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2016年も創作面で充実した年となりました。読者の皆様、良いお年をお迎えくださいませ。2016.12.30 千菊丸
2016年12月30日
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「高杉、お前こんな所で何をしている?」「そういうお前ぇこそ、俺を殴った癖にどうしてこんな所で寛いでいるんだ?」 ホテルから出て散歩をしていた晋作は、祇園へ向かう途中で三条大橋近くの大手コーヒーチェーン店で、コーヒーを飲んでいる桂の姿を見かけ、彼に声を掛けた。「それは何だ、美味いのか?」「まぁな。お前も飲んでみるか?」「いい。それよりも桂、俺の命はもう永くないかもしれん。」晋作の言葉を聞いた桂は、飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになった。「そんなに驚くことはねえだろう。」「高杉、お前何処か悪いのか?」「ああ。俺は肺を病んでいる・・恐らく、新選組の沖田と同じ病に罹っていると思う。」晋作はそう言うと、桂の前に置いてある椅子の上に腰を下ろした。「だが彼は、この時代の医療でその病を治したと聞いているぞ?だったらお前も・・」「それは無理だ。たとえこの時代の医療を受けて病が治ったとしても、俺の寿命は変わらねぇんだよ。人の生き死には、神の領域。俺がどう足掻いたところで、俺が病で死ぬ運命は変わらねぇのさ。」「高杉・・」「おいおい、いつも俺に憎まれ口ばかり叩く奴が、そんな顔をすんなよ。調子が狂う。」晋作は今にも泣きだしそうな顔をしている桂の方を見ると、彼に懐紙を差し出した。「俺は大晦日に幕末へ戻ったら、長州へ帰るつもりだ。京へは二度と戻らないつもりだ。」「そうか。」「俺の身体の事は心配するな。俺は誰よりもしぶといんだ。」じゃぁな、と晋作は桂にそう言って彼に向かって手を振りながらコーヒーショップを後にした。 桂は晋作が去った後、すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。「苦いな・・」 祇園の花見小路に入った晋作は、目の前に広がっている風景が幕末の頃と全く変わっていない事に安堵した。 目を閉じて耳をすませば、自分が贔屓(ひいき)にしていた芸舞妓達が笑いさざめく声が聞こえてきそうだ。晋作はフッと口元を歪めて笑うと、そのまま花見小路を出て八坂神社へと向かった。 観光客で賑わう祇園界隈だが、何故か晋作が八坂神社に向かった時は誰もおらず、境内は不気味なほどに静まり返っていた。(何だか気味が悪いな・・)晋作がそう思いながら奥へと進んでいくと、一陣の風が彼の頬を撫ぜた。彼がゆっくりと社の方を見ると、そこは蒼い光に包まれていた。(どうやら、俺はあいつらよりも早く向こうへ戻れるみたいだな。)そう思いながら晋作は、自分が社と同じ蒼い光に包まれている事に気づいた。(千、これでお別れだ。きっと俺は、お前に会う事はもうねぇだろう。)脳裏に千の笑顔を浮かべながら、晋作は蒼い光の中へと―“時空の扉”の向こう側へと旅立った。「千君、どうしました?」「いえ・・高杉さんのスマホが全く繋がらないんです。何かあったのかな・・」 千は何度も晋作のスマホの番号に掛けたが、繋がらなかった。(もしかして、高杉さんはもう・・)「千君?」「沖田さん、僕八坂神社の方へ行ってみます。もしかしたらそこに高杉さんが居るのかもしれません。」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月30日
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桂に拳で殴られた晋作は血が滲む唇を紙ナプキンで乱暴に拭うと、桂を睨みつけた。「俺を殴って満足したか?」桂は晋作の質問には答えずに、彼に背を向けてレストランから出て行った。「一体何があったんですか?」「ああ、ちょっとした痴話喧嘩さ、気にすることはねぇ。」晋作はそう言って千に微笑むと、皿に載った料理を食べ始めた。「美味いな。千、お前も食ってみろ。」「は、はい・・」晋作から勧められ、千は味噌ラーメンを一口食べた。「どうだ、美味いだろう?」「はい。あの高杉さん、これから僕達をどうするつもりなのですか?」「さっき言っただろう、俺は大晦日にデカい花火を打ち上げる気だって。」「はい、それは聞きました。ですがその言葉の意味がわかりません。」「俺は桂を揶揄(からか)う為に英国公使館の焼き討ちと同じような事をするつもりだと言ったが、そんな過激な事をするつもりはさらさらねぇよ。まぁ、それとは別にやりたいことがある。」「やりたいこと、ですか?」「ああ。俺は今までこの時代の様々な技術を身につけてきた。全ては、幕末(むこう)に戻る時に役に立つと思ってな。だが最近、俺はこの時代に居た方が良いんじゃないかと思うようになってきた。まぁ、この時代だと労咳で死ぬことはねぇ。」晋作はそう言って味噌ラーメンのスープを啜ると、総司の方を見た。「あんたは、俺と同じ病に罹っていたが、この時代の医療技術によって命を救われた、違うか?」「はい、そうですけれど、それと貴方とどういう関係があるのですか?」「俺はまだまだ生きたいんだ。生きて、この時代の事をもっと知りたい。だが、俺はこの時代の人間じゃねぇ。だから、本来元居た場所に戻る事に決めたのさ。」晋作は窓の外に広がる京の街並みを見つめると、そう言って溜息を吐いた。「千、お前は俺達と一緒にあっちへ・・幕末へ戻りてぇか?」「はい、戻ることが出来るのなら、戻りたいです。だってあっちには、僕の居場所があるから。」「そうか。でもな、お前が今自分で決めた事をいつか必ず後悔する時が来るかもしれねぇ。それでも、戻りたいか?」 晋作の言葉を聞いた千は、一瞬脳裏に愛する家族の笑顔が浮かんだ。今彼らと幕末に戻れば、家族とは二度と会えないかもしれない。だが、それでも千は総司達と幕末で新選組の一員として生きていきたいと思った。「はい。僕は土方さん達と、新選組と共に生きます。」「そうか・・その言葉、覚えておくぜ。」 昼食を終えた千達は、レストランの前で晋作と別れた。「次会った時は敵同士だな、千。その時は俺を躊躇いなく斬れ。」「はい。あの高杉さん、どちらへ行かれるのですか?」「ちょっと出かけて来る。」 晋作は千に笑顔で手を振ると、彼に背を向けて歩き始めた。四条河原町の繁華街の中を歩きながら、晋作は突然胸が苦しくなり、激しく咳込んだ。 口元を覆った右の掌は、真紅の血で濡れていた。「人の生き死には、神の領域・・運命は、変えられねぇのか。」そう呟いた晋作は自嘲めいた笑みを浮かべながら、再び雑踏の中を歩き始めた。彼の脳裏に、レストランで会った沖田総司の顔が浮かんだ。彼も自分と同じように、死から逃れられない運命にあるのだろうか。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月29日
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※BGMと共にお楽しみください。桂の姿が見えた途端、歳三は座っていた椅子から立ち上がって彼を睨みつけた。「高杉、これは一体どういうことだ?」「落ち着けよ、桂。今日お前を呼んだのは、これから大事な話をするためだとさっき言っただろう?」晋作はそう言うと桂の肩を軽く叩き、彼に座るように目配せした。「それで、大事な話とは何だ?」「次に“時空の扉”が開くのは二週間後の大晦日だと言う事は、確かだな?」「ああ。それがどうかしたのか?」「実はその日に、俺は大きな花火を打ち上げようと思うんだ。」「大きな花火だと?お前、まさか江戸で英国公使館を焼き討ちしたような事と同じ事をしようとしているのか?」「ご名答。」晋作はグラスに注がれた水を一気に飲み干すと、そう言って桂に向かって笑った。「てめぇ、誰かと思ったら大樹公が御上洛した際に野次を飛ばした奴だな?何処かで会ったことがあると思ったぜ。」歳三はそう言うと、晋作を睨んだ。「野次を飛ばすも何も、俺は当たり前のことを言っただけさ。」「この野郎・・」歳三が拳を固めて晋作を殴りつけようとした時、総司が彼の手を掴んで制した。「土方さん、暴力はいけません。」「だが総司、こいつは国賊だぞ!」「おいおい、国賊とは聞き捨てならねぇな。俺達はこの国の為に俺達のやり方で幕府の腰抜け外交に対して抗議しているだけの事だ。」「抗議、ねぇ・・京で要人を闇討ちしてその首を三条河原に晒したり、横浜で異人を斬り殺したりするのがお前達のやり方か?そんな事だから、禁門の変でお前達の仲間は天王山で無様な死に方をしたんだったな。」 歳三の挑発に晋作は乗らなかったが、彼は気分を害したようで晋作の眉間には深い皺が寄っていた。「まぁ、その話はおいといて、まずは飯にするか。ここの飯屋は自分で飯を取りに行く形式なんだとさ。」晋作はさっと椅子から立ち上がると、料理が並んでいるテーブルの方へと向かった。「千君、貴方はあの人と一体どういう関係なんですか?」「話せば長くなりますが、高杉さんは根っからの悪人ではないと思います。ちょっと傲慢で無鉄砲なところがありますけど。」「あいつは昔からそうだ。松下村塾に居た頃、あいつにどれだけ迷惑を掛けられたか・・」桂はそう言って溜息を吐くと、グラスの中の水を一口飲んだ。「俺ぁ、あいつみたいな奴は大嫌いだ。桂、お前ぇもな。」「そうかい、それは残念だね。」「総司、千、俺達も飯を取りに行くか。」歳三達が晋作と入れ違いに料理を取りに行くと、そこには色とりどりの料理が並んでいた。「何だかどれを食べたらいいのか、迷っちゃいますね。」「ああ。総司、腹の子の為にしっかり食べろよ?」「はい。」「腹の子って・・沖田さん、まさか妊娠していらっしゃるんですか?」「はい。一度目はあんな事があってもう妊娠はできないと思ったんですけれど、神様がわたしの為に贈り物を授けてくださったのですね、きっと。」「沖田さん、お腹を触ってもいいですか?」「いいですよ。」千がそっと総司の下腹に触れると、そこには小さな命が宿っている温かさを感じた。「元気な赤ちゃんを産んでくださいね。」「有難う、千君。さてと、そろそろ戻りましょうか?」「ええ。」 総司達が料理を載せた皿を持って自分達の席へと戻ろうとした時、突然グラスが割れる甲高い音が店内に響いた。「ふざけるな!」桂は怒りで頬を赤く染めながら旧友に向かってそう怒鳴ると、彼の顔を拳で殴った。「落ち着けよ、桂。話はまだ終わってねぇぞ。」「お前とこれ以上話す事などない!」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月28日
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今日は朝から寒かったです。最近目の使い過ぎで時折両まぶたがぴくぴくとけいれんします。図書館から借りた本5冊と、書店で購入した本21冊、合わせて26冊の積読本が自室の本棚に並んでいます。年末年始は読書をしたり、小説を書いたりしながら楽しもうと思います。
2016年12月28日
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花嫁と学園物かと思いきや、鬼とその花嫁達が通う学校という特殊な設定。最初からどうなるのかと思いながら読み進めていましたが、ヒロイン・神無が嫉妬ゆえに他の女鬼達に陰湿な嫌がらせを受けたりして大変な目に遭っていますし、華鬼も自分の花嫁には無関心で冷たい。それに、神無を目の敵にする四季子が怖いなあ。ナイフを手にする彼女の挿し絵があるんですが、カズキヨネ先生の美しい絵が彼女の内なる狂気を感じました。堀川響と華鬼との間に何か因縁がありそうだし…導入部なので、これから物語がどう展開するのかが楽しみです。
2016年12月28日
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この人の作品は何作読んでも面白い。結婚不成立の通知を受け取った十五組の男女が繰り広げる愛憎劇。上巻からテンポ良く物語が進んで、下巻にはフランクシナトラが登場して思わず笑ってしまいました。最後のエピソード、中東の王女ジャスミンとシカゴ在住のシャリフのカップルのエピソードが微笑ましかったです。シェルダンさんがお亡くなりになられたのが非常に残念です。改めて彼のご冥福をお祈り致します。
2016年12月28日
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同級生をナイフで殺傷し、失踪した兄・大樹を探して異世界へと旅立った友里子。宮部みゆきさんのファンタジー小説は「ブレイブ・ストーリー」を読みましたが、「ブレイブ・ストーリー」は余り闇の部分が描かれておらず、二人の少年の冒険譚となっていて読みやすかったのですが、この作品は人間の心の闇の部分について描かれており、読み進めるのが少し辛かったし、大樹のいじめ問題も有耶無耶にされてしまって、彼の正体が物語の後半で判って驚きました。「一は全、全は一」という異世界の法則は、何処か「鋼の錬金術師」に於ける、錬金術の法則の様なものを彷彿とさせました。「死者を蘇らせることはできない」―それはどんな魔術でも禁忌とされていますが、その禁忌を犯した者は酷い罰を受けてしまうのですね。ラスト、南アフリカから来た老人に「狼」の証であるペンダントを託された友里子でしたが、何だか物語がまだ続きそうな予感がしました・・というよりも、「悲嘆の門」がこの作品の続編であったことを、この本を読み終わって今更ながら気がついてしまいました。
2016年12月27日
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辛いシーフードのスープと麺との相性が抜群で、一度食べたらやみつきになるほどの美味しさでした。
2016年12月27日
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病院から出てホテルの部屋へと戻った歳三と総司は、今後の事を話し合った。「土方さん、もし幕末(むこう)へ戻ったら、わたしはこの子を無事に産むことが出来るでしょうか?」総司はそう言って不安げな表情を浮かべながら、まだ膨らんでいない下腹を擦った。「大丈夫だ、俺が産婆を手配してやる。出産は俺の休息所ですればいいし、近藤さんには俺が事情を全部話す。」「そうですか・・」総司は歳三の言葉を聞くと、彼に微笑んだ。「どうした?」「いえ、こうして土方さんと二人きりでいられる時間が、後どのくらい残っているのかなぁって・・」「馬鹿野郎、俺よりも先に逝くんじゃねぇよ。」歳三は総司を抱き締めると、今まで必死に堪えてきた涙を流した。「鬼の目にも涙、ですね。」「こんな時に、揶揄(からか)うんじゃねぇ・・」自分を抱き締めたまま泣く歳三の背を、まるで赤子をあやすかのように総司は優しく掌でぽんぽんと叩いた。 クリスマスシーズンとあってか、千年王城と呼ばれている京の街中は、色とりどりのイルミネーションで美しく飾られていた。 西洋の習慣が日本に根付き、やがてそれが一般的なものとなった事を、尊皇攘夷を叫んでいた連中が見たらどう思うのだろうかと、晋作は一人でそんな事を考えながら歳三達が泊まっているホテルへとタクシーで向かった。 チェックインをする外国人観光客達でホテルのロビーは混雑しており、晋作は自分の順番が来るまで外の喫煙スペースで煙草を吸っていた。「高杉、ロビーに居ないと思ったらこんな所に居たのか?」背後から半ば怒りを含んだ声が聞こえて晋作が振り向くと、そこにはまるで苦虫を噛み潰したかのような顔をしている桂が立っていた。「桂、そんな顔をするな。美男子が台無しだぞ?」「黙れ。お前、わたしと彼らをここに呼び出して、一体何を考えているつもりだ?」「それは役者が揃ってから話すよ。」「役者だと?」「ああ。」晋作がそう言ってちらりとホテルの入り口の方を見ると、向こうから駆け足で自分達の方へとやって来る千の姿が見えた。「すいません、遅くなりました!」「漸く役者が揃ったところだし、寒い外で話すのも何だから、中で昼飯でも食いながら話そう。」 晋作は自分を睨みつけている桂を気にせず飄々とした口調でそう言うと、千と共にホテルの中へと入った。 同じ頃、歳三達はフロントから電話を受け、エレベーターで17階のカフェレストランへと向かっていた。「誰なんでしょうね、わたし達を呼び出したのは?」「さぁな。着いたぞ。」 17階のカフェレストランの中へと入ろうとした歳三と総司は、窓際の席で自分達に向かって手を振っている男の姿に気づいた。「お~い、こっちだ!」「千君、どうして貴方がここに居るんです?」「話せば長くなります。沖田さん、土方さん、どうぞこちらへお掛け下さい。」晋作の隣に座っている千の姿を見た総司は戸惑いを隠せない様子で、歳三と共に椅子に座った。「あの、貴方はどなたなのですか?随分千君と親しいようですが?」「ああ、自己紹介がまだだったな。俺は高杉晋作。もう一人、客人が来るぜ。」「客人だと?」歳三がそう言って眉間に皺を寄せながら晋作を睨みつけていると、桂が彼らのテーブルの方へとやって来た。「済まない、待たせてしまったな。」「桂・・」「君は・・」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月27日
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生まれ持った予知能力のせいで世間から好奇の目にさらされてきたヒロイン・ローレル。祖母が亡くなり、「ミモザの園」と呼ばれる屋敷に移り住んだ彼女を待っていたものは、彼女の祖先にまつわる悲しい秘密だった。一度この作品は読んだことがあるのですが、ローレルは自分の予知能力のせいで苦しんできて、父親・ロバートとの仲も悪かった。でも祖母が遺してくれた屋敷があるルイジアナ州の田舎町では、ローレルの能力は町の人々に受け入れられ、彼女は初めて自分の居場所というものを見つけたのですね。ロマンス面はちょっと少な目で、ストーリーのメインはローレルの祖先であり、夫と子供を捨てて失踪したとされるシャンテル・ルドゥと、奴隷のジョシュアとの深い絆、そしてローレルとロバートとの親子愛が描かれています。シャンテルの最期はあまりにも惨いし、ジョシュアとシャンテルの魂が天国へ行けなかったこと、そしてシャンテルの夫・エティエンヌがなんの罰も受けずに生涯を全うしたことなど、読み進めながら色々と複雑な思いを抱きました。奴隷制度が残る南部で孤独な生活を送っていたシャンテルにとって、ジョシュアとその妻との間に固く結ばれた絆は時を越え、ローレルとジャスティンが前世で恋人同士であり、出逢った瞬間に二人が惹かれ合ったのも納得がいきました。ラストシーンで、シャンテルとジョシュアの遺骨が墓地へ納められ、二人が雲に射す一条の光へと向かい、手を取り合って天国へと向かう姿が目に浮かぶようでした。
2016年12月27日
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シャワーを浴びた歳三がドライヤーで髪を乾かしていると、部屋のドアチャイムが鳴った。「ルームサービスです。」「こちらです、どうぞ。」 歳三が浴室から出ると、部屋に食事を載せたワゴンをひいたホテルの客室係が入ってくるところだった。「総司、勝手にルームサービスを頼んだのか?」「だって、お腹が空いて仕方がないんですもん。」「お前ぇ、さっきパンを食ったばかりだろうが?」歳三が呆れた顔でそう言って総司の方を見ると、彼は既にルームサービスの支払いを済ませ、オムライスを食べていた。「最近、何だか食欲が湧き過ぎるんですよねぇ。」「何かの病じゃねぇのか?一度医者に診て貰ったらどうだ?」「そうですね。」総司はそう言うと、またオムライスを一口頬張った。 一時間後、総司は京都市内の病院で内科を受診したのだが、内科医からの言葉に彼は衝撃を受けた。「どうやら妊娠なさっておられるようですね。産婦人科を受診してください。」「え・・?」 かつて自分の身に起きた事件の所為で、自分が妊娠できない事を歳三から聞かされていた総司は、また自分が妊娠している事が信じられなかった。「有難うございました・・」 総司が内科から産婦人科の待合室へと移動すると、そこにはお腹が大きい妊婦や幼児連れの女性が沢山居て、一人で診察の順番を待っている総司は、何だか居た堪れなくなった。「沖田さん、沖田総司さん。」「はい。」 診察室に入ると、薄紅色の診察台がカーテンの向こうに置かれていた。「下は全部脱いでくださいね。」「は、はい・・」一度は経験した事なのに、何故かこの診察台に乗るときは身体が緊張で強張ってしまう。 暫くすると、女性医師の声がカーテンの向こうから聞こえて来た。「沖田総司さん、ですね?」「はい・・内科に妊娠していると言われたので、来たのですが・・」「おめでとうございます、現在7週目に入っていますよ。」「先生、わたし一度妊娠したことがあるのですが、不慮の事故に遭って、もう二度と妊娠できない身体になったと、以前病院で言われたことがあるんです。」「沖田さん、今回の妊娠は奇跡ですよ。次回の健診には、ご主人と一緒に来てくださいね。」「はい・・」 病院の外で煙草を吸いながら総司を待っていた歳三は、晴れやかな笑顔を浮かべながら総司が病院から出て来るのを見て彼の元へと駆け寄った。「どうした、総司?」「土方さん、さっき産婦人科で診て貰ったら、またわたし身籠っているそうです。」「それは、本当か?」「はい。変に食欲が湧いているのも妊娠の兆候だって、先生がおっしゃっていました。土方さん、どうして泣いているんですか?」「いや・・またお前が俺の子を身籠った事が嬉しくてな・・」歳三はそう言うと、乱暴に手の甲で頬を伝う涙を拭った。「総司、元気な子を産めよ。」「はい。土方さん、今日から煙草を吸うのは止めてください。」「わかっているよ。」歳三は煙草の箱を近くのゴミ箱へと放り投げた。「お前ぇに似た娘だったらいいなぁ。」「嫌だなぁ、土方さんに似た息子が生まれますよ、きっと。」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月26日
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余り辛くなくて、美味しかったです。
2016年12月26日
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今日はクリスマスイヴ。ご馳走を美味しくいただきました。
2016年12月24日
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都内で起きる連続殺人事件―被害者の身体には、クリスマス用の青い電飾が巻きつけられている事から、「ブルーライト事件」と呼ばれていた。探偵である真壁ユナは、友人・秋子から奇妙なメールを受け取ったところから事件の謎解きが始まるのですが、ラストまで息を呑む展開が続き、ページをめくる手が止まりませんでした。犯人が身近な人物だった事に驚きましたが、誘拐事件の被害者である秋子もそれに一枚かんでいたとはさらに驚きました。何だかラストが少し納得いかなかったというか、後味の悪い結末になってしまいましたが、ミステリーとしては読み応えのある作品でした。
2016年12月24日
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朝倉家を出た和花。柊二は妻の顔をした和花に惚れていた事に気づく。朝倉クリニックでは、柊二が三島看護師長に和花の事を話す。そして、三島と対峙する和花。容赦ない言葉で和花を罵倒する三島。理事長の心を動かせるのは貴方なんだから、という三島の言葉に心揺れる和花。身をひいても誰も幸せになれないという彼女の言葉、深いなあ。無邪気に和花の帰りを待つユマちゃんが健気で、可哀想で…大人の事情を知らないから、母親が居なくなってしまった事が理解出来ない。和花の元を訪れた柊二の母・佐枝子は、柊二の出生の秘密を和花に明かし、記事を出して欲しいと和花に頼む。和花は、柊二が自分への想いを伝えられ、涙ぐむ。彼女は柊二に、朝倉クリニックの不正が公になってもヒロトを庇わないで欲しいと伝える。柊二はクリニックに戻り、ヒロトと対峙する。ヒロトは柊二に感情を吐露し、柊二はヒロトに決別の言葉を投げつける。何だか複雑にからまり合い、こんがらかった糸を解くのは難しそう。柊二は腹違いといえども、弟だものな。記事を書く為に奔走する和花。週刊誌の記事が出る前夜、柊二と対峙する弘明。柊二は弘明から自分を愛せないことを告げられたが、柊二は父親として貴方を尊敬していた、ヒロトを駄目にしないでやってくれと弘明に伝える。和花の記事は大きな反響を呼び、ヒロトは警察に連行される。美容外科医は辞めないと柊二に伝える。柊二は和花に、家を出て建築の道に戻る事を伝え、彼女にプロポーズする。和花はユマに、三人で暮らそうと言い、柊二とユマと三人で手を繋いで未来へと歩き出す。全てを失ったけれど、柊二と和花はこれから幸せになるでしょうね。良い終わり方でよかった。
2016年12月24日
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2分間という短いCMだけど、フランケンシュタインを怖がっている町の人々が彼と一緒に歌い出すシーンは何度観ても感動します。
2016年12月22日
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このドラマ、全然観ていなかったのですが、結婚という形、夫婦という関係は何かと、視聴者に問題提起をしているドラマです。最初から真田丸のopと画面構成になっていて笑いました。星野さんと新垣さんが、互いの家事分担について話し合うシーンがあり、家事・育児は女がやって当たり前、という固定観念をぶち壊し、二人の姿を観ていると微笑ましくて応援したくなります。それよりも石川ゆり子さんの言葉が感慨深いなあ。老いは誰かに忍び寄るもの。「呪い」を自分にかけたらダメなんだよな。家事はボランティア…して貰って当たり前、無給で休み無しで家族の為に働くのが主婦の仕事だと決めつけられたら、やってられないよね。それに、兼業主婦age、専業主婦sageの風潮はおかしい。星野さんの、新垣さんに伝えた言葉が深く、彼のような人が旦那さんだったらどんなにいいんだろうと思ってしまうよ。青空市で互いの気持ちに素直になるシーンが素敵だったなあ。大勢の前で星野さんと新垣さんが抱き合うシーンは感動しました。最後のハグシーンが良かったなあ。そして、恋ダンスシーンも。再放送希望です。
2016年12月22日
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先程、PCのキーボードが反応しなくなったという記事を書きましたが、あの記事を書いた後、システムの復元を行い、キーボードが元に戻りました。皆様にご心配をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。
2016年12月21日
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フロリダでキャリーの襲撃を受けたスカーペッター。ある殺人事件の現場でキャリーが撮影した動画が彼女の携帯に届いたところから、物語が始まります。前作に起きた殺人事件の被害者遺族であるトロイと、キャリーに接点があったのはわかったのですが、彼女の所在がつかめないというのが不気味でなりません。ルーシーを罠にハメようとしたキャリー。彼女に殺害されたシャネル・ギルバートの正体が物語の後半で明らかになりますが、今回の事件では、謎が多く残りました。ジャネットとルーシーの養子・デジとスカーペッターとのやりとりが、暗闇の中を射す一筋の光のように感じるラストシーンでした。
2016年12月17日
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ヒロトが何だか勘付いているようだけど、柊二は自分の妻が別人だという事に気付いていないみたいだね。芙有子のふりをする和花の事が朝倉家にばれるのは時間の問題かな。看護師長と取引を持ちかけるも、拒否される和花。島本医師が和花に死亡事故の事を話したことを知ったヒロト。効果的なAR治療に使われている薬の危険性をヒロトに指摘する島本医師。美容整形って、結構裏がありそうだし、未承認でも副作用がある薬を使うと事故が起きたら取り返しのつかない事になるし…柊二は、それを知りながらもヒロトを支えたいんだろうな。朝倉家を訪ねて来た三島彼女と気まずい食卓を囲む和花たち。和花に協力するという三島。自分が育った児童養護施設へ行き、親友・千尋に自分の正体を明かす和花。柊二の母親は、何か秘密を抱えているようだね。和花は柊二の父親に抗議をするが、聞き入れて貰えない。漸く朝倉クリニックの死亡事故の真相に辿り着き、後は三島が電子カルテを手に入れるのを待つだけ。一方、ヒロトは顧問弁護士に和花の正体に気づき、電子カルテをアクセス出来ないようにし、更に記事を出せないように、出版社に圧力をかける。ヒロトは和花より一枚上手だし、怖い。ホテルの一室でヒロトと対峙する和花。柊二が死亡事故の時にヒロトを庇った事を知る和花。そして朝倉家から消えろとヒロトから言われた和花。このまま朝倉家を和花は出て行くんだろうか。でも、子供の事を思うと出て行けないよね…赤の他人でも、柊二やヒロトと築いた時間は大切なものだし。和花は遂に、朝倉家の人達に自分の正体を明かす。事実を納得出来ない柊二。朝倉家を出て行く和花に、今までの事は全て嘘だったのかと聞く柊二。家族の為に自分を犠牲にするような人は嫌だと柊二に言い、取材のために嘘をついたという和花。次回は最終話。どんな結末を迎えるのかが気になりますね。
2016年12月17日
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散々ハーメルン事件の犯人が誰なのかを最後まで引っ張って、漸く最終話で犯人が解りました。やっぱり犯人はあの体操教室のコーチでした。コーチは幼い頃に母親に虐待されていて、母親から蔑ろにされている子供達の姿と、幼い頃の自分の姿と重なって見え、子供が居なくなったらどんな思いをするのかを思い知らせたかったというのが犯行の動機。しかし認知症を患った母親は、彼が幼い頃に使っていた毛布を手放そうとしなかった。彼が犯した罪は重いけれど、彼が抱えている苦しみを思うと辛いです。最後の亜紀の、弓子に対するモノローグが、母親として強くなった彼女の姿が見えて良かったです。最後までどうなるのかと思いましたが、ハッピーエンドで終わって良かったです。
2016年12月16日
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まろやかなカレースープと、細麺との相性が抜群で美味しかったです。
2016年12月16日
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ミレニアム三部作最終章。今回も息をつかせぬ展開が続き、公安警察とミレニアム編集部との戦い、法廷で自らの潔白を証明するリスベットとミカエルの妹・アニカと検事との戦いが繰り広げられ、ラストシーンを読んだ時安堵すると同時に作者が亡くなってしまったという悲しさ、そして寂しさを感じました。ですが、2015年12月に新作が出版されたので、これから読むのが楽しみです。
2016年12月12日
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最近、PCの前に居る所為か、首を回すと変な音が出て、首がこっているなぁと感じてしまいました。・・それよりも、職場で最近クリスマスソングが延々と流れて、嫌になってしまいます。クリスマスは嫌いじゃないのですが、似たような曲ばかりを長時間エンドレスで聴いていると、気が狂いそうになりますよ、ホント。
2016年12月12日
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何者かに惨殺された人気作家ベリル。そして、第二の事件が起き、スカーペッターの周囲に怪しい男の影がちらつきます。犯人が最後までわからなかったのですが、殺害されたベリルとハーパーの関係や、ベリルの身に起きた悲劇が明らかに。ベリルを殺したのは彼女のストーカーでしたが、ストーカーは自己中心的な思考回路を持ち、相手に拒絶されると絶望し、相手を殺害する厄介なものです。最近、ツイッターなどのSNSで簡単に他人の個人情報を入手できるようになり、それがきっかけとなってストーカー殺人事件が起きたりするようになりました。ストーカーから身を守る為には、安易にネット上に個人情報や顔写真を載せないことでしょうか。ネット上に家族や自分の顔写真を平気で載せている方がいらっしゃいますが、大丈夫なのかなと他人事ながらに心配してしまいます。
2016年12月12日
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杉村三郎シリーズの最新作で、「ペテロの葬列」で妻と離婚した、三郎が私立探偵として取り扱った様々な事件を描いた短編集になっています。どれも印象深く、心に響く作品ばかりでしたが、ある罪を犯した所為で身を隠すことになった蕎麦屋の若夫婦に起きた悲劇「砂男」が特に印象に残りました。人は幸福を求めても、それを自らが犯した罪によって崩壊させてしまうかもしれないという広樹の気持ち、そして彼と入れ替わった男の気持ち―何だか、「砂男」を読了した後、東野圭吾さんの「手紙」を思い出しました。しかし、「砂男」の場合は、「手紙」に登場する主人公の兄とは違う、生まれながらに良心を持たない異常者で、その異常さ故に母と妹を殺害し、父親から絶縁され「化け物」呼ばわりされている男―その父親が息子の消息について尋ねられた時に骨になっていればいいという言葉が、ズシンと胸に来ました。実家で結婚に猛反対された三郎は、離婚後地元に戻り、生協市場で働きながら私立探偵をするというストーリーが面白いですが、「ペテロの葬列」で彼が離婚した経緯を思い出すと、彼もやっと日常の幸せを手に入れたのだろうかと思いながら本を閉じました。
2016年12月12日
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イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様「その方が、貴殿の隠し子か?」 歳三達が新八に連れられて局長室に入ると、会津藩士・吉田浩一郎はそう言いながら歳三とアメリアの顔を交互に見た。「トシ、こちらは・・」「某は会津藩士の吉田浩一郎と申す。本日こちらへ参ったのは、最近京の街で広がっている噂の真偽を確かめる為である。」「吉田殿、貴殿は何か誤解をしておられるようだ。ここに居る娘と、わたしは親子ではありません。」「土方殿、貴殿は江戸でも京でも浮名を流していると、こちらに居る近藤殿が某に話してくれたが・・」(近藤さん、何で余計な事を言うんだよ?)歳三が抗議の視線を近藤に送ると、彼は済まなそうな顔をして俯いた。(済まん、トシ。知っていることを話せと言われたものだから、つい・・)「娘、名を何と申す?」「アメリアと申します。」「土方と並んで座っている所を見ると、まるで実の親子のように見えるな。やはり、噂は確かだったか。」「暫しお待ち下され、吉田殿。誰かが流布した噂を信じるとは、武士のする事ではございませぬ!」 自分の所為で歳三が不利な立場になってしまったことに気づいた近藤がそう吉田に抗議したが、彼は近藤の言葉を鼻で笑った。「壬生狼ごときに武士の何たるかを説く筋合いなどない。詮議の日時は追って連絡する故、某はこれにて失礼する。」吉田はもうこんな場所には居たくないと言わんばかりに、袴の裾を乱暴に払うとそのまま屯所を後にした。「ったく、俺達を馬鹿にしやがって・・」「落ち着け、トシ。」「近藤さん、一体誰がそんな噂を流したんだ?」「犯人捜しをするのは嫌だが、俺はそれとなく噂の事を平隊士に尋ねてみたんだ。そしたら、噂を流しているのは武田だと・・」「武田が?」近藤の口から武田観柳斎(たけだかんりゅうさい)の名を聞いた歳三は、眉間に皺を寄せた。新選組五番隊組長である武田は、剣技の腕は立つものの、男色家故に隊内外で幾度となく痴情に絡んだ騒動を起こしていた。「平隊士達の話によると、武田が台所で話をしているアメリア君の姿を見て、トシに瓜二つの顔をしているから驚いていたようなんだ。」「だから、根も葉もない噂をあいつが広めたっていうのか?」「ああ。だが俺は平隊士達の話を聞いただけからだな。本人をここへ呼び出して直接話を聞かない事には埒が明かん。」「そうか。じゃあ俺が直接武田に噂の事を聞いてやるよ。」歳三はそう言うと、局長室から出て行った。「あ、副長・・」「武田は何処に行った?」「武田さんなら、今巡察中ですが、そろそろお戻りになられる頃かと・・」「あいつが巡察から戻ったら、副長室に来るように伝えておけ。」「わ、わかりました・・」歳三の剣幕に怯えた隊士は、そう言うとそのまま脱兎のごとく中庭から去っていった。「土方さん、たかが噂如きでカッカし過ぎですよ。」「その噂の所為で新選組(おれたち)の評判が悪くなったらどうするんだ?」「元からわたし達に対する京の人々の評判が悪いのはもう慣れっこじゃないですか?今更そんな事を気にしてどうするんです?」 飄々(ひょうひょう)とした口調でそう言いながら、総司は武田率いる五番隊が巡察から戻って来た事に気づいた。「武田さんが巡察から帰って来ましたよ。もしかして土方さん、武田さんを斬ろうだなんて思っていませんよね?」「馬鹿、そんな物騒な事を考えちゃいねぇよ。」総司の言葉を聞いた歳三はそう返して彼に向かって笑ったが、その目は全く笑っていなかった。作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月12日
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イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様「失礼ですが、貴方の叔母様はどのような身分の方なのですか?」「わたしの母は、アメーシア王国を統べる女王です。ヴィクトリア叔母様は、母の妹に当たります。」「そうでしたか・・では、もしわたしの母が貴方の叔母様ならば、わたし達はいとこ同士ということになりますね。」「ええ。」アメリアと雪華がそんな話をしていると、台所に総司がやって来た。「二人とも、ここに居たんだ。早くしないと朝餉のおかず、なくなっちゃうよ。」「はい、解りました。」 二人が広間に入ると、そこにはおかずを奪い合う永倉新八と藤堂平助の姿があった。「新八、俺のおかずを盗るなよ!」「こういうものは、早い者勝ちなんだよ!」新八はそう言いながら、平助が残していたおかずを箸で横からかっさらっていった。「やめねぇか、新八、平助!幹部がそんな下らない事で争っていたら、隊士達に示しがつかねぇだろうが!」歳三がそう言って二人を睨むと、慌てて新八は平助が残していたおかずを彼の皿へと戻した。「いつも騒がしくて済まないね。」「いいえ、いつもの事なのでもう慣れてしまいました。」雪華は半ば呆れたような顔をしながら、そう言って朝餉を食べ始めた。「どうしたの、アリシアちゃん?」「いえ・・何だかこうして皆さんと食卓を囲むということが、今までなくて・・」アメリアの言葉を聞いた歳三は、彼女がどんな家庭環境で育ってきたのかが容易に想像できた。「そうか。これからお前は食事を広間で俺達と取ればいい。いちいちお前の部屋まで運ぶのは面倒だからな。」「有難うございます。あの、後でお話ししたいことがありますので、お時間を・・」「解った。」 朝餉の後、アメリアと雪華は副長室へと向かった。「失礼いたします。」「アメリア、俺に話してぇことってのは何だ?」「セッカさんは、母親を探す為に変な男達に絡まれて、貴方に助けられたのですよね?」「ああ、そうだが。それがどうかしたか?」「実は、セッカさんが先程わたしに見せてくれた指輪と同じ物を持っている人を、わたしは知っているんです。」「何だと、それは本当か?」「はい。わたしの叔母のヴィクトリアが、セッカさんと同じ指輪を持っていました。」アメリアはそう言うと、雪華を見た。「その指輪がどんなものか、見せてみろ。」「これです。」雪華が歳三に首から提げているルビーの指輪を見せると、歳三は眉間に皺を寄せた。「この指輪・・一度何処かで見たことがあるな。」「本当ですか?」「ああ。だが何処で見たのかは思い出せねぇんだ。雪華、悪いが俺がお前を助けた時の事を話してくれねぇか?」「解りました。」雪華がそう言って歳三と初めて出会った時の話をしようと口を開きかけた時、突然副長室の襖が勢いよく開いた。「大変だ土方さん、会津藩の役人が屯所に来てるぜ!」「会津藩の役人がここに来てるだと?それは本当か、新八?」「ああ。何でも噂の真偽を直接土方さんに確かめたいんだとさ。」「噂?どんな噂だ?」「それが・・アメリアちゃんが、土方さんの隠し子じゃねぇかっていう噂が、京の街で広がっているらしい。」「はぁぁ~?」新八の言葉を聞いた歳三は、驚きのあまり声が裏返ってしまった。作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月12日
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この前お昼のワイドショーで取り上げられた関西某所のマンションで「あいさつ禁止令」が出たというニュース。防犯のためにあいさつ禁止はないでしょう。マンション内の住民達の交流がなくなったら、それこそ犯罪者に隙を見せるのと同じ事だと思うんだけどねぇ。最近極端にあれもこれも禁止っていうのが多くないかな?
2016年12月12日
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母が友人から貰ったお菓子です。ハートのクッキーが可愛いです。サマンサタバサのドーナツです。どちらも美味しかったです。
2016年12月12日
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殺し屋がある日信仰に目覚め、教祖となり、彼と行動を共にする牧師とホテルの受付係が巻き起こすドタバタ劇。所々にハードボイルドな所があったりしますが、この作品はラブコメディです。最初のページをめくってからすぐストーリーに引き込まれました。牧師と受付係が逃避行を続けるうちに夫婦になるまでの過程やヒットマンの「布教活動」を二人が手伝ったりするシーンが面白くて、三人がそれぞれ幸せになって良かったです。宗教というテーマを取り扱いながらも、ユーモラスにそれを描くヨナソンさんの作品は面白いし、この人の作品のファンになってしまいました。
2016年12月10日
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ホワイトチョコとラズベリーソースとの相性が抜群で、美味しかったです。ゴディバのクリスマス限定チョコとあってか、上に乗っているチョコに描かれている絵が可愛いかったです。
2016年12月10日
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柊二はいい人そうですが、色々と秘密がありそう。それよりも、えまちゃんが可愛い。柊二のお母さんは、彼を建築家の道に戻させたいようだし…それよりも何よりも、芙有子の不倫相手がヒロトだったとは!家庭内不倫って、うわあこれは泥沼の愛憎劇が事故前に繰り広げられていたってことなのか?まあ、ヒロトは優秀な兄に対して激しいコンプレックスを抱いていて、父親に認めて貰いたい気持ちが強いんだろうなあ。死亡事故の詳細が明らかになり、あごのほねを削る手術でヒロトが誤って患者の頸動脈を傷つけてしまい、ヒロトが顧問弁護士と共に事故を隠ぺいした。芙有子のふりをしてヒロトに接近する和花。彼はかなり怪しいし、深入りすると和花の身が危ないなあ。ヒロトが別人だと気付いちゃったようだし…あと2話でどう物語が展開するのか、最終話はどんな結末を迎えるのか気になります。
2016年12月10日
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イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様 夜が明け、アメリアは自分に与えられた新選組の屯所内にある一室で、朝日の光を受けて目を覚ました。「ん~、気持ちいい!」アメリアがそう叫びながら思い切り手足を伸ばすと、部屋に雪華が入って来た。「アメリアさん、土方さんがお呼びです。」「解りました、すぐに行きます。」 彼女が雪華と共に幹部隊士達が集まる広間へと向かうと、そこでは歳三と丸眼鏡を掛けた男が何やら話をしていた。「あの・・」「アメリア、昨夜はよく眠れたか?」「はい。あの、そちらの方はどなたですか?」「あぁ、君とは初対面でしたね。初めまして、わたしは新選組総長の、山南敬助(やまなみけいすけ)と申します。貴方が、アメリアさんですね?」「はい・・あの、これからお世話になります。」「君の処遇について昨夜局長と副長と共に話し合いましたが、貴方は副長である土方さんの小姓に就くことに決まりました。雪華君、新人のアメリアさんに色々と仕事を教えてあげてくださいね。」「はい、解りました。アメリアさん、これから宜しくお願いしますね。」「こちらこそ、宜しくお願いします。」 アメリアはそう言うと、雪華に頭を下げた。こうして、彼女は歳三の小姓として新選組で働くことになった。小姓といっても、仕事は主に掃除や洗濯、炊事などの家事全般であり、たまに歳三が幕府の要人との会合に出席するときは護衛として彼と会合に出席するくらいのものだった。「アメリアさんは、お料理がお上手なのですね。今朝の朝餉、隊士の皆さんが嬉しそうに食べていましたよ。」「料理や裁縫といった家事は、全て祖母から教えて貰いました。わたしは、母ではなく祖母に育てられましたから。」「まぁ、そうなのですか。わたしも、祖母に育てられました。でもその祖母は、数年前に病死してしまいました。」「何だかわたし達、似ていますね。」「ええ。アメリアさんのお母様は、どのような方なのですか?」「母は・・わたしにとって恐ろしい人です。国民達には慕われているけれど、母は国民達に全ての愛情を注ぎ、わたしが熱を出しても気にも掛けない人でした。」アメリアはそう言って口を噤(つぐ)むと、溜息を吐いた。「嫌な事を聞いてしまいましたね、ごめんなさい。」「いいえ。それよりも雪華さんは、何故新選組にいらしたのですか?」「わたしも、貴方と似たような境遇で育ちました。数年前に祖母が病死した時、祖母はわたしの出生に纏わる物を渡してくれました。」「貴方の出生に纏わる物?」「はい、これです。」 雪華はそう言って着物の衿元を寛げると、首に提げている指輪をアメリアに見せた。 それは、ダイヤモンドが周りに鏤められたルビーの指輪だった。「祖母が臨終の際にこれをわたしに手渡し、死んだとされている実母が生きている事を彼女は教えてくれました。わたしはこの指輪を手掛かりに、実母の事を調べようと生まれ育った村から出て京に来た時、運悪く柄の悪い連中に絡まれてしまって、土方さんに助けられて彼の小姓として新選組で暮らすことになったんです。」「そうだったのですか。」アメリアはそう言ってルビーの指輪を見た途端、自分の叔母が雪華と同じ指輪を持っていることを思い出した。「アメリアさん、どうかなさいましたか?」「いいえ・・その指輪と同じ物を持っている人をわたし知っているんです。」「その人とは、誰なのですか?」「ヴィッキー叔母様・・わたしの母方の叔母にあたる、ヴィクトリア叔母様です。」アメリアがそう言って雪華の方を見ると、彼は驚愕の表情を浮かべながら指輪を握り締めていた。作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月10日
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イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様 浴室でレオンと激しく互いを貪り合った後、エリーザベトが浴室から出ると、数人の女官達が彼女の前に現れた。「陛下、ハノーヴァー伯爵がお見えになります。早くお召し替えを。」「解ったわ。」エリーザベトが鏡台の前に座ると、女官達はそれぞれ彼女の髪を櫛で梳いたり、彼女の爪の手入れをしたりしていた。「一体伯爵がわたしに何の用なのかしら?」「さぁ、存じ上げません。あの方は、ただ陛下のお顔が見たいだけなのでしょう。」「まあ、そうでしょうね。」エリーザベトがそう言って笑うと、女官達も彼女につられて笑った。「これは陛下、いつも麗しゅうございます。」「あら、有難う伯爵。お世辞でそう言って頂けるだけでも嬉しいわ。」執務室へとやって来たハノーヴァー伯爵は、いつものようにエリーザベトの容姿を褒め称えると、彼女の手の甲に接吻した。「それで、わざわざわたしに会いたいが故に、領地から遠路はるばる来たというの?」「はい、陛下。それもありますが、我が領地である問題が起きているのです。」「ある問題、というと?」 エリーザベトは伯爵の言葉を聞くと、眉間に皺を寄せた。「ええ。最近異端審問官の横暴が酷過ぎると、わたしの元に領民達からの苦情が殺到しているのです。」「彼らは異常よ。小さな子供が魔力を持っているとわかれば、徹底的にその魔力を封じ込めようとする。彼らの雇い主が異常者だから仕方がない事だけど。」 エリーザベトは開いていた扇を閉じると、伯爵を見た。「それで、貴方はわたしに何をして欲しいの?」「異端審問所の閉鎖を、教会に頼んで欲しいのです。わたくしの力だけでは、彼らを抑えることは出来ません。」「・・わかったわ。すぐに教会宛に手紙を書きましょう。」 エリーザベトがそう言ってソファから立ち上がると、ノックもなしにエリーザベトの妹・ヴィクトリアが美しい金髪を波打たせながら執務室へと入って来た。「お姉様、アメリアが居なくなったというのは本当なの?」「ヴィッキー、今わたしは大切な話をしているところなの。後にして頂戴。」「お姉様、実の娘が居なくなったっていうのに、どうしてそんなに薄情な態度を・・」「ヴィクトリア!」エリーザベトの凛とした冷たい声が、執務室の空気を微かに震わせた。「ごめんなさい、お姉様。また後で伺う事にするわ。」「そうして頂戴、ヴィッキー。伯爵、異端審問所の事についてはわたしに全て任せて頂戴。」「わかりました、陛下。ところで陛下とレオン様がただならぬ関係だという噂が宮廷内に流れておりますが・・」「噂は事実よ。伯爵、わたしの事は諦めてくださらないかしら?」「え、ええ・・そう致します。」伯爵が落胆した様子でエリーザベトの執務室から出て行った後、彼と入れ違いにヴィクトリアが執務室に入って来た。「お姉様、先程は場を弁えない態度を取ってしまってごめんなさい。」「いいえ、わたしの方こそ貴方に厳しくしてしまって悪かったわ。でもヴィッキー、あの子は、表向きではわたしの“妹”となっているの。だから人前で、あの子の事をわたしの娘だと言わないで。」「わかったわ、お姉様。あのね、お姉様にお話ししたいことがあるの。」「何かしら?」「レオンの部下から先ほど聞いたのだけれど・・わたしの可愛い天使が・・マリエッテがあちら側に居るって・・もしそれが本当だとしたら、わたし・・」「ヴィッキー、はやまった行動を取っては駄目よ。その情報は貴方をおびき出す罠かもしれないわ。」「でも、たとえその情報が嘘だとしても、わたしはあの子に会いたいのよ、姉様!」そう言ってヴィクトリアは、美しい深紫の瞳を涙で潤ませた。作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月09日
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期間限定の塩とごま油味。ごま油と塩との相性が抜群で、一度食べたらクセになるほど美味しいです。
2016年12月09日
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イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様エリーザベトに扇子で打たれた頬に血が伝っても、レオンはそのまま彼女の前に跪いていた。「もう下がりなさい。」「は・・」レオンはそう言ってゆっくりと立ち上がり、そのまま謁見の間を後にした。「レオン様、お待ちください!」謁見の間から出たレオンが大理石の廊下を歩いていると、エリーザベト付の侍女が彼の方へと駆け寄って来た。「レオン様、これで・・」「要らぬ。大した怪我ではないからな。」「ですが・・」「俺はしつこい女は嫌いだ。」レオンはそう言って侍女に鋭い一瞥(いちべつ)を与えると、彼女は慌てて彼に頭を下げて去っていった。―おい、あれ見ろよ。―また陛下と痴話喧嘩でもしたのか?口さがない連中がレオンと廊下で擦れ違うたびに、そんな陰口を叩き合っていた。だが当の本人はそんなものなど何も感じなかった。自分が女王の愛人であるという噂など、とうに聞き飽きた。それに、その噂は事実なのだから、コソコソと女王と密会するなどみっともない事をするのはレオンの性には合わなかった。 レオンは暫く宮殿内の廊下を歩き、目的の場所へとたどり着いた。そこは、女王専用の浴室だった。 絶大な魔力を持つ『黒蝶王』であるエリーザベトが、その魔力を高める為、一日に四度入浴する習慣があることを、レオンは知っていた。「陛下は中におられるか?」「はい。」女官はレオンの顔を見ると、そのまま浴室の中へと彼を案内した。「陛下、失礼いたします。」 レオンが浴室に入ると、白い大理石を使った巨大な浴槽の中央に、部屋の主は居た。 抜けるようなエリーザベトの白い肌は湯を弾いて輝いていた。「来たのね。」湯煙の中からレオンの姿を確認したエリーザベトは、そう言うと彼に向かって微笑み、彼の方へと近づいた。「痕が残ってしまうかしら?」エリーザベトはそっとレオンの白い頬に残る真新しい傷を撫でると、婀娜(あだ)めいた目で彼を見た。「失礼いたします。」レオンがゆっくりと服を脱いで裸になるのを、エリーザベトは黙って見ていた。「陛下、アメリア様は俺が全力を尽くして必ず見つけ出します。」「その話はもういいわ。それよりもレオン、今からわたしと裸の付き合いをしましょう?」「ええ、喜んで。」 レオンは女王の黒髪を口づけると、そのまま彼女と浴槽の中で戯れた。「俺が陛下の愛人であるという噂が宮廷内で広まっています。」「事実なのだから、そんな噂を気にしない方がいいわ。レオン、もっと早くに貴方と出会っていたのなら、わたしは幸せになれたでしょうね。」「昔の事を悔やんでも仕方がありませんよ、陛下。それよりも俺とこの先築く未来についてお考え下さい。」「そうね・・」エリーザベトは深紫の瞳でレオンを見つめると、そっと彼の唇を塞いだ。「陛下、貴方を心から愛しております。」「わたしもよ、レオン。」作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月08日
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※このイラストはMARRISA様から頂きました。無断転載はおやめください。「母から、逃げてきました。」「お母さんから?」総司の問いに、アメリアは静かに頷いた。「母はいつもわたしに冷たくて・・そんな母の態度に、わたしは耐えられなくなって母から逃げたんです。」アメリアはそう言ってしゃくりあげながら、首から提げているロケットを握り締めた。「それは?」「これは、母がわたしの誕生日にくれた物です。」「ロケットの中を見せてくれないかな?少しだけでいいから。」「解りました。」アメリアはロケットを首から外すと、中に入っている写真を総司に見せた。 そこには歳三と瓜二つの顔をしている女性と、彼女の隣には一人の男性が写っていたが、顔の部分が焼き焦げており、誰なのか解らなかった。「ねぇ、この人が君のお母さんなの?」「はい。母はわたしを未婚で産みました。父の顔は、知らないんです。」「そう・・」(何だか、この人土方さんに似ているような気がする・・)「ソウジさん?」「中を見せてくれて有難う。ねぇアメリアちゃん、もし君さえ良ければ、ここで暮らさない?君とわたしが会ったのも何かの縁だし・・」「でも、あの方がどうお思いになられるのか・・わたし、さっきあの人に失礼な態度を取ってしまいましたし・・」アメリアは不安げな表情を浮かべながら、チラリと歳三の方を見た。「土方さん、この子行く場所がないみたいですよ。」「それがどうした?若い娘を野宿させる気なんざさらさらねぇよ。」「お世話になります。」「アメリア、とか言ったな?ここで世話になる以上、俺達の足を引っ張るような真似はするな、解ったな?」「はい!」「土方さん、失礼いたします。」 副長室の襖がスッと開き、雪華が部屋に入って来た。「ヴィッキー叔母様!」アメリアは雪華の姿を見るなりそう叫ぶと、彼に抱きついた。「あの、どちら様ですか?」「ごめんなさい、人違いでした。余りにも貴方が叔母様と似ていらしたので、つい・・」「まぁ、そうでしたか。わたしは雪華と申します。」「アメリアです。こちらで暫く暮らすことになりましたので、どうぞ宜しくお願い致します。」「こちらこそ。土方さん、島田さんから羊羹(ようかん)を頂きました。」「わざわざ有難う。そこに置いておいてくれ。」「解りました。」雪華はそう言うと、歳三の前に羊羹を載せた皿を文机の上に置いた。「アメリア、今後のお前の処遇についてだが、一度近藤さん達と話し合ってから明日決める事にした。お前は風呂に入って部屋で休め。雪華、アメリアを風呂まで案内してやれ。」「わかりました。アメリアさん、わたしについて来てください。」「はい。」こうしてアメリアは、新選組に保護されることになった。 一方、アメーシア王国の首都・ラミアに建つ壮麗な宮殿の中にある謁見の間では、宝石を鏤(ちりば)め、銀糸で刺繍を施された漆黒のドレスを纏った一人の女が眉間に皺を寄せながら玉座に座っていた。 彼女の前に跪いているのは、『緋鬼』の隊長・レオンだった。「女王陛下に申し上げます。アメリア様をあと少しの所で取り逃がしました。」「報告はそれだけなの?」 威厳に満ちた口調でそう言った女―アメーシア王国を統べる女王・エリーザベトは冷たく光る深紫の瞳をレオンに向けた。「申し訳ありません。」無言で玉座から立ち上がったエリーザベトは、持っていた扇でレオンの頬を容赦なく打った。作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月08日
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公園で起きた爆発事件に偶然遭遇した島本。事件の裏には、かつて学生運動をしていた仲間・桑野の陰が浮上するというストーリーですが、ラストまで気が抜けない展開で、ページをめくる手が止まりませんでした。桑野の存在が中盤辺りから島本が気に掛けているところで、犯人が誰なのかは判ってきましたが・・まさか、そんな理由であんな事件を起こすなんてなぁ~と、少し犯人に呆れてしまいました。これから機会があったら藤原伊織さんの作品を読んでみたいと思います。
2016年12月08日
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京に着いた途端、何者かに命を狙われている事を知った歳三は、その日の夜は一睡も出来ずに朝を迎えた。「おはようございます、土方さん。」「おはよう・・」目の下に隈を作っている歳三の姿を見た総司は、彼に電気ポットで淹れた白湯が入った湯呑を差し出した。「これでも飲んで落ち着いてください。」「有難う、総司。それにしても、一体誰が俺の命を狙っているんだろうな?」「さぁ・・それよりも土方さん、早く着替えて朝餉を食べに行きましょうよ。」「わかった。」 浴衣から私服に着替えた歳三は、総司と共に部屋を出てホテル内のレストランで朝食を取った。「総司、そんなに甘味ばかり食ったら太るぞ?」「大丈夫ですよ、わたしあんまり太らない体質なので。」そう言いながら総司は皿に載ったジャムパンやシナモンロールを平気で平らげていく。「お前なぁ・・」歳三が呆れた顔をしながら食パンにジャムを塗りたくっている総司の横顔を見ていると、彼は再び背後に強烈な視線を感じて振り向いた。 レストランから少し離れた場所に、灰色の上下のスウェット姿の青年が、虚ろな目で歳三の事を睨んでいた。「総司、少しここで待ってろ。」「はぁ~い、わかりました。」歳三が席を立ち、レストランから出て青年の方へと近寄ろうとしている事に気づいたのか、彼は歳三に背を向けて突然走り出した。「待て!」青年は歳三を肩越しに睨みつけながらも、走るスピードを緩めようとしなかった。 彼は丁度エレベーターホールに到着したエレベーターに乗り込もうとしたが、非情にもそのドアは彼の目の前で閉まってしまった。「クソ!」そう吐き捨てるような口調で悪態をついた青年は、その場で地団駄を踏んだ。「てめぇか、さっき横断歩道の前で俺の背中を押したのは?」「俺はあの人に頼まれただけだ!」「あの人だと?そいつはぁ一体誰の事だ?俺が怒らねぇ内に全てを吐け。」歳三がそう言って青年の胸倉を掴むと、彼は乱暴に歳三の手を振り払い、そのまま下りのエレベーターに乗り込んでしまった。「ったく、逃げ足が早い野郎だ・・」歳三が舌打ちしながら総司が居るレストランへと戻ると、彼は五個目のシナモンモールを平らげているところだった。「総司、そろそろ部屋に戻るぞ。」「わかりました。ねぇ土方さん、部屋に戻る前にシナモンロールを買ってください。」「わかったよ、買ってやるよ・・」「さっきの子、何だか訳ありみたいでしたね。」 ホテル内のベーカリーショップで総司はそう言いながらトレイの上に次々と商品を載せると、歳三の方を見た。「ああ。あいつ、逃げる前に誰かに俺を殺そうとするのを頼まれたとか言っていたな。」「土方さん、知らなうちに恨みを買っていますからね・・女の人絡みで。」「総司、最後の一言は余計だろうが。」歳三がそう言って総司の方を睨むと、彼は自分が持っていたトレイを歳三に手渡した。「おい総司、まさかとは思うが・・これ全部食う気じゃねぇだろうな?」「食べますよ?」「腹壊しても知らねぇぞ。」 レジで歳三はそう言いながら会計を済ませた後、溜息を吐いた。部屋に戻った総司が早速買ったパンを食べている姿を横目で見ながら、歳三は浴室に入ってシャワーを浴びた。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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桂が二人の為に用意してくれたホテルは、四条河原町の繁華街の中にあった。「桂の野郎、こんな所に銅像なんか建てやがって・・」「偶然ここに建っているだけですって。土方さん、そんな事でイライラしないでくださいよ。」ホテルの正面玄関前にある桂の銅像を睨みつけた歳三を総司はそう言って宥めながら、ホテルの中へと入った。「なぁ、この宿屋、まさかあいつが経営しているっていうんじゃねぇだろうな?」「それはないですよ。」 フロントでチェックインを済ませた歳三は、総司と共に部屋に入ると、ベッドの端に腰掛けて溜息を吐いた。「どうしたんですか、土方さん?溜息なんて吐いて?」「桂の野郎が一体何を企んでいやがるのかが解らねぇ・・わざわざ俺達に宿を手配するなんて・・」「疑り深いですね、土方さんは。こんな宿屋に泊まる機会はめったにないんですから、楽しみましょうよ。」「ああ、そうだな。それよりも総司、昼飯の時間にはまだ早いから、近くを散歩してみるか?」「そうですね。」 ホテルの部屋から出た歳三と総司は、昼食の時間までホテルの周辺を散策することにした。「現代(こちら)の京の街は、何だか異国のようですね。」「そうだな。総司、何か欲しい物はあるか?」「そうですねぇ。何だか歩いているとお腹が空いてきちゃったので、お菓子が欲しいです。」「ったく、てめぇはガキか。」 歳三は溜息を吐くと、総司と共に百貨店の中へと入った。「熊さんのお菓子が欲しいです。」「わかったよ。」歳三は子供のようにはしゃぐ恋人の姿を呆れた顔で見ながら、熊のイラストが描かれている洋菓子店で菓子を何個か購入した。「何だかこうして土方さんと並んで歩いていると、でぇとみたいですねぇ。」「みたい、じゃなくて俺達がしているのはデートだろうが。」三条大橋を渡りながら歳三が総司をそんな話をしていると、突然歳三は背後から強烈な視線を感じて振り向いた。 だが、そこには誰も居なかった。「土方さん、どうしましたか?」「いや、何でもねぇよ。」(何だ、さっき誰かが俺の事を見ていたような気がしたが・・気の所為か。) 歳三はそう思いながら再び総司と共に三条大橋を渡り、祇園へと向かった。「何だかこの通りを歩いていると、わたし達が居た頃と街並みが余り変わっていませんね。」「そうだな。総司、そろそろ宿屋に戻るか?」「ええ、そうですね。」 二人がホテルへと戻る為に横断歩道の前で信号待ちをしていると、歳三は突然誰かに背中を押された。「土方さん、大丈夫ですか?」「ああ。」歳三は自分を見つめる野次馬の中に自分の背中を押した犯人を捜そうとしたが、犯人は何処にも居なかった。「少し部屋で休みましょう。」「わかった。」(一体誰が、俺の事を狙っているんだ?)この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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歳三が桂に呼び出され、彼が待ち合わせ場所であるホテル内にあるレストランへと向かうと、桂は窓際の席で総司と談笑していた。「桂、俺に何の用だ?」「土方さん、そんなに桂さんを目の敵にすることはないでしょう?」「総司、こいつと一体何を話していたんだ?」「ああ、それはこれから話すよ。」桂はそう言うと、コーヒーを一口飲んだ。「これを、君達に渡しに来たんだ。」「これは何だ?」「京都行の特急列車の切符だ。向こうの宿もこちらで手配してある。」「てめぇが俺達に気を遣ってこんな物を贈ってくれるなんざ、どういう風のふきまわしだ?」「別にわたしは何も企んでいないよ。ただ、君達が居ない新選組の様子が今どうなっているのか、気になって仕方がなくてね。」「ふん、どうだか。」歳三は乱暴に桂から特急列車の切符を受け取ると、彼を睨んだ。「それじゃぁわたしはこれで失礼するよ。」桂はそう言って椅子から立ち上がると、そのままレストランから出て行った。「桂さん、行っちゃいましたね。」「総司、お前あいつに気があるのか?」「まさか。それよりも土方さん、さっき女将さんが土方さんの事を探していましたよ。」「そうか。」 総司と朝食を取った後、歳三は女将の居る事務所へと向かった。「女将さん、おはようございます。」「土方さん、やっと来てくれたわね。あのね、今後の事なんだけれど・・大変申し訳ないのだけれど、貴方には仲居の仕事を辞めて貰えないかしら?」「わかりました。あんな騒ぎを起こした後ですし、俺みたいな人間が居たら、客商売に響きますからね。」「本当にごめんなさいね。これ、今まで働いてくれた分のお給料。」「有難うございます。」女将から給料が入った封筒を受け取った歳三は事務所を後にし、総司が居るレストランへと戻った。「土方さん、その封筒・・」「ここでの仕事を辞めることになった。俺は社員寮の部屋に戻って荷物を纏めるから、お前ぇは先に駅へ行ってろ。」 歳三はそう言ってコーヒーを飲むと、ホテルから出て行って社員寮の部屋へと戻った。 元々荷物が少なかったので、私物はスーツケースに簡単に纏められた。こたつなどの家電類は、社員寮の備え付けのものなので、処分には困らなかった。「土方さん。」「総司、先に駅へ行ってろって言っただろうが?」「一人で行くのは寂しいので、一緒に行きましょう。」「ったく、仕方がねえな。」歳三は総司とバスで金沢駅へと向かい、そこで特急列車に乗って京都を目指した。「桂の野郎、一体何を企んでいやがる?」「そんなにカリカリすることはないでしょう、土方さん。京都に着くまでまだ時間があるんですから、ゆっくりと休みましょうよ。」「ああ、そうだな。」 歳三はそう言って窓の外の雪景色を眺めていると、いつの間にか眠ってしまった。「土方さん、もう京都に着きましたよ、起きてください。」「あぁ、そうか・・」歳三は眠い目をこすりながら、総司と共に特急列車から降りて京都駅からタクシーで宿泊先のホテルへと向かった。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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「本当に貴方は、被害者とは顔見知りではないんですね?」「ああ。この男の事は何も知らないよ。さっきからそう言っているだろうが。」歳三はイライラした様子でそう言うと、自分と向かい合わせに座っている年配の刑事を睨んだ。「済まねぇが、煙草を一本くれねぇか?昨夜から一睡もしてねぇんだ。」「ここは禁煙だが、まぁ別に誰も見てないからいいか。」年配の刑事はそう呟いてスーツのポケットに入っている煙草の箱から一本煙草を取り出すと、それを歳三に手渡した。「悪ぃな。」 歳三は煙草を咥えると、年配の刑事からライターを受け取りそれに火をつけた。「この男が死んだのは、失火による事故死なんだろう?それなのに何で、こいつと面識がない俺が疑われているんだ?」「実はねぇ・・現場が火事になる前、あんたの姿をそこで見たっていう目撃者が現れたんだよ。」「目撃者?」歳三は年配の刑事の言葉を聞き、眦を上げた。「ああ。その人が言うには、あんたが被害者宅から急いで出て来るところを見たってさ。」「その目撃者って言うのは、一体何処のどいつなんだ?」「それは捜査情報だから、言えないね。だが、被害者の服からあんたの指紋が検出されたっていうのが、どうも腑に落ちないねぇ・・」「俺は殺してねぇって言っているだろうが!?」「まぁまぁ、落ち着きなって。」歳三がテーブルで拳を叩くと、年配の刑事は慌てて彼を宥めた。「俺の疑いはいつ晴れるんだ?もうこんな所には居たくねぇよ。」彼がそう言って刑事を見た時、取調室に若い刑事が飛び込んできた。「警部、大変です!容疑者が自首してきました!」「何だと!?」 容疑者が自首した為、殺人の疑いが晴れた歳三は漸く警察から解放された。「あ~、疲れた。」「土方さん、疑いが晴れたんですね。」「総司、わざわざ迎えに来てくれたのか。」 歳三が警察署から出てくると、駐車場で傘を持った総司が彼の元へと駆け寄って来た。「雪が降る前に、土方さんと一緒に帰ろうと思って来ちゃいました。はい、これどうぞ。」「有難う。」総司から傘を受け取った歳三は、彼と共に警察署を後にした。 社員寮の自分の部屋に入った歳三は、玄関で靴を脱ぐと余りの寒さに身を震わせ、電気こたつのスイッチを入れてそれに潜り込んだ。「土方さん、これからどうします?」「まだ考えちゃいねえよ。それよりも総司、お前ぇ宿に戻らなくてもいいのか?」「明日の朝、チェックアウトするので、今夜はもう遅いですし、ここに泊まってもいいですか?」「好きにしろ。総司、飯はもう食べたのか?」「ええ。土方さん、今日はお疲れのようですから、ゆっくりと休んでください。」「ああ、わかったよ。お休み、総司。」「お休みなさい、土方さん。」 翌朝、歳三が目を覚ますと、隣で寝ていた筈の総司の姿はなく、こたつの上に一枚のメモが置かれていた。“宿に戻ります、総司” 歳三が欠伸を噛み殺しながら布団を畳んでいると、バッグに入れてあったスマホが鳴った。「もしもし?」『その様子だと、君の疑いは晴れたようだな?』「桂、こんな朝早くから俺に何の用だ?」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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何だろうと思いながら千が背後を振り向くと、車から一人の男が降りて来た。「お前が、桂が言っていた子か。」「あの、貴方はどなたなのですか?」「自己紹介が遅れたな。俺は高杉晋作。少しお前と話したいことがある、俺と暫く付き合ってくれないか?」「はい・・」 男―晋作と共に千が向かったのは、24時間営業のファミレスだった。「親には連絡したのか?」「それが、スマホのバッテリーが切れてしまって・・連絡しようにも、スマホの電源が入りません。」「それじゃぁ、俺のスマホを貸してやるから、今親に連絡しておけ。」「有難うございます。」 晋作からスマホを借りた千は、両親に帰りが遅くなることを伝えた。『そう・・高杉さんにご迷惑を掛けないようにしなさいね。』「わかっているよ、母さん。それじゃぁ、お休み。」千は千佳との通話を終え、晋作にスマホを返すと、彼は千に微笑んだ。「あの、どうかされましたか?」「いや・・君は親にとても愛されて育っているのだなと思ってな。さてと、何か食え。俺の奢りだから金の心配はするな。」「有難うございます。」 千はメニューを暫く見た後、チーズハンバーグを食べることに決めた。「食う物は決まったか?」「はい。」 店員に料理を注文した後、晋作はグラスの水を一口飲んだ。「千、お前は新選組の土方の小姓をしていると、桂から聞いた。その土方が、今何処に居るのか知っているか?」「はい。土方さんは沖田さんと金沢に居ます。それが、高杉さんと一体何の関係があるんですか?」「まぁ、色々とあってな。それよりも、今年の大晦日に俺はデカい花火を打ち上げるつもりだ。」「デカい花火、ですか?」「ああ。天地がひっくり返るくらいの、デカい花火を俺は打ち上げようと思っている。千、お前も俺と共に来い。」「それはどういう意味ですか?貴方は僕に、倒幕運動に加われとおっしゃるのですか?」「どうやら、鬼の副長の小姓は顔だけで採用されてねぇってことか。まぁ、お前ぇみてぇな頭の良いガキは、嫌いじゃねぇよ。」晋作はそう言うと、運ばれて来たトマトソースのパスタを箸で器用にくるりと巻いて一口食べた。「お誉めに預かり光栄です。」「別に誉めた訳じゃねぇんだけどなぁ。」晋作は苦笑しながら千の方を見ると、彼は運ばれてきたチーズハンバーグをフォークとナイフで一口大に切っていた。「そろそろ行くか。」レジで会計を済ませた後、晋作は千と共にファミレスから出ると、彼に車に乗るよう言った。「あの、どちらへ行くんですか?」「俺の部屋だ。このまま師走の寒空の中、外で野宿をしたくねぇだろう?」「はい・・」「安心しろ、俺には男色の趣味はねぇよ。そんなに警戒するな。」千の気持ちを見透かしたような言葉を掛けた晋作は、動揺して頬を赤く染める千の姿を見て笑った。 晋作が住んでいる所は、タワーマンションの最上階だった。「夜寝る前に、窓から夜景を眺めながら西洋の酒を飲むのが俺の楽しみでね。朝は窓から朝日に照らされた街を眺めて茶を飲むのが好きだ。」「そうなんですか。お風呂、お借りしますね。」「着替えは脱衣所に置いてあるから、遠慮なく入れ。」「はい。」(何だかあの人と居ると、調子が狂うなぁ・・) 千はそんな事を思いながら溜息を吐くと、静かに目を閉じた。 一方、金沢では歳三が警察の事情聴取を受けていた。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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晋作が最上階にある社長室からエレベーターで地上へと降りている時、彼の背広の内ポケットに入れてあったスマートフォンが鳴った。「もしもし?」『晋作、わたしだ。時間があったら会わないか?』「わかった。いつもの場所で待っていろ。」晋作はそう言ってスマートフォンを内ポケットにしまうと、そのまま会社の正面玄関に待たせていたリムジンへと乗り込んだ。「いつもの場所へ行くから、頼む。」「かしこまりました。」晋作の言葉を聞いた運転手は、リムジンを六本木方面へと走らせた。「遅かったな、何かあったのか?」「わたしの小姓が死んだ。千君の話によると、何者かに狙撃されたらしい。」「そうか。」 六本木にある高級ホテルのロビーラウンジで、自分より数分遅れてやって来た桂の話を聞きながら、晋作は溜息を吐いた。「飯はまだか?この宿屋には美味い肉が食べられる店があるそうだ。俺の奢(おご)りだから、心配するな。」「ああ、行こう。」 桂は晋作と共に、ホテル内にあるステーキハウスで夕食を取った。「小藤の事は残念だったな。」「ああ。それよりも晋作、わざわざこんな場所にわたしを呼び出して、話したい事とは何だ?」「相変わらず、勘が鋭い奴だな、お前は。」晋作はそう言うと、口端を上げて笑った。「お前がこの前、幕末(むこう)へ戻る時期が解ったとか言っていただろう?」「ああ、それがどうかしたのか?」「大晦日に、俺はこちらの武器や弾薬を持って幕末へ戻ろうと思っている。俺達が持っているものよりも遥に高性能な弾薬や武器があれば、徳川幕府を倒すのは容易いことだ。」「晋作、はやまった行動をするな。そんな事をすれば、取り返しがつかなくなるぞ。」「全く、お前はいつも慎重派だな、桂。まぁ、お前はいつも大事な問題が起きると逃げてばかりいるから、仕方がないか。」「わたしは逃げてなどいない!」 桂がそう叫んでテーブルを拳で叩くと、周囲に居た客達が彼らの方を見た。「そう興奮するな。お前の想い人には手を出さないよ。それと、お前がさっき話していた千君にもな。」「晋作、お前まさかよからぬことを企んでいるんじゃないだろうな?」「さぁ、どうだか?」晋作はそう言って桂に笑うと、熟成肉のステーキを頬張った。「牛の肉なんざ、最初見た時は何で異人はこんなおっかねぇもんを平気で食うんだと思ったが、口にしてみりゃぁ、案外と美味い物だな。」「話をはぐらかすな、晋作。ちゃんとわたしの質問に答えろ。」「なぁ、この時代は俺達が幕末で築き上げたものなんだそうだ。ということは、徳川幕府が滅びるのは時間の問題だ。」「どういう意味だ、それは?」「言葉通りの意味さ。俺は早く徳川幕府を滅ぼし、新しい時代を築きたい、ただそれだけさ。」 晋作はそう言うと、窓の外から見える六本木の街を眺めた。「うわ、寒っ!」 桂の小姓・小藤がファストフード店で何者かに狙撃され殺害された後、千は警察に事情を聴かれ、漸く彼が解放されたのは午前0時を回った頃だった。 最寄りの警察署から一歩千が外に出ると、12月の冷たい寒気が彼の頬を打った。両親に迎えに来て貰おうと千は上着のポケットからスマートフォンを取り出したが、充電をせずに自宅から出て来たので、バッテリーが切れていた。 ツイていないな―そう思いながら千がとぼとぼと自宅マンションの方へと歩き出した時、突然彼の背後で車のクラクションが鳴った。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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「・・はい、解りました。計画通りに。」小藤はそう言ってスマートフォンの通話ボタンを切ると、溜息を吐いて千が待つ店内へと戻った。「お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。」「いえ・・あの、電話はどなたからだったのですか?」「それは、貴方にもお教えすることは出来ません。」小藤が先程見せた、スマートフォンの液晶画面を見つめた時に険しい表情を浮かべた時の事を思い出した千は、これ以上彼に詮索するのは不味いと思い、口を閉ざした。「話を変えましょう。桂先生が土方に想いを寄せるようになったのは、先生が江戸の道場に居た頃からだと聞いております。」「江戸の道場・・」小藤の言葉を聞いた千は、桂が江戸にあった練兵館の門下生であった事を思い出した。 千が読んだ本では、その頃歳三は薬の行商をしながら道場破りをしていたと書かれていた。「ある日、先生が道場で稽古をしていたら、薬箱を抱えた青年が道場破りに来て、先生がその青年と手合わせしたら、彼は自分と互角、それ以上の剣の腕前だったとわたしに以前話してくださいました。手合わせが終わり、青年が面を外した時、青年の絹糸のような艶やかな黒髪が流れ落ち、紫の瞳が輝くさまを見た門下生達が思わず彼の美しさに息を呑んだそうです。」 小藤の話を聞きながら、千はその時の情景を頭に浮かべた。「先生も、例外ではありませんでした。その青年の素性を先生はすぐさま調べ、彼が試衛館という田舎道場の食客という事を知り、先生はある日彼を自分の道場の門下生にならないかと誘いました。ですが、彼は先生の誘いを断りました。自分には、叶えたい夢があると言って。」 小藤は一旦言葉を切ると、少し冷めたコーヒーを飲んだ。「貴方になら、その青年が誰なのかが解るでしょう?」「ええ。桂さんが、土方さんに知らない内に惹かれてしまった事は、僕でも解ります。土方さんと初めて会った時、その美しさに一瞬見惚れてしまいましたもの。」「そうでしょうね。先生は京へ行き、土方と再会しました。皮肉なことに、彼はわたし達の不倶戴天の敵である薩摩藩と手を結んだ会津藩御預かりの新選組の副長として、その名を知られていました。ですが先生は、土方を敵でありながらも密かに想いを寄せていらっしゃるのです。わたしは、先生の心を一瞬で奪った土方の事が憎くて堪らないのです。」 小藤はそう呟くと、左手の爪を噛んだ。「小藤さん、貴方は桂さんの事が好きなんですね?」「ええ。けれど先生は、永遠にわたしのものにはならない。先生の心はあの土方に囚われているのです。だからわたしは・・」 小藤が狂気に満ちた目で千を見つめた時、突然店内の静謐(せいひつ)な空気を切り裂くかのような銃声が響き、店の窓ガラスが粉々に割れた。 銃声を聞いた千は咄嗟にテーブルの下に伏せた。「小藤さん?」恐る恐る千が小藤に声を掛けると、彼は椅子に座ったまま微動だにしなかった。「小藤さん、大丈夫ですか?」千がそう言って小藤の肩を叩こうとすると、彼の身体がぐらりと揺れた。その時、千は小藤のこめかみに穴が開いている事に気づき、悲鳴を上げた。「そうか、あいつが死んだか・・」「これからどうなさいますか、高杉社長?」「それは、まだ考えちゃいねぇさ。」 摩天楼のビルの窓の外から階下を流れる人工の銀河を眺めながら、男―高杉新作は三味線を弾いていた。「桂が妙な行動を起こす前に、俺が止めないとな。」「社長、もしかして、貴方が彼を・・」「おっと、それを言わない方がお前の為だぜ?さてと、もうこんな時間から帰るとするか。」 晋作はそう言って秘書の肩を軽く叩くと、社長室を後にした。(こっちの世界も、悪くはねぇな。)この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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「桂さん、お言葉ですが、貴方と新選組は敵同士ですよね?それなのに何故そんな事を僕に打ち明けるのですか?」「君しか打ち明けられない事だからだよ、千君。」「桂さん・・」千がじっと桂を見つめていると、彼はそっと千の髪を撫でた。「君は、新選組が迎える結末を知っているのだろう?彼らがこの先、どのような運命を辿るのかを?」 桂の問いに、千は静かに頷いた。 現代(こちら)に戻って来てから、彼は学校の図書室で新選組の本を読み漁り、彼らがこの先どのような道を辿るのかを知った。 それでも、千は彼らと共に行動することを決意した。何故なら、新選組は自分が初めて見つけた居場所だからだ。「桂さん、僕は貴方に何を言われても、僕は新選組と共に行きます。」「それが、君が出した答えなのか?」「はい。たとえ新選組が滅びの道を行くとしても、僕は新選組に助けられましたし、彼らに対してまだ恩返しをしていません。」そう言った千の真っすぐな瞳を見た桂は、一瞬たじろいだ。「君は強い子だね。何故わたしは、君と早く会えなかったのだろうね。」「桂さん?」千が訝し気な視線を桂に送ると、彼はフッと口端を歪めて笑った。「ただの独り言だ、気にしないでくれ。わざわざこんな遅い時間に呼び出してしまって済まなかったね。」「いいえ。ではこれで失礼いたします。」 千が桂に頭を下げて彼の部屋から出ると、入り口の近くに控えていた桂の秘書・小藤が千に声を掛けて来た。「すいません、少しお時間宜しいでしょうか?」「はい、構いませんが。」「それでは、こちらへ。」千は彼と共にタワーマンションの近くにある24時間営業のファストフード店の中へと入った。「いらっしゃいませ、ご注文はいかがなさいますか?」「ホットコーヒーを2つ、お願いいたします。」「かしこまりました。こちらで召し上がられますか?それともお持ち帰りでしょうか?」「ここで飲みます。」「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」 レジカウンターで店員とやり取りをしている小藤の姿を横目で見ながら、千は彼が何故自分をここへ連れ出したのかが解らなかった。「あの・・小藤さんとおっしゃいましたよね?何故、僕をここへ連れ出したのですか?」「それは、桂先生に聞かれたくないお話を、今からわたしがするからです。」「桂さんに聞かれたくない話、ですか?」「わたしは桂先生の小姓を務めておりますので、先生が何を考えていらっしゃるのかが自然と解ります。ですが、先生が新選組の土方に想いを寄せていた事は初耳でした。」 そう言った小藤は、眉間に皺を寄せた。「千さん、貴方は土方の小姓を務めていると先生から聞きました。そこで勝手なお願いなのですが、土方を先生に近づけさせないで頂けませんか?」「そのような事を言われても、僕は土方さんを24時間監視できないので、困ります。」千の言葉を聞いた小藤は溜息を吐くと、店員が持って来たホットコーヒーを受け取った。「人の気持ちを管理することは、誰にも出来ません。」「解りました。無理なお願いを貴方にしてしまって、申し訳ありませんでした。」「そんな、謝らなくても・・」千がそう言って自分に向かって頭を下げている小藤の姿に慌てていると、テーブルの上に置かれていた小藤のスマートフォンが振動した。「少し失礼致します。」 スマートフォンを持って席を立った小藤は、何処か険しい表情を浮かべていた。(小藤さん、一体誰と話しているんだろう?)この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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「ねぇ千尋、貴方はお祖母ちゃんを施設に入れてもいいと思っているの?」「うん。母さん、介護って想像以上に大変だし、お祖母ちゃんの介護はプロの人に任せた方がいいと思う。」「そう・・じゃぁそうすることにするわ。」千佳は千の意見を聞いた後、そう言って溜息を吐くと、隆の方を見た。「これでいいのよね、貴方?」「ああ。千佳、君に黙って母さんを施設に入れてしまった事は申し訳ないと思っている。自分の親だから自分の勝手にしてもいいと思ってしまったのは間違いだった。こうしてちゃんと君達に話し合いの場を設けておくべきだった。」「隆さん、わたしの方こそ感情的になって貴方を責めてしまってごめんなさい。」 両親が和解するのを見た千は、安堵の表情を浮かべた。だが、二人の会話を聞いていた優之(まさゆき)が突然テーブルを拳で叩いた。「冗談じゃないぞ、他人にお祖母ちゃんの介護を任せるなんて!千佳さん、貴方はただ楽をしたいだけで、父さんの意見に賛成しているだけだろう?」「違うわ、わたしは冷静に今後の事を考えたら、お義母様を施設に入れた方がいいと思ったのよ。」「そんなの嘘だ!」「優之、落ち着け!」 いつも冷静沈着な性格の優之が、こんな風に取り乱す姿を初めて見た千は、ただ黙って彼の怒りが静まるのを待つことしか出来なかった。「今日はもう遅いから、また日を改めて話し合う事にしよう。」「そうね、貴方。」隆が寝室へと向かったのを確認した後、千はキッチンで洗い物をしている千佳の隣に立った。「ねぇ母さん、さっきはどうして義兄さんがあんなに怒っていたの?」「あの人は、お義母様が大好きだったから・・わたしと隆さんが再婚するまで、隆さんは優之さんの世話をお義母様に頼んでいたの。だから、わたしよりもお義母様の方に懐いたのは当然でしょうね。」千佳はそう言うと、寂しげな笑みを口元に浮かべた。「それよりも千尋、土方さん達はどうしているの?」「二人なら、金沢に居るよ。」千がそう言って千佳の方を見た時、寝間着のポケットに入れていたスマホが鳴った。「もしもし?」『君が、千君だね?初めまして、わたしは桂小五郎だ。今50階の部屋に居るんだが、会えないかい?』「わかりました、すぐ行きます。母さん、僕ちょっと出かけてくるね。」「すぐに帰って来てね。」「うん、わかった。」 自宅を出た千は、エレベーターで50階へと向かった。薄井が住んでいる筈の部屋のドアには、「桂」というプレートがはめ込まれていた。「千様ですね?どうぞ、桂さんが中でお待ちです。」 千がドアをノックしようとすると、中から20代前半位の青年が出て来た。「初めまして、千君。桂小五郎です。君に会えて嬉しいよ。」「そうですか。あの桂さん、何処で僕のスマホの番号を知ったのですか?」「小藤に君の事を調べさせたのさ。勿論、君と土方君達との繋がりも、全てね。」桂はそう言って千を見た。「桂さん、どうして僕をここへ呼び出したのですか?」「君はわたし達と、幕末へ戻りたいのかい?それとも、現代に残りたい?」「僕は、土方さん達と共に生きていたい。だから、幕末へ戻ります。」「そうか。君といい、土方君といい、一筋縄ではいかない者に惚れてしまうと、大変だね。」「は?」桂の言葉を聞いて千が首を傾げると、彼はクスリと笑いながらゆっくりとソファから立ち上がった。「鈍い子だね、わたしは土方君に惚れていると言っているんだよ。」「桂さん・・」「わかっているさ、こんな想いが叶わないことくらい。だが、わたしは彼を諦めることが出来ないんだ。」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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突然マスコミに取り囲まれた歳三は、無言で家の鍵をドアノブに挿し込み、そのまま内側から鍵を掛けて部屋に入った。 暫く歳三が外の様子をカーテンの隙間から見ていると、バッグに入れてあったスマホが着信を告げた。(こんな時間に誰だ?) 歳三がそう思いながら通話ボタンを押してスマホを耳元に当てると、桂の声が聞こえて来た。『今頃、君の家は凄い騒ぎになっているだろうね?』「てめぇか、あいつらに俺の事をあることないこと吹き込んだのは?」『人聞きの悪いことを言わないでくれ。わたしは君を江戸に呼び寄せたいからそうしたまでだ。』「あんたは信用できねぇ。」歳三はそう言うと、スマホの通話ボタンを切った。「つれないな。」「社長、どうかされましたか?」「いや、何でもない。それよりも小藤、例の準備は出来たか?」「はい。」「そうか。明朝、ここを発つぞ。江戸に戻るのは早い方がいい。」 桂はそう言って秘書の方を見ると、彼は口端を歪めて笑った。 歳三が浴室でシャワーを浴びようと脱衣所で服を脱いでいると、スマホがまたけたたましく鳴った。 また桂か―そう思いながら歳三がスマホの通話ボタンをスライドさせ、スピーカーボタンを押すと、そこから総司の声が聞こえて来た。『土方さん、聞こえてますか?』「ああ。どうした、こんな夜遅くに?」『実は、少しお話ししたいことがあるんですけれど、今大丈夫ですか?』「ああ。わかった、旅館のロビーで22時に会おう。」 歳三はそう言うと、脱いでいた服をそのまま着て、旅館のロビーへと向かった。「総司、待ったか?」「ごめんなさい土方さん、今大変な時に呼び出してしまって・・」「いや、いいんだ。それよりも総司、話したいことってなんだ?」「実は、さっきわたし達の部屋に警察の人が来たんです。江戸で起きた殺人事件の事で、話を聞きたいって言われました。」「江戸で起きた殺人事件?」「はい。その方達の話だと、殺人事件の現場に、貴方の指紋が残っていたというんです。土方さん、この人の事、知っていますか?」 総司はそう言うと、バッグから一枚の写真を取り出した。そこには、一人の老人が笑顔で写っていた。「知らねぇ顔だな。そいつがどうかしたのか?」「何でも、この人は自宅で火事に遭って亡くなってしまったみたいなんですが、この人が着ていた服から土方さんの指紋が出て来て・・」「妙だな。総司、俺はこいつを殺してねぇ。誰かが俺を嵌めようとして仕組んだんだ。」「わたしもそう思います。土方さんが理由もなく人殺しをするなんて思っていませんし、わたしは土方さんの事を信じていますから。」総司はそう言うと、歳三の手を握った。「千はどうしている?」「千君なら、先に江戸へ帰りました。千君のお祖母様の事で家族会議を開くので、先程千君のご両親がこちらに迎えに来られました。」「そうか。あいつも色々と大変なんだな。」「土方さん、これからどうするつもりなのですか?いつまでも千君に頼ってばかりではいけませんし・・」「そうだな。」 歳三はそう言うと、溜息を吐いた。 一方東京の自宅に戻った千は、家族会議に参加していた。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2016年12月05日
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