inti-solのブログ

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2011.06.23
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カテゴリ: 環境問題
もんじゅ炉内に落下した装置、回収へ 過去2回失敗



23日午前7時45分ごろから、作業員約20人が、装置の引き抜きに使う専用容器「簡易キャスク」(直径1.4メートル、最大長16メートル)の最終調整を始めた。

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これ、原発を巡る問題点の象徴のような事件なのです。

通常の原発(軽水炉)の動力源はウランです。天然状態ではウラン235(核分裂反応を起こす)が0.7%、ウラン238(核分裂反応を抑える)が99.3%という割合です。それをウラン235の濃度を高めた(5%程度)もの(濃縮ウラン)が、原発の原料になります。更に濃度を高める(80%くらい)と、原爆の原料になります。
さて、しかしウラン235というのは貴重品です。埋蔵量もそれほど莫大というわけではありません。このまま原発を使い続ければ、数十年後にはウランは枯渇します。そこが考え出されたのがMOX燃料です。
原子炉の中の使用済み核燃料には、プルトニウム239が含まれています。このプルトニウムを抽出してウラン238の混ぜ合わせたものがMOX燃料です。プルトニウムは原発(軽水炉)の使用済み燃料から、ウラン238は核燃料濃縮の際のあまりものから抽出された「廃棄物利用」というわけです。

このMOX燃料専用の原子炉として開発されているのが高速増殖炉です。「増殖炉」という名で分かるように、この原発のうたい文句は、燃料として最初に投入した核物質より、核反応の結果生成される核物質の方が多い、ということになっています。それが事実なら、核エネルギーは事実上無尽蔵ということになります。まさしく「夢の核燃料リサイクル」です。
・・・・・・・・事実なら、ね。

現実には、「悪夢の核燃料リサイクル」というのが実態です。
世界的に見て、高速増殖炉として有名なのが、フランスのフェニックスとスーパーフェニックスですが、トラブル多発によって最終的に撤退に追い込まれました。

このうち、「常陽」は2007年に事故を起こして、それ以来ずっと止まっています。
そして、問題が「もんじゅ」です。1991年に完成して、95年8月に発電を開始したものの、その年の12月にナトリウム漏れ事故を起こして停止しました。
通常の原発では、冷却材として水を使っています。しかし高速増殖炉の冷却材はナトリウムです。ナトリウムは反応性の高い金属で、空気や水に触れると燃える危険なものです。1995年のナトリウム漏洩事故の際も、漏れ出たナトリウムが燃えた。このとき漏れだしたナトリウムは原子炉本体からではなく、二時冷却系からの漏出だったので、放射能漏れはほとんどありませんでしたが。

この火災事故から15年近い歳月を経て、昨年5月に運転再開をしたのですが、なんとその3ヶ月後に、再び事故が起こります。今度は、燃料交換時に原子炉内で燃料を仮置きする装置(炉内中継装置)が落下してしまった。
落下した炉内中継装置は、衝撃で変形して原子炉内に引っかかってしまい、抜けない状態になっています。この状態のままでは、もちろん運転もできないし、かといって廃炉にもできない、引っかかった装置を何とか引き抜かないと、何をどうすることもできないというどうしようもない状況です。しかし、過去2回の引き抜き作業はいずれも失敗しています。
落下の原因は、つなぎ目のボルトがゆるんでいたため、というのです。ゆるんでいたのは果たしてボルトだけだったのでしょうか。事故で長く停止していた原子炉が運転再開して、たった3ヶ月後のことですから、人間の心にも「ゆるみ」があったとしか思えません。

結局、最初の運転開始から20年間で、稼働していたのは7ヶ月あまりに過ぎません。その間に起こした事故が2回、驚くべき事故発生率です。
それでも、日本原子力研究開発機構は、中継装置の引き抜きが終わったら「もんじゅ」は運転再開するつもりだそうです。
無理でしょう、どう考えても。
大事故から復帰して、たった3ヶ月でまた事故を起こすような原子炉(あるいは、その管理体制)を、誰が信用しますか。核燃料という危険物をナトリウムという危険物で覆った、危険の上にも危険な原子炉が、こんな頻度で事故を起こして、それでも大丈夫だと思える方がどうかしています。

結局のところ、高速増殖炉なんて代物は、人間が管理しきれる技術ではないと考えざるを得ません。今のままでは廃炉にもできないというのだから、引き抜き作業が成功しはてほしいと願うのみです。しかし、成功の暁には、廃炉しかないでしょう。





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最終更新日  2011.06.24 00:44:14
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