ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年10月06日
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カテゴリ: 日本ミステリ
ミステリ・フロンティアの作品は、やはりミステリ色は薄いものが多いようです。

作者は女性です。
桜庭一樹というペンネームをつけた理由は、「先入観なしに読んでほしかったから」だとのこと。「GOSICK」シリーズなど、ライトノベルで活躍されており、本作は初めての一般向け作品です。

題名は多分P・D・ジェイムズの「  女には向かない職業  」からきています。
女性には向かないと言われながらも、22才のコーデリア・グレイが女探偵として懸命に頑張り、成長していく話。良質のミステリです。

この作品はそれとはだいぶ様子が違います。



葵は、友人の前では明るくひょうきんな姿を見せていますが、家庭ではアル中で暴力をふるう義父と、生活に疲れきった母と共に重苦しい毎日を送っています。

楽しいのはゲームに夢中になっている時だけ。

夏休み、彼女は戦時中から残る廃墟にこもってゲームをしている時に、クラスメートの宮乃下静香と出会います。学校では地味で目立たない図書委員なのに、ゴシック調の服を身にまとってはっきりものをいう静香に戸惑いを覚えますが……。



読んでいて、中学生の頃の気持ちを思い出しました。
子供ではない、でも大人にはなりきれない頃。子供に見られたくないし、大人に見られるのも嫌でした。


ライトノベルの軽さを残したような作風(と言って良いのか)で、淡々としている割に、思春期の頃の気持ちを思い出させられて、かなり痛かったです。

描かれているのは等身大の中学生の気持ち、
といっても、今どきの子に限りなく近い姿でしょう。それはドラマ、「野ぶた。をプロデュース」の中でもあったように、ひょうきんを演じていたクラスの人気者が、次の日には誰からも口をきいてもらえなくなってしまうというような友達関係にも現れています。

幼なじみの男の子に彼女がいるとわかった後の、微妙な態度にも。

しかも、恐ろしいことを話しながらも、二人ともあくまでも普通の少女でしかありません。
だからこそ、言う事は自意識過剰すぎだし、計画は幼稚だし、やることは不器用です。
誰もモンスターではないのです。

「一章◎用意するものはすりこぎと菜種油です、と静香は言った」
毎章このようなユニークなタイトルで始まり、その顛末が語られるというしくみです。

四季の移り変わりも美しい島だからこそ、一人になれる場所もあるけれど、都会だったらどこに行くんだろう、とか
恐ろしい考えを持っても、、誰か一人でも受け止める人がいれば何も起こらなかったかもしれない、とか

大人の私は色々な事を考えました。





少女には向かない職業  少女には向かない職業 :桜庭一樹


2007年文庫化
少女には向かない職業 :桜庭一樹







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最終更新日  2008年07月11日 23時27分54秒
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