松木幸夫 ギタリスト的思考

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choco.yukio @ Re:曲の性格(11/27) remain-iihamaさん。 素晴らしいコメント…
remain-iihama@ 曲の性格  いつも楽しく読ませていただき  示唆…
choco.yukio @ Re:音楽(とギター)の見え方(10/30) remain-iihamaさん。 > ただ、最近の課…
remain-iihama@ 音楽(とギター)の見え方  私も全く同感です。  自身もかつては…
choco.yukio @ Re[1]:リサイタルの音源(10/07) ぽん太夫さん。 笑っていただけてよかっ…
ぽん太夫 @ Re:リサイタルの音源(10/07) >自分の演奏を聴くのは、とても大胆にま…
choco.yukio @ Re[1]:息が合わないと云うこと(09/15) あやさん。 コメントありがとうございま…

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Dec 25, 2009
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カテゴリ: 音楽
 目的地までほぼ一本道さ、ある時の僕はお気に入りの音楽の流れる空間にある椅子に座り、ハンドルに軽く左右の指数本をかけ、ほんの少しだけアクセルを踏んだままの姿勢で運転していた。

 何度も登った羊蹄山の頂上から眺める景色は、当たり前のように青い空と白い雲と山の斜面を彩る緑や岩や砂や土の色と、遠くに見える湖や海の色が太古から未来永劫まで続くだろうと云う自信に満ちたような落ち着きを伴って僕の目の前に広がっていた。

 最近、ちょっとした気まぐれにギターの調弦をオープンチューニングにしてある曲を弾き始めてみた。それは、常に忘れないで弾けるはずの曲であった。曲自体はそれほど好きではないが、ある意味弾き映えのする曲であり、そう遠くない将来に生徒に練習させようと考えている曲である。曲はコユンババである。

 いつもはあまり使わない僕が、長距離をできるだけ短時間で走りたいと思ったから高速道路を通って苫小牧から襟裳岬方向に向かった。苫小牧から先は海沿いの道路をひたすら走るだけであり、なんの問題もなかった。

 登山は、常に登山口まで自分の車で行くために登山と下山は同じルートを使用する。だから頂上まで登ることができれば、同じ道を下りさえすれば無事に下山できる、それ以外の道に迷い込むことなど考えられるはずがない。僕はいつも通りの足取りで山を下った。

 コユンババの初めのメロディはごく当たり前のように覚えているからなんの問題もなく弾くことができる。次のメロディだって。

 高速道路を下りた先にある交差点を僕は左折した。

 大きな岩がごろごろ転がっている羊蹄山の頂上を下り始める。

 コユンババのふたつ目のフレーズを弾き終わった。



 分かりやすい登山道であるが、所々の岩肌に赤い矢印が書いてあるのだが、何故だか見つけることができない。

 みっつ目のコユンババのメロディがあやふやにしか思い出せない。

 道路標識の文字が富良野とか旭川なんて書いてある。なんでそんな文字が書いてあるのか僕には見当もつかない。

 矢印が書いていなくとも下に向かえばいいのだからと、僕はしばらく山を下った。すると足下が岩から細かい軽石状のものに変わり滑りやすくなっていった。

 その後のコユンババのメロディが朧げにしか覚えていないことに気づき始めた。

 雪が降ってきて、道路はどう考えても山道に向かっているようであった。

 僕はおそらく山道を踏み外した谷筋に迷い込んだらしい。

 僕はコユンババの初めの曲を忘れてしまったらしい。

 そこで僕は、道路脇に車を停めて道路地図を眺め、また頂上を振り返り、或いはギターを弾く手を止めた。

 僕は道を間違え、曲を忘れたことにやっと気がついた。

 そこで慌てることなく来た道を引き返して、またギターをケースに入れた。



 思想も、意識も、知識も、行動も、疑いを持たなくなった瞬間から我々は間違いを冒すのだろうと、僕は少し赤面しながら考えた。





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Last updated  Dec 25, 2009 10:14:35 AM


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