inti-solのブログ

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2009.05.10
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カテゴリ: 環境問題
1週間以上前の記事ですが
http://mainichi.jp/photo/news/20090502k0000e040054000c.html

ライチョウ:激減の危機 シカなど餌場荒らし 南アルプス

世界最南端、南アルプスのライチョウに危機が迫っている。近年、生息地である3000メートルの稜線(りょうせん)にまでサルやシカが登ってきて、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧(きぐ)種に指定されているライチョウの餌の高山植物を食べるようになったためだ。40年間ライチョウを研究してきた信州大の中村浩志教授(62)=鳥類生態学=は「このままでは5年以内にトキやコウノトリと同じ道をたどる。行政が今すぐ動かなければ、取り返しがつかないことになる」と警鐘を鳴らす。【沢田勇】
信州大が85年に発表した調査結果によると、日本のライチョウの推定生息数は約3000羽。多くは北アルプスにおり、南アルプスは723羽だった。中村教授によると、南アルプスでは約300羽にまで減少。生息環境が比較的残っているのは、北部の北岳(3193メートル)、中部の荒川岳(3141メートル)、南部の聖岳(3013メートル)程度という。
山梨県によると、南アルプスでは10年ほど前から「駆除するハンターの減少などで」(みどり自然課)、ニホンジカやニホンザルが高山帯に進出するようになった。高山植物の食害は4~5年前から顕著になり、静岡県自然保護室によると、静岡・長野県境の塩見岳(3047メートル)などでは既に植物が失われて表土流出が始まった。
(以下略)
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一昨年、南アルプスの仙丈岳に登ったとき、シカが高山帯に入り込んで、高山植物を食い荒らしている、という話は耳にしました。まだ藪沢カール付近には入り込んでいないけれど、それより下はずいぶん高山植物が減ってしまったそうです。かつて、仙丈岳は高山植物のとても多い、花の山として有名でした。始めて私が登ったのは1991年のことでしたが、そのときは馬の背ヒュッテ近辺はシナノキンバイが黄色い絨毯のように咲き乱れていたことをよく覚えています。でも、一昨年はまったく花は咲いていませんでした。(8月10日なので、まだシナノキンバイの花期だったはずですが)
森林限界付近は、マルバダケブキの大柄で黄色い花が咲き乱れていたので、一見華やかでしたが、よく見ると、マルバダケブキ以外の花がない。あとで聞くと、マルバダケブキはシカが食べないのだそうです。だから、この花だけが繁栄しているわけです。


何故そんなにシカが増えたのでしょうか。
記事には「駆除するハンターが減った」とありますが、私にはそれだけが理由とは思えません。なぜなら、日本の長い歴史の中で、ハンターが鹿や猿をバンバンと撃つようになったのはそんなに昔のことではないからです。江戸時代にも狩人はいましたが、それほどの数ではなかったはずです。しかし江戸時代の高山がシカの食害で丸裸にされた、という話は聞きません。
あくまでも私の推測ですが、一つの理由は、自然環境の破壊によって、シカの生息できる環境が減少して、高山帯という本来は鹿の住む領域ではないところに押し出されてきたのではないか、ということです。かつては、南アルプスは東海パルプによる大規模な伐採が行われていましたから。
ただし、過去十数年という期間に限定すると、もう伐採はそれほどの規模では行われていないと思います。
もう一つの理由は、おそらくニホンオオカミの絶滅が関係しているのではないでしょうか。かつてシカにはニホンオオカミという天敵がいたので、そんなに野放図に増えることはなかったのです。しかし20世紀初めにオオカミは絶滅してしまいました。たまたま、上手いタイミング(?)で、そのあとシカは狩猟の対象になり、つまり人間がオオカミの代役を務めるようになったので、オオカミ絶滅の影響は顕在化してこなかったけれど、ここに来てハンターが減少したため、影響が顕在化してきた、ということではないかという気がします。北海道でもエゾジカが急増して食性に影響が出ていまが、北海道の場合はエゾオオカミ不在がその原因といわれているようです
シカの天敵としてはオオカミ以外にクマ(北海道はエゾヒグマ、本州以南はツキノワグマ)がいますが、熊は雑食性なので、見た目ほどには大量の大型動物を襲うわけではないようです。それに、クマも北海道、本州以南とも減少中です。(それもシカ急増の原因の一つかな)
解決策としては、シカの駆除もやむを得ないかも知れませんが、他にオオカミの再移入、クマの全面保護などが考えられると思うのですが・・・・・・。





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最終更新日  2009.05.10 10:01:20
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温暖かも  
夢穂  さん
影響をしているみたいです。美ヶ原の鹿被害の
番組では、冬場の温度が高くなって、冬越しを
してしまう鹿が多いみたいで、今じゃ放牧を
している牛と、鹿の数が同じと牧場の方が
苦笑していました
(2009.07.19 09:23:28)

Re:温暖かも(05/10)  
inti-sol  さん
夢穂さん
>影響をしているみたいです。美ヶ原の鹿被害の
>番組では、冬場の温度が高くなって、冬越しを
>してしまう鹿が多いみたいで、今じゃ放牧を
>している牛と、鹿の数が同じと牧場の方が
>苦笑していました

なるほど、それもあるかも知れません。
さすがに多少温暖化しても、3000mの稜線で越冬する鹿はいないと思いますけど、雪解けが早くなればその分早く登ってくるということはあるでしょう。 (2009.07.19 11:43:50)

Re:南アルプス、高山帯の植生の危機(05/10)  
名無し さん
鹿対策に早く狼の導入を! 懸念がある人は日本オオカミ協会ホームページのQ&Aや森とシカtoオオカミ2を参照 (2013.04.24 16:43:00)

Re[1]:南アルプス、高山帯の植生の危機(05/10)  
inti-sol  さん
>鹿対策に早く狼の導入を! 懸念がある人は日本オオカミ協会ホームページのQ&Aや森とシカtoオオカミ2を参照

趣旨としては賛同するのですが、おそらく反対も多く、なかなか敷居は高いのではないかという気がします。 (2013.04.24 21:28:44)

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