inti-solのブログ

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2015.01.04
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カテゴリ: 政治
少子化問題 国民の機運高める年に 子供育てる喜びの再確認を


≪国民の出産希望は強い≫
年間出生数は低落が続いてきた。このペースで出生数が減り続ければ、社会の混乱は避けられない。
地方の消滅や経済の縮小、社会保障の制度破綻、「若い力」を必要とする自衛隊や警察、消防といった職種にも多大な影響が生じる。農家は後継者不足に悩み、伝統や文化の継承も難しくなる。あらゆる面で国力の衰退を招く。
希望はある。国民の多くが結婚し、子供が欲しいと考えていることだ。どうしたら、国民が望む「2人以上の子供が持てる社会」を実現できるのか。国民総がかりで知恵を絞り、子供を産み、育てやすい環境をつくることが求められている。
安倍政権が人口減少対策に本腰を入れ始めたことは大きな前進だ。昨年末に政府がまとめた「長期ビジョン」では合計特殊出生率について2020年に1.6、2030年に1.8、2040年に人口が一定となる2.07との道筋を示した。政府目標の「1億人程度維持」実現に向けたシナリオを描いた意義は大きい。
これまで少子化対策が効果を上げなかったのは、戦時中の「産めよ殖やせよ」への忌避感からか、政府が結婚・出産に関与することへの反発が強く、政府や地方自治体が及び腰になっていた弊害が大きい。その結果として、批判が出にくい、子育て支援策に比重が置かれてきた面がある。だが問われているのは、子供が生まれてこない現状の打開だ。
日本では結婚による出産が圧倒的多数を占めている。結婚支援策が少子化に歯止めをかける最重要課題である。昨年の婚姻数は戦後最少の64万9千組。結婚を希望しているのに果たせずにいる人を減らすことから始めたい。

≪萎縮せず大胆な政策を≫
少子化の主要因は非婚・晩婚だ。男性の雇用や収入を安定させることが急務だ。企業や自治体には出会いの場や雰囲気づくりを求めたい。縁談を進める「世話焼き」の復活も望まれる。
大都市圏では出生率が低迷している。地方へのUターン、Iターン促進と結婚・出産支援とを連携させるべき。
結婚や出産は個人の選択であり、国民に心理的な圧力を与えてはならない。だが、数値目標のない政策は、実効性が上がらない。政府や自治体は萎縮することなく、大胆な政策を展開してほしい。少子化対策に魔法の杖があるわけではない。庭や子供を持つ喜びを再確認することこそ、真の解決につながる。(一部略)

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ま、何というか例によって例のごとくの、産経新聞の社説です。
少子化による人口減が大きな問題だ、というのは基本的には私も同意見です。が、しかし同時に、どうしようもない問題でもあります。

「若い力」を必要とする自衛隊や警察、消防といった職種にも多大な影響が生じる。

というあたりが、産経新聞がこの問題にこだわる最大の動機なのかな、という気がするのですが、これは実に本末転倒な話です。だって、防衛とか治安維持というのは、人口やそれに伴う国力に応じて必要とされるものです。人口100万人の国を防衛するのに、どうしても200万人の軍が必要だ、などということはあり得ないでしょう。その時々の人口と国力に応じて自衛隊や警察消防の規模を決めるしかないでしょう。
幸いなことに、と言っていいのかどうか分かりませんが、産経が仮想敵として扱っているであろう中国は、日本をも上回る猛烈な勢いで少子化が進行しています。中国がこれまで表向き発表してきた合計特殊出生率は1.6前後でしたが、2012年に中国国家統計局が発表した数字は、何と1.18です。日本ですら、2005年に記録した1.26が底で、最近は1.4以上まで回復してきています。5年後はまだかもしれませんが、10年後には中国も人口減少社会に突入している可能性が高いのです。

これまで少子化対策が効果を上げなかったのは、戦時中の「産めよ殖やせよ」への忌避感からか、政府が結婚・出産に関与することへの反発が強く、政府や地方自治体が及び腰になっていた弊害が大きい。

という記述がありますが、結婚とか出産というのは、まさしく個人の選択の問題ですから、そこに国家が介入するのはおかしなことです。おかしなことであるばかりでなく、無駄なことでもあります。政府や地方自治体が及び腰、というのは、忌避感ということもあるでしょうが、そんなことやったって無駄と考えているからでもあるでしょう。

過去の例を見ても、戦時中はまさしく、国を挙げて「産めよ殖やせよ」に取り組んだわけですが、それで出生数が増えたでしょうか?
1944年から46年の間は、厚労省の出生に関する統計が欠落しており、この間の出生数に関しての正確な統計はありません。ただ、断片的なデータから、1945年と46年の出生数はそれ以前、それ以降と比べて急減していることは間違いありません。当たり前です。若い男はみんな兵隊にとられて、家庭にはいなかったんだから。そして、皮肉なことに政府が「埋めよ増やせよ」なんて言わなくなった敗戦後になって、団塊の世代の大量出生が始まりました。男たちが戦場から帰ってきたからです。
戦時下という特殊な状況でさえ、国が「産めよ増やせよ」と号令をかけても、効き目はなかったのですから、まして平時に国が「産めよ増やせよ」と号令をかけて効果があるわけがない。

希望はある。国民の多くが結婚し、子供が欲しいと考えていることだ。


「結婚したいか」「子どもはほしいか」と言われて、積極的に「結婚したくない」「子供はほしくない」と考える人は、確かに少数派だろうと思います。しかし、問題はそれが人生の中でどれほどの優先順位なのか、ということです。結婚したいかしたくないか、と聞かれれば結婚はしたいけど、そのために具体的な行動を取るかといわれれば「別に」という人が多いのではないか、という気がします。(これは私の推測)
そして・・・・・・

日本では結婚による出産が圧倒的多数を占めている。結婚支援策が少子化に歯止めをかける最重要課題である。

という記述もあるのですが、ああ、やっぱり産経らしい枠の中の思考にとどまっているんだな、というのが実感です。「結婚による出産が圧倒的多数を占め」ていて少子化が進行しているなら、結婚を増やすことも考えるにしても、それだけではなく「結婚していない女性の出産も増やす」ことも考えないと、効果なんか望めないんじゃないでしょうか。積極的に誘導するべきとは思わないけど、「未婚の母」に対する差別を解消するさまざまな方策を講じる、くらいのことは考えてしかるべきと思うのですが、それは産経的イデオロギーの下では、おそらく排撃すべき思考なのでしょう。
ならば、出生率増加なんて無理ですよ。

男性の雇用や収入を安定させることが急務だ。企業や自治体には出会いの場や雰囲気づくりを求めたい。縁談を進める「世話焼き」の復活も望まれる。

雇用や収入を安定させることが急務だ、というのは、まったくそのとおりだと私も思うのですが、なぜ「男性」だけなの?夫の収入のみで家計をまかなっている家庭は、おそらく少数派だと思われるので、女性だって雇用の見通しがなければ子どもをつくるのは躊躇するでしょう。時に、「子どもが出来たら退職して専業主婦になれ」みたいな圧力は、出生増加への妨げの最たるものと私は思いますけどね。
企業や自治体には出会いの場や雰囲気づくりを求めたい、というのは、まあ何というか、間違ってはいないかもしれないけど、ちょっと現実離れしていると言わざるをえないような。「世話焼きの復活」も、何の寝言だよ、と思いますね。

2020年に1.6程度、2030年に1.8程度、2040年に2.07という数値目標も(これは政府が決めたことですが)現実離れしていると思わざるをえません。「数値目標のない政策は、実効性が上がらない。」という記述もありましたが、現実性のない数値目標を掲げても、実効性は上がらないのではないかと思いますけどね。

何にしても、少子化の進行具合を少しでも緩やかにすることは必要だと私も思いますが、少子化を完全に食い止めるなんてことは無理な相談です。少子化を少しでも引き伸ばしつつ、人口減少を前提とした社会の仕組みを作っていくしかないと私は思うんですけどね。





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最終更新日  2015.01.04 22:30:11
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Re:少子化問題をめぐる視野狭窄(01/04)  
おっちゃん さん



>少子化による人口減が大きな問題だ、というのは基本的には私も同意見です。が、しかし同時に、どうしようもない問題でもあります。

問題なのは急激な人口減(少子高齢化)で、その逆でも問題を生じます。どちらが良いかなどという話ではない。
どちらであっても政治はそれにともなう個々の問題に対応することに専念すべきであって、政策で人口を増やそう(あるいは減らそう)なんてのは無駄なことでしょう。その背景になにがあるのか見据える必要がありますね。
私は2~3割程度の人口減は国(国民)が経済的にも文化的にもさらに豊かになるチャンスではないかと思っています。政治が間違わないことが前提ですけれど。
子どもが少なくていい結婚しなくていいというのは国民ひとりひとりの人間的選択であって、この問題の構図は「人間」と「政治(国家)」の闘いの姿であると見ていいと思います。 (2015.01.05 12:00:11)

Re[1]:少子化問題をめぐる視野狭窄(01/04)  
inti-sol  さん
おっちゃん

>あけましておめでとうございます。今年もよろしく。

こちらこそ、今年もよろしくお願いします。

>問題なのは急激な人口減(少子高齢化)で、その逆でも問題を生じます。どちらが良いかなどという話ではない。

そのとおりです。本文が長くなってしまったので、省略したのですが、この問題をめぐって考えるのは、人間が自らの社会をコントロールすることの難しさです。
団塊の世代の出生ブームのあと、それがずっと継続するように仕向ければよかったのか、というと、そうなっていたら、現状とは別種の、より深刻な問題が発生していたことは確実です。中国も同様でしょう。もし一人っ子政策がなかったら、とんでもないことになっていたはずです。

>政策で人口を増やそう(あるいは減らそう)なんてのは無駄なことでしょう。

そうですね。多少の効果はなくはないとしても、それほどの効果は期待できません。

>私は2~3割程度の人口減は国(国民)が経済的にも文化的にもさらに豊かになるチャンスではないかと思っています。

私もそう思うのですが、前述のように、人間社会のコントロールというのは至難の業なので、2~3割程度の人口減でとどまるとは限らないところです。

>子どもが少なくていい結婚しなくていいというのは国民ひとりひとりの人間的選択であって、この問題の構図は「人間」と「政治(国家)」の闘いの姿であると見ていいと思います。

そのとおりだと思います。人間的選択に国家が口出ししても、効き目があるわけがないです。 (2015.01.05 19:04:43)

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