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2004年01月01日
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新年明けましておめでとうございます。

皆さんは、どんなお正月を迎えられましたか?

私は年末に、日頃なかなかできなかった家の中のお掃除やお正月の準備に励み、お陰様でなんとか、穏やかで清々しい新年を迎えることができました。

人並みのおせち料理を食卓に並べることもでき、のんびりしたお正月を過ごしています。

明日、1月2日~3日は、実家に行ってきます。そんなに遠いわけではないのに、日頃なかなか足を運ばない、いつまでも親不孝な娘ですが、元気な顔を見せて、しばし積もり積もった話をしてこようかなと思います。

さて、年末に図書館で借りた何冊かの本を目の前にして、年頭にふさわしいものをと、私が手にしたのは・・・。

心に夢のタマゴを持とう


◆『心に夢のタマゴを持とう』小柴昌俊 著 /講談社文庫

小柴昌俊さんは、皆さんもご存知のように、2002年、「天体物理学、特にニュートリノの検出に関する先駆的貢献」によりノーベル物理学賞を受賞した方で、現在東京大学の名誉教授をされています。

この本はいわゆる小柴先生の講演録で、ご自分の母校である横須賀市立諏訪小学校、神奈川県立横須賀高校、東京大学での講演録を一冊の本にしたものです。

ですから、本文すべてにふりがながふってあって、小学生にも読めるようになっているんですよ。

小柴先生がノーベル賞を受賞したのは、新しい天文学の分野を切り開いて、これまでとはまったく違う、宇宙の姿を私たちの前に示したからです。

夜空を見上げると、たくさんの星が輝いています。

それぞれの星はたいへん遠くにあって、太陽のように明るく燃えていて、その光が数千年も、星によっては数千億年もの間、宇宙を旅して地球に届いています。

天文学者は大きな望遠鏡を使って、そうした星からのかすかな光を集め、星や銀河のくわしい様子を研究してきました。

星の光には青い光や黄色い光、赤い光などのたくさんの種類があります。

今ではそうした「目に見える光」のほかに、テレビやラジオのような電波やレントゲン撮影に使うエックス線などのような「目に見えない光」も星が出していることがわかってきました。

天文学者は星からの電波をとらえるのに数十メートルもある大きなおわんのようなアンテナを作り、エックス線を探るために人工衛星を打ち上げました。

それでも「わからないこと」はたくさんあります。とりわけ大きな「わからないこと」は星が出す“ニュートリノ”という粒子のことでした。

“ニュートリノ”は砂粒よりはるかに小さくて顕微鏡を使ってもまったく見えません。見えないどころか、つかまえることさえできません。

幽霊のように人間の体でもビルの壁でも石ころでも、どんな物質でも通りぬけてしまうからです。

本当に不思議な粒子ですが、これまでの研究から「星からは光と同じようにたくさんのニュートリノが出ているに違いない」と多くの天文学者は考えていました。

しかし「そうにちがいない」といっても、星からのニュートリノを実際につかまえないかぎりは本当にそうかどうかはわかりません。

相手は目に見えない幽霊粒子なので、望遠鏡でもアンテナでも、人工衛星を使っても、とらえることができません。

だから星が出すニュートリノは長い間、「幻のニュートリノ」だったのです。

小柴先生は今から20年前、東京大学の教授をしていたころ、世界のどこにもない、非常に性能がよいニュートリノ観測装置「カミオカンデ」を作り上げました。

内容をご紹介していくと切りがないのですが、小柴先生はそれぞれの講演の中で、たくさんのエピソードをお話されています。

学生時代は決して優等生ではなかったこと、中学入学後、「小児麻痺」という病気にかかり、今でも右腕が左腕よりも細くて不自由だということ、入院中にその時の中学の数学の先生が「これでも読んでごらん」と言って差し出してくれたのが、岩波新書『物理学はいかに創られたか』だったことなど・・・。

その本はアインシュタインという物理学者とそのそばにいたインフェルノという人が、物理学というのはどのようにして作られたかということについて会話をかわしている本です。

小柴先生はこれを病院で読んで、へぇー、物理というのはおもしろいのかなという気がして、これが物理に興味を持った最初の体験だったとお話されています。

高校は自治の学校で、自治寮というのがあって、自治会の副委員長に選ばれたのですが、忙しくて、講義にもほとんど出られず、成績がどんどん下がってきて、そのころは、物理学を研究しようとはまったく考えていなくて、興味を持っていたのは、ゲーテやハイネ、ヘッセなどのドイツ文学で、文学部でドイツ文学をやろうかなと漠然と考えていたそうです。

ある日、物理の先生が、物理学の優秀な生徒に、自分のことを「あいつはどこに行くか知らないけれども、物理にいけないことだけは確かだよ」と言って笑っている声を聞いてしまうんですね

彼ははずかしくてそっと部屋に帰ったけれども、なんとも悔しくてしょうがない。そこで考えて、それなら物理に入ろうと思ったというのです。

それから猛勉強をして、実現してしまうんですよ。ここがすごいなあと思うんですよね。

小柴先生が、講演の中でいつも最後の締めくくりとしてお話されていることがあります。

以下に、小学校でお話された言葉を引用させていただきますね。

「自分のこれからの一生の間に、これをやりたい、やり遂げたい、あるいはこれを理解したい、そういう目標になるタマゴを三つか四つ、いつも大事に持っていなさい。

するとね、どういういいことがあるか。あなた方、今、インターネットとか、なんとか使っている人もいるかもしれないけれども、今の世界にはいろんな情報がたくさん溢れている。そうすると、いったいどの情報を取り入れたらいいのかということがわかんないわけだ。

だけれども、自分がいつかはやりたいと思っている目標を三つとか四つ、いつも持っているとね、ある情報を見たときに、あ、この情報、これを使えば私のこのタマゴは鳥に孵すことができるかもしれない。・・・・・・こういうふうに、自分の情報というのをちゃんと選ぶ出すことができるわけ。これは大事だと思うんです。

・・・・・あなた方の一人一人がこの人が地球に生まれてこういうことをやったんだよと、地球に爪あとを残せるような仕事を残せるように、どうぞがんばってください。」

これからの子どもたちには、ぜひ心に夢のタマゴを持てるような教育環境を作ってあげないといけないですね。

そして、私自身も、いつまでも、心に夢のタマゴを持っていたいなと思いました。

今年もどうぞよろしくお願いします。









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最終更新日  2004年01月02日 09時17分33秒


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