ミステリの部屋

ミステリの部屋

2007年09月05日
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一攫千金を目論む出場者の悲喜劇、ロードレースの戦略や駆け引きを、日本推理作家協会賞作家が圧倒的なリアリティで描く、感動の自転車冒険小説。



明治から昭和初期にかけて、一般道を走る自転車ロードレースが日本でも行われていたことをご存知ですか?
しかも国民的スポーツと言っていいくらいの人気だったそうな。

その頃の様子を伝える資料は少なく、自転車ロードレースを舞台にした小説もほとんどなかったことから、40歳で自転車に目覚めた作者は自分で書くしかないと思ったそうです。

日本を舞台にした自転車ロードレース、しかも実用自転車で下関から青森まで日本を縦断しようという大それたレースを描いたこの作品は、2005年版「このミステリーがすごい」第5位に入りました。

賞金目当てで全国からやってきたさまざまな境遇の男たちが一斉にスタートするにぎやかな場面から、すっかり引き込まれまます。

不正な自転車の改造をとがめられる者、とにかく前に出ようと無茶をする者、転倒に巻き込まれる者、脱水症状を起こす者。

レースの駆け引きや、自転車ならではの知恵、過酷な展開など、面白くて目が離せません。

レース経験のある響木が見込んだ者に声をかけて、4人がチームを組むことになるのですが、彼らはどうも事情がありそうな者ばかりです。



時は昭和9年、きな臭いにおいが漂うころ。
軍部は裏で何かをたくらんで不気味な動きをするし、オリンピックを前に帝都輪士会は圧力をかけてきます。

警察、軍部、記者、宗教団体とちょっと怪しい人が多すぎですが、それぞれの裏に隠された事情は終盤にあきらかになります。

でも何よりも、色々な思惑を持って参加した彼らが、そんなことはどうでも良くなるほど自転車にのめりこむ姿に感動しました。

金?復讐?任務? 彼らは何のために走るのか?
その答えはぜひ、自分で確かめてください。





私が読んだのは単行本でしたが、
最近文庫化されました。











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最終更新日  2007年09月05日 19時12分56秒
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