読み終わりました。気になる作家はどうしても追いかけてしまいますね(笑)

>そして、そこあるのは暗闇です。
果てしなく落ち込んでいくような奈落の底。
-----
事件と語りの時間をあけること(全部ではありませんが)によって「あかり」が仄見えるところがよかったと思います。 (2005年09月20日 01時40分13秒)

ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年09月06日
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カテゴリ: 日本ミステリ
先日「 消えた山高帽子 」の感想を書きましたが、作者翔田寛さんのデビュー作「影踏み鬼」を手に入れました。
期待通りでした。

第22回小説推理新人賞受賞作「影踏み鬼」、協会賞候補作「奈落闇恋乃道行(ならくのやみこいのみちゆき)」など、幕末から明治を舞台に描かれた5編が収録されています。


影踏み鬼……若き狂言作者が師匠から聞いた奇談。大店の跡取息子がさらわれた事件の真相と驚くべき結末。

藁屋の怪……盲目の芸人・ヨシは寝泊りさせてもらった家で妙な気配に悩まされます。その家には男に騙され大金をもったまま姿を消した娘がいたらしいのですが。

虫酸……三回忌を過ぎても決して再婚しようとしない加代。凶状持ちで、でかいだけの独活の大木だった夫をそこまで想い続ける理由は。

血みどろ絵……落語家の父親は10年前に殺害されました。その頃ねえやだったタツ子はなぜあえて不幸になるような人生を選んでいたのか。

奈落闇恋道行 ……歌舞伎役者坂東彦助は、舞台で大きなトチリをした翌日、自ら命を絶ちます。その真相は。



それぞれの作品のなかでは、まず、とある事件に対する表の認識、つまり、公に知らされる事件のあらましが語られます。
すでに事件は決着しているのですが、実は思いがけない真相がそこにあることがわかります。

薄皮をはぐように、次第に真相が明かされていく過程は、読み手が人の心の奥底にあるものを覗き込んでいく過程でもあります。

そして、そこあるのは暗闇です。
果てしなく落ち込んでいくような奈落の底。

ときには鋭く胸に刺さり、ときにはゾッとさせられ、

こういう心の闇を直視させられるような小説はどちらかというと苦手な私ですが、それでも読んでよかったと思いました。


まっとうに生きようとしている人がどうして闇に落ち込むことになるのか、うっかり潜ませた心の鬼から目をそらせないのはなぜか。
まさにすさまじいとしか言えません。


影踏み鬼  影踏み鬼: 翔田寛


※あらすじには、先に読むと面白さが減少することが書いてありますのでご注意ください。







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最終更新日  2005年09月06日 20時00分51秒
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Re:影踏み鬼:翔田寛(09/06)  
ときあさぎ  さん
こんばんは。
おもしろそうな本ですね。
でも、同時に読むのが恐いような……。
私は猟奇的殺人事件みたいなものも苦手なのですが、普通の人々の心の闇を垣間見るようなものも、ちょっと覚悟がいりますね。
だけど時代物なら、ちょっとは距離をおいて読めるかな?
(2005年09月06日 23時32分17秒)

Re[1]:影踏み鬼:翔田寛(09/06)  
samiado  さん
ときあさぎさん、こんにちは!

最初の「影踏み鬼」が若手の狂言作家が師匠から聞いた話、という形をとっているのですが、関連がないはずの短編集が、どれも狂言作家の目を通して語られているような気になります。

そのためかどうか、人間の業を描きながらも後味は悪くないですよ。

これはおすすめです。
(2005年09月07日 18時33分19秒)

Re:影踏み鬼:翔田寛(09/06)  
みっつ君  さん
こんにちは!
デビュー作読まれたのですね♪
未だにお目に掛かれないので、こんな内容なのかと楽しく読ませて頂きましたw
時代設定といい、これは読んでみたいですね。 (2005年09月08日 12時23分20秒)

Re[1]:影踏み鬼:翔田寛(09/06)  
samiado  さん
みっつ君さん、こんにちは!

>デビュー作読まれたのですね♪
>未だにお目に掛かれないので、こんな内容なのかと楽しく読ませて頂きましたw
>時代設定といい、これは読んでみたいですね。
-----
留守にしていてお返事が遅くなりました。

ミステリフロンティアで出会った翔田さん、米澤さん、森谷さんは、私にとってみんな気になる作家さんになりました。

翔田さんの作品は幕末から明治という時代設定に特徴がありますね。「消えた山高帽子」とは違う雰囲気ですが、かなり良かったので機会があったら是非読んでみてくださいね♪
(2005年09月14日 15時15分39秒)

Re:影踏み鬼:翔田寛(09/06)  
donmabo  さん

Re[1]:影踏み鬼:翔田寛(09/06)  
donmabo  さん
すいません。
他の方のコメント&その返事を読まずに書いたもので,samiadoさんが書いている内容とほぼ同じことをコメントしてしまったようです。
「後味は悪くない」というところが,私も好きなところです。
(2005年09月20日 01時48分01秒)

Re[1]:影踏み鬼:翔田寛(09/06)  
samiado  さん
donmaboさん、こんにちは!

>読み終わりました。気になる作家はどうしても追いかけてしまいますね(笑)

>>そして、そこあるのは暗闇です。
>果てしなく落ち込んでいくような奈落の底。
>-----
>事件と語りの時間をあけること(全部ではありませんが)によって「あかり」が仄見えるところがよかったと思います。
-----

やはり追いかけられたんですね。
それにしても既刊の2冊とも読まれたとは、早いですね。

東京創元社の「これから出るミステリ・フロンティア」のコーナーには
翔田寛『競馬狂ハリスの最後の不運』とありますが、これはワーグマンのシリーズっぽいですね。
(2005年09月20日 17時10分07秒)

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