inti-solのブログ

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2015.09.09
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テーマ: 戦争反対(1197)
カテゴリ: 戦争と平和
「大学がタダと言われ…」低所得者層を狙う「米軍リクルート活動」
元陸軍兵ジョナサン・ロー(26)にとっては、ニューヨーク州北部の小さな街にある高校内に設置されていた陸軍と海兵隊のリクルートテーブルが、入隊への入り口となった。なかでも陸軍のリクルーターは、こう言った。
「大学にタダで行けますよ。入隊し、教育を受けて、さらに国に貢献することができます」
「すごいな!」とローは思った。~
2005年、陸軍の歩兵スナイパーとして入隊。08年から1年8カ月、イラクに駐屯した。到着してわずか2週間で、親しい仲間を失った。午前2時の暗闇での撃ち合いだった。その場面を思い出したのか、それまで笑みを絶やさなかったローが、突然涙目になり、「きつかった。今はコントロールすることができる」と自分をなだめるように言った。~
米軍リクルーターが、中間・貧困層の若者に向けて「売り」にしている4点セットがある。
「大学、お金、旅、愛国心が手に入る、と言われた」元陸軍兵マーティン・スクロギンス(28)はそう説明する。
大学卒業までの奨学金や生活費・ボーナスが保証される。国内外の基地に駐屯し、自費では行けない見知らぬ土地に行ける。そして一兵士として愛国心を高め、米国民を守るという使命を果たして家族や人々に尊敬される──。まさに中間・貧困層の若者にとっては「サクセスストーリー」だ。
学費が年間数万ドルかかる大学に行けるという見返りこそ、スクロギンスとローの2人が入隊した最大の理由だ。だが、戦場から戻ってきた今、ローはこう話す。
「除隊したら、『軍務、ごくろうさま』という紙を一枚もらっただけ。非軍人の生活に戻るのがいかに大変なことか、誰も教えてくれなかった」
いわんや、リクルートされた際に、従軍後の余生の困難を知る術はない。PTSDによる不安、寂しさ、無気力、睡眠時無呼吸症候群。~悪夢で叫びながら目覚める夜は今でも続く。
「非軍人の生活に移行するのは、すごくすごく大変なんだ。今は、もう以前の自分ではない」
※AERA 2015年9月14日号より抜粋

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米国は、ベトナム戦争終結とともに徴兵制から志願兵制に変わりましたが、その実は、徴兵制でなくても貧困層からいくらでも志願兵を集められる、と踏んでいたから、ということなのでしょう。
数年前に、硫黄島での戦闘を描いた「父親たちの星条旗」という映画がありました。硫黄島での戦いを日本側の視点から描いた「硫黄島からの手紙」とともに話題になりました。太平洋戦争における有数の激戦地であった硫黄島の、すり鉢山山頂を米軍が確保した際、山頂に星条旗を立てるシーンが撮影されて、そこに写っていた6人の兵士たちは一躍英雄に祭り上げられたのですが、6人のうち3人は、硫黄島でのその後の戦闘で戦死、生き残ったのは3人も、あまり幸せな戦後ではなかったようです。
特に、先住民出身のアイラ・ヘイズは、過酷な戦場の記憶から精神を病み、酒びたりとなって、硫黄島の戦いからわずか10年後、32歳の若さで、野垂れ死に同然で人生を終えました。あとの2人も、さほど恵まれた戦後ではなかったようです。レイニー・ギャグノンも54歳で死去し、70歳まで生きたジョン・ブラッドリーも、このときの経験を口にすることは一切なかったといいます。積極的に語りたいと思うような経験ではなかった、ということでしょう。
映画の中で、英雄ともてはやされている間は、いろいろな人が「退役したらわが社で働いてほしい」みたいなことを言ってきたが、いざ連絡を取ると、全然雇ってくれなかった、というような話をしているシーンがありました。英雄ともてはやされるのは一時、人々は、そんなことはすぐに忘れ去ってしまいますが、人生はその後も長く続きます。まして、英雄にもならなかったその他大勢の兵士は、言わずもがな、でしょう。

で、これは米国での話ですが、日本は果たしてどうでしょうか。

現役幹部自衛官が激白、貧困家庭を襲う「経済的徴兵」の闇
防衛省と財界が手を組み、若者を戦地に送り込む─。そんなおぞましい計画が国会で明らかになった。
政府の答弁によれば、13年7月、民間企業の新入社員を自衛隊に2年間入れるという計画案を経済同友会に赴いて説明。
この資料には明記されていないが、自衛隊入隊と引き換えに、奨学金(学生ローン)の返済を免除するという“アメ”が用意されている可能性が高い。というのも、奨学金に関する有識者会議で「(延滞者に防衛省で)1年とか2年のインターンシップをやってもらえば」と発言しているからだ。
延滞金の大幅減免を求める意見については、「それは難しい」と一蹴した。借金を膨らませて若者を貧困に追いやり、戦場に追い立てようとする腹がすけて見える。

もともと経済的困窮を理由に自衛隊を目指す例は少なくない。九州地方のAさん(20)も、その1人だ。
防衛大には「9条があるからという前提で、みんな入ってきていた」と振り返る元防大生のAさん
学費がタダのうえに月10万円あまりの給料が出るのは魅力だった。
「戦争に行くかもしれないなんて思ってもいませんでした。やりたかったのは救助活動です。勧誘に来た担当の自衛官も、“憲法9条があるから戦争に行くことはないよ”と何度も言っていました」
入校すると、金持ちの子息はほとんどいなかった。Aさんよりはるかに貧しく、親に仕送りをしている学生もいた。
「戦争になるなんて考えの学生は、まずいなかったです。純粋に大学に行きたくて来たという人ばかり」
しかしAさんは、先輩たちから陰惨ないじめを受け、精神的苦痛から退校を余儀なくされる。
現職幹部の1等空尉・Bさん(50代)は言う。
「僕の周りの隊員はみんな辞めたがっています。そして独身者や若い者から次々に辞めています。戦争やるために入った者などいません」
しかし、一方で辞められない人たちがいる。
「30歳から40代前半の世代で“曹”という階級の隊員。いわば中間管理職のクラスです。家庭がある。住宅ローンもある。自衛隊を辞めても働くところなどありません」
経済的理由から辞められない彼らは、“経済的徴兵”されているも同然だというのだ。
隊員の間では「もし死んでも住宅ローンは保険で完済される」と、戦死を想定した声も出ているという。もっとも本当に完済されるのかは疑問だ。防衛省共済組合のやっている住宅ローンには、日本生命の団体信用生命保険がついている。しかし保険約款に免責条項がある。4項の「戦乱その他の変乱」がそれだ。(以下略)

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日本の自衛隊においても、リクルートの実情は米軍と似たり寄ったりだったわけです。違うのは、日本には憲法第9条があり、自衛隊が実戦に参加したことも、戦死者を出したこともない、という点です。その安心感があるからこそ自衛隊に入った、という人も少なくないようです。しかし、安保法案が通ってしまえば、今後はその点も米国と同様になってしまうでしょう。
政府は「戦争法案ではない」などと言っていますが、他ならぬ自衛隊の内部で、この法案が通れば戦死者が出ることを敏感に嗅ぎ取っている人が多いようです。記事で指摘されている住宅ローンの問題くらいは、実際にそういう問題が発生すれば、「鶴の一声」で何とかするのかもしれません。しかし、自衛隊が海外での戦争に派遣されて戦死者続出という事態になったとき、戦死者の遺族も、生還した自衛官も、その後の人生が幸せなものになるとは、とても思えません。





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最終更新日  2015.09.09 23:52:32
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