ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年12月04日
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カテゴリ: 日本ミステリ
私が桐野さんに出会ったのは「顔に降りかかる雨」という、ミロという女性が主人公のハードボイルド。ミロの生き方、考え方が新鮮でした。

桐野夏生さんといえば、テレビドラマにもなった「OUT」と言う作品が浮かぶという人が多いでしょう。
主婦グループのうちの一人が殺してしまった夫を自宅の風呂場で解体すると言うショッキングな内容でした。

この作品は日本人作家初のエドガー賞候補となり桐野さんは、その受賞式のパーティーか何かに出席されたはずです。
その時の写真を見て、凄みのある美しさは外国の方々にも引けをとっていない、とちょっと誇らしいような気持ちになったものです。

その後「柔らかな頬」を読んだのですが、これには不満でした。読み応えはあったものの、結末のつけ方が苦手なものだったんです。単純な人間なので、かなりもやもやが残りました。

ということでしばらく離れていましたが、「アンボス・ムンドス」と言う題名にひかれて今回読んでみました。

7編からなる短編集です。
植林|ルビー|怪物たちの夜会|愛ランド|浮島の森|毒童|アンボス・ムンドス





もしかしたらラブ・ストーリーになっていたかもしれない二人の話ですが、結局地獄を経験することになってしまいます。これは運が悪かっただけなのでしょうか?
話が進んでいくにつれ、実はこの話自体がアンボス・ムンドスに満ちていることがわかってきます。
ますます切れ味が鋭くなった、というのが久し振りに読んだ感想でした。

この短編集には、現状に不満を持っているが、それを打開することもできない。そしてそれを周囲のせいにして悪意を放っている女性が描かれています。
悪意はどす黒くまとわりついて彼女たちを醜くしているけれど、人ごととは思えない。自分に鋭く突きつけられるものがあります。

自分では美しく生きて行きたい(生き方が)、たとえ力尽きて倒れようとも光の方を見ていたい、と思っているつもりですが、例えばレジに並んでいる時に割り込みをされただけでその人に憎しみを感じることだってありますから。

女性の嫌なところはできれば見たくない、読みたくないと思いつつもついついページをめくってしまう、痛いところをつかれながらもやめられない、読ませる力のある作品でした。



アンボス・ムンドス  アンボス・ムンドス : 桐野夏生








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最終更新日  2005年12月04日 22時22分46秒
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