inti-solのブログ

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2011.03.22
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カテゴリ: 災害
福島第1原発 周辺の津波 14メートル以上の可能性


保安院は同日午後の会見で、「津波の高さは一番高い所で(水が)触れたものを見れば分かる。未確認だが、14メートルの高さの駐車場を超えていると聞いた」と説明した。東電が同原発で設計時に想定した津波の高さは約5メートル。津波は浅い海岸付近に来ると波の高さが急激に高くなる特徴があるほか、連続して押し寄せるため、沿岸に到達した津波の高さ以上まで駆け上がる。
今回、同原発では、3号機を襲った東西方向の揺れの強さが507ガル(ガルは加速度の単位)と、保安院が耐震安全の基準値として認めた数値の1・15倍だったのを除き、揺れはおおむね基準値を下回った。しかし、敷地内にある原発に送電するための鉄塔が倒壊。さらに津波の影響で、原子炉を冷やすための緊急炉心冷却装置(ECCS)を駆動する非常用電源が6号機を除いて使えなくなり、外部からの受電設備も水没して事態を悪化させたとみられる。
東電は今回の事故を、設計時の想定を超えて炉心の損傷につながるような「過酷事故(シビアアクシデント)」と認めている。保安院によると、東電は複数の対策シナリオを国の指示で02年に作成したが、津波による被害は考慮されていなかった。国の「原子力白書」でもシビアアクシデント発生の可能性について「工学的には考えられないほど低い」などとしていた。
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実際の津波の高さが14mというのはともかく、設計時に想定した津波の高さが5mというのは、過去に東北地方を何度も襲ってきた津波被害の実績から見て、あまりに甘い見積もりだったと言うしかないでしょう。

今回の地震について、1000年に一度の地震という防災関係者がいるそうですが、それは果たしてどうかと私は思います。
1896年明治三陸沖地震 死者行方不明者約22,000人・最大波高38m
1933年昭和三陸沖地震 死者行方不明者約3,000人・最大波高28m

仮に今回の地震が本当に1000年に一度だったとしても、 想定波高が5mというのでは、明治三陸沖地震にも昭和三陸沖地震にも歯が立たないのは明白です※。はっきり言ってしまえば、福島第一原発が1896年や1933年に存在したら、今回と同じような事態になった可能性が高い。

※2つの三陸沖地震の最大波高は、いずれもリアス式海岸の奥で記録されたものです。湾口が広くて奥が先細りのリアス式海岸では、津波の波高は高くなりやすいので、福島第一原発があるような直線の海岸では、波高はもっと低いと思われます。 しかし、それでも5mということはないでしょう。

さて、一部には、福島第一原発が老朽化しているところに問題があった、という主張があります。福島第一原発の老朽化が問題視されていたことは事実ですけれど、新しい原発だったらこんな事故にはならなかったというのは、正しい見方とは思えません。

福島第一原発の事故は、地震や津波で直接的に建屋や原子炉が破壊されたわけではありません。それらの構造物は、確かに地震にも津波にも耐えた。だから、老朽化が原因で起きた事故ではないことははっきりしています。
問題は、外部からの受電施設、送電線の鉄塔、非常用の発電機の大部分、発電機の燃料タンクなどが、津波によって破壊されたり浸水で動かなくなったことです。このブログで何度か書きましたが、建屋と原子炉がどんなに強固でも、原発に付随するシステムや、無数のパイプ、保安システムなどのすべてをそれと同様に強固にすることはできません。今回の事故では、非常用発電機がウィークポイントになりました。

この事故についてウォールストリート・ジャーナルに、 非常に興味深い記事 が掲載されています。

それによると

「福島第1原発の非常用ディーゼル発電機~は地下にあり、安全な部屋に隔離されていた。」
「原子力安全・保安院のスポークスマンによれば、福島第1原発の非常用発電機の設計は、日本の他の原発に『かなり普遍的』だという。同スポークスマンは、ディーゼル発電機の設置場所、とりわけエレベーションが問題との議論に反論し、原発は一定の規模の津波に耐えられると結論していたと述べた。同スポークスマンは『11日の大地震に続く津波がわれわれの想定を上回っていたのは疑いない。それが問題だ』と述べた。 」

とのことです。


しかも、すでに見たように、実際には津波の想定が、 過去115年間に2度来た津波を防げない程度の甘いものでした。

ということは、つまり日本の原発は数十年ごとに来襲する津波災害に対してまったく無力であるということになるわけです。

とりあえず、起きてしまった事故は仕方がない。いや、仕方がないでは済まないのですが、とにかく今は何とか事故が収まることを祈るしかありません。
しかし、問題は日本の原発は福島第一以外もすべて海岸沿いにあるという事実です。ひょっとすると、福島第二原発と女川原発が福島第一原発と同じ事態にならなかったのは、単なる幸運に過ぎなかったのかも知れません。特に、以前より問題視されているのは、東海/東南海/南海地震の危険域にある浜岡原発です。

私は、先日起こった富士山付近を震源とする地震(富士宮で震度6強を記録した)以来、どうも嫌な予感がして仕方がないのです。ま、嫌な予感というのは、何ら科学的根拠に基づかない憶測に過ぎませんが、東海/東南海/南海地震は、近い将来起こ危険が高いというのは、科学的・歴史的な根拠に基づく危惧です。30年以内に巨大地震が発生する確率は、東海地震87%、東南海地震60%、南海地震50%とされています。そして、歴史的に見ると、この3つの地震は連動して短期間に連続して(ときには同時に)起こることが多い。



※訂正です。改めてウィキペディアで「明治三陸沖地震」を調べたところ、「波高は、北海道の襟裳岬では4m、青森県三戸郡八戸町近辺(現・八戸市)で3m、宮城県牡鹿郡女川村(現・女川町)で3.1m」となっていました。福島における波高は記載がありませんが、これらの地域との対比で考えると、5m以下である可能性は充分あると思われますので、該当部分は取り消します。
ただし、明治三陸沖地震という個別の例はともかく、日本国内の他の場所では、リアス式海岸ではない地形でも5mを超える津波が押し寄せた例はあります。
具体的には、北海道南西沖地震(1993年)における奥尻島や日本海中部地震(1983年)における秋田・青森の両県では、リアス式海岸ではないところで10mを超える津波の波高が記録されています。従って、5mという想定波高は、やはり甘かったと言わざるを得ないでしょう。





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最終更新日  2011.03.22 21:49:00
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