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明治38年夏。
熊本の第五高等学校の学生だった「私」こと阿蘇藤太(仮名)は、東京帝国大学法科教授宇野辺叡古に会うため上京するや、不可解な連続殺人事件に巻き込まれる。
帝大法科の高梨教授の構内での不審死にはじまり、続いて元帝大教授鳥居久章博士が駅のプラットホームで不審死、学習院の教授中倉金吾博士は毒殺される。
彼らは日露講和条約締結に異を唱えていた。
シャーロック・ホームズに憧れる藤太は、叡古教授の犯人探しに助手として付き合う内に、徳富蘇峰、松崎天民らの知己を得、原敬、西園寺公望といった大物政治家とさえ相まみえる。
いっとき中倉殺しの容疑者としてロンドン帰りの英文科講師夏目金之助の名が挙がるが、彼にはれっきとしたアリバイがあり、これは勘違いで迷惑至極。
二転三転する事件の謎を解明した教授は、「ある御方」の御前にて驚愕の真相を申し上げるのだが....
直木賞候補作。
ウンベルト・エーコをもじった「叡古」という名前の探偵役といい、歴史上の人物が多数登場、殺される法学教授の名前が「高梨」だし、虚実皮膜のパロディやパスティーシュが面白く、かといって記号論の薀蓄が延々披瀝されるて鼻につくといったこともなく、歴史群像劇のような津々なストーリーが展開されて読み応えがある。
一人称視点の一種の叙述トリックで、終盤である人物の正体があかされること、作品全体に仕掛けられていた謎が解けて、急に視点がクリアになったような感覚ななるのが心地よい。
これ、相当二本近代史に明るい人でも見抜けない正体なんではないか?良く出来ている。
とはいえ、ミステリーとしての構築は中途半端な不全感があり、食い足りなさが。
殺害方法が本当にそれで人が殺せるの?
といったもので、バカトリックと受け止めればいいのかな?
事件の伏線回収もすっきり行われず、犯人指摘も曖昧さが残る。
歴史ものエンタティメントとしては優れているが、ミステリーとしては今ひとつかもしれないが460ページを読んで飽きることなく楽しかったのも事実。
エーコ教授なかなか魅力的なキャラなのでシリーズ化しても良いかも。
百年の時効 2026.09.06
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封鎖館の魔 2026.09.04