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「はぁ・・・」
深く、ため息をついてみる。
俺は放課後公園に来ていた。
太陽も傾いてきてそろそろ夜になろうという時間、他にはだれもいなかった。
悩んでいた。
自分の本当の気持ちはどれなのかと・・・。
天音と水族館でデートした後からどうも意識してしまう。
俺は天音のことが好きなのか?
そんなわけはない、天音は家族なんだ・・・。
ずっとこの繰り返しで答えはまだ見つからない。
どうすればいいのだろうか?
こればっかりは自分で見つけるしかないのかもしれない。
一人になれると思ってここに来たわけなんだが・・・。
「わっかんねぇ」
考えれば考えるほど深く嵌っていくだけだった。
いっそ考えるのをやめてしまえば楽になれるのかもしれない。
だけど今の俺には、そんなことは出来そうになかった。
「どうすっかなぁ」
天音は俺のことをどう思っているのだろうか?
やっぱり弟としか思っていないのだろうか?
でもそれにしてはやけにくっつきたがる・・・それもスキンシップなだけなのだろうか?
こればっかりは本人に聞いてみなくては分からない。
要するに・・・
「全く分からないってことか・・・」
自分の気持ちなのになぜここまで悩まなくてはならないのか。
それすらも分からない。
「はぁ・・・」
思い出してみると初恋は天音だったような気がする。
優しくて・・・可愛くて・・・。
幼いころの記憶だからよく覚えてはいないが、それだけは覚えている。
苦笑するしかない。
ppppppp
電源を落とすのを忘れていたのか俺の携帯が着信を告げる。
ディスプレイを見ると、相手は達也だった。
「もしもし?」
今の心境を悟られないよう、出来る限り平然を装う。
「よう、悩んでるか?少年よ」
どうやら達也にはばれていたようだ。
「そんなにバレバレだったか?」
自分では普段通り過ごしていたつもりなんだが・・・。
「たぶん他の奴には普通に見えただろうな。だけど俺とは付き合い長いんだぜ?それに、たぶんみやびちゃんも気づいてる」
だろうな。
天音をのぞけば一番付き合いが長いのだ。
むしろ気付かない方がおかしいだろう。
「それで、決まったのか?」
突然、いつになく達也の声が真剣になる。
「決めるって・・・何がだ?」
分かっていながらもはぐらかすことしかできない。
「何がって分かってるんだろ?天音さんのことだよ」
「!!」
あまりにもあっけなく核心を突かれ俺は何も言えなくなる
「やっぱりそういうことか・・・お前、天音さんのことが好きなんだろ?」
ああ、そうなのか。
第3者に言われてはじめて気づく・・・というよりははっきりと意識させられる。
俺は天音のことを好きになってしまったんだ。
許されるはずもないのに・・・。
それでも・・・。
「ああ、そうだ」
自分の気持ちに嘘はつけなかった。
つきたくなかった。
「やっぱりか・・・。たぶん天音さんはずっと待ってたぞ?」
口ぶりからだいぶ前から気付いていたらしい。
それに天音が待ってる?
「たぶん天音さんはずっと前からお前のことを見てる。いや、お前のことしか見てない」
達也の言葉を聞いて考えてみる。
確かに天音は未だに彼氏すら作ろうとしない。
それにその言い訳は・・・
(私には孝介がいるから)
あれは冗談だと思ってた・・・。
だけど、もしかしたら・・・。
「天音さんはずっとお前が気付いて好きになるのを待ってたんだよ。
天音さんも家族ってのを気にしてたんだろうな」
天音も・・・今の俺みたいなぐるぐるとした気持ちをもっていたっていうことか。
しかも、俺よりずっと長く。
なんだか申し訳ない気がしてきた。
「俺が言いたいのはそれだけだ。どうするかはお前が判断しろ」
そう言って達也は電話を切った。
辺りはまた静寂に支配される。
「そっか・・・」
天音も同じ気持ちなのか・・・。
だけどまだ確証があるわけじゃない。
達也や俺の思い違いっていうことだってあり得る。
なら俺に出来ることは、一つしかなかった。
そう思った時にはすでに俺は走り始めていた。
なぜだか、電話では聞いてはいけない、直接会って聞かなきゃいけないような気がした。
体育系の部活じゃないからそんなに足が速いわけじゃない。
ましてや体力なんてすぐに切れてしまう。
それでも足は止められなかった。
少しでも早く天音の待つ家へ・・・。
この気持ちが消えてしまう前に、少しでも覚めてしまう前に伝えてしまいたかった。
「はぁはぁ・・・」
どれほど走っただろうか?
家の前に着いた。
あれほど会いたいと思っていたのにいざ家の前に来るとあと一歩が踏み出せなかった。
「よし」
意を決してドアノブに手をかけゆっくりと開けなかに入る。
「お帰り~」
キッチンの方から天音の声が聞こえる。
どうやら天音は夕食の準備中のようだった。
俺はそのままキッチンへと進んでいく。
「あのさ、天音・・・」
居間に入って椅子に座りつつ天音に声をかける。
「ん~、どしたの?」
天音はいつも通り目はこっちに向けない。
「今度の花火大会、一緒に行かないか?」
言ってしまった・・・。
「・・・ホントに?」
天音から返ってきた言葉は予想外な言葉だった。
「ホントに?絶対嘘じゃない?」
「あ、ああ・・・」
わけも分からずそう言ってしまう。
何がどうしたというのだろう。
「行く、絶対行く、何があっても行く」
料理をしているというのに天音はテーブルに身を乗り出しながら俺を見つめてくる。
「ああ、絶対行こうな」
予想とは裏腹にあっけなく約束を取り付けてしまい正直混乱していたけど、ふっきれたのか飯が異様に上手く感じたのだけは覚えていた。
C'est la vie(セ・ラ・ヴィ) 第1話 2012年08月12日
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