inti-solのブログ

inti-solのブログ

2011.09.15
XML
カテゴリ: 音楽
フルート界の巨匠マルセル・モイーズは、1981年92歳の時に、愛用のフルート(ケノンというメーカーの総洋銀製)のコピーの製作を、日本のムラマツフルートに依頼したことがあるそうです。その理由は、思うように音が出ないフルートに癇癪を起こして、投げつけて壊してしまったためだそうです。

なるほど、モイーズほどの超一流の演奏家でも、思うように音が出なくていらいらすることがあったんですねえ。(ま、92歳では高齢のため腕が衰えたからという面が強いのでしょうが)

私はケーナを25年ほど吹いています。最初の6年はアルゼンチンのアルノルド・ピントス製。それから16年間はボリビアのアハユ製、3年前からはボリビアの作者不詳のケーナを吹いています。他に、アハユ製をコピーした自作ケーナも多少使いましたが。
アハユのケーナは、25年も使って、最後は吹き口の近くに亀裂が入って釣り糸で修理、表面は汚れ放題、内側は長年吸った湿気でグズグズと満身創痍の状態だったのですが、とても吹きやすくて、なかなかこれに代わるケーナが見つからず、新しいケーナを買ってはダメ、買ってはダメで、最後にたどり着いたのが、今使っているケーナです。

ケーナ
白っぽい方が今使っているケーナ、茶色い方が一代前のケーナです。吹き口部分を拡大すると、↓のような感じです。

ケーナ1
アップにすると、前のケーナがどれだけ汚れているか分かりますね。吹き口の脇に亀裂があるところは、セロテープを貼って、その上から釣り糸で固定したのですが、この補修をしてから更に4~5年使ったので、セロテープもボロボロらなっています。後で、セロテープなんか貼らずに直接釣り糸を張ればよかったと思いました。
↓は上から見下ろしたところ

ケーナ2
吹き口の構造が少し違うのが分かるでしょうか。古いケーナは吹き口のエッジが肉厚の一番外側に来るようになっていて、外側にはほとんど削り込みがなく、内側に深く削り込まれています。一方、新しいケーナは肉厚の真ん中付近にエッジがあり、内側と外側に同じくらいの削り込みです。

世の一般的なケーナは、後者、つまり肉厚の真ん中付近にエッジがあるのが普通です。エッジが外側に来ているのはアハユのケーナ独特の形状で、他のメーカーではあまり見たことがありません。私の自作のケーナは、アハユのコピーなので同じ形状にしていますが。そのアハユも、最近は吹き口の形状が一変して、エッジが肉厚の真ん中付近にくる、「普通のケーナの吹き口」になってしまいました。実は、アハユ製のケーナは他に2本持っているのですが、いずれもこのケーナほどには思うような音が出ないのです。


そして、なにより厳しいのは、ちょっとでも調子が悪いと悲惨な音になってしまうということです。息の風速がちょっとでも落ちると、唇の形がちょっとでも甘くなると、唇の位置がちょっとでもずれると、途端に音がかすれたりひっくり返ったりします。音の鳴るポイントが狭いのだと思います。3年も使って、そろそろ慣れてきたかと思いきや、3年経ってもまだまだなのです。暴れ馬です、このケーナは。アハユ製のケーナはもう少し安定的に音が出ます。今もケナーチョ(低音用のケーナ)はアハユ製を使っていますが、そんなに吹きにくいことはありません。もっとも、ケナーチョではあまり高音を使わないからそのように感じるだけかも知れませんが。
特に夏場は暑さと湿気のために調子が悪いことが多いのです。思うように音が出ないときは、だんだんイライラしてきます。ま、さすがにケーナを投げつけたりはしませんけど、癇癪を起こしてフルートを投げつけてしまったというモイーズの心理が、ちょっとだけ理解できる気がします。
もっとも、モイーズが投げつけて壊してしまったというフルートはいったいいくらしたんでしょうか。比較的安価な洋銀が材料に使われていたとは言え、特注品だから相当高価な物だったはずです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2011.09.16 00:07:30
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: