inti-solのブログ

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2018.05.09
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テーマ: ニュース(100236)
(憲法を考える)「逆差別」「違憲」女性専用車批判なぜ


代表(65)は、年齢の壁で再就職に苦しんだ経験から、年齢差別の解消を訴える活動を続けてきた。10年ほど前、「自分は絶対に痴漢をしないのに」と専用車に憤ったという。公職や企業役員の女性を増やすため、一定割合は女性を登用する「クオータ制」にも反対する。「マイノリティーが強くなりすぎ、マジョリティーが差別されている」
もう一人の男性(43)は障害があり、子どものころはいじめに遭った。「女子は守らないといけないと洗脳されてきた。でも、男性として優遇されたことはなく、冷遇ばかりだ」

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女性専用車については、いわゆるリベラル派のごく一部からも批判があります。痴漢対策として女性専用車というのは、それ以外の車両では痴漢をしてよい、ということか、差別の本質的な部分を温存したままでの小手先の対策に過ぎないではないか、というわけです。
一理ある、とは思います。が、現実問題として、小手先であっても対策は行う意味があるでしょう。本質的な部分なんて、いつ解決するかも分からないのだから。
女性専用車なんてものが必要ない社会の方が好ましいに決まっていますが、そうなるまでの間は、少なくとも「次善の策」としてやむを得ないでしょう。
そもそも、鉄道会社に社会を変えろと要求するのは酷な話で、鉄道会社ができる範囲といえば、こういうことに限られるのはやむをえないことです。

ただし、引用記事の話は、リベラル派(の一部)からの批判ではなさそうです。記事は無料で読めるのが前半部分だけですが、「男性差別」とか、「マイノリティーが強くなりすぎ、マジョリティーが差別されている」とか、「女子は守らないといけないと洗脳されてきた。でも、男性として優遇されたことはなく、冷遇ばかりだ」という言い分は、どう見てもリベラル派とは正反対のものです。

まあ、彼らの思想的背景がどのようなものであれ、このような言い分にはまったく賛同できません。
この代表氏は65歳で、「年齢差別の解消を訴える活動を続けてきた」そうです。おそらく、10年以上の年金加入歴があれば年金を受給しているはずです。
それを、「65歳以上だけが年金を受給できるなんて、高齢者優遇の逆差別だ」と言われたら、どうでしょうか。

ごく軽い障害では、これらの精度の対象にはなりませんが、手帳を取得していれば、公共交通機関を半額で利用できる、タクシー代が1割引になる、という特典はあります。これらを「障害者に対する優遇だ、健常者差別だ」と言われたら、どうでしょうか。

あるいは、高齢者とは逆に、子どもに対する優遇措置もあります。公共交通の運賃は、子どもは半額です。それ以外にも、児童手当/子ども手当、乳幼児医療、子ども医療など、子ども、あるいは子どものいる世帯に対する助成は様々あります。それを子どもに対する優遇は逆差別だ、と言いだしたらどうなるでしょうか。
低所得者に対する優遇措置もそうです。累進課税制度というのは、低所得者に対する優遇の際たるものですし、それ以外にも、一定程度以下の収入しかない低所得者に対する様々な優遇措置(生活保護など)や支援、あるいは逆に高所得者に対する手当の支給制限があります。
それを、高所得者に対する差別だ、低所得者に対する逆差別だ、などと言われたら、どうでしょうか。

43歳の男性氏は「男性として優遇されたことはない」そうです。でも、それは男性という優位を障害という不利が帳消しにしてしまっている、ということではないでしょうか。
世の中全体の傾向として、病気も障害もない健常の男性が、そうでない男性や女性と比べて、所得が高いことは歴然たる事実です。もちろん、個別には高給取りの女性も低所得の健常男性もいるけれど、平均値としてはそうなります。優遇かどうかは分かりませんが、夫婦間ではどうしても経済面で夫が能動的、妻が受動的になる傾向が強く、そのことが有利不利につながっていることは否めません。
女性専用車に関して、更に重要なのは男女間に体力差が存在することです。痴漢に限らず、何らかの暴力行為に対して、女性が肉体的に健常な男性を力でねじ伏せるのはほぼ不可能です。

このような格差の存在に対して、少数派への何らかの優遇措置あるいは保護する手段を設けることは、「逆差別」でも憲法違反でもありません。事実、これらの制度を違憲と断じた裁判所の判決も存在しません。累進課税制度はだいぶ弱められ、最高税率は下がりましたが、それでも所得による税率の差は今もあります。そもそも、女性専用車について反対派が鉄道会社を訴えた裁判で、彼らは敗訴しています。

結局、対等ではない、地力に差があるもの同士をそのままの土俵で争わせて、強いものが勝つ、という状態をよしとするのか、地力の差を補正することで結果の平等をある程度担保するのか、どちらをよしとするのか、という問題です。前者を取れば、強いものは「公平に」強さを発揮して快適かもしれませんが、格差は巨大なものになり、強くない者にとっては、住みやすい社会ではなくなります。強い者だって、いつ病気や怪我やその他の理由で弱い者に転落するかは分かりません。
後者は、強いものに少し我慢を強いることになりますが、そうではない者にとっては、格差はより小さく、より暮らしやすい社会になります。社会全体としては、こちらのほうが大きな不利益をこうむる人が少なく、より暮らしやすい状態だと私は思います。

女性専用車は、一部の男性にとってはあまり面白いものではないかもしれません。しかし、女性専用車のために命を落としたり仕事を失う男がいるわけでなし、男性に与える不利益などたかが知れています。しかし、痴漢被害にあった女性が受ける打撃は、「面白くない」などというレベルでは済みません。であれば、男性の一部の「面白くない」という気持ちよりも、女性が痴漢被害にあわないための策を優先するのは、やむをえないことでしょう。





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最終更新日  2018.05.09 19:00:07
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