inti-solのブログ

inti-solのブログ

2009.01.23
XML
カテゴリ: その他
「TAKE-OFF」は事故の元 管制時の使用制限へ

日本航空(JAL)機が08年2月、北海道・新千歳空港で管制指示に反して離陸滑走をはじめた重大トラブルで、運輸安全委員会は23日、管制官が待機を指示する文脈の中で発した「TAKE―OFF」(離陸)という単語が、「離陸許可」を連想させるとして、使用を制限するよう国土交通相に求めた。同日公表の調査報告書で指摘した。
国交省はこれを受け、「TAKE-OFF」の使用は、実際に離陸を許可する場合と、やめさせる場合に限定するよう業務規定を改める方針を決めた。待機や離陸の準備をさせる指示では「DEPARTURE」(出発)などの言葉で代用する。
報告書によると、新千歳では管制は自衛隊が担当。管制官は当時、JAL機に「EXPECT IMMEDIATE TAKE-OFF」(直ちに離陸できるよう備えよ)と言って待機を指示。だが機長は離陸許可の際に使われる「TAKE-OFF」という言葉に影響され、許可が出たと思いこみ、滑走を始めた。2キロ以上先に別の機体があったが、雪で視界が悪く見えなかった。管制官の制止により、大事には至らなかった。
「離陸」という用語は、583人と史上最悪の犠牲者を出した77年のスペイン領テネリフェ島のジャンボ機衝突事故でも問題となったことがある。管制官が「OK、離陸を待て」と指示したが、無線の混信できちんと届かず、機長は離陸許可が出たと誤認して滑走を開始し、別のジャンボ機に衝突したのだ。
事故後、「離陸」は離陸の許可または取り消し以外には使わないよう、多くの国が取り組んだ。日本も、国交省監修の航空関係者向けのマニュアルには同様の記載がある。しかし、管制官に準拠が義務づけられている業務規定には記述はなく、自衛隊の管制官らは先のマニュアルを必ずしも読んではいないため、徹底されていなかった。

-----------------------------

実は、この事件の前年2007年6月にも、同じ新千歳空港で離陸滑走中のスカイマークエアライン機の前を全日空機が横切るという事件が起こったことがあります。危険性という意味では、むしろそちらの方が深刻だし、記事中にあるテネリフェ島のジャンボ機衝突事故につながる危険の大きい事例だったように思います。しかしどちらも新千歳空港の出来事というのが気になります。

テネリフェ島のジャンボ機衝突事故は、KLMオランダ航空と今はなきパン・アメリカン航空のジャンボジェット同士が、スペイン領カナリア諸島のネテリフェ島の空港で衝突し、2機合わせて死者583人という航空史上最悪の事故です。(ただし、1機だけの事故としては、御巣鷹山の日航ジャンボ墜落事故が世界最悪)


詳細は ウィキペディアに詳しい のでそちらを見ていただくとして、かんたんにまとめると、大西洋のリゾート地、カナリア諸島のラス・パルマス空港がテロで閉鎖されてしまったことが全ての始まりです。
そのため、ラス・パルマス空港に向かっていた飛行機が、みんなネテリフェ島のロス・ロデオス空港に着陸したのです。ところが、この空港は小さくて駐機場が満杯になってしまい、やむを得ず誘導路を駐機場のかわりにした。これが事故の大きな原因になります。
やがて運行は再開されたものの、誘導路が駐機中の飛行機で塞がっているので、誘導路を通らずに滑走路を通って離陸位置まで行って、機体を反転させて離陸するよう管制官は指示したのです。その間、時刻は夕方で、日も暮れかかり、しかも霧が出てきて視界がきかなくなった。
KLM機が先に離陸位置に向かい、パンナム機がその後に続いていたのですが、パンナム機の方は滑走路の途中から誘導路に逸れるように指示されます。しかし連絡路に入り損ねて、指示より少し先の連絡路から誘導路に入ろうとしました。
そして、離陸位置に着いたKLM機と管制塔は、こんなやりとりをしたのです。
KLM「これから離陸する」
管制「OK・・・・・・・・、その場に待機せよ」
管制官が一瞬言い淀んだのでしょう、OKとそれに続く言葉に2秒ほどの空白があり、この間が致命的な結果をもたらします。
パンナム機の機長が、管制官の「OK」の言葉と、そのあとの一瞬の沈黙を聞いて、慌てて送信したのです。
「だめだ、こちらはまだ滑走路上にいる」と。

ただし、その後で管制塔はパンナム機と
「滑走路を空けたら報告せよ」
「OK、滑走路を空けたら報告する」
というやりとりをしているのです。それはKLM機の無線にも入っているのですが、機長と副操縦士は聞き漏らしたのです。「離陸許可が出た」と思いこんでいるから、耳に入らなかったのでしょう。KLM機はそのまま滑走を開始して、パンナム機に衝突したのです。

本来の目的地ラス・パルマス空港が一時閉鎖されなければ、誘導路が塞がっていなければ、霧が出ていなければ、パンナム機が指示通りの一で滑走路から誘導路に出ていれば、管制官が一瞬言いよどまず混信が起こらなければ、そして、KLM機のパイロットがいらいらして離陸を急がなければ、そして、空港に地上誘導用のレーダーがあれば、どれか一つの条件でも回避できれば、起こらなかったはずの事故だったのです。



言うべきときに違うことを「違う」と言わなかった、あるいは言えなかったことが、致命的な結果をもたらしたのです。
ワンマン経営者の絶対的権力の下で社員は一切の異論、反論が許されないというような職場でも、同じようなことが起こるかも知れません。いや、現にたくさん起こっています。企業の不祥事や経営破綻のなかには、誰かが経営者に「それはダメですよ」と忠告できれば、忠告に聞く耳を持てれば、回避できた例も多いでしょう。
ひどい場合には、企業どころか国家全体がそういう状態に陥って、破綻に至ることもあります。太平洋戦争に突入していくときの日本などは、まさしくそれです。

相手が誰だろうが何だろうが、違うものは違う、間違っているものは間違っている、とはっきり指摘できる環境、指摘する勇気が大事なのです。それが失われたら、ネテリフェ島の2機のジャンボジェットのように破滅への道を押しとどめるものはなくなります。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009.01.23 23:45:24
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: