○広島市あちらこちら2〔広島市を歩く(その24)]の記事はこちら風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 21, 2008
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月曜日の夜は、「巨匠・市川崑監督追悼緊急特別企画映画」と銘打って、TBS系の月曜ゴールデンで「犬神家の一族」をやっていた。1976年に、やはり市川崑監督によって映画化された作品のリメイク版で、2006年に公開されたものだ。 舞台は信州。大財閥の犬神佐兵衛が死に、残された遺言状をきっかけに、おぞましい殺人事件が続く。その背景には、過去の因縁が・・・ しかし、おどろおどろしい殺人事件を扱っている割には、なぜか笑えてしまうのはどういうけだろう。佐清の白マスク、本当は、恐怖を際立たせるような働きをしなくてはいけないのに、表情が微妙についていて、なんか変な感じであった。また、菊人形に乗っていた生首も、あきらかに作り物ということが分かるようなおそまつなものであった。出演者は、そうそうたる顔ぶれを用意していたのに、残念なことだ。(監督)・市川崑 (原作)・横溝正史(出演)・石坂浩二 (金田一耕助)・松嶋菜々子(野々宮珠世) ・仲代達矢(犬神佐兵衛)・富司純子(犬神松子) ・松坂慶子(犬神竹子)・萬田久子(犬神梅子) ・尾上菊之助(犬神佐清)ほか○応援クリックお願いします。 「DVD 犬神家の一族」風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 20, 2008
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日曜の夜は、テレビ朝日系の日曜洋画劇場で「キャットウーマン」を観た。キャットウーマンといえば、アメリカン・コミックスのヒロインの一人である。そういえば、「バットマン・リターンズ」の映画にも出ていた。 働いていた化粧品会社で開発された化粧品の秘密を知ったために殺された主人公のペイシェンスは、エジプトの猫神「マオ・キャット」の力で蘇り、キャットウーマンとして超人的な力を得る。これがなかなかかっこいい。アキバのネコ耳メイドでも鬼太郎のネコ娘でもない大人のネコの魅力にあふれている。衣装もなかなか良い。ただ、ヤッターマンのドロンジョ様を連想してしまうのが玉に瑕なのだが。武器がムチというのも、たまらない人もいると思う。(私にはそんな趣味はないので念のため) ところで、この作品、ぜんぜん振るわず、「最低」の映画に与えられるラジー賞を受賞すると言う名誉?を与えられたらしい。確かに、ストーリーはたいしたことがないが、キャットウーマンの魅力は、ストーリーの平凡さを補って余りあると思うのだが。(監督) ・ピトフ (出演)・ハル・ベリー(ペイシェンス・フィリップス/キャットウーマン) ・ベンジャミン・ブラット(トム・ローン刑事) ・ランバート・ウィルソン(ジョージ・ヘデア) ほか○応援クリックお願いします。 DVD「キャットウーマン」風と雲の郷 別館(gooブログ)はこちら
February 19, 2008
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最近は、宮部みゆきの現代ものもよく読んでいるが、私は、彼女の作品は、時代物の方に傑作が多いと思う。現代ものよりは、登場人物が、生き生きと動いているような気がするのだ。今日紹介するのは、そんな時代物の一つである「ぼんくら」(宮部みゆき:講談社)である。みやべみゆき この本の構成は、ちょっと変わっている。最初は、普通の短編集だと思っていた。収録されているのは、「殺し屋」、「博打うち」、「通い番頭」、「ひさぐ女」、「拝む男」、「長い影」、「幽霊」の7編である。しかし、「長い影」に当てられている分量が、他の話と比べて格段に多い。非常にアンバランスな構成になっている。これは、どうしたことかと思ったが、読み進むうちにその理由が分かった。一つ一つの話は、独立した短編として読めるのだが、全体としても一つの話を構成している。「長い影」の部分が本編で、「殺し屋」から「拝む男」までの5編がそのプロローグ、「幽霊」がエピローグのようになっているのだ。 この作品の舞台は、江戸時代の本所深川にある鉄瓶長屋である。「殺し屋」で発生した事件のため、これまでの差配人であった久兵衛が姿をくらまし、その代わりに、地主の湊屋の主人の遠縁に当たるという佐吉という若い男が派遣されてきた。この佐吉、歳は若いが、一生懸命に差配人の役目を果たしている。それにも関わらず、色々な事件が起こり、鉄瓶長屋の住人は、次々に行方をくらます。 この物語の主人公は、井筒平四郎という30俵二人扶持の同心である。めんどうくさいことはあまり好きではないようだ。その「ぼんくら」同心が、住民が次々に姿をくらます鉄瓶長屋の謎を探っていく。 とにかく登場人物が魅力的で活き活きとしている。宮部みゆきの時代物には欠かせない回向院の茂七親分も出てくるが、高齢のため、一家の実務は一の子分の政五郎が取り仕切っている。これが、なかなかの貫禄になっているのだ。人形のような美少年で頭がものすごく切れるが、なんでも目分量で測ってしまうという変な癖を持った、平四郎の甥で養子候補の弓之助と、聞いたことは何でも記憶すると言う人間テープレコーダーの「おでこ」と呼ばれている少年のコンビも魅力的だ。江戸人情もふんだんに盛り込まれ、とても面白い作品になっている。○応援クリックお願いします。 「ぼんくら」(宮部みゆき:講談社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 18, 2008
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だいぶ前に、このブログで、京極夏彦の京極堂シリーズの第二段にあたる「魍魎の匣」を紹介したが、昨年12月に、映画が公開されたこともあってか、コミックスが発売されていた。それが、今日紹介する「魍魎の匣(1)」(京極夏彦/志水アキ:角川書店)である。現在、「コミック怪」という雑誌に連載中のようである。 京極夏彦は、知っている人が多いと思うが、絵を担当している志水アキは、この作品で初めて知った。表紙カバーの紹介文によれば、「ヒゲ愛好家として名を馳せる」というちょっと面白げな人のようだ。でも、うちの子が好きだと言ってたので、案外有名なのかもしれない。この辺りにも、ジェネレーションギャップを感じて、少し寂しい。 ところで、お話の方だが、私立の名門女子高に通う楠本頼子は家が貧乏のため、クラスから浮いた存在であった。そんな頼子に謎めいた美少女柚木加菜子が近づいてくる。二人は、最終列車でどこか遠くの湖を見に行こうとするが、加菜子が列車に撥ねられ、瀕死の状態で、謎の施設に運び込まれる。 ところで、原作の京極堂シリーズは、どれも分厚く、読むのに骨が折れるのだが、この「魍魎の匣」は、シリーズの中でも、もっともおどろおどろしい雰囲気があり、一番面白かった。まだ、コミックスの方は、第1巻ということで、京極堂も登場しないが、原作の雰囲気をよく出していると思う。まだ、それほどおどろおどろしいシーンは出てこないが、これからどのように描かれていくのか楽しみである。○応援クリックお願いします。 「魍魎の匣(1)」(京極夏彦/志水アキ:角川書店) ○「魍魎の匣」の記事はこちら風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 17, 2008
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久しぶりに、我が家のわんこ、スーちゃんの登場である。この日はお天気もよく、絶好のお散歩日和だ。お散歩好きのスーちゃんの足取りは軽い。 むむ!何かお宝の気配が・・・ 階段だってへっちゃらだい。 ねえ、あたしキレイ?○応援クリックお願いします。 ○ドッグフードいろいろ 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 16, 2008
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だいぶ前に、元SEでフリーライター兼イラストレーターのきたみりゅうじ氏による「SEの不思議な生態」と「SEのフシギな職場」という本を紹介した。どちらも、氏のSE時代の、トホホな体験を面白おかしくまとめたものだが、今回紹介する「フリーランスのジタバタな舞台裏」(きたみりゅうじ:幻冬舎文庫)は、主に氏がフリーランスのライターになってからの出来事を、ユーモラスな文体で、エッセイ風に綴ったものである。 なかなか皮算用した通りにはいかず、貯金通帳を眺めながらの自転車操業やトホホな編集者に振り回された挙句の執筆断念など、フリーランス生活の大変さが良く表れている。 ところで、フリーランスとして成功するのは、何か他のライターたちとはっきりと差異化できるものが必要であろう。きたみ氏の場合は、SEとしての経験やライターとしての力量に加えて、やはり、あの味のあるイラストが強力な武器になっていると思う。この業界に進もうと思っている人は、SEシリーズと合わせて読むと、色々参考になるのではないかと思う。○「SEの不思議な生態」の記事はこちら○「SEのフシギな職場」の記事はこちら ○応援クリックお願いします。 「フリーランスのジタバタな舞台裏」(きたみりゅうじ:幻冬舎文庫) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 15, 2008
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内田康夫の浅見光彦シリーズは、最近のものを除いてはほとんど読んでいるはずなのだが、「他殺の効用」(内田康夫:実業之日本社)という本にも光彦が出ていると言うことで買ってみた。 ちょっと思惑が外れたのは、この作品が短編集だったことと、浅見光彦がそのうちの2つの話にしか出ていなかったということである。この本に収録されているのは次の5編。「他殺の効用」: 会社社長の山橋啓太郎が、あと三日で、自殺の場合でも生命保険が出ると言う時に、仕事場としているマンションで首をつった。光彦は、母雪江の俳句仲間で山橋の会社の専務から依頼を受け、事件を調べ始める。「乗せなかった乗客」:ピアノ教師兼タクシー運転手の愛子がある別荘から乗せた客に乗り逃げされた。ところが、その別荘では、男が殺されていた。「透明な鏡」:光彦が泊まった温泉旅館の浴場で女性が殺されており、光彦が第一発見者となる。「ナイスショットは永遠に」:パソコン探偵「ゼニガタ」の活躍する物語。「愛するあまり」:家出をしていた菊池早智子の姉由紀子の遺体が富士青木ヶ原で発見された。姉には高額の生命保険がかけられていた。 これらのうち、浅見光彦が出てくるのは、「他殺の効用」と「透明な鏡」の2編のみである。しかし、いつものような旅情ミステリーの趣はない。光彦が密室トリックを解き明かしていくというものであるが、旅情の無い浅見光彦シリーズなど、ク○ー○を入れないコーヒーのようなものだ。(ちょっと古いか?) 「ナイスショットは永遠に」は、扱っている題材そのものに興味が湧かず、読み飛ばしてしまった。「すまん!!」 「乗せなかった乗客」と「愛するあまり」は、最後の結末が、こんなこと絶対無いだろうというくらい意外すぎてリアリティがない。今回は、ちょっと外れだったかな。○応援クリックお願いします。 「他殺の効用」(内田康夫:実業之日本社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 14, 2008
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横綱朝青龍の復帰で何かと話題の多かった大相撲初場所であるが、結局は白鵬の優勝で幕を閉じた。同星同士の横綱の直接対決となったので、妥当な終わり方となったと言えよう。ところで、この横綱であるが、有識者によって構成された「横綱審議会」からの推薦を尊重して、理事会によって決定することになっている。この審議会の委員に女性として初めて任命されたのが内館牧子氏である。 今日紹介する「養老院より大学院」(内館牧子:講談社)は、横綱審議会委員の内館氏が、大相撲の研究をしようと決心し、東北大学大学院に入学したときの体験をユーモラスに描いたものである。 内館氏が大学院に入ろうと思ったきっかけは、土俵の女人禁制に関して、相撲協会と太田房江前大阪府知事の間で悶着である。当事者が守り抜いてきた伝統に、何の勉強もせずに土足で踏み込む風潮に違和感を感じたが、反論できるだけの理論がないので、大学院で大相撲を研究しようと思ったそうだ。そして、勉強の末に東北大大学院に入学したが、あまりにもハードな日常に、遂に仙台へ移住してしまう。なかなか、ここまで出来る人は少ない。このパワーと情熱は見習いたいものである。 とはいっても、この本、決してお堅い本ではない。自分を助けてくれる男子学生を集めて、「喜び組」を組織したり、徒歩3分くらいのバス停へ行くまでに雪地蔵のようになって、国文科の教授に助けてもらったりなど、愉快なエピソードが多く盛り込まれ、楽しく読むことができる。 最後に細かいことであるが、一つ苦言を。表紙カバーに帯がついているが、ここにキャッチコピーとして「同級生は18歳」と書かれている。たぶんこれは作者というよりは出版社が軽率なのであろうが、学部に入学した訳ではなく、大学院修士課程への入学なので、「同級生は22歳」というのが正しい。学部の1年と修士の1年は同級生ではないのだ。○応援クリックお願いします。 「養老院より大学院」(内館牧子:講談社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 13, 2008
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この間、書店で、変わった題名の本を見つけた。それが、今日紹介する「コスプレ幽霊紅蓮女(ぐれんオンナ)」(上甲宣之:宝島社)である。テレビドラマでも放映されているようだが、テレビ東京系のため、広島には系列局がないので、観る事ができない。なお、作者の上甲宣之は、映画化もされた「そのケータイはXXで」でデビューし、既に何冊かの作品もあるが、専業の作家ではなく、現在、ホテルのベルボーイとしても働いているとのことだ。 この物語の主人公である辺倉史代は、内気な性格で、恋人も居ない。唯一の友達はフェレットのこごろーだけ。学校の教師だが、子供には馬鹿にされ、まったくやる気にないダメ教師だ。しかし、彼女には、もう一つの顔があった。今や都市伝説になっている「紅蓮女」のコスプレをして、人々を驚かせることを喜びにしているのである。 この作品はいくつかのエピソードから成り立っている。収録されているエピソードは、以下の通り。・ハロウィン「紅蓮女 VS 口裂け女」・クリスマスイヴ「紅蓮女 VS 紅蓮女es(フレイム・レイディズ)」・大晦日「辺倉史代 VS 刃業の鏡」・バレンタインデー「紅蓮女 VS 苦色の手紙」・史代の誕生日「紅蓮女 VS 電話男」・エイプリルフール「紅蓮女 VS ??」 一応、それぞれの話は独立して読めるようになっている。最初のエピソードである「紅蓮女 VS 口裂け女」を読んだときは、ちょっとお笑い系かと思ったが、だんだん話がすごい展開をしていく。普段は、思ったこともろくに言えない史代だが、「紅蓮女」になるととても強い。特訓の結果身に着けた、マッチ(中には改造マッチで爆薬に近いものもあるが)を使う48の術を使って敵と戦うのだ。中には、かなりオカルティックな敵も出てくる。 最初は人を怖がらせるだけの「紅蓮女」だが、やがて、村を救う神になったり、人の心を救ったりして、遂には、自らの暗い心にも明かりを点す。とても面白く、ちょっと切ないそんな物語であった。○応援クリックお願いします。 「コスプレ幽霊紅蓮女」(上甲宣之:宝島社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら○関連ブログ記事・今日こんな本読んだ
February 12, 2008
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このブログでも何度か紹介した「西瀬戸自動車道」通称「しまなみ海道」は、広島県尾道市から、向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島を通って、愛媛県今治市までを壮大な橋で結ぶ、風光明媚な自動車道である。 土曜の夜、テレビ朝日系列の土曜ワイド劇場で、「瀬戸内しまなみ殺人海流」というドラマをやっていた。題名からわかるように、しまなみ海道周辺を舞台にしたサスペンスドラマである。瀬戸内が舞台になっているということで、興味が湧いて観てみることにした。○写真は来島海峡SAから見た来島海峡大橋 お話の方をごく簡単に紹介しよう。元カメラマンの矢野岬(東ちづる)は、愛媛県今治を拠点に海上タクシーの船長をやっている。ところが、連続殺人事件が発生し、被害者はいずれも翔陽開発という怪しげな会社の関係者であった。この会社、無人島にアミューズメントパーク建設を計画し、甘い言葉で出資者を募っていた。 サスペンスとしては、まあこんなものだろうという感じであるが、せっかくのしまなみの美しい風景を舞台にしながら、単に背景として使っているだけであり、地名を冠しているドラマに求められる旅情があまり感じられなかった。 それにしても、バブルの頃ならともかく、いまどきアミューズメントパークの建設なんてものにつられて、出資するものがいるとは考えられない。この地域、閉園になった遊園地やテーマパークがけっこうあるので、なおさらであろう。安易な設定で、ドラマのリアリティが薄くなっているのは残念である。(監督) ・児玉宜久 (出演)・東ちづる(矢野岬) ・布施博(鴨志田賢)・長門裕之(安藤勘助)・山川恵里佳(安藤由美)・夏樹陽子(九条麗子)・床嶋佳子(石田智枝)・小木茂光 (島本修司)ほか○応援クリックお願いします。 ○お菓子詰め合わせ「しまなみ海道」風と雲の郷 別館(gooブログ)はこちら
February 11, 2008
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金曜日の夜は、日本テレビ系の金曜ロードショーで「DEATH NOTE デスノート the Last Name」をやっていた。2006年の11月に同じく金曜ロードショーで放映された「DEATH NOTE 前編」の続きである。確か、このころ「DEATH NOTE デスノート the Last Name」が映画館で封切られた覚えがあるので、1年以上も遅れて、テレビ放映されたことになる。この作品、それほど好きというわけではないのだが、一応前編を観たので、完結編にあたるこちらの方も観ないとなんとなく落ち着かないということで観ていた訳である。 ところで、お話の方だが、死神の眼を持った第二のキラ・弥海砂が月の前に現れる。月は海砂の死神の眼でLの本名を突き止め、デスノートで消そうとするが・・・ しかし月が海砂に逢った時に、海砂が警官を殺したことをちょっと攻めていたが、 「お前が言うか?」 相変わらず、映画「呪怨」の隅っこに出ていそうなLがかなり怪しい。ほとんど妖怪に近い。そういえばこのLが主役の映画が出来たんだな。どんな映画ちょっと気になる。 それにしても、主役の夜神月をやっている藤原竜也には、原作のようなシャープさがないので、どうにも違和感がある。 最後に、死神は、女に甘く、男に厳しいということか。まあ、女の死神(いるのか?)だったら、もっと違った結末になっていたかもしれないが、夜神月の出会った死神が男(たぶん)だったのが、一番の不運だったんだろう。(原作)・大場つぐみ、小畑健 (監督)・金子修介 (出演)・藤原竜也(夜神月) ・松山ケンイチ(L / 竜崎) ・戸田恵梨香(弥海砂) ほか○「DEATH NOTE 前編」の記事はこちら「DEATH NOTE」(大場つぐみ /小畑健:集英社) ○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館(gooブログ)はこちら
February 10, 2008
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今日は、先日紹介した、浅見光彦シリーズの「贄門島」(内田康夫:文芸春秋社、実業之日本社 )の下巻の紹介 である。もちろん、浅見光彦シリーズのミステリーである。 上巻で、光彦といっしょに島に渡ったルポライターの平子と、光彦の父と親交のあった代議士秘書の増田が殺された。下巻では、光彦は、兄洋一郎の密命を受けて、美瀬島出身のヒロイン・天羽紗枝子と共に島に渡る。 下巻では、美瀬島の驚くべき秘密が明らかになるが、話がかなりとんでもない方向に行っている様な気が・・・。そして、最後の解決は、やはり光彦流であった。 ところで、内田センセ、第11回日本ミステリー文学大賞を受賞したとのことである。永らく無冠の帝王として、ミステリー界に君臨していたセンセも、とうとうタイトル奪取である。ファンの一人としてうれしく思う。また、TBSの沢村一樹主演による浅見光彦シリーズ「姫島殺人事件」の撮影が進んでいるようだ。放映が楽しみなことである。○「贄門島(上)」の記事はこちら○応援クリックお願いします。 「贄門島(下)」(内田康夫:文芸春秋社、実業之日本社 ) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 9, 2008
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今日も、広島市のあちらこちらの風景を紹介しよう。まずは、1月30日に、宇品地区にオープンした「おんまく寿司」である。回転寿司屋で、広島、岡山、愛媛に店舗展開しているようだ。入ってみようかと思ったが、オープンまもないこともあって、ご覧の通り、車の行列がすごく、店内も待ち客がたくさん居るようなので止めた。そのうち、開店のほとぼりがさめたら行ってみよう。「おんまく寿司」 さて、場所は変わり、太田川の分流の一つ「元安川」にうかぶ「かき舟」である。こちらも、一度行ってみたいと思うのだが、なかなか機会がない。「かき舟」 この「元安川」の平和公園近くの元安橋のたもとに、リバークルーズの乗り場がある。こちらも、残念ながらまだ乗ったことはない。「すいすい号」というちょっとかわいい船が停泊していた。この船で、クルージングをするようだ。「太田川水上交通乗り場」「すいすい号」○応援クリックお願いします。 ○広島市あちらこちら〔広島市を歩く(その23)]の記事はこちら風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 8, 2008
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これまで、何回かに分けて、「ゾンビ屋れい子」(三家本礼:ぶんか社)を紹介してきたが、いよいよ、最後のお話となる「カーミラ編」だ。この作品、結構気に入っていたのに寂しいことである。最終話だからだろうか、この「カーミラ編」だけは、上下二巻構成になっている。 今回は二巻構成になっているだけあって、れい子にとって、カーミラという最凶の敵が登場する。カーミラとは、800年前に悪行の限りをつくしていた魔女である。そういえば、怪奇映画によくカーミラという女吸血鬼が出てくるが、直接の関係はないようだ。魔女カーミラは、魔女の石が本体であり、次から次に人間に乗り移って悪行をつくしてきた。この石を手にするものは、カーミラに体を乗っ取られるのである。魔女の石は、クレイマン博物館内にずっと封印されてきたが、盗賊が、この石を盗み出したため、カーミラが復活してしまう。上巻では、魔女の石を取り返すべく集められたれい子たち賞金稼ぎが、カーミラを追うという話がメインである。ところが、この賞金稼ぎたち、一癖も二癖もあるような連中ばかりで、案の定、裏切り者が出てくる。 下巻では、カーミラがれい子の親友ジャスミンの体を乗っ取ってしまう。かって、親友を見殺しにせざるを得なかったれい子はなんとしてもジャスミンを救おうと決心する。カーミラの3人の弟子も甦り、れい子の仲間たちと壮絶な死闘が繰り広げる。実はれい子はカーミラと、前世で戦っており、この戦いは、因縁の対決ともいえるものであった。 そういえば、この主人公のれい子、最初のころと比べると、かなり顔が変わっている。ずっと17歳と言う設定のはずだが、顔がだいぶ縦に伸びて大人の顔になっているのである。成長期だからか?まあ、他のキャラでは、いつのまにか途中から幼児体型に変えられたのもいるので、単なる作者の気まぐれだろうとは思うのだが。 ところで、このカーミラ、この作品に出てくる他の悪役同様、最後にやられる時には、ものすごく情けない奴になってしまう。この作品の悪役の中でも一番の悪逆非道ぶりだったのに、このギャップの大きさは笑えてしまう。○「ゾンビ屋れい子5(イーヒン編)」はこちら○応援クリックお願いします。 「ゾンビ屋れい子6、7」(三家本礼:ぶんか社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 7, 2008
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先般紹介した「灼眼のシャナ3」に続いて、「灼眼のシャナ4」(高橋弥七郎:メディアワークス/角川GPメディアワー )を読んだ。内容は、3巻からの続きで、愛染自ソラトと愛染他ティリエルの兄妹、千変シュドナイとシャナ、マージョリーとの戦うというお話である。それにしても、どんどん深みにはまっていくような気が・・・そう潤沢に時間を持っているわけではないので、ここからライトノベルズ全体に興味がいってしまうと、ちょっと恐ろしい。「シャナ」だけでもまだまだ続きがあるし、結局は、どんどん積読本として、蓄積していきかねないのだ。 さて、お話を戻すと、4巻は、シャナ&マージョリー対愛染兄妹&シュドナイの全面対決といった図式だ。絶不調だった、マージョリーもあることがきっかけで完全復調。シャナと悠二の絆はどんどん太くなっているようである。悠二を好きな吉田さん、シャナに宣戦布告をしたが、この三角関係?今後どうなるのか。逃げたシュドナイは、なんだか怪しいグループに属しているようだし、こちらの方も気になるな。 ところで、この話で言いたいことは、シャナと悠二、マージョリーとその子分たち、お互いに思いあう心が大切だということだろう。愛染兄妹は愛染自と愛染他の名前から連想できるように、妹ティリエルの兄への一方的な思いだけ。兄ソラトのほうは、子供のように自分の欲望のみで動いている。だから結局は敗れてしまったということか。それでもティリエルが兄のために自分を犠牲にした場面は、敵ながらちょっと切ない。○「灼眼のシャナ3」の記事はこちら○応援クリックお願いします。 「灼眼のシャナ4」(高橋弥七郎:メディアワークス/角川GPメディアワー )風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 6, 2008
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今日は、広島市のあちこちをランダムに紹介しよう。まずは、歩道橋の上から見た宇品橋近辺の景色。遠くに見えるのが、宇品橋である。2000年に完成した、大田川の分流の一つである京橋川に架かる橋である。この橋ができることにより、宇品地区から広島市中心部までの交通は格段に便利になった。また、この橋を宇品側に降りた辺りでは、近年、大きなマンションが次々に建設されている。○宇品橋近辺の風景 次は、広島の中心部にある大型電気店デオデオ本社の外壁に取り付けられている「鈴木三重吉生誕の地」のレリーフである。三重吉は、児童文化運動の父とも言われる児童文学家であり、1882年(明治15)に現在の広島市中区大手町で生まれた。児童文芸誌『赤い鳥』を創刊したことでも有名である。○「鈴木三重吉生誕の地」のレリーフ 今日の最後は「NHK広島放送センタービル」、通称広島NHKビルである。平和大通り沿いにあり、広島の高いビルのひとつだ。スターバックスが入っているので、一度行ってみようと思うのだが、なかなか機会がない。○NHK広島放送センタービル○応援クリックお願いします。 ○街はもうクリスマス〔広島市を歩く(その22)]の記事はこちら風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 5, 2008
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「こんなに続けて何人も送ることはない」 「そうだな来年に回すか」 今日紹介するのは、浅見光彦シリーズの「贄門島(上)」(内田康夫:文芸春秋社、実業之日本社 ) である。光彦の父秀一は、大蔵省主計局長時代、プレジャーボートの事故で、海中に転落し、九死に一生を得た。秀一を助けたのが、房総の海に浮かぶ美瀬島に住む人々であった。ところが、秀一は、意識不明の夢うつつの中で、冒頭のような言葉を聞いた。 その美瀬島は、観光客や釣り客を寄せ付けず、生贄送りの風習があるとされることから、贄門島と呼ばれていた。ところが、光彦と一緒に島に渡ったルポライターの平子と光彦の父と親交のあった代議士秘書・増田が殺される。増田は、美瀬島出身でこの作品のヒロイン天羽紗枝子の就職の世話人でもあった。そして紗枝子も昔、秀一が聞いたことと同じような会話を聞いたことがあったのだ。 この美瀬島、一見風光明媚で海の幸に恵まれ、理想郷のような島なのだが、どこか怪しい雰囲気で、どうも何か大きな秘密があるようだ。内田センセはよく実際の人や土地をモデルにしているが、さすがに、こんな怪しい島は、架空の島を使ったようだ。架空の島と言うこともあり、今回は、ちょっと旅情ということには欠ける。 この作品は、上下巻構成になっており、かなりの長編であるが、読みやすく、分量をあまり感じさせない。あっという間に上巻を読んでしまったが、下巻で、いったいどんな秘密が出てくるか楽しみである。○応援クリックお願いします。 「贄門島(上)」(内田康夫:文芸春秋社、実業之日本社 ) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 4, 2008
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このブログは、元々、資格試験に関する話をメインのテーマのひとつとしてはじめた。しかし、途中から読書や旅の話題が多くなったため、ブログの内容の一貫性を保つため、だいぶ前から、資格関係の話題は、別館の「文理両道」の方で展開するようになった。私は、現在、約70位の資格を持っている。これでもかなり多い方だと思うが、なんと400以上もの資格を持っている人がいるという。それが、今日紹介する「すごい検定258」(テクスト/興陽館)の監修者である中村一樹氏である。自ら「平成の資格王」と名乗っているので、ご存知の方も多いかもしれない。 本の内容だが、表紙には、「レア検定、ユニーク資格だけを集めた日本で唯一のガイドブック」と書かれている。要するに、面白資格、ユニーク資格を集めたガイドブックである。私も、資格試験についてはかなり詳しい方だと思うが、それでもはじめて聞くような資格がたくさん紹介されている。世の中には色々と面白い資格があるもので、「ナマハゲ伝導士」、「山彦認定士試験・ほら吹き検定」などは、思わず取ってみたいと思ってしまった。(笑) 第7章では、「日本全国ご当地検定」が紹介されている。旅行好きの方は、色々と受験してみれば、旅行がいっそう楽しくなるであろう。 しかし、細かいところで、気になる点もいくつかある。まず表題の「すごい検定」だが、どういう意味で「すごい」のか良く分からない。ここに紹介されてある資格をとっても、話のネタにはなるかも知れないが、「すごい」とは、まず思われないと思う。 次に、漢検などのように、どうして、この資格が、レア検定やユニーク検定に分類されるのかがよく分からないようなものまで入っている。 更に、この本では、資格と検定の違いを、「資格」=「免許」で法律的な裏づけが与えられているもの、「検定」とは法律的な裏づけのないものというように区別している(116ページコラム参照)。そして、わざわざ表題には「資格」でなく「検定」という言葉を使っていながら、内容については、「資格」と「検定」の区別はあまりされていないのである。例えば、先ほど引用した、表紙の言葉にもユニーク「資格」という言葉が使われているし、ここで言う「資格」であるはずの「気象予報士」や「アマチュア無線技士」なども、この258の「検定」の中に含まれているのである。 私の資格、検定に関する考えは、この本で述べられているのとは少し異なる。「資格」というのはもっと広義のもので、分類すれば、その中に「免許」と「検定」があるのだと思う。そして、「免許」とは、法的にあることをすることが許されるもので、「検定」とはその人の技術、技能のレベルを保証するものではないのか。 ともあれ、この本には、こんな資格があるのかと思うような、面白い資格がたくさん紹介されているので、資格マニアの方や何か趣味に関する資格を取ってみたいと考えているような人には役に立つであろう。○応援クリックお願いします。 「すごい検定258」(中村一樹監修:テクスト/興陽館)
February 3, 2008
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若狭とは、現在の福井県の南部をいう。有名な東尋坊や三方五湖、気比の松原などの観光名所がある風光明媚な地域である。「若狭殺人事件」(内田康夫:徳間書店) は、この若狭地方を舞台とした、浅見光彦シリーズの旅情ミステリーである。 内容を簡単に紹介しよう。若狭地方の美浜にある宇波西神社の水中綱引き神事で、高利貸しの松尾が死体で沈んでいるのが見つかる。一方、広告代理店に勤める細野が東京の高島平で殺された。細野は、死の前に、若狭を舞台にした小説「死舞」を同人誌「対角線」に発表していた。しかし、細野は若狭を訪れた気配は無い。内田センセの紹介で、「対角線」の同人たちと知り合った光彦は事件を調べ始める。 この小説のモチーフは、内田センセ得意の、戦争時の因縁。それが、疑心暗鬼と重なり、不幸な事件に発展する。そして、最後の解決は、やっぱり光彦流であった。○応援クリックお願いします。 「若狭殺人事件」(内田康夫:徳間書店) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 2, 2008
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今日紹介するのは、「魔術はささやく」(宮部みゆき:新潮社)である。1989年の日本推理サスペンス大賞を受賞した作品と言うことである。実は、だいぶ前に読了していたのだが、なかなか感想が書きにくかったので、読んでから紹介するのにだいぶ時間がたってしまった。どうも読後感がすっきりとしなかったからだ。 ざっとさわりを紹介しよう。3人の若い女性が次々に死んでいった。一人は飛び降り自殺、二人目は地下鉄への飛び込み自殺、そして三人目は、日下守の伯父が運転するタクシーに飛び込んできたのだ。守の父は、公金を横領して蒸発し、守は、母親の死後、伯母夫婦に引き取られていた。伯父は逮捕され、守は事件を調べ始める。 ところで、冒頭にどこかすっきりしないと書いたが、どこがすっきりしないのかしばらく頭の中で熟成させていた。確かに、たくさんの題材を、うまく組み合わせて、見事に纏め上げている。このあたりは、宮部みゆきの本領発揮というところであろう。しかし、材料が盛りだくさんのうえ、設定を作りこみすぎている感じがして、結局どこに焦点を当てているのかが分かりにくく、リアリティも薄れている。ネット書店のレビューなどでは、結構いい評価なので、結局は、好みの問題なのかもしれないが。○応援クリックお願いします。 「魔術はささやく」(宮部みゆき:新潮社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
February 1, 2008
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