「信じたい方向」に舵を切る——行動判断 | オンリーワン理念は、思いや志を文字にて表現してまとめたものです。言葉のチカラです。

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2025/11/29

■人は「信じたい方向」に舵を切る——行動判断の基準とは

　人は、膨大な情報の中から常に何かを選び取りながら生きている。しかし、その選び取り方は決して中立ではない。多くの場合、自分が信じたい情報、あるいは信じるに足ると「感じた」情報に自然と傾き、その方向へ舵を切って行動する。実は、行動判断の基準とは客観的な正しさよりも、主観的な納得感に大きく依存している。

その典型例がコロナ禍のワクチン問題である。政府やマスコミはワクチン接種を強く推奨し、多くの人はそれを信じて行動した。一方で、接種しても感染する人がいれば、接種しなくても感染しない人がいた。ワクチンとは何かという基本的理解の差、どの情報源に耳を傾けるかの差、周囲の雰囲気、社会的圧力などが人々の判断を大きく左右した。つまり、人は情報を「選ぶ」のではなく、自分が信じやすい情報へ吸い寄せられていくのである。

あれは30年ほど前、医師の友人を風邪で見舞った際、彼が注射ではなく点滴をしているのを見て驚いた。「注射しないの？」と尋ねると「注射は効かない。点滴が一番だよ」と言われ、続けてこの間「君がお願いするから注射しただけで、あれは商売なんだよ」と。本音を聞いた瞬間、“風邪に注射は不要”という確信が生まれ、それ以来私は予防注射は受けなくなった。経験に基づく実感は、外部の一般情報より強い説得力を持つ典型例である。

結局のところ、行動判断の基準は「論理」よりも感覚・信念・納得感に根を張っている。そしてその信念は、過去の経験、信頼する人の言葉、生きてきた環境、価値観といった要素の積み重ねによって形成される。人は完全な合理性で動くのではなく、心が動いた方向へ踏み出す。その意味で、人の行動とは“選択”ではなく“必然”と言ってよいのかもしれない。

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