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2023.09.28
あの頃 歌詞 kazu 作曲 shige ➀ある日 紫のバラが届きました添えられたカ-ドに あなたの名前あの日の事を 思い出すなぜ・・・今頃に私の心の中 戸惑うだけよ懐かしさだけ 走り抜けます②そうよ あのバラは私が好きなのよ優しくて可愛く 気高い花よ覚えてたのね うれしいわでも・・・どうしてよやり直すのはむりよ 私とあなた思いでだけを 残して過ぎる ③ワイン 傾けてひとり飲んでいますバラを抱えてくる あなたの笑顔忘れはしない 忘れないねえ・・・そうでしょう昔には戻れない 泣くのはいやよ私の心 閉じたままです著作権はkazu495にあります。無断使用禁止します。
2023.09.19
{その後}聡子が真理子に襲われてからやがて一ヶ月が経とうとしていた。聡子は特別怪我もしなかったが精神的にかなり参ってしまっていた。真理子は警察の取り調べを受け事件を起こした動機は聡子に対する嫉妬からと言ったらしい昇も警察から呼ばれ事情を聞かれたらしいがすべて真理子一人でした事というのが分かり家へ帰ってきていた。一ヶ月経ってやっと二人はお互いに話し合いをする気持ちになった。だが家で話すのは事件を思い出すかもしれないとの昇の考えで二人で小旅行をする事を聡子に提案し、熊本の黒川温泉に行く事にした。季節は真夏になろうとしていて毎日暑い日が続いていたある日二人は車で出かけた何年ぶりの二人だけの旅行だろう・・・子供達が小さい時は忙しい仕事の合間をぬって昇は家族旅行に連れて行ってくれたものだ。黒川温泉も昔のままで風情がある温泉街である。温泉に入り夕食をゆっくり取りながら二人でボツボツ話していった。以前にもこんな光景があったな~と聡子は思い出しながらもその事は口に出さなかった。昇は真理子とはあの事件以来きれいに別れており毎日早くに家に帰ってくるようになっていた。「聡子、俺達もう一度やり直しできるかな?」「そうね・・・」「俺は意気地がなかったんだろうね、真理子が疎ましくなったのは真理子と付き合いはじめてそんなにならない内だったんだよ。 だが真理子があんな性格だったから中々手を切る事が出来なくて」昇はまたビ-ルを飲みながら続けた「君にはほんとに申し訳ないことしたと思ってるよ。警察から電話があった時はもう身体が震えてしまって・・ でも、怪我がたいした事なかったのでほんとよかったよ」聡子はしばらく昇の話を黙って聞いていたがやがて自分の方から違う事を聞いてみた。「あなたは私の事知ってたのでしょ?」「ああ・・知ってた・・でも、俺がその前から真理子と付き合ってたからね。お前を問い詰める事なんて出来なかったよ もちろん気にはなってたけど。それに俺は全然家庭をかえりみない亭主だったしな」「そうね、私も寂しかったのかもしれないわ・・私は貴方に知られるのが恐かったのよ。あなたにきちんと謝ってなかったわね・・ごめんなさい」聡子はやわらかく微笑み昇を見つめていた。「俺の方こそ君に謝ってないね・・悪かったよ でもこれだけは言っておきたいのだけど・・」「なあに」「俺は一度でも君と別れようとは思った事はないよ」「私もよ」二人はビ-ルをお互いに注ぎ合いながらゆっくり食事をしていった。窓の外からかすかに聞こえる川のせせらぎが二人を包み、優しく奏でるのであった。お互いにもうわだかまりはなくもう一度これから先の人生を二人して過ごして行こうと思うのであった。終わり下手な小説を長々と読んで下ってありがとうございました。「聡子」は私の等身大ではありません。かなり想像して書いてみました。夫婦とは何だろう?・・・時々私も考え込んでしまうときがあります。でも、普通は時間が解決してくれてまた元の生活をしているようです私の人生もやがて折り返しに入るのでしょう。いえ、もう入ってるかもしれませんけど。笑これから先、まだまだ長いのでしょうね。自分が後悔しない生き方は
2023.09.11
{真理子の執念} 聡子はその後も昇とはあれ以来の関係でそのままの状態が続いていた春も過ぎて初夏になりそろそろ花の入れ替えをしなければいけない時期になっていた。そんなある日、聡子は庭に出て花をいじっていた。昇はもちろんいつものように会社へ出かけている。聡子の庭は通りに面しているので人の通りはよく分かるのであった。そんな中遠くの方から一人の女が聡子の家を盗み見している姿があった。まだ聡子は気がついてない様子で暢気に花の手入れをしていた。その後買い物へ出かけた時に近所の主婦から思いがけない事を聞かされた。「つい先ほど内田さんの家をず~と見てた女の人がいたわよ」私が「何か内田さんに用ですか」って聞いたら「いいえ別に・・」と言って去っていったとの事だった。聡子は不審に思いながら家に帰りカ-テンの隙間から外を伺っていたら、主婦が言ってたようにしばらくすると一人の女が近づいてきて通りを挟んだ向こう側から聡子の家を見ている姿があった。聡子はハッとして思わずカ-テンを閉めてしまった。またそっと覗いてみると女は身動きもせずにじっとこちらを見ているだけであった。聡子はその女に見覚えがあるような気がしていた。(そうだ、あの女に違いない)それはいつか聡子が康弘と食事をしていた時に近くにいた女に違いなかった。今は帽子を目深にかぶっているので顔は分からないが、あの特徴のある雰囲気はあの女に絶対間違いないと思った。聡子は気味悪くて女が入ってきたらどうしようか、昇に電話した方がいいのだろうか・・など色々考えていた。その時玄関のチャイムがなり、聡子は腰が抜けたかと思ったほどびっくりしてしまった外を覗いたら女の姿は見えず車だけが通り過ぎていった。聡子は恐る恐るインタ-ホンに写ってる姿を見てみたらやはりそこには今まで通りの向こうに身を潜めるようして我が家を見つめていたあの女が立っていたのである。前見た時も黒い洋服を着ていたが、今日もこの初夏を迎えて暖かくなってきたというのにやはり黒の洋服を着ていた。インタ-ホンごしに聡子は「どちら様ですか」と聞いた。女は「堺真理子と言います、奥様に昇さんの事でお話があるのですけど・・」その声はイチオクタ-ブ上がってるような少し高い声で昇の名前を言った。聡子はほんとは話などしたくもなかったが近所の手前、これ以上夫の名前を呼ばれたくなくて仕方なくドアを開けた。真理子は悪びれる風もなく堂々と玄関へ入り、聡子の目の前に立った。聡子は内心ドキドキしていたが相手に威圧感を持たせたら最後だと思い自分の方から強い口調で「主人の事だそうですけど、何ですか」と聞いてみた。真理子は「玄関先で話す事でもないので上に上がってもいいですか」まるっきり平気な顔でヒ-ルの靴を脱ぐとさっさと居間の方へ上がっていった。聡子が後ろから付いていく形になり聡子は益々不愉快な思いになるのだった。ソファに座った真理子は長い足を組みタバコを取り出して「灰皿貸してもらえませんか」と聞いた。聡子の家では昇は前からタバコは吸わず聡子も吸わないので灰皿は棚の奥にしまってあった。それを取り出し真理子を横から見てたら図太そうにしている割に真理子のタバコを持つ手が少し震えてるのを見逃しはしなかった。聡子はそれで少し落ち着き真理子が言い出すまで何も言わないでおこうとわざと黙っていた。しばらくそのままお互いに沈黙した状態が続いていた。真理子は少しいらついてきたらしくタバコを次から次と吸っていた。やがて真理子が話しはじめた「奥さん、ご主人と別れてください」突然、突拍子もない言葉を真理子は聡子になげかけた聡子はすぐには言葉が出てこず、たたぼんやりと真理子が吐くタバコの煙を追っていた。「昇さんと別れてよ」「別れてくれと言われても・・主人は何て言ってるんですか」「別れると言ってますよ」「そんな事嘘です。私は何も聞いてませんから」「私にはそう言いましたよ」「とにかく主人と話し合ってみますので今日はもうお帰り下さい」聡子は真理子と話していると胸がムカムカしてきて今にも吐きそうになるのだった。今は真理子の顔も見たくなくて一刻も早くこの家から出ていってほしかったのだ聡子がそう言いながら玄関を開けようと居間を出たところで真理子が突然に襲いかかってきた手には果物ナイフが光っており聡子めがけて今にもナイフが飛んできそうな気がした。聡子は咄嗟の判断で身体をよじり玄関を慌てて出て行った。何が何か分からずに聡子は隣の家へ逃げ込んでいった。隣の主婦が慌てて出てきてとりあえず聡子を部屋へ入れてそれから警察へ連絡を入れてくれた。聡子は裸足のままで出てきてガタガタ震えており歯がカチカチ鳴っていた。聡子の右腕の薄いブラウスが少し破れうっすらと赤く滲んできていた。真理子が襲いかかってきた時に腕を少し怪我したようだ。警察が来て玄関のところでまだナイフを片手に持ちぼんやりと立っていた真理子を連れていった。家の周りは警察騒ぎで野次馬が沢山集まり、警官が野次馬の整理をしていた。警察から連絡がいったのか、昇が慌てた様子で家へ帰ってきたのは隣の主婦に軽い怪我の手当てをしてもらい、警察に事件の経緯を聞かれているところだった。「聡子・・・・」昇は真っ青な顔で聡子の名前を呼んでいた。次回 完結編 続く
2023.09.08
{聡子の変化} 聡子の方は康弘とレストランで食事をしていた時に女と会って以来何故か胸に引っかかるものがあり、これ以上康弘と付き合うのは危険のような感じがしていた。聡子は昇に不満はあるが離婚までは考えてなかったからである。康弘に連絡を入れる回数が徐々に少なくなりやがて会わなくなっていった。康弘の方から聡子の家へ電話をかけるという事は絶対なかったし聡子の気持ちをよく理解してくれていたので聡子は安心していた。だがそう思ってたのは聡子の方だけで、康弘はただの気まぐれで聡子と会ってただけかもしれなかった。聡子は康弘とは会わなくなり元の昇の帰りをただ待つだけの生活に戻っていたが昇の方はまだ続いていたのである。無言電話もまだかかってきていたし、昇も前よりは少なくなったが夜も相変わらず遅い。聡子は無言電話はあの女ではないかと漠然と思っていた。昇には康弘の事に気がつかれたのか気がつかれてないのか昇の態度を見てても聡子にはよく分からなかった。だが、あの女が昇と関係があるとしたら昇は聡子が他の男と会ってたのを女から聞いてた事になる。それでも昇は聡子に問いただすという事はしなかった。聡子も昇の方にもあの女と何か関係があるなとは薄々分かっていたがそれを問い詰める勇気もなくそのままになっていた。聡子の前に康弘が現れてなければ聡子はきっと昇を問い詰めた事だろう それから数年が経ちその後の生活もマンネリ化してしまい、二人の子供も家を出て行き聡子の心はすっぽりと穴があいたようになった。今からずっとこの先昇との生活を続けていくのであれば今のこの生活を大切に考えてやっていかなければ・・昇にもまた自分の元に戻ってきてもらいたいと密かに聡子は思っていた。そんな矢先に昇からの食事の誘いであった。だが今昇が言った「別れようと思わなかったのか」は聡子にとり改めてどうだったのだろうと考えこむのであった。あの時は離婚する気もなく昇に知られるのが怖くて康弘との付き合いをやめたのだから・・聡子は逆に昇に聞いてみた「あなたはどうなの?」「えっ、何が?」「私と別れようと思ったの」「さあ・・・」昇は言葉を濁し聡子にビ-ルを注いでやった。その態度を見て聡子は昇に女の影があるのを確信させられた思いがした。表面上何でもないようにしててもまだ心にわだかまりがあれば二人の生活は上手くいかないように思えるのであった。二人は気まずい雰囲気のまま電車に揺られ自宅に帰りついた。お互いに別々に違う事を考えていて電車の中でも無言のままだった。昇と会うまでの聡子は久しぶりの昇とのデ-トに照れくさくもあったが嬉しくもあった。また気にいった洋服を買って喜んでもいた。これが今ではみんな白々しいものにうつっていく。その夜、聡子がお風呂から上がりかけていた時居間の電話が鳴っていた。昇が出たようで聡子は聞く気はなかったが脱衣所から出ようとしていた時だったので昇の曇ったような声が聞こえてきた。「もしもし・・内田ですが」「・・・」「もしもし・・」昇の声が急に押し殺したようになりボソボソ話しだした。「どうして電話なんかかけてくるんだ」「前の無言電話も君なのか」「今帰ってきたばかりだから出ていかれないよ」「何故って言われても・・・」「頼むから電話しないでくれ」そう言う声がしたかと思ったらガチャンと受話器を置く音がした。昇のイライラした感じが手にとるように分かるのだった。聡子は何故かすぐ昇の前に出ていかれず脱衣所でそのまましばらく時間を過ごしていた。聡子が居間へ出ていくと昇は椅子に掛けまたビ-ルを飲んでいた。しかめた顔をしていて眉間にシワが出ているのを見て昇がすごく老けたように感じるのだった。聡子は昇に声をかけるのもためらわれそのまま寝室へ入っていった。今日買った洋服をクロ-ゼットにかけながらこの洋服はいつ着るのだろうと思い沈み込む聡子であった。真理子の執拗な嫌がらせは昇が家いると分かってて電話をかけてくるまでになっていた。さすがにまだ聡子本人にはかけてこないがいつ聡子に話をするのか分からない状態であった。それでさえ、前に聡子に顔を見られているのだし・・・昇は今はほんとうに真理子の事を疎ましく思いはじめていた。聡子と別れてからまで真理子と一緒になるつもりなどはなかったのである。ただ、聡子が誰かと付き合ってたという事が心に引っかかり聡子から逆に「私と別れようとおもわなかったの?」と、聞かれた時にすぐさま「思わないよ」とは言えなかったのであった。たが、聡子も今では大人しく家にいるようだし、今の状態ではたぶん男とは別れているのだろう昇の考えでは何年か付き合ってはいたが何も関係はなかったのだと思えるのだった。ただ、その事を聡子に今さら確かめるのもためらわれるし、また逆に真理子の事を問いただされても昇には今はまだ返答のしようがないのであった。それで昇なりに思い悩み聡子を食事に誘い少しでもお互いに分かり合えばいいのだが・・そんな思いでの食事であったのに結局お互い気まずくなりこんな結果になってしまった。おまけに真理子から電話攻撃までされるようになり昇はつくづく憂鬱になるのであった。次回続く
2023.09.07
{騙しあい}その頃の昇は仕事盛りの40代で益々家庭をかえりみない生活をしていた。また仕事の事でもトラブルがあり頭を悩ませていた時期でもあった。聡子は昇がそんなに大変な仕事をしているとも知らずに、家庭をかえりみない昇にあきれながらも聡子自身も康弘と会っていたので昇に強い事も言わなくなっていた。その前は昇にかなり不満があり色々言っていたのが、言わなくなった事に対して昇は少し訝しく思っていた。聡子は自分の様子が変だと昇がうすうす感ずいている事など知る由もなくそれよりも上手く昇を騙していたつもりであった。昇もまた仕事のストレスでお酒を飲んで憂さをはらす日々であった。その時行きつけの居酒屋でたまたま隣同士になった35歳の未亡人(堺真理子)と知り合いになり付き合うようになっていた。真理子は妻の聡子と容姿が全然違い、髪はショ-トで背も高くおそらく165cmはあるようだ。洋服の好みも聡子はとちらかといったらシックで上品な感じが好きなようだが、真理子は反対に黒が多くどちらかといったらボ-イッシュな雰囲気を持っていた。真理子の主人は2年前に病死しており今は一人で保険の勧誘をしながら生活していた。子供がいなかったのが唯一残念だと言っていた。昇自身は軽い気持ちで深い関係になったが、女の真理子はそうではなかったようだ。無言電話が時々あるような事を聡子から聞いた時、昇は実はハッとしたものだった。もしかしたらその無言電話の相手は真理子かもしれないと思ったからである。そんな聡子と昇の騙しあいの生活が2年も続いた頃だった聡子は相変わらず康弘と月2回ほど会ってたわいない話をして別れるそんな事を繰り返していたある日康弘と夕食をしていた時、なんとなく誰かに見られているような気がしてふと顔を上げ周りを見渡した。斜め前の席に座っている髪がショ-トで黒の洋服をきている女と目があった。女は一人で食事をしているらしく前には誰も座っていなかった。女は聡子と目が合うと軽く会釈をした。聡子は思い当たるふしはなくそれでも会釈を返していた。康弘が「知り合いなの?」と聞いてきた。「知らないわ」「あの女の人は前に食事していた時も近くにいたよ」「え、ほんとうなの?」「この前はここと違っていたからね・・今日もここで会うなんて変だね」「誰かしら?」そう言いながらもう一度女がいた席を見たらもうすでに女の姿はなく、テ-ブルは片付けられていた。聡子は気味悪くなりしきりに誰だったかを考えていた昇の帰りは相変わらず遅くいつも飲んで帰ってくるようだった聡子は康弘と会う時はいつも夕方から9時頃までと決めていて昇が帰ってくる時間には必ず家にいるようにしていた。やはり昇に後ろめたさがあるのだろうか?・・聡子は一人そんな事を考えていたその日も昇は12時頃帰り、いつものように風呂へすぐ入りに行った。いつの頃からか聡子は昇に着替えを持って行くのをやめていた。食事も家ではしないし自分ともあまり話しをしない・・昇は何のために家に帰ってきているのか・・自分達夫婦はなんだろうと改めて思うのであった。たまたまその時聡子は思いつきで着替えを持って行き昇が脱いだ背広を部屋へ片付けにいった。何気なくポケットに手を入れてみたら何か手の平に当たりそのまま出してみた。中からは口紅のケ-スが出てきたのであった。聡子はケ-スを見ながら何故かこの前レストランで見た女の姿を思い出していた。前の聡子であったなら昇を問い詰めていただろうが、今の聡子には昇を問い詰める気力もなかった。そのままケ-スをポケットに入れ昇には知らん振りをしていた。昇の方は口紅ケ-スがポケットに入ってたのを次に背広を着た時に気がついた。自分は入れてはいないので真理子が意図的に入れたのは間違いなかった。だがこのケ-スの事を聡子は知ってたのだろうか?・・昇はこの背広をいつ着ていったか考えていた。確か3日前だっと思う。あの日は珍しく聡子が背広を片付けていたような・・・だとしたら聡子はとっくにこのケ-スの事は知っていたのだろうか?そこまで考えて聡子が知ってて知らない振りをしたというのであれば聡子自身にも何かあり、自分にわざと問いたださないのだろう・・そんな風に考えていた。ついこの前も真理子から「奥さんはこの前男の人と会ってたわよ」と意味ありげに言われたばかりだった。何故真理子がそれを知っているか不思議に思い聞いてみたがあやふやな言い方しかしなかった。その頃になると真理子の言動も少し度が過ぎてきており昇は真理子の存在がかなり重荷になりはじめていた。もうそろそろ別れる潮時かもしれないなと思い少しずつ距離をおくようにしていった。だが真理子は昇の気持ちを見透かしたかのように先手、先手を打ってくるのであった。これは男の身勝手な考え方で別れを考えるのだが、真理子からしたら理屈ではなく本能的に行動を起こしていただけであった。(これはやっかいな事になるかな)昇は少しうんざりした様子で真理子を見つめていた次回 続く
2023.09.06
{再会}娘の香は中学入試でF市内の私立中を受験して合格し、自宅から一時間かけて高校を卒業するまで通学していた。その香の入学式の時、偶然に思いもかけない人に会ったのだった。式が終わり香を待っている時、花壇のバラがあまりにも綺麗に咲いていたので見て回っていた時であった。誰かの視線を感じるなと思いなにげなく前を見たら一人の男が聡子の方へ近づいてきていた。聡子がその男を確かめるのに時間はかからなかった。「あっ、康弘さん」その昔幾度となく口に出した名前が滑らかに出てきた。「聡子、久しぶり」高田康弘は聡子が19歳の時に初めて交際した男だったのだまだ19歳だった聡子は世間をよく知らず自分の前に現れた3歳上の康弘に夢中になってしまったそれから22歳までの3年間聡子は康弘と付き合いを続けていた。その間には喧嘩して途中3ヶ月はお互いに連絡もせずという事もあった。だが、いつのまにかまた戻りずるずると3年が経っていた。もちろんその間には結婚の話も出たし聡子自身康弘と結婚するものと思っていた。だが聡子の両親に猛反対され聡子はそれ以上両親を説得する術もなく聡子の方から別れを告げたのであった。あれからもう15年が経っている事になる。聡子は娘の香が出てきやしないかと気にしながら康弘との久しぶりの、まして意外な場所での再会に驚いていた。「お嬢さんがこちらの学校へ・・奥様とご一緒なんでしょ?」「うん・・今教室の方で娘といるんじゃないかな・・・そちらはご主人は?」「主人は仕事人間なので娘の入学なんかには出てこないわ」聡子は数日前、昇と軽い口喧嘩したのを思いだしていたほんとは康弘夫婦みたいに両親そろって出席してやりたかったのだ。何度となく昇に言ってみたが昇には全然その気がなくて結局聡子一人で付き添ってきたのだった。「今幸せなんだろう?」聡子の口調が少しきつかったのか康弘はそんな聞き方をした「ええ・・・まあ」歯切れの悪い言い方をした聡子が気になったのか康弘は手帳を取り出しながら「携帯を書いておくから今度電話してよ。一度ゆっくり話したいな」そう言って手帳に番号を書いたのを聡子に渡し「じゃあ」と言いながらその場を離れて行った。聡子は挨拶も出来ずに康弘を見送っていた。校舎の方から香が出てきており聡子に軽く手を振ってる姿が見えると聡子はメモを慌ててバックの中に忍ばせた。15年ぶりに見る康弘は頭も少し白髪が出ておりあんなにスリムだったのが横に貫禄が出てきている。メガネは昔からかけており優しい目元はあの時のままだった。それから2週間ほどたった午後、聡子は何する気もなく椅子に座りボンヤリしていたその時、電話のベルが鳴っているのに気がつき慌てて受話器を取った。「もしもし内田ですけど・・」「・・・・・」受話器の向こうは無言でシンとしている。この手の無言電話は半年ほど前から月に2,3回あっている。昇にも話はしていたが昇は「悪戯電話だろう」くらいに言って相手にもしていないようだった。だがこの日の電話は無言の中に何か得体のしれないものがあるように聡子は感じられ相手が切らないので、聡子も意地になったように受話器を握りしめていた。無言の中からかすかに犬の鳴き声が聞こえているようだしばらくそのままにしていたが聡子はなんだか馬鹿らしくなり聡子の方から電話を切った。なんだか後味の悪い電話だった。これが昇に関係している電話とはその時の聡子は思ってもいなかった。そんなある日香が朝6時に起き一時間かけて通学するようになって2ヶ月もたった頃聡子はバックの中に入れていた康弘のメモを取り出した。今まで忘れていた訳ではなく、もちろん気になってはいたが電話するタイミングもなくそのままになっていた。季節は梅雨に入り、毎日ジトジトした日が続いていた。聡子は時計を見て今の時間会社は昼休みに入ってるのを確認し思い切って携帯の番号を押した。「高田です」受話器から懐かしい声が返ってきた「あっ、聡子ですけど・・・」「ああ~聡子さん、電話かかってくるのをずっと待ってたんだよ よかったら今日の夕方出てこれる?昔よく行ってた喫茶店まだあるかな?・・そこで7時に待ってるよ。」康弘はそれだけ言ったら聡子の返事も聞かずにさっさと電話を切ってしまった聡子は受話器を眺めながらこの強引さは昔と全然変わってないないなと一人呟き苦笑するのだった。その日の7時、約束の喫茶店に聡子は出かけた。この喫茶店は昔康弘と待ち合わせに使っていたところだった。15年の歳月が過ぎその喫茶店は外装を替え新しくはなっていたが、中は昔のままだった。康弘はもう来ており手前の分かりやすい場所に座っていた今日の康弘は会社の帰りという事もあり紺系の背広を着ている、ネクタイはベ-ジュ系で赤のストライブがよく効いている。お洒落は昔からで今もそれは変わってないようだ。聡子の方は外が雨という事もありプレ-ンなグレ-のワンピ-スを着ていた。色は地味だがデザインが洒落ておりセンスのあるものを着ていた。首周りは少し広めにあいており、そこに同系の絹のスカ-フが巻かれており聡子の顔を柔らかくしていた。聡子はその日をさかいに月に1,2度の割で康弘と会うようになった。ただプラトニックなもので聡子にとって結婚してから始めて外からの刺激を受けたかのように新鮮で弾むような気持ちで康弘と時々会い、色々な世間話をしているだけで満足しているのであった。康弘は必ずもそうではないようだが聡子の気持ちとしては一度関係を持ってしまえば昔にまた戻ってしまうのではないかという不安があった。また、これは聡子なりに唯一昇を裏切っていないという強みを持っていたかったのもあるかもしれない。運よくというか香と康弘の娘とはクラスが違い康弘の妻と顔を合わせるという事は殆どなかった。これも聡子にとって康弘と会うのに好都合だったようである。丁度聡子が昇の目を盗んで康弘と会っていたのと同時期康弘の身辺にも聡子には言えない内緒事を持っていた無言電話はその後も度々かかってきていたが聡子は気にする風もなくやり過ごしていた。昇との関係も特別問題はないと聡子は思っていたのだが。次回へ続く
2023.09.04
(戸惑い)昇が予約を入れてるという和食の店は大通りから路地に少し入った所にあった入り口に「小料理屋 花谷」という看板が目に入った。暖簾は藍染めで渋くその中に花谷の文字が浮かび上がっている。中に入っていくといっせいに「いらっしゃいませ」と威勢のいい声が聞こえてきた聡子はさりげなく周りを見渡してみた。右手にカウンタ-があり左手にテ-ブル、奥の方が個室になっているようだ。テ-ブルにはそれぞれ小石原焼きの一輪挿しがあり生き生きした赤い小さなバラが一本さりげなく挿してあった。小石原焼きの渋さと赤々としたバラはなんともいい雰囲気を出し、こちらの女将のセンスのよさを出していた。女将に案内されながらも昇はかって知ったるなんとやらでサッサと自分から部屋へ上がっていた聡子も上がり席につくと改めて女将が挨拶にきた「いらっしゃいませ・・奥様もよくおいで下さいました。内田さんにはいつもご贔屓にして頂いてるんですよ」客商売を長年しているだけあって客扱いも慣れたものであった聡子も軽く頭を下げながら「主人がいつもお世話になっています」型どおりの挨拶を返した。まもなくビ-ルが運ばれ仲居が昇と聡子にそれぞれ注いで下がっていった聡子は先ほどの昇の態度の変化を怪しみながらも今はこの料理屋の雰囲気に気をよくしていたお互いに軽くグラスを合わせた。昇は一杯目をグ-と一気に飲んでしまいおいしそうに目を細めていた。聡子はビンを傾け「あなた、ビ-ル注ぐわ」と言いながら昇のグラスに並々と注ぎながらもう先ほどの事は忘れようと思っていた。ふと手元を見ると箸おきが凄くしゃれており、聡子は思わず手にとってみたそれは一輪挿しと同じ小石原焼きでできており、少し細長くて四隅がピンと跳ねたようになっていた。これは四隅が壊れないように洗うのに気を使うだろうな~と変な事を感心するのだった。取り留めのない話をしながら料理を食べビ-ルを二人で3本ほど飲んだ頃になると昇も少し酔ってきたのか饒舌になっていった。聡子も頬をほんのりと染め目に少し赤みが出てなんとなく色っぽくなってるようだ。そんな聡子を昇は眩しそうに眺めながら話は続いていた。聡子は横に置いてるス-ツの袋を思いだし昇の顔をそっと覗き込むと昇は機嫌よくビ-ルを飲んでるようだ今なら話しても大丈夫かなと思い話し掛けようとしたその時、昇の方が先に聡子に話し掛けてきた「聡子、俺達結婚して何年になるのかな?」聡子は昇に先に話出されたのでまた洋服の事を話すきっかけがなく言葉を引っ込めてしまった聡子は形よく並べられたお刺身を食べようとしていたのをやめ「今年の6月15日で21年になるわよ・・早いわね~」聡子は暢気そうに聞こえるように応えてお刺身を食べはじめた。続けて昇が「21年か、長いな~・・・幸雄が大学を卒業するまで後2年か」「そうですね、香は短大なので来年は卒業しますからね」聡子はお刺身を食べるのをやめ、今しがた仲居が運んできた揚げたての天ぷらを見つめていた。天ぷらが大好物な聡子は上品に盛り付けられた天ぷらに食欲をそそられ魚のキスを取り上げ口へ運んだ。「聡子は今の生活をどう思うか?」「今の生活ですか・・・そうね、子供達も離れて手はもういらないし、それに家を建てた時は生活も苦しかったから私も編物をして頑張っていたけど・・・今は何もせずに家にいるだけだから・・・・今の私は暇なのかもしれないわね」「暇かぁ~~」昇は何か物がつまったような歯切れの悪い言い方をした確かに今の聡子の生活はただ康弘の帰りを待っているだけのように感じる「何故ですか?」聡子は別に疑う事もせずに料理を食べるのに気をとられていた「俺と別れようと思った事はないのかい?」突然の昇の言葉に聡子は一瞬食べていた箸を止め、昇を見つめた。昇は何を言いたいのだろうか・・聡子は昇の気持ちが分からないまま黙っていた。聡子には昇に知られたくない内緒にしている事があったのだった多分昇には知られてないだろうとタカをくくってたところもあった。あれは娘の香の私立中の入学式の時の出来事だった。あまりにも偶然の出来事にそれからの聡子の生活は昇に秘密を持つ事となった次回続く
2023.09.01
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