inti-solのブログ

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2012.01.24
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カテゴリ: 音楽
少し前に、フォルクローレに使われる弦楽器とその起源について考察しましたが、今度は管楽器について考えてみたいと思いますか。


タルカと呼ばれる笛の合奏、「タルケアーダ」


ピンキージョと呼ばれる笛の合奏、「ピンキジャーダ」


タルカにしろピンキージョにしろ、いかにも素朴で原始的な民族楽器に見えます。が、この笛の構造を見ると、リコーダー(小学校の音楽の授業に使う、あのリコーダー)とまったく同じなのです。つまり、どちらの笛もヨーロッパのリコーダーが起源というわけです。

一方、いわゆる一般的なフォルクローレ(ネオ・フォルクローレ)に使われる笛、つまりケーナやサンポーニャは、その原型が先スペイン時代の遺跡からも発見されており、アンデスに古来からあった楽器であることが分かっています。ただし、土着の楽器としてのケーナやサンポーニャと、ネオフォルクローレに使われるケーナやサンポーニャでは、楽器の材質、音階、奏法などに、ほとんど別物と言っていいくらいの違いがあります。そもそも、名前からして違います。「ケーナ」という名がいつ付けられたのかは知りませんが、土着のケーナ(状)の楽器は、「ケナケナ」または「チョケラーダ」と呼ばれ、ケーナとは呼ばれません。サンポーニャも、これはスペイン語で、先住民の言葉では「シーク」です。

ケナケナ


ケーナ


動画のタイトルを見れば分かるように、どちらの曲も同じグループが演奏していますが、相当に違う吹き方ということが分かると思います。

おそらく、ケナケナとピンキージョを、笛を見ないで音だけで区別することは非常に難しいと思います。

おそらく、笛を吹く方はすでにお気づきと思いますが、タルカにしてもピンキージョにしてもケナケナにしても、先住民の土着系の笛の奏法には、タンギングとビブラートがありません。一方、現代的なケーナの奏法にはタンギングもビブラートもあります。これは、おそらくフルートなど西洋音楽の笛の奏法の影響を受けて、かなり近年になって確立した奏法だと思います。現在では、(日本の)ケーナの教則本だって、ビブラートとタンギングは基礎の基礎として扱っていますけどね。

もうひとつ、現代のケーナの奏法では3オクターブを使いますが、これも土着の奏法にはありません。それどころか、プロのケーナ奏者でも、3オクターブを絶対に使わない人が1970年代頃まではいたのです。

一方のサンポーニャ。これは、パンフルート(ビール瓶で音を出すのと同じ理屈)の一種です。
シーク(土着的) 以前にも紹介した動画です


サンポーニャ(現代的) これもね以前に紹介した動画です


現代的なほうも、土着的な演奏スタイルを意識した曲なので、笛の音そのものにはそんなに大きな差はありませんが、やっぱりビブラートの有り無しは違います。

サンポーニャ(シーク)というのは、この笛の総称です。ソプラノリコーダーやアルトリコーダーがあるように、サンポーニャも音域ごとに名前が分かれます。一番上から「チュリ」、その1オクターブ下が「マルタ」(もっとも普通に使われるサンポーニャで、アルトリコーダーに近い音域)、その1オクターブ下が「サンカ」、さらに1オクターブ下の最低音サンポーニャが「トヨ」です。トヨの全長は1メートルを超えます。(現代的なケーナの動画の中に、トヨが少し出てきます)

ケーナの場合は、高音用の小さなケーナはケニージャ、大きい低音用のケーナはケナーチョと呼びます。ケニージャはあまり使われませんが、ケナーチョはよく使われます。


手前味噌ですが、私自身の演奏です。前半(前奏を除く)はケナーチョ、後半はケーナを使っています。通常のケーナは最低音がソ、私の使っているケナーチョは最低音がレです。もう1音低い最低音ドというケナーチョもあります。

最初に紹介したピンキージョには、もっと低音用の楽器があります。




他にも様々な笛があります。


最初に出てくるのはフルートや篠笛と同じ、いわゆる横笛です。これはエクアドルの笛ですが、ボリビアにもまったく同様の横笛があります。「フラウタ」と呼ばれますが、これはフルートのスペイン語読みで、笛類一般の総称でもあります。だから、この笛だけの独自の名というのはないのかもしれません。

動画の後半に出てくるのは、ロンダドールと呼ばれるパンパイプです。サンポーニャと同じ構造ですが、ずっと細い管を使っており、また見て分かるように音の並びが音階順ではありません。ひとつの音の和音のならびになるように並んでいるのですが、ちょっと酔っ払ったような感じの音です。

で、ここまでは土着の笛およびそこから発展した笛です。現在では、言うまでもなくヨーロッパからクラシック系の楽器が数多く流入しています。特に金管楽器は笛よりずっと音量があるので、お祭りの音楽などでも近年は吹奏楽(スペイン語では「バンダ」)が盛んのようです。


ただ、南米のバンダは、ほとんど金管楽器。木管は、入っていたとしてもサックス、たまにクラリネットがありますが、フルートは動画で見る限りは入っていないようです。もちろん、バンダには使われていないというだけで、ラテンアメリカでフルート(スペイン語ではフラウタ・トラベセラという)がないわけではありません。というか、ベネズエラやアルゼンチンでは結構盛んです。





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最終更新日  2012.01.25 00:05:14
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