inti-solのブログ

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2008.09.21
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カテゴリ: 人類学
一昨日の日記に、ヒトのヒトたる所以は直立二足歩行を行うことである、と書きました。
ヒトとチンパンジーの分岐は、500万年から700万年前とされています。気が遠くなるほど遠い過去のことですが、しかし生物の進化という意味では、それほど昔のことではありません。霊長類(サル目)は、少なくとも5000万年以上、ひょっとすると6500万年に登場していますし、ほ乳類の登場は2億年前(実は恐竜とほぼ同時期)まで遡るのです。その長い期間、ほ乳類は(サルも含めて)ずっと四足歩行をしていたのです。その長い歴史に比べれば、ヒトが直立二足歩行を始めたのは、「わずか」500-700万年前のことに過ぎないと言えます。
そのため、ヒトはまだ完全に直立二足歩行という新しい形態に適応してはいないのです。
ヒトの骨格は、チンパンジーの祖先から分岐して早々に、直立二足歩行にほぼ適応しました。400万年前の初期のヒトであるアウストラロピテクスが、すでにほぼ完全な直立二足歩行を行っていたことは、すでに書いたとおりです。しかし、循環器系や内臓は、未だに直立二足歩行という新しい体勢には適応していません。そして、そのことが原因となって、人間に特有の様々な病気が生じるのです。

一番分かりやすい例は胃下垂でしょう。人間の胴体が垂直に立っているからこそ胃下垂という病気があるので、胴体が横になっていたら、そんな病気はあり得ません。
痔も同様です。痔は、静脈を心臓に戻ってくる血液が、途中で逆流、鬱血することで起こるわけですが、実はそういう事態を避けるために、手足の大静脈には逆流防止の弁が付いているのです。ところが、胴体内の大静脈には、逆流防止の弁がほとんどない。四つ足で歩いている動物の胴体は水平なので、そんなものがなくても血液は順調に流れるからです。しかし人間は胴体が垂直に立っているため、逆流防止弁がないと大静脈の血液が鬱血しやすい。その場所が、大静脈が胴体に入ったところ(お尻)というわけです。
お尻といえば、汚い話で恐縮ですが、ヒト以外の動物が排泄をするのにティッシュが必要などという話は聞いたことがありません。これも、ヒトは直立二足歩行を始めた結果、肛門がお尻の奥に引っ込んでいることが原因です。(もちろん、昔はティッシュなどではなく、木の葉などで拭いていたでしょうが・・・・・・)
腰痛もヒトが二足歩行を行っていることが原因で起こる病気の一つです。上半身の重さを四本の足ではなく二本の足だけで支えるので、それだけ足腰への負担が大きいのです。
気管に異物が入り込みやすい、入り込んだものが肺まで落ち込みやすいのも、体(気管)が垂直だからです。


たとえば、妊娠中毒症という病気があります。原因は明確には分かっていませんが、胎児の重さで腰(起きているとき)や背骨(寝ているとき)の周辺の血流が圧迫されることが原因の一つだと言われています。そこで、犬猫のようにうつぶせの姿勢をとると良い、というので、ドーナツ型クッションなんてものがある。

直立二足歩行のデメリットをいろいろと書き連ねましたが、しかし直立二足歩行なしに高度な知能を獲得することがあり得なかったことは、前の日記に書いたとおりです。だから、これらのことは高度な知能を獲得した代償ということもできるでしょう。もしヒトがこれから先あと何百万年か絶滅せずに生き続けることができるとしたら、我々の子孫はこれら直立二足歩行のデメリットを解消していくようなかたちの進化を遂げていくことが、出来るんでしょうかね。その前に絶滅しているかも知れないけれど。





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最終更新日  2008.09.21 13:11:29
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