ミステリの部屋

ミステリの部屋

2008年05月17日
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そこには僅かな軋みが存在していた。
姫川は父と姉を幼い頃に亡くしており、二人が亡くなったときの奇妙な経緯は、心に暗い影を落としていた。
ある冬の日曜日、練習中にスタジオで起こった事件が、姫川の過去の記憶を呼び覚ます。
――事件が解決したとき、彼らの前にはどんな風景が待っているのか。
新鋭作家の新たなる代表作。
(出版社より)


アマチュアバンドの練習中に、貸しスタジオで事件が起きます。
高校時代にバンドをやっていたという道尾さんの体験が生かさているのでしょうか。

タイトルの「ラットマン」とは、見るものに錯覚を起こさせる絵で、心理学の世界では有名だそうです。
ラットマンの絵は、見方を変えると全く違ったものに見えます。
その錯覚は去年の早稲田大学で行われた 道尾さんの講演会にて、実際に体験しました。

人にはありのままが見えているわけではない。
自分の目で見たからといって、それが確かとは限らない。

これが作品のテーマとなっています。

動機のある者は絞られ、現在起こった事件に、姫川が幼いころ家族に起きた出来事が微妙に関連しているように思えます。



またもや騙されました。

目の前の事件も、過去の事件でさえも、見た通りとは限らないのです。
巧妙なミスリードで、気持ちいいくらい揺さぶられました。

この作品は「シャドウ 」「ソロモンの犬 」と併せて、青春三部作の完結編だそうです。

最後の真摯な問いかけには、ホロ苦さよりも哀切さえ感じました。

ようこそ。ここが、青春の終わりだ。






ラットマン:道尾秀介






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最終更新日  2008年05月22日 19時18分47秒
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