inti-solのブログ

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2012.03.04
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カテゴリ: 災害
良質な電力の安定供給が第一 東電解体・電力自由化で失うもの


避けられぬ国有化
東電の経営はギリギリの状況だ。単体ベースの平成23年4~12月期決算は6375億円の最終赤字だ。資産から債務を差し引いた純資産は、12月末時点で1年前から半減し約6500億円となった。
原因は停止した原発の代わりに動かしている火力発電の燃料代だ。今後は巨額の廃炉費用も必要だ。除染費用に至っては、額も負担主体も分からない。当初は公的資金注入に難色を示していた東電も「受け入れやむなし」の方向だ。
当面の経営破綻回避には1兆円規模の資本注入が不可欠だが、ここで問題になるのは政府が確保する議決権比率だ。枝野幸男経済産業相は会社分割などを単独で決められる「3分の2以上」が念頭にある。これに対し、東電の西沢俊夫社長は経営の自主性を維持できる「3分の1超、2分の1未満」を主張する。
確かなことは、国有化された場合、経営者には外部から招聘(しょうへい)する民間出身者が就く公算だという点。保守的な東電という企業や電力供給体制を変えやすくなるかもしれない、ということくらいだ。

国の隠された思惑
東電国有化の目的は、経営を公的に支え賠償支払いを円滑に進めるというものだが、別の思惑も透けて見える。
東日本大震災の発生後、政府は計画停電や大口需要家に節電を義務づける電力使用制限令の発動に追い込まれた。政府はこれを「日本の電力供給システムに内在していた問題点が顕在化した」と位置づけ、電力システム改革に乗り出している。そんな中での東電の財務悪化は、政府にとっては渡りに船ともいえる。
震災前に原子力依存を高めていた日本のエネルギー計画は大きく変わった。原発依存度は下げ、再生可能エネルギーや天然ガスにシフトさせ、電力市場は自由化を進める。他方、スマートグリッドなど省エネ・節電対策を抜本的に強化する。

政府は電力市場自由化で多様な発電事業者を参入させれば、災害時も電力を安定供給できると考えている。その実現のために大手電力会社から送電網を切り離す「発送電分離」を重視する。今のところ、大手電力会社に送電網の保有は認めつつ、運用は中立機関に委ねる方式が有力だ。だが、政府が東電国有化を目指す裏には、東電の経営権を握り送電網の開放などを一気に実現させ、残る電力会社も巻き込む思惑が垣間見える。

慎重な議論が必要
ただ、国有化をテコに電力システム改革を進めることが、電力の安定供給につながるかどうかは議論がある。
まず、需要の3割を担ってきた原発の代替電源確保には時間がかかる。
また、電力事業者同士の競争が過熱すれば、利益確保が優先され安定供給が後回しになる可能性もある。米カリフォルニア州で2000年から01年に起きた電力危機は、発電事業者がコスト削減のために発電設備の増強を怠ったことが原因の1つだった。さらに、発送電分離を実施したほとんどの国で電気料金は値上がりしている。
発送電が一体運営されている日本は、災害時の復旧が早く、停電も少ない。良質な電力が安定供給されてもいる。
税金を投入する以上、政府が東電を一時的に国有化して経営を厳しく監視することは重要だ。しかし、しつこいようだが、電力会社の最大の使命は「良質な電力を安定的に供給する」ことにある。自由化や東電解体が国有化の目的ならば、安易に大規模な電力システム改革に乗り出すべきではない。国民生活を犠牲にする壮大な“実験”が行われてはならない。

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またまた産経新聞ネタになってしまいますが、この記事からは産経新聞が東電の解体や電力自由化、発送電分離に対して否定的にとらえていることが読み取れます。
TPP賛成、郵政民営化賛成、でも電力の自由化には反対、という立場のようです。「国民生活を犠牲にする壮大な“実験”が行われてはならない。」というのは、TPPや郵政民営化についてこそ、言ってほしかったなと思います。

「需要の3割を担ってきた原発の代替電源確保には時間がかかる。」とのことですが、現実には原発事故の後昨夏も今冬も、電力の需給は、厳しい側面はあったにしても、乗り切ることができています。もちろん、何の苦労もなく楽々と乗り切れたわけではありません。かなり綱渡りであったことは事実でしょうし、東電が、火力発電所の増設や運転再開などの努力を払ってきたことも確かです。節電の努力もありました。しかし、とにかく現時点で、「代替電源」はおおむね確保されていることも事実なのです。

そもそも、電力の安定的な供給のためにはどうすべきなのでしょうか。
どう転んでも東電が今までどおりに原発に依存することは不可能なのです。東電のもつ原発は、福島第一・第二・柏崎刈羽の3カ所ですが、福島第一と第二原発の運転再開は不可能です。運転再開できる原発があるとすれば柏崎刈羽だけですから、原発の割合は今までの半分以下になるのです。(もちろん、私は将来的に原発ゼロにすべきと思っているのですが、それはひとまず措いて)

これまで電力会社は、巨大な発電力を有する発電所を特定の地域にまとめて建設するやり方を取ってきました。原発は言うまでもありませんが、火力発電所だって、水力発電所ですらもそうなのです。(有名な黒四ダムは、黒部「第四」発電所ですが、黒部川全体で、関西電力は10カ所の発電所を持っている)

東日本大震災で明らかになったのは、原発の危険性ばかりではありません。巨大な発電所が特定の地域に集中している状況は、大規模災害によって電力の供給力を一挙に失うリスクが高い、ということも、震災から得られた教訓のひとつです。記事に「災害時に復旧が早い」とありますが、それは今まで経験した災害時の話です。関東大震災当時は、まだ社会が電力に依存する割合はたかが知れていました。その後、発電所がいくつも破壊されるような自然災害を、日本は経験したことがなかっただけのことです。

数少ない巨大発電所を1箇所にまとめて建設するより、比較的小規模の発電所を各所に分散して建設するほうが大規模災害の際に安定性を保ちやすいというのは、誰にでも分かる理屈でしょう。





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最終更新日  2012.03.04 21:01:32
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