夜叉ヶ池の主は白雪姫です。
その普段は静まり返っている池のほとりにも、美しい桜は咲いていることでしょう。
深遠な森の中の鏡のような池の面に、静かに降りしきる桜の花びら。
それは、白雪姫がおのが身を花に変え、俗世を清めるがために降らせているかのようです。
幽玄な中に、ほのかな妖艶をたたえて、それはそれはこの上のない美しさ。
これは私の空想です。
こんなことを想像させる魅力が泉鏡花の文学にはあります。戯曲の「夜叉ヶ池」や「天守物語」は独特の文体で書かれ、決して饒舌ではない。
無駄を極力削ぎ落した文章からにじみ出てくるイメージは、すこぶる明確で情景が浮かぶようです。
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