全3件 (3件中 1-3件目)
1
ご報告小説の続きをUPしたいと思っていましたが、パソコンの調子が悪くなりリカバリしたら後が手を焼いています。笑続きはもうしばらくお待ち下さい
2023.11.24
ICUの前まで来たら先程の看護師が待っていて、「集中治療室へ入る説明をします」と言った。まずここへはいつも入る事は出来ないで予約をして入るとの事だった。それから靴をスリッパに履き替え白の割烹着のような上着を着て、ビニールのヘアキャップを付けて手を消毒してそれからやっと患者の元へ行った。3人は看護師の言うままに従いながら美佐子の枕元へ行った。「お母さん」千代の驚いたような声が聞こえた。千代だけではない孝雄も靖男も美佐子の姿を見たら言葉が出てこなかった。美佐子は酸素マスクをつけられ右手は点滴をされており動かないようにだろうか固定されていた。左手の指先には脈拍が分かるように挟まれていた。その他にもいくつもの管が身体に付いていた。ベッドの横には尿が入る袋が付いていた。意識がまだないのか声をかけても目をあけようともしない。「治療する時に麻酔を軽くしていますので、今はまだ眠られているのですよ」と看護師の説明は続いた。「今日の面会はこれくらいにして下さい。先程、先生の説明もあったと思いますけど、多分2日程でICUは出られると思いますよ。それから色々な検査が始まりますから」「ご家族の方は心配でしょうけど、今日はもうお帰り下さい。こちらにいてももう面会は出来ませんし・・何か急変した場合は連絡を入れますので」 看護師に促されて3人はICUの部屋を出て行った。皆、沈黙したままであった。それから入院の手続き、その他入院に必要なものなどを買い物したりと忙しくしていた。すべてが終わった時はもう外は薄暗くなり夕方はとうに過ぎ、夜になる頃に家へ帰ってきた。途中で夕食を買ってきたが、3人とも食欲がなく弁当はそのままの状態でテーブルに乗ったままになっていた。孝雄は2人を呼び美佐子の病気の説明をした。説明と言っても孝雄自身が医師の説明を上の空で聞いていたので、靖男と千代に話した事は簡単な事だけだったが・・「お母さんは膵臓ガンだそうだ」「えっ・・」「今から精密検査をするらしいからまた詳しい説明はその時にするらしい」「で、お母さんは治るのよね」千代が聞くのに孝雄は「まだ、何も聞いていないので分からないよ」とだけ言った。ほんとは先程医者からの説明で「ガンの進み具合が早いので手術も出来ない状態かもしれないし、命も持って後一年だろう」と聞いてはいたが、孝雄自身が今は美佐子の病気を受け入れる事が出来ないので医者が言った事もまだ半信半疑だったのであった。孝雄は気を取り直して千代と靖男に「とにかくこれからはお母さんの病気と付き合っていくしかないのだし、お母さんに心配をかけないようにしていってくれ、病気にさわるといけないからね」それから3人でこれからの事を話し合い病院へ行く順番、世話はどうするか、家事はどうするかなどを話し合った。 ICUに入れられていた美佐子が気がついたのは孝雄たちが帰って2時間もしてからの事だった。家で倒れた時には意識を失っていたおりそのま意識が戻る前に治療をする為に軽い睡眠剤を打たれたので今気がつくまで、ずっと寝ていた事になる。美佐子はうっすらと目をあけてみたが白い天井だけが目に入るだけだった。口元に違和感を感じそっとみたら何か口と鼻を隠されているのが見えた。それが酸素マスクだと気がつくまでそう時間はかからなかった。右手を挙げようとしたが、美佐子の意思とは反対にびくともしなかった。右手に繋がっている管を辿っていけば゛点滴の容器から一滴ずつポタ・ポタと落ちているのが見えた。手を無意識に動かしてはいけないだろうからか固定されている感じがした。身体にも他に色々と付けられており、美佐子は意識が少し戻ってきたのとは関係なく逆に身体は身動きできない状態であった。美佐子が目を覚ましたのにきがついた看護師が「具合はどうですか?腰は痛くないですか」と聞いてきた。美佐子はマスクをされているので返事が出来ず頭だけをうごかしただけであった。それから看護師から今までの美佐子の状況を説明され、家族全員が来てくれた事を知り安心したのかまた眠くなってきてうつらうつらとしてきた。 美佐子が2度目に目を覚ました時は朝になっており看護師達の数が多くなり入れ替わり立ち代わりして忙しく動いていた。美佐子の担当の医師が入ってきて美佐子を診察して、看護師に何か言っているのがかすかに聴こえてきた。「落ち着いているようなので酸素マスクを外すように」と言っているようだ。それから美佐子に向って「もうしばらくこちらにいて下さいね。午後には一般病棟に入れますから。何処か痛いところはないですか」と聞いてきた。美佐子は返事出来ないのになと思いながら昨夜の看護師にしたのと同じように頭だけを動かした。看護師から酸素マスクを外された時は顔が自由になりうっとおしいものが取れた感じだった。まだ右手は固定されており点滴が終わりがないように常にポツポツと落ちていた。 次の日3人はそれぞれ休みを取りもう一度病院へ行く事にしていた。昨夜は3人共寝る事が出来ず母・美佐子の事をそれぞれ考えていた。今日もお天気はよく行楽へでも出かけるのには丁度いい空を恨めしそうに見上げながら千代は朝食の用意をしていた。昨夜は皆食欲がなくて買ってきた弁当が包みを解かれもせずにそのまま食卓に載っていた。千代は簡単な朝食を作りながら、いつもは美佐子がこのキッチンに立っておりまな板の音がコトコトと鳴っていたのだとしみじみ思うのであった。孝雄と靖男が寝不足の腫れぼったい顔をしてキッチンに顔を出した。千代は首だけ後ろへ向けて孝雄に声をかけた。「お父さん、佐賀のおばあちゃんの所にお母さんの事知らせなくていいの」佐賀には美佐子の両親がまだ健在で二人だけで住んでいた。父親の正也が70歳、母親の芳江が67歳になっていた。孝雄の家から車で30分の所にある。孝雄の両親は結婚して5年ほどの間に相ついで失くしており、今は兄の明家族が実家を次いでいた。「そうだな、知らせなくてはいけないだろうが・・まだ先生からよく説明を聞いていないからな、今日行ったらまた説明があると思うからそれからでもいいんじゃないか」「そうだよね」靖男が口を挟みその話はそのままになった。孝雄は昨日ほんとは説明を聞いていたのだが、まだ美佐子が手遅れのガンで命が一年しかもたないだろうとはどうしても信じられず、医師の言葉をそのまま受け入れる事が出来ないのであった。だから今日また説明を聞いたら違う事を言われるような気がしていたので昨日の話を千代達に話す事はしなかった。 孝雄たちは簡単な食事を済ませていたら玄関のチャイムが鳴り「柴田ですけど」と声がした。隣の柴田が来たようである昨日あれだけ柴田夫人にはお世話になったので後から挨拶に行こうと思ってのた矢先の事である。孝雄は鍵をあけ「おはようございます。昨日は大変お世話をおかけしてありがとうございました。」と声をかけ、続けて「後ほどこちらから挨拶に伺おうと思っていのですが・・」と柴田夫人が何か言われる前に挨拶をした。柴田夫人は愛想笑いをしながら「いいえ、それはいいんですよ。で、奥さんの様子はいかがですか」と聞いてきた。孝雄は今柴田夫人に美佐子の病気を話すつもりはなく「まだ今から検査があるそうです。疲れのようですね、ついでだからゆっくり検査させようと思っています」と言った。「そうですか、ご心配ですね、そういえば奥さんは前から少し顔色が悪いような気がしていたのですけれどね。それも黄疸が出ているような感じが・・」と言って少し言い過ぎたと思ったのか慌てて「ごめんなさい、変な事言って。でも検査してもらったら安心ですものね。ではお大事に」と言い残して帰って行った。柴田夫人は悪い人ではないのだが、他人の事を詮索するのが好きなタイプだ。そういう人なので美佐子も柴田夫婦にはあまりいい感情を持っていなかった。それにしても今柴田夫人が言った「黄疸」という言葉が孝雄の脳裏から離れず、ずっと考え込んでいた。居間に戻っても考え事をしている孝雄を見て靖男が「お父さん、どうしたの」と声をかけた。「いや、今となりの柴田さんが言っていたけど、お母さんはそんなに顔色悪かったかな」流石に黄疸が出ていたかという事を聞く出来なかった。「そうね、普通が色黒なのでそう感じなかったかな。でもこのところ少し痩せてきたかなとは思っていたのよ。孝雄は千代でさえ美佐子の身体の変化にそれとなく記がついていたのに、夫の自分が何も気がついてなかったという事に少しショックを感じていた。その日は午後2時にICUの面会を予約していたので孝雄たちはお昼少し過ぎた頃に家を出た。車で20分のところに美佐子が入っている病院はあった。靖男の運転で病院へ向かったが、誰も何も話さず沈黙したまま病院へと行った。次回へ続く★著作権はkazu495にあります。無断転写は硬くお断りします。
2023.11.15
正也も芳江も新しい彼を連れてきて結婚したいと言い出した時二人は正直ほっとしたものがあった。強引に昇と引き離した後の美佐子を見ているのが辛いものがあった。それからしばらくして美佐子と孝雄の結婚式があり、美佐子は今までの家から一時間ほどかかる県外へ孝雄と新居を見つけ住みだした。やがて美佐子夫婦に長男・靖男が出来て4年後に娘千代が産まれた。それからの美佐子は子供達を育てる事に夢中になり学校の役員をしたりと忙しい日々を送っていた。昇の事を思いださない事はないが、子供達の世話に追われ平穏な生活が続いていた。孝雄も子供達の教育も熱心だし家庭の事もマメに動き良き父親をしていた。孝雄を愛しているか言えばよく分からない美佐子だが、孝雄に対して取り立てて不満はなく一応妻と主婦の務めは果たし、無事に月日を過ごしていった。結婚して10年ほど経ったある日の午後に思いもかけない人物から電話があった。「もしもし、美佐子」電話の声は生け花教室で仲良くしていた山下清子であった。「清子、久しぶりね」おもいがけない友達の電話に美佐子はなつかしさでいっぱいになり、お互いの近況などを話した。清子の電話の中で昇の名前が出てきて美佐子はドキッとした。「山田君ね、5年前に結婚して今東京にいるらしいよ」美佐子はドキドキする胸を押さえて聞き逃さないように受話器をしっかり当てた。清子の話では美佐子と別れる為に仕事も家も変わり離れた土地におばあさんと一緒に出て行ったらしく、そこで今度は車の営業マンとして働き親戚の紹介で今の奥さんと結婚したらしい。しばらくしておばあさんが亡くなったのを境に奥さんと子供と一家で東京へと出ていったとの事だった。美佐子は何故自分から離れて行ったのかを知りたくていつ言い出そうかと迷っている時に、清子の方から話してきた。「美佐子のお父さんが山田君のおばあさんに直接会って娘との付き合いを辞めてほしいと話をしに行ったらしいね」と言った。やはりそうだったのか、父親が・・清子の話はまだ続いた。「山田君は美佐子を本当に愛していたので、自分が身を引いた方が美佐子の為と思っておばあさんと共に姿を消したらしいよ」美佐子は清子の話を聞きながら「今ではそれでよかったのだ。昇も理解ある人と結婚できたのだから」と自分自身に言い聞かせていた。今まで昇の様子が分からずに心にひっかかっていたが、清子の話を聞いてから今の美佐子には安心するものがあった。昇の話を聞いてほんとはすくにでも昇に会いに行きたい気持ちが沸いてきたが、昇もまだ結婚して5年というから今会って昇の家庭を壊す事になっては申し訳ない気持ちと、美佐子の家庭に対する愛情も十分あったので、美佐子自身の家庭を壊す勇気もなかったのも事実であった★美佐子の病気 秋植えの花に植え替えをしていた美佐子は何度も腰を叩いていた。この腰の痛みは半年ほど前からありこの頃では頻繁に痛みがあるので、美佐子もそろそろ病院へ行ってみようかなと思っているところだった。美佐子は腰の痛みを簡単に考えており、歳をとったので骨も弱くなり痛くなってきたのだろうくらいにしか思ってなかった。だが、病魔は密かに美佐子の身体をむしばんでいったのであった。美佐子47歳の時である。花の植え替えが終わり水をやりながら春には色とりどりの花を咲かせてくれる姿を思い描いていた時、玄関のチャイムがなった。「宅配です」との声で美佐子は玄関に小走りで行き宅配を受け取りに行った。かなり大きな包みを宅配業者が重そうに抱えていたのを玄関の中へ入れてもらい判を押した。判を押しながら送り主をチラチラと覗いていたがよく見えず、業者が帰ったのを見計らいまたゆっくり送り主を確かめた。送り主は「中村健三」とあり、美佐子はこの名前に心当たりがなく不審に思い宛先を見たら「柴田洋平」とあった。「あら、お隣のだわ、間違えたんだ」仕方ないのでお隣に持っていこうと思い荷物を抱えようとしたその時、腰に鋭い痛みを感じ美佐子はその場から動けなくなってしまった。「まずい、ぎっくり腰かしら」美佐子はそんな事を思っていたが、腰の痛みはぎっくり腰の痛さとは違うようだ。生汗をかきながらなんとかはって電話で救急車をよんだ美佐子はそのまま意識を失ってしまった。平日だったので皆出かけており美佐子1人のむ時の出来事だった。隣の家の柴田夫婦が丁度買い物から帰り家の中に入ったばかりの時に救急車のサイレンを聞き近くで止まったので慌てて外へ出てきた。隣の家だと思い玄関に行きドアを開けたらそこに美佐子が意識を失い倒れていた。玄関の鍵は開いていたが、側に宅配の荷物があったのを柴田夫婦は気がつかなかった。救急車が到着して応急処置をしながら美佐子を病院へ運ぼうとした時に慶子に「お隣の方ですか」と聞き慶子が「そうですけど」と返事をすると「一緒に乗って付いて来て頂けますか」と言われたので慶子はその旨を洋平に伝えて美佐子と共に救急車へ乗り込んだ。美佐子の顔色は真っ青で呼吸困難でも起こしているのか酸素マスクを当てられた状態で病院へと行った。病院へ着くなり看護師たちが慌てて美佐子を処置室へと連れて行った。慶子は取り敢えず孝雄に連絡を取らなければと思い、以前美佐子から聞いていた孝雄の仕事先を思い出し電話帳をめくった。孝雄の仕事先は案外簡単に見つかり無事孝雄に連絡が取れた。一時間もしない内に孝雄が慌てた様子で病院へかけつけてきた。「奥さん、ご迷惑をおかけしました」「良かった、案外早く来られましたね」「はい、で美佐子は」「まだ今診察されているのではないですか」それから慶子は今までの様子を簡単に話してきかせた。「ご主人が見えられたのでもう安心ですね。私はこれで帰りますね」「ほんとうにありがとうございました。」柴田を見送った孝雄は今度は康夫と千代に連絡を取った。うまい具合に康夫は会社へおり、千代も短大にまだ残っていたようで連絡を取る事が出来た。それぞれにすぐかけつけるからと言って電話を切った。それからまたしばらく経って医者が出てきて処置が済んだ事をしらせた。「斎藤さん、奥さんは少しやっかいな病気のようですよ。今は処置が終わり集中治療室に入ってもらっています。詳しい説明は後でしますので」それだけ言って医者は去って行った。孝雄はまだ美佐子に面会できない事を不審に思いながらも医者の言う通りにまた30分程待たされてやっと看護師が迎えに来た。医者が待つ部屋にはいると孝雄に椅子を進め、改めて医師は自己紹介をしてから美佐子の今の状況を説明していった。「斎藤さん、では説明します。奥さんの病名は膵臓ガンです。明日からさらに詳しい検査をしていきますが、かなり悪く進行しているようです。」「え、すい臓がんですか」「はい、今まで腰が痛いとか、食欲がないとか言われてなかったですか」そう医者に聞かれ孝雄は今までの美佐子の様子を思い出そうとするが、頭が混乱しているのか何一つ思いだせないのであった。「はあ・・」医者はレントゲンで撮った写真を見せながら説明をしているが孝雄の頭には入ってこない。まだ医者の説明は続いていたが孝雄は上の空で聞いていた。説明が終わりまた待合室へ戻り1人ぼんやりしていたらそこに孝雄と千代が駆けつけてきた。「お父さん、お母さんは」孝雄は我に返りぼんやりした顔で2人を見上げた。「ああ、やっと来たね」「急いで来たけど、道が渋滞していたから」孝雄は「うん、うん」と頷くだけだった。「お母さんとは会えないの」と千代が聞くのに孝雄はそういえばまだ美佐子の顔を見ていないのに気がついた。「そうだね、お母さんの病気の事は家へ帰ってゆっくり話すから。今お母さんは集中治療室に入っているので勝手に入って行く事は出来ないのだよ」「じゃあ、僕がどうしたらお母さんに会えるのか聞いてくるよ、千代はここにお父さんといなさい」靖男がテキパキと行動するのを孝雄は頼もしい感じで見ていた。やがて靖男が戻って来て「今から会えるらしいよ」というので3人でICUの部屋へと急いでいった。次回へ続く★著作権はkazu495にあります。無断使用はお断りします。★
2023.11.06
全3件 (3件中 1-3件目)
1


