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前回のさらに続きです。1月22日。いよいよ新大統領の就任式の日。前日から、南米を中心にアメリカ大陸各国から大統領級の招待客が続々と首都ラ・パス入り。キューバのカストロ議長こそ来れなかったものの、ベネズエラのチャベス大統領、スペイン、チリ、ブラジル、パラグアイ、ペルー、コロンビア等の大統領がずらり。日本からも次官級の方がいらっしゃった様子。先住民の織物で作られたジャケット姿で国会に登場した新大統領は、就任式で涙を浮かべて宣誓。「権利獲得のために戦い亡くなっていった、革命家チェ・ゲバラ、トゥパク・カタリ、そして数百万の世界の先住民のために」と言って、式典出席者全員で1分間の黙祷。その後、1時間半に亘る演説では「少数の富裕層が天然資源を売り莫大な資産を手に入れる一方で、まだ電気も水もない村もあり、読み書きも知らない先住民が沢山いる」とボリビアの先住民が置かれている状況を訴え、さらに、「1950年代まで国会議事堂にも中心広場にも立入りを許されなかった先住民が、今、ラ・パスの広場に集結している。この光景は歴史的なことだ。人種差別、搾取、憎しみ、暴力のない新しい時代を築こう」訴えた。今回の大統領選挙は確かに歴史的なものだったのかもしれないなぁと思う。1492年のコロンブス到来以来、ボリビアだけでなく中南米の国々はスペインの支配下におかれた。ボリビアでは銀が沢山採れたので、スペイン王室の財政難救済のために銀の富が必要とされ、銀山で多くの先住民が過酷な重労働を強いられてきた、という歴史もある。1825年にスペインから独立したとはいえ、それは先住民の支配層からの独立ではなかったから、独立後も、先住民の状況が劇的に変わることはなかった。だから、先住民出身者が大統領という政治的トップの地位につくことなんて、これまで一度もなかったし、不可能なことだったのだ。その意味で、今回のエボ・モラレス氏が大統領になったことは、ボリビア人にとっても(特に先住民にとって)本当に歴史的なことなのだと思う。コロンブス以降500年間、先住民の誰もなしえなかったことが起こったのだから。ただ、問題はこれから。なぜならボリビアでは、政治的不安定や数々の混乱などで、独立後現在までの180年で190回(だったかな?)政権が変わっており、平均在任期間は1年未満。大統領の任期は5年だが、それをまっとうした人はゼロ。今回もいつまで持つか?という気はする。ちなみに先日、先住民系の女性と話したとき彼女はこう言っていた。「先住民のみんなはエボ・モラレスが大統領になったことで、すぐに国や自分の生活がよくなると期待するけど『すぐに』なんて無理。少しずつ少しずつしか変えられないんだから、私たちはそれを待たなくてはいけない。焦ったらよくなるものもよくならない」。まさにその通りだと思う。さてさて、ボリビアはどう変わっていくのだろうか。今回の大統領選を通して、南米事情やボリビア事情にますます興味が湧いてしまったのでした。 大統領就任を祝い、国会前広場で楽器を持ち盛り上がる先住民の人たち
2006年02月14日
前回の続き。1月22日の大統領就任式に先立って前日の21日、先住民による「祝いの儀式」が行われました。毎日新聞2006年1月23日の記事を抜粋すると。----------------------------------------------------------------------http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/archive/news/2006/01/23/20060123ddm007030095000c.htmlボリビア:先住民、世界遺産に集結 米大陸から1万人、“同胞”大統領の誕生祝う【ティワナク(ボリビア西部)藤原章生】22日に就任する南米ボリビアのモラレス次期大統領(46)をたたえる先住民の儀式が21日、ボリビア西部の世界遺産「ティワナク遺跡」で執り行われた。メキシコやエクアドル、アルゼンチン、米国など米大陸12カ国の先住民代表ら約1万人が集まり、ボリビア初の先住民大統領の誕生を祝った。 ティワナクには、インカ以前の紀元前1580年ごろから紀元1133年まで独自の文明があったとされる。「神のエネルギー」が降り立つという儀式で、モラレス氏は自身が属するアイマラ族の祈とう者の赤と黄を基調とした衣装などを授かった。 儀式を終え、石造の寺院に立ったモラレス氏は「私の大統領就任は世界の先住民の勝利だ」と述べた。 南米最貧国のボリビアの先住民は人口の60%を占めながら、スペイン植民地時代から土地と天然資源を奪われ、90年代まで政治から疎外されてきた。貧富の格差や差別は今も根深い。 モラレス氏は国内の富裕層らに対して「我々はあなた方、ボリビアの中間層や知識人を誇りに思う。だから、あなた方も我々先住民を誇りに思ってほしい」と和解を呼びかけた。 さらに、ボリビアで処刑されたキューバ革命の英雄、チェ・ゲバラと18世紀の先住民の英雄トゥパク・カタリの名を挙げ、「彼らの夢を実現するため、先進国が貧困や惨めさを放置するような世界を変えていこう」と締めくくった。(毎日新聞 2006年1月23日 東京朝刊)----------------------------------------------------------------------というわけで、招待された各国代表が大統領に挨拶をするため次々に登壇したのですが、2度ほど観客から大ブーイング。それは米国と国連の代表者が前に出たとき。やっぱりボリビアは反米・反帝国主義の色が強いんだなぁ、と実感した瞬間。補足。キューバ革命の英雄「チェ・ゲバラ」とは・・・。本名はエルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。1928年アルゼンチンの中産階級の出身。医学部在籍中、南米諸国を旅する中で先住民問題・労働問題など南米の社会問題に出会い、革命の必要性に目覚める。その後メキシコで出会ったフィデル・カストロ(現・キューバ国家評議会議長)とともに1959年キューバ革命を成功させる。キューバ革命後はラテンアメリカ全体の統合を目指した革命を進めるためボリビアで活動を続けたが、1967年10月ボリビア政府軍に捕らえられ、ボリビア中南部イゲラ村で処刑される(1997年にキューバとアルゼンチンの調査チームに掘り起こされるまで30年間この村に埋められていた)。現在イゲラ村近くのバジェ・グランデ市にゲバラ博物館、ゲリラ兵の墓などがある。大学時代の南米旅行を描いた映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」が2004年~2005年にかけて日本でも上映され、大きな反響を呼んだ。この映画のサントラも好評(おススメです)。 ティワナク遺跡での儀式。7色の旗は「先住民の旗」。
2006年02月13日
(今回はちょっと固めの内容です。あしからず。今から1ヶ月ほど前になりますが、去る1月22日ボリビア新大統領の就任式が行われました。新大統領誕生までの経緯を少しおさらいすると。昨年6月、反政府市民団体によるデモや暴動が活発化。それを抑えようとした警察との間で衝突が起こり、カルロス・メサ前大統領が辞任。(ここまでの内容は6月の日記にも書いているので参考に読んでみてくださいな。)その後の暫定政権を経て、去年12月18日に正式な大統領選挙が実施されたわけです(副大統領、知事、国会議員選挙も同日投開票)。大統領選挙立候補者は7名いたのですが、実際は、支持率上位2名の一騎打ち。一人は、先住民出身・反米左派のエボ・モラレス氏。もう一人は、保守系・親米のホルヘ・トゥト・キロガ氏(大統領経験者)。ボリビアの選挙は、国民による直接投票。大統領が決まるまでは、、1.選挙で過半数の得票があればその候補者が大統領に決定。2.選挙でどの候補者も過半数の得票を得られなかった場合→上位2名を対象に、国会で決選投票。という流れです。選挙前の予想は、「エボ・モラレスが首位を走ってるけど、支持率は30%台。もちろん過半数には達しないでしょ」。だったのですが・・・。ふたを開けてみると、エボ・モラレス氏が51%の得票で、「あらららっ?」という間に大統領に決まってしまいました。あっさり。で。このエボ・モラレス氏。どんな人かと言うと。1.反米左派「社会主義運動党(MAS)」の党首で、ブッシュ米大統領と対立するキューバのフィデル・カストロ国家評議会議長や、ベネズエラのチャベス大統領と親交が深い。2.米国が南米各国で主導している「新自由主義経済」を批判。「新自由主義経済」によって、外国企業がボリビア国営企業を次々と民営化。これにより、例えば、ボリビアの豊富な天然ガスは外国企業に利権の多くを握られ、ボリビア国民には恩恵が還元されていない、という状況。以前にもまして貧富の差が拡大し続けている。3.先住民アイマラ族系の貧しい農牧民の出身で、家が貧しく中学3年までしか通えなかった。→ 先住民を中心とした貧困問題の解決を訴えている。4.コカインの原料になるコカ栽培農家団体の代表。→米国政府がボリビア国内で行おうとしているコカ栽培規制策に反発。約20年前にはコカ葉合法化推進を求める運動で、機関銃を手に居並ぶ国軍兵に素手で詰め寄ったこともあるとか。※コカは先住民の間で昔からたしなまれてきた日常嗜好品。(5月31日の日記参照)。強烈な反米主義&コカ栽培推進者ということで、キューバのカストロ議長、ベネズエラのチャベス大統領に加え、ボリビアのエボ・モラレス大統領誕生で、米国にとっては「南米に新たな頭痛の種が増えた」と考えられているらしいです。ついでに言うと最近、南米の各国でますます「反米」路線が強くなってきているらしい。それから。エボ・モラレス氏は今まで下院議員だったのですが、これまで反政府運動の一環としてボリビア各地で「ブロケオ」と呼ばれる幹線道路の封鎖を頻繁に起こしてきた人。「エボといえばブロケオ、ブロケオといえばエボ」というくらい。ボリビアは鉄道が未発達なので、国内移動手段はほとんどバス。ブロケオがあると国内移動が全くできなくなるのです。何度ブロケオに泣かされたことか・・・。でもモラレス氏が大統領になったことで、今後はブロケオが各段に減るのかな?次回は、大統領就任式前日に行われた「祝いの儀式」の様子をお伝えします。 エボ・モラレス新大統領(エンジ色セーター)とキューバのカストロ議長
2006年02月12日
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