inti-solのブログ

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2016.09.04
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カテゴリ: 音楽
先日、弦楽器の糸巻きについての記事を書いた際、Bill McCrearyさんから、「フォルクローレには、ベースは無用なんでしょうか?」という質問をいただきました。


今日一般に「フォルクローレ」と呼ばれている音楽は、イメージとしては「アンデスの伝承音楽」と思われがちですが、実際のところは、伝承音楽のエッセンスを使って、比較的近年に完成された音楽です。民族音楽ではなく民族音楽風、と言ったほうが正確かもしれません。

コンフント・スタイルと呼ばれる4~7人編成のフォルクローレに使われる楽器は、通常は笛(ケーナとサンポーニャ)、クラシックギター、チャランゴ、ボンボ(太鼓)で、あとはマンドリンやロンロコ(大型のチャランゴ)が加わる場合もありますが、そもそもこういうスタイルの編成が確立されたのはそれほど古い時代の話ではなく、1960年代頃のことです。だから、元々それほど長い伝統のある音楽ではありません。

ロックなどの音楽でエレキベースとエレキギターが担う役割は、上記のような編成のフォルクローレの場合、チャランゴとクラシックギターが担うことになります。だから、フォルクローレのギターでは、低音を強調するストローク、またベースラインを弾く奏法が多用されます。私は、ギターはさして上手くもないのですが、低音をでかい音量で弾くことだけは得意だったりします。
ただ、どうがんばってもクラシックギターはクラシックギターですから、音量や音の太さではベースにはかないません。そのため、近年はボリビアを中心に、多くのフォルクローレグループが、エレキベースを取り入れています。

どのグループが初めてフォルクローレにエレキベースを使い始めたのかは知りません。ただ、私の知る範囲では、チリのビクトル・ハラが1971年に発表したEl derecho de vivir en paz(邦題「平和に生きる権利」)で、ロックグループとの競演でエレキベース(やエレキギター)を取り入れています。

平和に生きる権利


そのビクトル・ハラと活動をともにしていた、チリのキラパジュンというグループも、1975年に発表したマレンベという曲で、ベースを使っています。もっとも、どちらの例も、いわゆるアンデスのフォルクローレではありませんが。




上記のyouTubeの映像は1986年のものですが、このときには、すでに他の(カリブではない曲調の音楽でも)エレキベースをかなり取り入れています。
それに比べると、ボリビアのグループは、エレキベースを取り込むのはかなり遅かったようです。が、90年代末か21世紀はじめ以降は、エレキベース入りの演奏が一般化しています。

おそらく、ボリビアでもっとも初期からベースや電子楽器を取り入れたのは、このグループだと思います。
カラマルカ

いつ頃から活動しているのかは知らないのですが、少なくとも1990年代以前から演奏しており、その初期からエレキベースやシンセサイザーを多用していました。

現在では、古くから活躍しているグループも、少なからずエレキベースを取り入れるようになっています。たとえば、ボリビア史上最大の人気グループ、カルカスの場合
おそらく1989年の来日公演の際の演奏

エレキベースは入っていません。

同じ曲の最近の演奏(動画の前半)

エレキベースとドラムセットが入っています

アワテイーニャス


ベースは入っていません。

同じ曲の2015年の演奏


ロス・マシス(1970年代から活躍する老舗グループ)

2013年の演奏のようです。やはりベースとドラムセットが入っています。ベースはエレキデハナクセミアコースティックのようですが。

でも、すべてのグループがエレキベースを入れるようになったかというと、必ずしもそうではありません。やっぱり電子楽器なしで演奏を続けるグループも、今でも少なからずあるし、また同じグループでもそのときの状況や曲次第でベースを入れたり入れなかったり、ということもあるようです。






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最終更新日  2016.09.05 22:25:31
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