inti-solのブログ

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2017.03.16
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山岳救助ヘリ 有料化へ 埼玉県議会に条例改正案


改正案では、手数料の対象は林業従事者らを除く登山者など。徴収額は知事が告示で定める。
県境近くの遭難で他県の防災ヘリに救助された場合には手数料がかからないが、ある埼玉県幹部は「公平性の問題もあるため、調整する必要がある」と話す。
全国の防災ヘリの山岳救助出動件数は15年が1345件で、11年の921件に比べ約1.5倍に増加。埼玉県では15年度に11件出動し、うち5件で救助が行われた。埼玉県警もヘリを持っているが、県警は主にパトロールや捜索活動に当たっており、救助は県の防災ヘリが担っている。
日本山岳協会の西内博遭難対策委員長は、防災ヘリを呼ぶケースの大半は、予期せぬ出来事に遭遇した場合だと指摘。「有料化よりも、登山道の整備や自然リスクの教育に力を入れてもらいたい」と話している。

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時々拝見させていただく 豊後ピートさんのブログ で、この件を知りました。元々、2010年に有料化案が出たものの、航空法との関係で一旦頓挫していたものが復活したようです。
航空法では、航空運送事業を「他人の需要に応じ、航空機を使用して有償で旅客又は貨物を運送する事業」と定めているため、防災ヘリで救助した遭難者から手数料を徴収すると有償での運送に該当する可能性があり、その場合は事業許可が必要かもしれない、というのが頓挫の理由でしたが、優勝での運送には当たらない、という何らかの判断が出た、ということなのでしょう。

登山で遭難者が出るたびに、2ちゃんねる的な世論から遭難者たたきや、救助ヘリコプターを有料化しろ、という話が出てくるわけですが、それがとうとう条例になろうというわけです。

まず、整理しておきたいのは、今回は警察や消防のヘリが飛んだ場合の有料化案です。言うまでもありませんが、民間のヘリが飛んだ場合は、最初から有料です。ただし、かつては東邦航空という山岳輸送ヘリの大手が、盛んに救助ヘリを飛ばしていましたが、事故を起こして現在は撤退しており、現在では山岳遭難の救助は、事実上警察と消防のヘリしか行っていません。もっとも、山岳遭難で出動するのはヘリだけとは限りません。地上からの救助隊は、もちろん警察の山岳警備隊は費用はかかりませんが、遭対協などの救助隊には費用がかかります。

わたし個人としては、遭難救助保険に加入しているので、万が一の場合にも費用の心配はあまり必要ありませんし、無謀登山はしないように心がけています。しかし、そういった個人的な事情を除いて考えると、救助ヘリの有料化案にはちょっと賛成できません。

以前、救急車の有料化という話が持ち上がったことがあり、それについて意見を書いたことがあります。

救急車の有料化?

救急車の有料化も救急ヘリの有料化も、発想の根本は共通だろうと思います。そして、問題点も同じです。救急車の有料化案の場合は、「軽症患者の場合は」という条件でしたが、埼玉県の救助ヘリの場合は「林業従事者らを除く登山者など」という条件だそうです。受益者負担という観点で考えるなら、林業関係者を除外する意味が分かりません。また、必ずしも登山の領域でなくても、自動車の入れないような場所で急病者が出た場合は、ヘリが出動せざるを得ないことがあります。それこそ、観光地の散策路、遊歩道や、山間部の住民の日常生活圏内でも、救急患者が自力ではまったく動けない状態なら、そういうことは起こりえます。「登山」と「非登山」の境界はそれほど明確ではありません。それをどこで線引きするのか、あるいは線引きせずすべて料金徴収の対象といるのか、どちらにしても問題は生じるでしょう。

また、料金を課した場合もそれを支払わない人が、救急車有料化の場合よりはその割合は低いでしょうが、それでもある程度は発生すると思われます。

そうやって料金を徴収しても、その額は、年間の出動回数が11回、うち実際の救助が5回で1回5万円ということは、年間25万円に過ぎません。有料化は収益を出す目的ではないにしても、そのために要する事務的な手間とのバランスが取れているようには思えません。
自民党県議団は、有料化によって登山者の注意が喚起され、無謀な登山が減少すると考えているそうですが、これも実際には極めて怪しいでしょう。無謀登山をする人は、自分が無謀とは思っていないものですから。むしろ、無謀ではない登山者に対して萎縮効果を生む可能性があります。(救助ヘリ有料化案は、山岳遭難すべてを対象とするもので、「無謀な」登山に限定した有料化ではありませんし。もちろん、無謀とそうでないものを区別する基準などありませんから、有料化となったら、そうならざるをえないでしょう)
結果として、登山者一般に対しては萎縮効果を生み、しかし無謀登山に対する抑止力にはならない、という無意味なものにしかならないだろう、という気がします。

これら多くの問題があるため、私の記憶では、最初に救助ヘリ有料化の話が出た際は、埼玉県の行政当局はこの案にまったく消極的で、自民党の一部議員の独走によって条例案が進んでいたように思います。(あいまいな記憶ですが)
今回はどうなのでしょうか。議員提案による条例案のようなので、やはり行政当局は、少なくとも積極推進という立場ではなさそうですが。

いずれにしても、例えば生活保護受給者叩き、安易な救急車利用者叩きなどと同様に、一部の問題のあるケースを極大化して全体を攻撃する、昨今のネット世論的な風潮乗った動きが、登山の分野にも波及してきた、ということなのでしょう。





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最終更新日  2017.03.16 19:00:04
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