今日の「プロフェッショナル」で、「校正」を職業としている大西寿男(おおにしとしお)さんをとりあげていた。
校正という仕事は、単に原稿の誤字、脱字をチェックするだけではないようだ。書いてある内容が正しいかどうかもチェックする。
職業柄だろうが、私も、本を読んでいて時々気になることがある。スペイン関係の本を読んでいて、スペインの古代の文化を紹介する部分に、「陶磁器」という単語があった。「陶磁器」という割と一般的に使われる言葉なのだが、陶器と磁器とは多くの点で違う。まず焼成温度。中国で磁器が現れるのは、後漢の時代 ( もっと前という説もある ) 、一般的には宋代だろうと思う。だから、スペインの古代には「磁器」はあり得ない。「土器」あるいは「陶器」と書くべきではないか。この旨を書店に伝えると、当初は何が問題なのかが伝わらなかった。二度目で、著者と連絡が取れたという事で、私の意図を理解してもらうことができた。
2020 年 10 月 5 日付で、中央公論社が以下のような「お詫びと訂正」を掲載している。
「中公文庫『盤上の向日葵』下巻( 2020 年 9 月 25 日発行)の初版本に、編集部のミスによる誤りがありました。」
その下に「訂正表はこちら」とあり、クリックしてみると、信じられない数の「ミス」が掲載されている。
大西寿男さんによれば、校正者の得る収入は、一字につき 0,5 円だという。 400 字づめ原稿用紙 100 枚の作品で、 4 万字。これを校正して 2 万円。もちろん、原稿用紙に文がびっしり書いてあるわけではないから、もっと減るだろうが。
ただ、誤字、脱字を「校正」して事足れりとするのと、編集者の目をすり抜けた間違い、それも様々な分野にわたる事実関係の間違いまでチェックしようと思えば、どれほど時間がかかるか。
大西さんが校正を頼まれるのは、多くが文学作品のようなのだが、大西さんは、「ここの部分は必要なのか ? 」という問いをゲラに書きつけている。そのことによって作品がよりブラッシュアップされると作者からは感謝されている。
若い時から校正に関わり、こだわりをもって仕事を進めてきた大西さんに挫折が来る。出版不況。校正にかける時間は削られ、こだわろうとすれば、睡眠時間を削るしかない。うつ状態となり、仕事ができなくなる。
そこからの再出発。
私たちは、編集、校正、印刷、製本が終わった「本」を手にしている。その重みを感じることができた作品だった。
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