inti-solのブログ

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2014.07.02
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カテゴリ: 政治
苦節35年、集団的自衛権の時がきた 元駐タイ日本大使・岡崎久彦


この日本にとって死活的な重要性のある、東京湾からペルシャ湾までのオイルルートの防衛は米国第7艦隊の任務だった。

それは楽な勤務ではなかった。甲板上は昼は40~50度となり、当時の船の冷房では、夜もろくに気温は下がらず、ゆっくり眠って体を休めることもできなかった。
当時来訪した横須賀基地の米軍司令官は私に訴えた。「そういう辛い任務をしていると、来る船来る船日本のタンカーだ。私には日本の政治事情は分かるが、水兵たちには分からない。どうして日本の海上自衛隊はパトロールに参加しないのだと不平が収まらない。そういう状況だということだけは分かってほしい」と。
しかし、海上自衛隊はパトロールに参加できなかった。自分の艦は守れても、一緒に行動している米艦は守れない。また、日本の船は守れても、米国やアジア諸国の船は守れない。さらに、日本の船なるものがない。ほとんどがリベリア船籍かパナマ船籍である。それを守れるかと法制局に聞けば、集団的自衛権行使の疑いがあると言われてしまう。当時の解釈ではそれでおしまいだった。
奇妙なことに、今回の集団的自衛権論議の最中に、ここにあるような事例は事実上ほとんど解決されてしまった。反対論は、何も集団的自衛権と言わなくても、個別的自衛権で解決できるではないかという議論が中心となった。
確かに日本にとって死活的な石油ラインを守るための米艦の防護であり、外国籍でも日章旗を掲げた船を守るためであるならば、個別的自衛権でもよいという拡大解釈はあり得る。従来の政府解釈を現実に即して変更するというのなら、現在政府がとっている立場とほとんど同じであり、国民的総意は既にできているといってよい。
いずれにしても、政府解釈の変更はもう決まったのだから日本はパトロールに参加できる。ただ、具体的な武力行使となると場合によっては法律の整備が必要となる。関連法案提出は政府の公約であり、この秋に整備されよう。
ただ、その前でもパトロールには参加できるし、参加すべきである。慎重を期せば、法的に問題のある武力行使は、法整備までは米側に任せておけばよい。参加するだけで抑止力になるし、世界最高を誇る日本の哨戒能力だけでも参加の価値がある。何よりも、米軍とともに汗を流すことが同盟の絆を固める。
これで、35年間失われていた海上自衛隊への信頼が回復し、日米同盟は強固になり、日本国民の安全がそれだけ高まるのである。
私個人の感触では、それにとどまらない。もしあの時、海上自衛隊が常時パトロールに参加していたら、日本人の規律、能力が抜群であることは誰の目にも明らかに映り、また、沿岸のアジア諸国にとって脅威となるような海軍でないことも明らかになっていたであろう。東南アジアは、日本が戦後半世紀以上営々として経済、技術協力の面で貢献してきた金城湯池であるにもかかわらず、日本は政治、軍事面では無能力者だとこの地域で思われてきたが、そのイメージを払拭できる。(以下略)

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岡崎と言えば、安倍のブレーンであり、安保法制懇のメンバーでもある。 以前の記事で指摘した ように、インタビューで 「自衛隊は戦争する軍隊になりますよ」と断言した 人物でもあります。
その岡崎の書いているこの文章を読むと、彼が「いかに米国様に忠誠を示すことが日本の安全保障にとって重要か」という視点しかないことが分かります。

それは楽な勤務ではなかった。甲板上は昼は40~50度となり、当時の船の冷房では、夜もろくに気温は下がらず、ゆっくり眠って体を休めることもできなかった。

というのは、そこを航行している商船も同じだとしか思えません。旧ソ連がベトナムのカムラン湾に基地を置いていたといいますが、そこに派遣されていた艦隊は規模も小さく、米国の海軍力に対抗できるような代物ではなかったし、そもそも米ソが直接戦争を行っていたわけではなく、まして日本自身がソ連とことを構えるべき必然性などあるわけもなかったのですから、そんなところで軍(あるいは自衛隊)が商船を護衛しなければならない必然性などなかったのです。

それに対して、イランイラク戦争は、現に戦争が行われており、タンカーが攻撃される事態があったことは事実です。
でも、当時、米ソフランスを中心に、東西問わず、世界中の主要国が、もっぱらイラクを援助していました。米国は、イランと激しく対立していたし、何度か実際に戦火を交えています。その中で、日本は、米国との同盟関係はあれど、イランとも、友好国、とまでは言わないけれど、そう悪くはない関係を維持していた。かと言って、イラクと敵対してしていたかというと、そうでもなく、イランイラク間でいわば等距離の関係を保っていました。
もし、海上自衛隊が米海軍と共同でペルシャ湾をパトロール、ということになったら、それは実質的には米国の対イラン対決政策の一端を担う、ということになったはずです。少なくとも、イランはそう見なしたでしょう。


それにしても、1980年代、今からわずか30年前です。当時米国は旧ソ連と敵対し、日本も同様でした。ベトナムも、ソ連の同盟国ですから、日本との関係は良くなかった。逆に日中は友好関係にありました。イラクは米国(だけではないが)の援助を受けていた。たった30年で、なんという激変でしょうか。それから10年と経たずに、イラクは米国の不倶戴天の敵になった。日ロ間には今も北方領土問題はあるけど、かつてのような対立はなく、ベトナムとは、友好国同士のような状況です。
逆にその15年前は、日中は敵対関係だったし、そもそも70年前には日米は戦争をしていました。
つまり、国際関係は永久不変ではない、ということです。米関係が大事だ、というのは分かります。しかし、その米国と軍事的に一体の関係を永久に維持し続けることが日本のためである、というのは、ある種の思考停止としか思えません。

戦後日本政府は、米国が行った対外戦争をただの一度たりとも批判せず、常に支持してきました。しかし、それでも実際に米軍と共同で軍事行動を行うようなことだけは、なかった。その最後の一線が取り払われてしまった今、日本は本当に米軍と一緒に軍事行動を起こすかもしれない。自衛隊が戦争をする軍隊になることを求めてやまぬ岡崎にとっては、それは大いなる喜びかもしれないけれど、日本が取るべき道としては、大間違いであるとしか、私には思えません。





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最終更新日  2014.07.03 12:36:41
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