ミステリの部屋

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2006年12月06日

仮面幻双曲：大山誠一郎

(8)

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：日本ミステリ（あ行作家）

時は戦後まもなく。ある地方都市での出来事。
占部製糸は紡績会社としては名の売れた企業だったが、双子がトップにつくと栄えるという歴史があり、社長は、かつて仲違いをした弟の双子の息子たちに会社を継がせた。
しかし、その兄弟は、あることから諍いを起こし、弟は家を出た。
弟は東京で整形手術を受けた後に行方をくらまし、その弟から兄への殺人予告が届く。
社長である兄からボディーガードを依頼された川宮兄妹だったが、寝ずの番に就いたその夜に兄は殺されてしまった。
弟が殺したのか……。
容疑者にはアリバイがあり、捜査は遅々として進まない。そして、第二の殺人が起こった。

時代は戦後間もない昭和22年の冬。
双子の弟がよこした、整形手術で全く別の顔になって兄を殺すという予告状。
これだけ聞くと何だかおどろおどろしいものを想像しますが、探偵小説の趣を持ちながらも、この作品は実にすっきりしています。

逸脱のないところはちょっと地味に感じられますが、本格推理の原型を見るような美しさがあるという点では貴重かもしれません。

私は久しぶりに本格推理だぁ、と結構喜んでしまいました。

弟は一体誰に成りすましているのでしょうか。
大体の人は予想がつくと思います。

けれども、その後のトリックや真相はとても意外なものでした。
正統派らしく、全員を集めて探偵が謎解きをする場面では引き込まれます。

驚かせてもらえた事は嬉しかったです。

ただ、ミステリ･パズルに徹しているあまり、時代の雰囲気や登場人物の描き方が素っ気無いと感じられるかもしれません。

これは本格好きにこそ、薦められる作品だと思います。