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私が子供の頃、世界最大の望遠鏡といえばパロマ山の直径5mの反射望遠鏡でした。もちろん実物を見たわけではないのですが、写真で見るその巨大さにびっくりした記憶があります。あれから半世紀近く経って時代は進んだもので現代ではさらに巨大な望遠鏡を建造する計画があります。世界5カ国の協力によって計画されているTMT(Thirty Meter Telescope)です。直径30mというのですからその大きさは野球グラウンドの内野を飲み込んでしまうほどです。当然ですがそのくらいの規模になると一枚ものの反射鏡というわけにはいきません。実に492枚の六角形の鏡で構成され、合わせたサイズが直径30mということです。ちょうど蜂の巣を逆にへこませた感じ、といえばわかりやすいでしょうか。一枚一枚の鏡をコンピューター制御により研磨し、組み合わせたときにきれいな放物面を形成するようになっているのです。TMTは単に口径が大きいというだけではなく、最先端の技術が詰め込まれる予定です。その代表が空気のゆらぎを補償する機能です。目視でも星を見ているとちらちらと瞬いていますが、あれは空気が光を歪め乱れた結果を我々が見ているからです。ハッブル宇宙望遠鏡は宇宙空間にありますので空気のゆらぎによる画像の歪みを心配する必要がありません。これは大きなメリットで地上からの観測とは比較にならないほどの明瞭な画像を得ることができます。ではどうやって地上から空気の影響を取り除くことができるのでしょう。まず、地上から観測する方向にレーザー光を放ち、得られる画像イメージから現在の空気のゆらぎによる乱れを計測します。次にその乱れをキャンセルするように望遠鏡のイメージに加工を施します。するとそのままではぼやけていた画像が驚くほどくっきりとしたイメージに変わります。もちろん空気の影響は常に変化しますので連続的に補正を行う必要はあります。専門家はこれを光学補償と呼んでいるようです。それにしてもこれほどの大きさならば今までは観測し得なかった微細な光も捉えることができるでしょうし、それは可視光のみならず赤外線からガンマ線領域までの分析を可能にするということです。考えるとわくわくしますが、他の恒星系に存在する惑星の観測や分析、ビッグバンから数億年後のまさに幼年期の宇宙の姿をさらに仔細に見ることができるようになるのです。宇宙がいかにして生まれ、どのように進化してきたのか、それは我々自身を知ることと同義であり、われわれが果たすべき役割を解き明かす鍵になることでしょう。
2011年11月08日
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先日の日記でオリオン座の星、ベテルギウスが遠からずその一生を終え超新星となって爆発し消えていくであろうという話をしました。通常、星の内部で起こっている核融合反応では、最も重い元素でも鉄が最終物質です。これ以上の重い元素となると、星の最終段階である超新星爆発直前に起こる圧倒的な核融合反応で生成されるとされています。そして宇宙に撒き散らされたこれらの原子が長い時間をかけてたゆたい、再集合し新たな星やその惑星などを形作ることになるのです。我が太陽系も例外ではなくすべての元素はどこかで終焉を迎えた星々の残骸であると言えます。とすれば、我々の体、日常の生活で使っている品々や食べ物に至るまですべての源はかつて消滅した星々が遺した文字通りの星屑だったということになります。38億年前に芽生えた生命が長い長い時間をかけて現在に至るまで、地球上で輪廻し姿を変え、環境に適応しながら進化してきました。地球、太陽系、天の川銀河、宇宙とズームアウトしていくとなぜにここにこのような多様な生命体が存在しうるのか、不思議の念に絶えません。星々の残骸である多種多様な元素をあまねくリストアップし、すべての物質の特性を理解し、利用するに至った人間の知性とは何なのか。人間が担っている役割とは何なのか。星屑から生まれた我々もまたいずれは宇宙に散っていく運命を持っているはずですが宇宙は一体我々に何を望んでいるのでしょうか。世代は変われども細胞に散りばめられた遺伝子は、まるでそれ自体が生命体であるかのごとくわれわれに子孫を残させ、悠久の時間に抗いながら遺伝子の持つ新たな可能性を探らせているかのようです。我々の体は遺伝子を載せた船であるかのごとく、船から船へ受け継がれ新たな海原を目指して果てしない航海を続けていくことになるのでしょう。宇宙を統べる方程式があるのならその一つの解としてわれわれがここにいるのかもしれません。なぜなら我々ももともとどこかで輝いていた星の末裔だからです。
2011年10月27日
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これも某公共放送の同じシリーズの番組でやっていた特集なのですが、私の過去日記にもありました地球の脅威となる小天体の衝突をどうやって防ぐかという話です。過去の恐竜絶滅は最大直径数kmにもおよぶ小惑星の衝突によって惹き起こされた惨劇であるという説が現在有力となっています。近くはツングース大隕石の落下なども起こっていたようです。幅数kmというと論外ですが、数百メートルでもその破壊力は核爆弾何十発にも相当するほどで、陸上の都市部に落ちたりするとその被害は想像もできません。この程度の大きさの小天体は実は無数にあって太陽系の中を右往左往しているのです。その数、専門家の試算によると年間2万個とも勘定されているそうです。このような小天体を日夜観測し続け、地球に接近しそうなものを細かく軌道計算し早いうちに警告している機関もあります。その中で2029年に地球に最も近づき、少ない確率ではありますが地球引力圏内に捕捉される可能性のあるものがあります。つまり地球上に落ちる可能性があるのです。ちょっと前にタフガイが集まって宇宙船に乗り込み、今にも地球に衝突しそうな小惑星をボーリングして爆破させるという破天荒な映画もありましたが、実際にはどうなのでしょう? まああれはハリウッド映画(今はほとんどがB級映画ですが)なので現実味はありませんが、番組で紹介していた方法は既に実験・検証済みのようなのでちょっとだけ胸をなでおろしていただいて結構です。その方法はというと、小型の宇宙船を対象の小天体へ飛ばし、体当たりをくらわせるというものです。番組ではインパクターと呼んでいて、ある程度の距離に近づくと自動的に軌道を調整し過たず的を射抜くという方式になっているようです。これまでに培った武器産業のノウハウがはからずも役に立っている例でしょうか。そんなちっちゃなものをぶつけたところで役に立つのかという疑問もお持ちでしょうが、地球からの距離が十分遠ければ小さなショックでも結果的に大きなずれを生じさせますので効果絶大というわけです。他にもいくつか方法が考案されており、小惑星に軟着陸した後積んでいるエンジン(イオンジェット噴射とか言ってましたかね?)を作動させ、少しづつ軌道をずらしていくというアイデアとか、小惑星に接近したまま飛行し、その相互重力の影響でやはり軌道をずらしていく方法とかいろいろあるようです。こんな脅威を乗り越えるまでの文明を築き上げたのだなあと感慨無量でもありますが、地球の表面の危機は依然として後を絶たず、悪化の一途をたどっているようにも見え、その対策も統一化もままならず、国家単位で右往左往しているばかりというのもなんとも皮肉なことであります。いっそのこともうちょっとまとめて小惑星が地球を目指して押し寄せてくればちょっとはまとまって協力し合えるのでは?と考えるのは悪い冗談でしょうか。
2011年10月25日
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先日、某公共放送でオリオン座の明るい星の一つであるベテルギウスが、遠からず超新星爆発を起こして消滅する可能性が高い、という科学番組を放送していました。ベテルギウスはオリオン座を形作る大きな四角形の左上隅に位置する一等星です。末期の星らしく鈍く赤く輝いているのですぐわかります。なぜこれが近いうちに終焉を迎えることが分かるのかというと、最新の精度の高い観測機器による観察の結果であることを紹介していました。一つにはそのスペクトル。終末を迎える星の典型的な輝きであることがそのスペクトルから読み解くことができるからです。そして星の形状。わずかに離れた位置から同じ性能の望遠鏡で星を観測すると干渉縞が現れ、その形から星の輪郭が類推できるのです。これによると、ベテルギウスは球に近い太陽などと比べるとダルマのように球の内側から盛り上がった部分がせり出し、あぶくが複数固まったような状態になっているそうです。末期を迎えた星は内部からの圧力が限りなく増大し、それが表面の弱い部分から盛り上がって瘤のように突き出してくると考えられています。やがて、星は最後の時を迎えます。いわゆる超新星爆発です。ガスを宇宙に撒き散らし、何万倍もの輝きを放ちそして消えていきます。そうです。あのオリオン座が星を一つ失うのです。考えただけでも異様な光景と言わざるを得ません。天文学者によると超新星爆発を起こしたその輝きは月の何百倍にも達するそうです。ここまで明るいと昼間でも目に見えるでしょう。実を言うとこれまで観測された超新星と比べると我々からの距離が異様に近いのです。その距離なんと200数十光年。これまで観測された近傍の超新星までの距離がその十倍にもおよびますので宇宙的感覚でいうと目の前の出来事になります。ところでそんな近くで星が爆発して影響はないのか?という疑問も生じます。星が超新星爆発を起こすと両極から垂直にガンマ線を放射します。もしそれが地球の方向を向いているとかなりの量のガンマ線に曝されることになります。そこで天文学者もベテルギウスの回転軸を探るべく様々な観測を行なってそれを求めました。それによると我が太陽系から少しずれていてほとんど影響はないという結果になりました。一安心ですね。地球に三葉虫なる生物が繁栄を極めていた頃の地層からある示唆的な事実が確認されています。ある時代を境に地球表層部に生息していたと思われる三葉虫がぱったり見られなくなったというのです。それ以降に発見されるのは深海に棲む三葉虫の化石ばかりになるそうです。つまり表層部に棲む三葉虫に何か破滅的な事象が発生し、絶滅したことを示しています。これがひょっとしたら超新星爆発によるガンマ線バーストによるものではないかということです。何億年も前の話ですので確たる証拠はないのですが、事実であればなんとも恐ろしい話ですね。超新星爆発それ自体も一大スペクタクルで壮大な宇宙ショーになることでしょう。もし立ち会うことができたらとてもラッキーだと思うのですが、その後のオリオン座を見て何を感じるでしょうか?ぽっかりと穴の開いたような気分になるのか、諸行無常を感じるのか。時空の中ではなんとも儚い我々の存在であることか。
2011年10月24日
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皆さんはテラフォーミング(Terraforming)という言葉をご存知でしょうか?テラは地球という意味ですので、地球を形成する、つまり他惑星の地球化を意味する言葉でかなりSFチックな用語かもしれません。News Scienttist の記事によると、アリゾナ州立大学の学生がNASAからお金をもらって火星のテラフォーミングに関する研究を行い、そのアイデアを発表したそうです。その内容はといいますと、火星周回軌道に人工衛星を配置し、巨大な鏡、この場合太陽光を反射させ火星地表に太陽エネルギーを送り込むための装置、を設置するというものです。光を反射する素材の風船状の人工衛星を多数寄り集め、直径が1.5kmにも及ぶ大反射鏡を形成するというちょっと途方もないアイデアです。、これがテラフォーミングにどのように寄与するかといいますと、これで直接植物を栽培する環境を作るとかそういったことではなく、火星表面でテラフォーミングのために働く人々の生活を支援するという目的のようです。まず、火星の表面温度というか雰囲気温度は、緯度にもよりますが、通常-140度Cから-60度Cという極寒の世界です。この一角に太陽光を照射することによって、20度C前後の人間にとっては最も心地よい温度帯の環境を確保することができるそうです。そうすれば、火星の表面で働く人々は、重装備の耐寒服の着用や、居住スペース用の断熱などの面倒から解放されます。さらに、この温度であれば水も液体となり、最も重要な飲料水の確保も同時に達成することができます。得られた水は帰路の燃料にも転換できるでしょうし、宇宙船に積み込むことだってできますね。なんとも大胆で面白いアイデアではあります。しかし、他の専門家によるとそのような大規模な反射鏡を火星周回軌道に組み立てるのは至難の業であるし、もうひとつ解決しなければならない重要な問題があるそうです。それは、大気や磁場の希薄な火星では太陽光線に含まれる有害な電磁波、特にガンマ線などの放射線をいかに取り除くがという難問です。つまり、太陽光を反射する際にそのあたりの有害な波長の電磁波を選択的に吸収し、赤外線から可視光線域の光だけをうまく取り出す技術が必要なわけです。実現にはまだちょっと無理があるかもしれませんが、このアイデアが将来陽の目を見る可能性もなきにしもあらず。考えただけでも楽しい想像です。ただ、願わくば、地球が人間の生活に適さない環境になってしまって、止む無く移住する局面になることだけは避けてもらいたいものです。そういう意味では、もっと地球の環境悪化に対する対策研究に資金を振り向けてもらう方がいいかもしれない、と思ったニュースでした。
2006年11月17日
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ハッブル宇宙望遠鏡は皆さんご存知のように地上600kmの上空で地球を周回しながら大気の影響を気にせず天体観測・撮影を行える人類初の大気圏外望遠鏡として活躍してきました。テレビ番組などで、同望遠鏡の撮影した驚くほど鮮明な深宇宙の写真に胸を躍らせた方も多かったのではないでしょうか。しかしながら打ち上げられたのが1990年。大気圏外の過酷な条件に耐えつつ16年余りが経過した今、老朽化は避けられません。そもそも積んでいるバッテリーなどの消耗はどうしようもありませんので、定期的にメンテナンスをしてやらなければならないのです。くわえて最新鋭の後継機の登場となれば、老兵は消え去るのみの運命を辿るのは必然かもしれません。それでも永らく人類の宇宙の目として果たしてきた功績から考えると、無残に打ち捨てられるのは忍びないという心情が関係者にあったとしても不思議ではありません。そこでハッブル宇宙望遠鏡の延命話が持ち上がり、老朽化した装置に最後のリフレッシュをしてあげようという計画と相成りました。しかしながら、ことは言うほど簡単ではなさそうです。ハッブルに最後の手当てをするためには技術者を派遣し、末期の水を飲ませるために人間がスペースシャトルに乗って赴かなければならないのです。折りしも「コロンビア」の悲惨な事故があり、スペースシャトルの安全性に一抹の不安がつきまという事態。すくなからぬリスクを覚悟せねばならず、また事故でも起きれば尊い人命が犠牲になりかねません。ISS(国際宇宙ステーション)を前線基地にできればよいのですが、ISSの軌道とハッブルの軌道はかなりずれがあり、万一の際に救援や救助を行うための時間的空間的余裕が厳しい状況です。なにしろ宇宙空間で遭難すると、地球上の絶海の孤島に流されるよりもっと厳しい状況が待っているわけですから。で、今回のミッションではハッブルのジャイロスコープの取替え、バッテリの追加、カメラなどなど。余裕があれば反射鏡の素子も交換する予定だそうです。このまま放置するとバッテリーが2010年まで、ジャイロスコープが2008年までといずれにせよあと数年の寿命が残されるままです。初代宇宙望遠鏡として、われわれに夢を与え続けてくれたハッブル宇宙望遠鏡の最後の活躍が見られることを祈りましょう。
2006年11月16日
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皆さん、長らくご無沙汰しておりました。巨頭星人です。当掲示板でもご指摘がありますように、実は巨頭星人の太陽系基地は冥王星にあったのですが先日の地球天文学者の会議で冥王星が太陽系9第惑星から外されてしまい、ついでに惑星航路が閉じられてしまったのです。(誰が閉じたんや?)私の過去日記で冥王星について書いたものがありましたが、あれは古きよき時代の名残ということでご容赦いただきますよう。今更書き直すのも面倒くさいし。(それが主な理由)そのため一時的に冥王星に閉じ込められてしまい、皆様と御目文字することが叶いませんでした。まあ、そんなわけで(?)久方ぶりの更新となったわけですが、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか?しばらく来ぬ間に地球もいろいろと大変なことが頻発しているようで同じ宇宙人として憂慮し、また同情に堪えません。地球温暖化も予想通り悪化の一途を辿っているようで、このままいくと居住可能な地域が激減して増え続ける人口を支えるだけの地の恵みも海の恵みも力を失い、何億という人々が飢えに苛まれながら命を落とすという最悪の事態が現実味を帯びてきているようです。中でも海洋資源に関しては思いのほか悪化が深刻で、このまま放置すると、ある学者の試算によれば2050年前後にはほとんどの海洋生物が死滅してしまうという戦慄すべき予告がなされています。これも地球温暖化の結果として海水温度の上昇と酸性化によるところが大きいようです。さらに人間の乱獲が輪をかけて事態を悪化させるであろうという予測です。魚を多く食する日本人にとってはとんでもない話ですね。とはいっても日本人自身も原因を作っている部分もあるのですが。京都議定書も肝心な国が批准を見送って、ジャイアンのいないドラえもんみたいでしたが、ここにきて米国では一般市民の温暖化に対する意識が大きく変わってきているようです。懸案問題のリストで温暖化がトップになっているという記事を目にしました。やっと某大統領の呪縛から逃れて、実態を認識し始めたのかもしれません。何しろ、米国は世界最大のエネルギー消費国なのですから、問題意識をもってもらわないと実効が上がらないのは歴然としていますものね。本当に久しぶりに日記を書きましたので(最近はブログというらしいですね)、ここにきて指がつりそうなのでこの辺でやめておきますが、次回はハッブル宇宙望遠鏡の復活というねたでお目にかかりたいと思います。ところで冥王星は矮惑星というなんだか2軍みたいな名前にされてしまったようですが、大阪弁にすると相変わらず惑星であることを主張しています。矮(ワイ)惑星やー!
2006年11月13日
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こんにちわ。前回は帰省先の九州で台風に遭遇してしまった話をしましたが、そのときもインターネットで台風情報は衛星からの画像を含め、子細に状況を知ることはできました。デイアフタートゥモローではありませんが、一度人工衛星から生の台風を見てみたいものです。現在、地球のはるか上空にはこのような気象衛星の外にも、いろいろな目的の人口衛星が多数飛び交っているのですが、ちょっとこちらの画像 をご覧ください。この映像はヨーロッパの Space Agencys Envisat 衛星が撮影したものをドイツ大学の走査画像吸収分光計により解析した画像です。赤く見えているのは二酸化窒素の濃度が高くなっている地域を示しています。明らかに都市部または工業活動が盛んな地域と一致していますね。一昔前ならば近代化のバロメーターを示す人間の文明の高度化の象徴といったところですが、もちろんいいことばかりではありません。二酸化窒素は生物の呼吸系統や肺にダメージを与え、副生成物として有害なオゾンを生じさせます。自然には、空気が高温に晒されるとき、つまり稲妻や、微生物による生産、または森林火災などの燃焼によって発生しますが、人間の活動によるものと較べると散発的で微々たるものです。濃度は薄いのですが、海洋上でも船舶が頻繁に往来する航路がそのまま読み取ることができます。それにしても中国の二酸化窒素濃度の高い領域の広さにはびっくりさせられますね。中国の人々の健康がちょっと心配になります。人間の活動の中で窒素酸化物と関連が深いのは重工業、発電所そして乗り物という化石燃料の燃焼が主なもので、現在の我々の生活から切っても切り離せない要素です。局地的とは言え、そこには多くの人間が住んでいますので、看過するわけにもいかず、エネルギー源の転換や過度な人口集中を抑える施策が必要になっている訳です。とりわけ中国での環境汚染は日本にとっては「近すぎる対岸の火事」という面もあるので、公害対策技術の技術供与や指導は積極的に取り組まなければなりませんね。遠い地域での公害も決して将来にわたって無視できるというものでもありませんので、国際的な取り組みがもっと議論されるべきでしょう。大きな視点で言えば、我々は地球という一つの環境を共有しているのですから。
2004年10月17日
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ご無沙汰しております。前回日記を書いたのは、まだ夏の真っ盛りだったのにいつの間にか秋風が吹いています。あ、私がさぼっていただけですね。(スミマセン汗)ところで、今年はほんとに台風の当たり年というか、地球温暖化の効果が顕在化しつつあるような不安を感じたりいたします。9月の末に姪の結婚式があり、巨頭星人の第二の故郷である九州に里帰りしておりました。ちょうど九州新幹線も開通したてということもあり、結婚式の後、試乗がてら南九州を散策して見ようと鹿児島、宮崎と小旅行をしゃれこんだまでは良かったのですが、なんと宮崎の青島で台風に遭遇してしまいました。見事なキックターンをかました台風21号は鹿児島から宮崎を駆け抜け、九州南東部に多大なダメージを与えてさらに西日本に爪痕を残したことは皆さんも記憶に新しいところだと思います。当初、宮崎から大分へ抜け、日田を経由して福岡へ舞い戻る予定だったのですが、日豊線に土砂くずれが発生し大分方面へは復旧に時間がかかりそうです。そこで鹿児島へ戻って再び九州新幹線を使って北上しようと思ったのですが、こちらも線路の点検のため開通のメドがたちません。そんなわけで宮崎の地でとんだ足止めを食らってしまい、実質2日間ほど無為な時間を過ごさなければならない羽目になってしまいました。これも日頃の行いが良くないことの報いかも知れません。反省反省。気の毒なのはそのとき泊まったホテルで、今年は既に台風のせいでロビーに面したところに植えていた木々が2回ほどなぎ倒されて植え直しをせざるを得なかったと嘆いておられましたが、台風去りし後の状態ではまたまた御苦労を強いられたことだろうと同情を禁じ得ません。まあ、今回の帰郷の最大の目的であった姪の結婚式は天候にも恵まれ、一族では最長老となってしまった私もなんとか役目をこなし、姪の父である私の兄へも義理も果たせました。あ、私事を長々と書いてしまって巨頭星人としての日記が書けなくなってしまった。台風も気象衛星という地球外の目で克明にその姿を捉えられるようになったのに、これを制御することはまだ到底できそうにありません。今回は同じく観測衛星によって明らかにされた大気汚染の実態に関するレポートをお届けする予定だったのですが、次回をお待ちください。(っていつだ?)
2004年10月12日
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先日、土星の輪が初期の太陽系のミニチュアモデルである、という記事を紹介しました。それに関連してNew Scientistにちょっと面白い記事を見つけましたので取り上げてみたいと思います。太陽が出来、太陽の周囲に蝟集し、たゆたっていた星間物質が徐々に固まり惑星となったという説が太陽系の起源としては最も支持されているのですが、実験を通してその惑星成長過程過程について新しい説が出てきました。実験は1998年に無人ロケット中の重力がほとんどない環境で6分間かけて行われました。その結果、ちりは無重力状態では従来考えられていた塊状になるよりはむしろ細長いひも状のものとして成長したのです。実験を行い、結果をまとめて1999年に発表したドイツの科学者は、今回の実験が最初の実際的な太陽系惑星の発生に関する研究だと述べています。惑星の発生については比較的よく説明されており、主星である恒星の周りを漂う星間物質が、その雲の中で互いにぶつかりあるいはくっつき合いながら、静電気の作用で成長していったとされています。さらに、ある程度の大きさになるとそれ自身が重力を持つようになり、周囲の細かい物質をどんどん引き込んで、雪だるま式に惑星に成長します。しかしながら、本当の初期の状態で静電気力がどのように作用していたかは定かには分かっていませんでした。今回の実験で、数百の粒子がひも状に蝟集し、時間とともに急速に成長していったことが確認されたのです。これはおそらく、固まり始めた核が任意の方向にスピン(回転)する際に回転の中心部よりは外側のほうで他の粒子を集め、その結果特定の方向に伸びたひも状になったのではないかと推測されています。この6分間の実験が実際の初期太陽系では1年かそこいらで起こった現象をモデル化できるのではないかと考えられます。しかし、それ以前の太陽の起源となった大きな分子雲が鎖状に伸びていくまでにはもっと多くの時間、おそらくは百万年ほどがかかったのではないかと推測されています。土星が持っている美しい輪もあと数億年もすると、どのように変化するのか分かりませんが、それを観察しつづけることができればもっと詳細に初期太陽系の有様が分かってくるかもしれませんね。人生は短い。自然は悠久である。しかし、人間が数億年にわたって知のバトンを渡しつづけることができれば多くの謎が解明されていくことでしょう。人類という種が幾多の困難を排して遥かな未来に生き続けていることを祈ります。
2004年07月14日
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皆さんは昨年の後半に起こった大規模な太陽磁気嵐を覚えていらっしゃいますか?磁気嵐によるさまざまな影響が取りざたされて、停電や通信への影響など、いろいろな警告がメディアで取り上げられました。あれからもう9ヶ月ほど経ちましたが、太陽系全体での影響はどうなり、どのような結果をもたらしのでしょうか? 本日はこの件に関してNew Scientistに掲載された記事を紹介します。10個以上の太陽表面のもつれた磁界が引き金となって起きた、高温ガスの爆発であるコロナからの大量放出物が、去年の10月から11月の約二十日間、太陽から放たれました。この突然の出来事で、太陽の自転の影響であらゆる方向へ吐き出された放射線および高速の粒子の突風は、コロナガスを超える速度で広がったのです。10月28日および、29日に、記録では20時間後に地球に到着し、その後毎時800万キロメートルの速度で惑星間を吹き抜けていったのです。この圧倒的な物理現象の全体的な速度は、これまで計測された現象の中でも最大のものと言えるだろうと、ミシガン大学天文学者がNASAの通信会議で報告しています。先例がないほどの数の地球内外の観測機器が、太陽磁気嵐を追跡し、太陽から放たれ急速に拡がっていく経緯を観測し、膨大なデータを得ました。これらのデータは、科学者が今後の磁気嵐の影響を予測する際の重要な手がかりになるでしょう日本では目立った影響はなかったものの、アメリカではフロリダ近辺の南方までオーロラが観測され、スウェーデンでは都市の停電を招き、国際宇宙ステーションの乗組員には、比較的ましな遮蔽効果のあるサービスモジュールに緊急退避する必要を生じさせたのです。地球に達した数時間後に、磁気嵐は太陽風から自身を保護する磁場を持たない火星を襲い、軌道上の火星探査船オデッセイの放射線観測装置に障害を与えました。また、コンピューター・シミュレーションは、この磁気嵐が、35億年にわたって火星の表層水の腐食を助長していたと思われる火星の超高層大気の一部を吹き飛ばした可能性がることを示唆しています。かつて火星には、現在よりもっとたくさんの水が在ったはずなのに、その水はどこへ行ったのか長い間謎でしたが、これでこの疑問に対する答が見つかる手がかりになるかもしれません。今回の太陽風の嵐のような現象と火星の水になんらかの関係があるのではないか、ということです。木星の探査船ユリシーズおよび土星探査船カッシーニのいずれも、両惑星の磁気圏に太陽風の磁気嵐がぶち当たった際に電磁波を確認しています。今年4月に、毎時240万キロメートルまで減速した磁気嵐は、今は太陽系から約110億キロメートルの彼方に遠ざかり、はるかな旅を続けるボイジャー2号にまで達したのです。まるで太陽がボイジャーに最後のエールを送ったかのようです。さらに、この速度から類推すると、ボイジャー2号に先駆けて孤独な宇宙の旅人となったボイジャー1号(今は太陽から140億キロメートルの彼方を旅しています)にもうすぐ到達するであろうとされています。太陽面の大爆発が発生して実に8ヶ月後のことになります。この距離になると、太陽風粒子が恒星間空間からの宇宙線や粒子と接触するにつれ、勢力はどんどん弱まっていきます太陽風爆発は一時的に太陽磁場圏を拡大し、2005年初めには半径6億4千万キロメートルほど球状空間を拡げるだろうと試算されています。その時点で太陽風の粒子や磁場がまだ十分なエネルギーを残している場合、星間物質に対して電磁波を生じさせ、それを観測することで距離を知ることができるので、恒星間空間の様子を探ることが可能であると期待されています。太陽面の端に観測される黒点の様子で太陽面の乱れによる太陽風爆発の予測や、それが起こった際に、星間物質との衝突による減速も考慮に入れた、ボイジャー2号までの到達時間の計算など、近年かなり正確なコンピューターシミュレーションをすることができるようになっているようで、科学者はこの現象を僅か前にかなり正確に予測していました。それにしても、これほどの規模の磁気嵐でも我々人間を含めた地球上の生き物になんら致命的なダメージをもたらさなかったのは地球の磁場、大気圏の力です。宇宙船地球号とはよく言ったもので、我々を十重二十重に防御するシステムが働いているのですね。自ら船の腹に穴を開けて沈没させるような愚かな真似はしてはならないとつくづく思います。
2004年07月11日
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土星探査宇宙船カッシーニは報道でもご存知のように、現在周回軌道に入りましたが、その直前に輪を横切る軌道を飛行し、さまざまな輪の写真を撮影して送信してきました。このうちのいくつかをNew Scientistのサイトで紹介し、解説していますのでご紹介したいと思います。暑苦しい時節、鮮やかな写真を見て心和んでいただきたいと思います。画像はカッシニの紫外線分光写真撮影(UVIS)装置を使用して撮影され、土星の輪の構成物質の異なる部分を検証するために色を強調しています。これらの写真は探査船が周回軌道に落ち着く直前、輪の異なる2つの部分を通過する際に6月30日に撮影されました。この映像を分析したボールダーのコロラド大学の天文学者は、土星の環が端の方へいくにつれ、より粉末っぽく氷状になることを確認していると語っています。氷とされている部分が水やアンモニアなどの混合物である一方、土星の環で見つかった塵埃や岩の砕片はケイ酸塩または有機的な物質であると思われます。 画像のうちの1つは、A輪として知られている土星の中央の輪の詳細を見事に表しています。微細物質が拡散した輪の内部は赤く着色されていますが、端部のより濃密な氷で満たされた部分はターコイズブルーで示されています。A輪の端の端のほうにある薄い赤い部分は、325キロメートルの疎らな空間で、エンケ間隙として知られています。もう一つの画像は、輪の内側のC輪およびB輪を同時に撮影したものです。この写真でも、細かい固体粒子である内側の赤い部分と、氷が主成分の青い端部領域を鮮やかに捉えています。これらの画像により、科学者は土星の輪の成り立ちが、やはり数億年前に彗星と当時の衛星が衝突し、土星本体の重力により土星の周回軌道に散らばった結果であると確信しています。、土星の輪の研究は太陽系の形成についての解明に大きなヒントを与えています。つまり現在の土星の輪は、太陽系が産声を上げ、惑星が形成される以前の状態である惑星の部品であった岩石や埃、氷塊などの物質が太陽を取り囲んでいた時代のミニチュアモデルであるということです。まあ、とりあえず天文学者の妄想(?)はさておき、この鮮やかな写真の眺めを楽しんでいただければ幸いです。
2004年07月10日
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さてさて、時ならぬ台風とともに、記録的な暑さが日本列島を襲っている昨今ですが、これが地球温暖化による厄災の序章であると感じる人も少なくないのではないでしょうか。憂鬱な話はなるべく避けたいところですが、この問題に関してはなるべく多くの人に現状を知ってもらい、温暖化対策が緊急の問題であることを認識してもらわねばなりません。私の感触では一般市民の方々のほうが、より鋭くこの問題を憂いていて、政治家や財界人になるほど興味がなさそうなのがちょっと気がかりですが。例によってNew Scientistからの記事です。皆さんは泥炭をご存知ですよね? 主に湿原に大量に存在し、ピートとも呼ばれ、古くは燃料としても利用されていましたが、石油や天然ガスのほうが効率が高いので半ば打ち捨てられている資源です。この泥炭が温暖化ガスである二酸化炭素を大量に大気中に放出しているのではないか、という疑惑があります。英国の科学者が、地球全体で数十億トンは存在していると言われる泥炭の炭素が、これまで考えられていなかったルートで、二酸化炭素として大気中に放出されているかも知れないと警鐘を発しています。しかも、大気中の炭酸ガスが増えれば増えるほど加速する悪循環に陥っているというのです。炭素が炭酸ガスになると言うと、普通はそれが燃焼し、酸素と化合することにより二酸化炭素になると考えがちですが、実状は違います。泥炭地は有機炭素の広大な天然の貯蔵庫です。ある見積もりでは、ヨーロッパ、シベリアそして北アメリカの湿原は、70年間の世界規模の産業排出物に相当する量を含有しているそうです。さらに気がかりなのは、これらの有機炭素が大量に水溶性の有機的な炭素(DOC)となり川へ溶け出し、ずっと排出されてきたということです。河川の水溶性有機炭素の量を世界規模で調査している英国の科学者によると、それは40年ほど前から始まり、年間約6パーセントの増加量を示しているそうです。水溶性の炭素が二酸化炭素として大気中に排出される主な原因はバクテリアです。バクテリアがせっせと水溶性有機炭素を分解し、酸素と結びつけ、泡立つガスとして川面から立ち昇らせているのです。なぜこんな恐ろしい現象が始まるきっかけになったのか。彼らはいろいろと仮説を立てて、データを取りながら検証しました。水量が増加し、それがより多くの有機炭素を溶け込ます原因になった、あるいは、夏の旱魃が枯れた植物の分解を加速し、同時にバクテリアの活動を促進した、などの仮説を立て、フィールド調査でそれを実証しようとしましたが、予想と結果は合致しませんでした。彼らは別の原因を考え出さなくてはなりませんでしたが、きっかけは大気中の二酸化炭素ガスの増加そのものに求められるのではないかという結論に達したようです。そこで、同じ条件で温室状のハウスを組み、異なった量の二酸化炭素濃度で植物を育ててみました。果たせるかな、高濃度二酸化炭素雰囲気で育った植物はより多くの炭酸ガスを土壌の水分中へ吐き出し、活発な同化作用を始めたのです。結果として、バクテリアの活動を促進し、ついでに土中に存在する炭素をより多く水溶性有機炭素へと変えていったのです。この高濃度二酸化炭素雰囲気の土壌は3年後には、普通の土壌よりも10倍もの水溶性有機炭素を含むまでになりました。しかもその傾向は継続的で、留まるところを知らないようです。ランカスター(英国)のエコロジー・水理学センターからの最近のデータでは、1988年以来ウェールズの高地の河川でDOCレベルは90パーセントの増加を示しています。この一連の調査にかかわった科学者は、我々自身の活動が地球の大気を正常な状態にコントロールしているシステムに重大な障害を与えており、このままでいくと、21世紀中ごろには水溶性有機炭素の分解による二酸化炭素の放出量は化石燃料の燃焼による排出と同じぐらいになってしまう、と警告を発しています。こうなってくると、これは我々自身の我々自身に対するテロとでも呼ぶべき状況になってしまいます。そしてそれはまさしく無差別であり、世界共通の緊急課題であることは間違いありません。何を優先し、何を犠牲にしなければならないか、世界の指導者たちが一刻も早く目覚めてくれればいいのですが・・。
2004年07月08日
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先日ご紹介したカッシーニ土星探査船は、土星の周回軌道に落ち着き、新たな調査段階に入りました。今回もNews Scientistによる土星の代表的な衛星であるタイタンについての調査報告です。カッシーニが送信してきたタイタンの写真は、どうやらこれまで科学者が想像していた姿とはかなり異なるものであることを示唆しているようです。カッシーニはタイタンまで34万キロメートル(月と地球の距離より少し短い)にまで迫り、タイタンの表面を仔細に観察することができました。タイタンはメタンの雲に包まれ、地質学的特徴や隕石の衝突によると思われる火口群などを含む、しみだらけの表面を持っていることが明らかになりました。これまでの低解像度による写真イメージでは、明暗の模様を持つ表面の構成は、明るい部分はアイスケーキであり、暗い部分は炭化水素で出来ていると考えられていましたが、今回の探査機による写真はその仮定を覆すものと言えます。カッシニのVIMS装置によるタイタンの表面反射光の赤外線分析では、明るい部分は炭化水素に富み、暗い部分は比較的純粋な氷であることが判明しました。キサナドゥ(桃源郷)と呼ばれていた巨大な明るい地域はこれまで考えられていた氷の山脈などではなく、粘稠な平原、おそらくはメタンの海である可能性さえあるようです。技術的には、タイタンを包むオレンジ色のもやを透かして表面を捉えるべく、偏光フィルターと特定波長透過用フィルターの2種類のフィルターを駆使し、ベールに包まれたタイタンの写真を撮影することに成功したのです。これによると、タイタンに浮かぶメタンの雲はタイタンの南極に出現し、高度はおよそ15kmで地球の積雲に良く似ているようです。今はたまたまタイタンでは南極の夏にあたり、これがメタンの雲が南極にのみ観測されたことを説明できる手がかりであるようです。つまり、微弱な太陽光といえどメタンを蒸発させるには十分なエネルギーを与えることが出来るからです。写真の一部を見ると表面にはっきりとしたH字型の地形が見られますが、これに関してはタイタン内部の何らかの地形活動に起因するのではないかと見る向きが多いようです。ちょっとミステリアスですね。いろいろSFチックなアイデアが浮かびそうです。ちなにみH鋼の柱が立っていたとか・・。(悪のりですね)惑星学者たちはこれについてはまだそれが何であるか皆目見当がつかないのが実状です。数日前にはH型の地形の写真が公開されていたのですが、なぜか今は掲載されていません。何か差し障りがあったのでしょうか?いろいろと謎がまだ残る写真ですが、カッシーニはこの後まだいくらでも接近する機会があり、10月26日には1200kmの至近距離まで近づきます。ここまで近ければ驚くほどの詳細な映像が撮影されるでしょうし、3Dマップを作れるほどのデータが得られることを期待しましょう。きっと猛烈な大気の風によるメタンの湖の逆巻く大波が捉えられかもしれません。ベールに包まれた星を、科学の力によって強引にその素顔を覗くと言うのは、見方によっては無粋なことかもしれませんんが、科学者にとっては無上の喜びで興奮に胸が打ち震える出来事なのですね。それでもなお、宇宙や太陽系には謎が無数にあるのです。
2004年07月07日
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木星の探査船ガリレオの活躍は、去年、私が日記でいろいろと紹介しましたので私の日記を読んでいただいた皆さんはよくご承知のことと思います。今日もNew Scientistからの話題でお送りします。今回は既にいろいろと報じられている土星の探査宇宙船カッシーニのお話です。カッシーニと言うと、土星の輪の最も大きな隙間に命名された発見者の名前ですね。カッシーニの間隙と言えば、土星の輪の最も大きな間隙で、大きな望遠鏡で条件がよければ見ることができるほどです。カッシーニは現在ゆっくりと土星の周回軌道に入りつつあります。それに先立って、報道もされましたように数ある土星の月の中でもっともユニークなフォービーという名前の小さな衛星の近傍を通過し、その際にかなり細かい観測データを得ることができました。この衛星の何がユニークかと言うと、32個ある衛星の中で、フォービーだけはつむじを曲げたように他の衛星とは反対方向に公転しているのです。しかもその形はまるで小惑星のようにいびつなジャガイモ型なのです。ニュースを読んだことがある人ならご存知だと思いますが、この惑星は、冥王星の遥か彼方、カイパーベルトと呼ばれる彗星の故郷である小天体群の一つが土星に捉えられて衛星になったものではないかと言われています。事実、その比重や組成などから判断すると彗星の核になっている小天体と極似しているのです。カッシーニの赤外分光器によると、フォービーの表面にはドライアイスが存在し、不ぞろいに表面の凹んだ部分に分散しているようです。おそらく太陽系が形成されていく段階で土星の主な衛星が完成した後に、土星の重力圏に取り込まれ、そのときの入射角度の具合で他の衛星とは異なる方向に回り始めたのでしょう。言わばちょっとひねくれた養子といったところでしょうか。もちろんカッシーニはあの優雅な土星の輪についての観測データも続々と送信しています。撮影された画像も見ることができます。輪全体は非常に薄く、最も大きな輪の内縁から外縁までの距離はは70,000キロメートルにも及びます。反面、その厚さは約100メーターしかありません。輪を形成している物質はいろんなサイズの氷の塊で、見かけよりは疎らな密度のものです。具体的には家ほどのサイズのものから、雪の粒子大まで、バラエティに富んでいるようです。大きな間隙以外の部分では連続しているように見える土星の輪ですが、近傍から観測すると数千の小さな隙間が存在しています。興味深いのは、構成しているそれぞれの輪が非常にはっきりとした境界、つまり鋭い輪郭を持っていることです。科学者は、通常は氷同士が行き交いもっと不明瞭になるはずだが、なぜこんなにくっきりした境界を持っているのか不可解であると語っています。まるで馬のしっぽでできた弦楽器の弓のようですね。さて、輪がどのようにして出来たかについてですが、まず輪の年齢を推定すると数億歳という若さであるようです。これはかなり新しいイベントだったんですね!かつての衛星が小惑星と衝突し、粉々に砕けたり、あるいは接近しすぎた彗星が土星の重力に捕われ粉砕されたのではないかどの推測がなされています。いずれにしても、これからのカッシーニの観測データから、より詳細な輪の生成過程や年齢が科学者によって明らかになってくるでしょう。我々の月も過去にそんな現象が起こっていれば、今ごろたおやかな輪を眺めることができたのでしょうか? もし地球がそんな輪を持っていたらと想像すると、歴史は大きく変わっていたのかもしれません。
2004年07月02日
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季節はずれの台風が次々に日本を襲い、なにやら不吉な前兆を感じたりする今日この頃です。ちょっと話題にするには遅いのですが、先日、金星が太陽面を通過するというなかなかお目にかかれない天文現象がありました。前回の金星太陽面通過は1882年のことでしたから、122年ぶりということになります。私などはそんな話を聞いて、初めて金星と地球の公転面がそれだけ角度がずれているのだと気付いたりするのですから間抜けな話ですが、折悪しく日本は梅雨の真っ只中。ほとんどの地域では太陽の顔を拝むことができなかったようです。晴れていれば太陽面突入から通過し終わる(あるいは通過し終わる時点は無理だったかも?)までの6時間はたっぷり観測できたのですが。金星は月などに比べるとはるかに遠い天体ですので地域差は殆どなく、世界中でこの現象を見ることができました。特にヨーロッパやアフリカでは初めから終わりまで、アメリカでは最初の部分は見れなかったようですが。この天文現象に関しては過去には1631年を最初として、6回の歴史的記述が残っているようです。1761年には金星に大気が存在するのではないかという推測がなされています。News Scientistのページにこの金星太陽面通過の際に撮影された写真が掲載されています。中段の拡大写真を見ると、金星の周りにかすかな光の帯が見られますが、これは金星の大気が光を分散させるためにこのように写ります。現在の観測技術ですと、遥か離れた恒星を通過する惑星のスペクトル分析からおおまかな組成を求めることができるくらいですから金星の上空の大気組成分析にも、大きな成果をあげています。次にこの現象が起きるのは2012年、8年後のことになりますがまたまた日本では6月の初旬で天気が危ぶまれる季節です。願わくば梅雨の晴れ間であることを祈ります。おっと、それよりその頃まで生きているかどうかも問題ですが。いや、私のことです。それにしても先日米国でG8の会議が開かれて、なにやらイラク問題だの中東民主化などが話し合われたようですが、グローバルな視点で話をするのであれば、現在の地球の最大かつ緊急の問題である地球温暖化の防止に関して何か話し合いが持たれても当然だと思うのですが、全くといっていいほど話題に上らなかったようです。いやしくも先進国が集まり、世界共通の課題を話し合うのであれば避けては通れない、いや真っ先に考えなければならないことなのに、いったいどうしたことでしょう?富める国の代表として世界をリードするべき立場の人たちがこの程度では、世界の未来は限りなく暗いと言わざるを得ません。
2004年06月12日
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皆さん、まずこちらのページをご覧下さい。そして妖しげな星雲の写真をクリックして拡大された仔細な映像も楽しんでいただきたいと思います。これはさそり座にあるNGC6302という、地球から4000光年の距離の惑星状星雲で、通称「バグ星雲」と呼ばれているものです。バグというのは虫(私よくこれに悩まされるんですよね。あ、いや虫に食われるという意味ではないのですが)のことで、まるでハエか何かが羽を広げて飛んでいるように見えることから名づけられたのではないかと思うのですが、本当にそうなのかどうか、はっきり知りません。地上からは望遠鏡でもぼんやりとその外観が眺められる程度ですが、この写真はハッブル宇宙望遠鏡によって撮られたもので、はっきりくっきり映っていますので内部の様子まで窺うことができますね。この星雲の羽の断面のところに超高温の星が在り、水素や窒素などのガスをイオン化して輝かせていることが知られています。このガスは太陽の8倍ほどの質量の星が赤色巨星になる以前に、質量の半分を宇宙空間に撒き散らしている状態なのですが、科学者の注意を惹いているのはその外見ではありません。中心の星から、羽のように見えるふた筋のガスの流れがなぜ生じているのか、何がガスを二分しているのか、この点に専門家の目は向いているようです。つまり、なぜ均等に広がり球状のガスにならないのかということです。もちろん、普通に考えると、恒星の自転力により、赤道方向にリング状にガスが飛び散るとする考え方も一理ありそうですが、それだけではこれほどの強い力は働かないのではないかとする専門家の分析があります。可能性として、中心の星には伴星があり、もうひとつの星が相互軌道平面に放出されたガスを引き寄せているのではないかとする説。この星の惑星のひとつに巨大惑星があり、主星が膨張する際に巨大惑星を呑み込んだときに、恒星の自転速度が急速に上昇(100倍くらいに)してガスの拡散が赤道平面方向に加速されたとする説。もし、太陽に木星クラスの惑星を放り込むと太陽は気が狂ったように早く回転し始める、と科学者は推測しています。ですから、ガス星雲の源となった恒星には水星ほどの軌道に巨大惑星があったのではないかと想像することもできます。このことは、以前某国営放送の番組にあった、恒星の直近を高速に周回する巨大惑星のモデルと合致しています。ひとまずは電波望遠鏡によるさらなる観測からもっと詳細な姿を捉えることが必要なようですが、科学者を興奮させているのは中心部の星の温度の高さです。太陽の表面が5000~6000度C程度に比べ、この星の温度はなんと250,000度Cにも及ぶのです。白色矮星と呼ばれる太陽クラスの星の残骸でも100,000度CほどなのですからスーパーAクラスの熱い星ということができます。天文学者は、この星が燃料となる水素を吐き出す一歩手前の、星が最も熱くなる瞬間を捉えた結果なのではないかと推測していますが、250,000度Cという温度はちょっと想像を超えていますね。そんな温度を導き出せる計測技術というか分析技術も凄いなあと思ったりしますが。ところで、バグ星雲の近くに俗称「出目金星雲」なる面白い天体もあります。右下の小さな球が三つ並んだ星雲ですが、出目金に見えますか? 欧米では、猫足星雲とも呼ばれ、球が猫の肉球に見立てられているようです。ちなみに左上の星雲は「彼岸花星雲」と呼ばれています。もうすぐ、星空が賑やかになる夏です。夕涼みを兼ねて星空散歩を楽しんでいただくのも一興かと。
2004年05月03日
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4月は異様に暖かい日が続いて、日常生活的には過ごしやすいとも言える気候なのですが、なんだか地球温暖化の兆しがいよいよ強まってきたのかという感じもして不気味です。どこかの国では世界のリーダーシップを強めるべく、軍事的に充実を図っていかねばならないと惜しみなくお金をつぎ込もうとしていますが、却って危険度を増すだけでしょうから、代替エネルギーの開発とか、温暖化防止の方へ半分でも振り替えてくれたら少しは尊敬をしようかという気にもなるのですが・・。大国であるがゆえにそのリーダーの資質は世界に大きな影響を与えるということを自覚して欲しいものです。さて、陸上の温暖化対策は識者や問題意識の高い人々の間でさかんに論議されているのですが、海中、特に水産資源が豊富な比較的浅い海域での温暖化に対する影響はどうなっているのでしょうか?地球表面を取り巻く大気の温度が上昇するわけですから、当然浅い海域への影響は看過することはできません。ここ数年、珊瑚から鯨に到る殆どの海洋生物に病気が広がっているという話が海洋学者の間で穏やかならぬ懸念として持ち上がっていました。例によってNew Scientistからのリポートですが、最近、アメリカの研究者がこの疑惑が正しいとする明らかな証拠を発見したと報告しています。1998年に世界中の海洋生物の疾病に関する専門家たちが、より多くの海洋生物に病気が頻発する傾向にあると警告を発しています。珊瑚が菌類や藻類による感染で死につつあり、一方で鯨やオットセイなどの海獣類に新しいウィルスが発見されています。西洋マイワシがウィルスにやられ、攻撃的な寄生虫が、養殖されている牡蠣やホタテ、二枚貝の間に広がっています。カリブ海では未知のバクテリアがウニを根絶やしにしてしまいました。実際のところは、海洋生物の病気が増えつつあるという事実が単に科学者たちがこの現象に多くの関心を払うようになったためなのか、数十年前には比較する科学的なデータがないため判然としません。ニューヨークのコーネル大学の研究者がこの件について調査をし、1970年からの、9種類の海洋生物の病気に関する科学文献からその量を詳しく調べました。そして、確かに海洋生物の間で、なんらかの変化が起こりつつあり、多くの専門家が調査して原因を究明していく必要があると訴えています。考えられる原因はたくさんあります。一つには、地球温暖化による海水表面の温度上昇の結果、珊瑚は白化し、種々の病気に感染しやすくなってしまいます。温度上昇はまた、牡蠣などに寄生する寄生虫ペルキンサスの北上を招きます。ヘルペスウィルスによる、亀などの腫瘍の蔓延も温暖化が寄与しているとする説もあります。そしてもう一つ、人為的な原因である魚介類の乱獲も問題になっています。特定の魚介類を大量に捕獲することにより、海洋生態系の不均衡をもたらしているという説です。例えば、カリブ海でウニが消滅した結果、ウニが常食としていた海藻類が増え、珊瑚が危険に瀕しているのです。本来であれば、海藻類はウニの代わりに他の魚によって消費されるはずなのですが、肝心の魚も減ってしまった結果、そのような異常な事態になっているようです。他にも、船舶が世界中を行き来する際に、バラストタンクに潜んでいた病原菌や寄生虫をばら撒いているとする説、海洋中に投棄している化学物質が変化して毒性を強め、海洋生物の免疫力を弱めているとする説、などなど殆どが人類の活動による悪影響を可能性として挙げています。おそらくはこれらの説のいずれもある程度の根拠があり、複合的な汚染や変動をもたらしていると考えるのが妥当ではないかと思います。したがって対症療法的な対策も必要ですが、いかにして海洋生物圏の健全性を取り戻すか、根本的な主因になるであろう温暖化をどうやって防ぐか、焦点を絞って早急に解決策を実施しなければなりません。日本人は昔から魚をたくさん食べ、今も世界中からいろいろな魚を贅沢な基準によって輸入しつづけています。このことにより積極的に取り組んでいかなければならない立場と言えます。
2004年05月01日
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メタン: 最も単純な炭化水素。CH4。 日本語では沼気とも呼ばれ、澱んだ水たまりで微生物によって分解されたガス。 いわゆるドブ臭い臭気を放つ。 温暖化ガスとしても強力な効果を持つ。ヨーロッパ宇宙連合の探査船や地球からの分光望遠鏡によるスペクトルの観測から、火星のメタンガスの存在が確認されました。存在するといってもまことに微量で、10PPB(PPMのさらに1000分の1)です。ただ、メタンガスの量の変動はなかなかややこしくて、生物由来のものか、非生物由来のものか判然としないため、科学者たちが悩んでいるようです。ご存知のようにメタンガスは湿地の微生物が有機物を分解する際に副生成物として発生するほか、火山活動でも地中で発生するのです。火星の火山活動はいちおう休止しているものがほとんどなのですが、それも表面的な観測でそうであるとされているだけで、地中深いところの現象は確認が難しいのですね。もちろん話題としては、これが生物の存在の証であるとして議論するのはとても面白いのですが、観測精度の問題や火星内部の状態など確認しなければならないことが多くて今後の検証が待たれます。 ---------- ☆ ☆ ----------ところで、最近新しくお気に入りに追加した「宇宙船Hale-Bopp艦隊」というサイトがあります。特に専門家が運営されているサイトではありませんが、宇宙に興味をお持ちの方が始めて、当初は「ギリシャ神話と星座」だけだったらしいのですが、次々にいろいろなページを追加しているうちにいつの間にか巨大なサイトに発展したらしいです。宇宙の写真も豊富にありますので、初心者の方でもじゅうぶん楽しめそうで、しかもQ&Aコーナーもあるので、何か疑問があれば答えてもらえそうです。データも豊富に載せていらっしゃいますので高度な内容にもなっています。一応管理者の方には許可を得てリンクさせていただきました。興味のある方は一度訪れてみてください。
2004年04月05日
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現在の社会は飛行機なしには成立しないと言っていいほど、飛行機は我々の暮らしに密着してきました。ビジネスはもちろん、海外旅行を楽しむ人口も増え続けています。航空輸送によって海外の産物も気軽に手に入るようになりました。加えて、不安定な世界情勢で軍事関連の飛行機も頻繁に飛び交っていることでしょう。商用飛行機の燃料はジェットAと呼ばれており、もちろん原油から分留される化石燃料です。当然、燃焼時には大量の二酸化炭素を排出します。植物油の場合も燃焼時には二酸化炭素を放出しますが、この炭素は植物が二酸化炭素として、大気から取り込んだものであり、いわば環境循環という形ですので大気汚染という観点からは環境に優しい?形態なのです。しかもコストが安くつけば一石二鳥です。植物油の燃料への利用はバイオディーゼルとして自動車への応用が進んでいますが、航空機での利用はなかなか難しく成功していませんでした。実際には全てを植物油と置き換えるということではなく、ジェットAと植物油を混合して燃料にするという試みなのですが、一つ難しい問題がありました。それは何かというと、両者の凝固点(凍りつく温度)の差でした。ジェットAは通常、-40度Cという低温で凝固しますが、今回候補にされている植物油、大豆油は0度Cそこそこで凍り付いてしまうので、実用上問題があったのです。今までの方法は、植物油を冷却していき、結晶化した成分を取り除きながら、不要なエステルを減らして凝固点の低い成分だけを抽出する、というのものでした。ところが、この方法だと非常に手間がかかり、歩留まりも25%程度という恐ろしく効率が悪いものでした。そこで最近、インディアナ州のラフィーエットにあるパーデュー大学の生化学研究者が画期的な方法を確立したと注目を浴びています。彼の方法によると、大豆油とジェットAの混合物であるにも拘わらす、-40度Cの凝固点を確保できるらしいです。つまり大豆油の高凝固点成分を確実に除去して、低凝固点成分だけを抽出できる方法のようです。この方法ですと、研究室レベルでは、成分の分離は1時間もかからず、転化率も80%を超えるというのですからまさに画期的です。詳細に関しては、特許出願中なので明らかにはできないが、近日学会で発表されるとのことです。この方法で作られた燃料は、現在、ターボプロップエンジンでの試験が行われているようです。これからも飛行機はますます利用が進むでしょうから、この方式がいくらかでも大気汚染の緩和に役立てばいいのですが、いかんせん、どの程度の効果が見込めるのか判然としません。かと言って今の文明社会で飛行機なしに経済や社会活動ができるとは思えません。大穴が開いて沈没しかけている船からスプーンで水をくみ出すような結果にならないことを祈りますが、ひょっとしたら、否応なくどこかで大きな転換点にぶつかるのかもしれませんね。
2004年03月28日
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昨今の天文学界は、さすがに火星の話題でもちきりですが、ちょっと変わった火星の話題をNew Scientistからお届けします。火星の極冠を覆う氷は不思議な渦巻き模様となっています。1976年、NASAのバイキング宇宙船によって、数百キロメートルに及ぶこの氷の渦巻きが初めて観測されました。しかし科学者は、どのようにしてこの氷の渦巻きが形成されたのか、当初は解明できませんでした。最近、米国のアリゾナ大学の地形学者が、形成の過程をほぼ完璧にトレースするコンピューターモデルを完成したそうです。研究者によると、氷の筋は同じ間隔で同じ曲率を持ち、お互いにきれいな相関関係を持っているそうです。このらせん状の氷の渦巻きは、従来から生成過程の解明が試みられていたのですが、風の影響や極冠の移動などの問題と相まって、一致する理論を見出せず苦労していたようです。今回のモデルは、最もよく説明がつき、ほぼ解明されたと言ってもよいようです。便宜上氷という表現をしていましたが、火星の極冠の正体は二酸化炭素が凍りついたもの、いわゆるドライアイスです。火星の極地方の平均気温は-40度という低温ですが、夏場には一時的に氷が昇華(気体になって蒸発する)する温度に達することがあります。今回のモデルでは、風の影響と極冠の移動を無視し、氷の裂け目にどのように太陽光が降り注ぐかに焦点を当てました。火星の自転軸は太陽に対して傾いていますので、太陽光は谷となる裂け目の片側だけに射し、この部分だけが昇華します。いったん太陽光によって気化した蒸気は、今度は谷の反対側、日陰となっている側に氷着します。これによる全体としての効果は、谷を深めながら広げていき、最終的には筋を再統合しながら極側へ移動していくというものです。今回考案されたモデルでは、最初は不規則に裂け目が生じ、500万年の間に、それぞれが独自のらせんを描きながら不規則に成長していきます。続く500万年の間にこれらが結合して大きならせんの渦を形成していくことになります。当然のことながら最も温度が低いと思われる極では、二酸化炭素の昇華や氷着が少なく、渦巻きの中心となっていったことは明白でしょう。赤道地方で同様の現象が起こらないのは、火星の希薄な大気が赤道付近のより強い太陽光により暖められて気流となり、赤道付近を温暖にしているからだと、彼は考えます。そしてより温度が低く、気流が安定した極地方に限った現象になっているのだと主張しています。面白いことに彼がこの発想を得たヒントは生物学の本で粘菌変形菌の螺旋を見たことによるんだそうです。この生物もなかなか不気味で面白いのですが、これについての説明は又の機会に譲ることにします。極冠のらせん状の模様は火星の巨大な氷の渦巻きでご覧になれますが、私はまるで東南アジアの山間部の水田の模様に見えましたが、皆さんは何を連想されますでしょうか?太陽のエネルギーが描いた幾何学模様。それは火星だけではなく、この地球上でも数え切れないほどの生物を生み、育んできました。地球上で生まれた生命の進化の系統図を見ると、まるで同じようなフラクタル模様を感じてしまうのは私だけでしょうか?
2004年03月27日
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夜空に浮かぶ、地球程度の惑星には似つかわしくない立派な衛星、月。月は地球に生命が芽生え始めた40億年前には、もっと近くを公転していたと考えられています。とすれば今よりももっと、その質量で地球に大きな影響を与えていたに違いありません。イギリスの分子生物学者によると、月なしでは地球には今のような多様な生命が生まれることはなかったであろう、と考察しています。生命の誕生のドラマはつまびらかにはされていませんが、太古の地球の海で発生したアミノ酸分子が、他の分子と絡まりあい、あの美しい二十螺旋を描く、生命体の設計図とされるDNAとして成長してきたのであろうと推測されています。しかし、これだけでは2重螺旋が集合離散するプロセスは解明できていません。つまり二つのひもが引き剥がされるには、何か別の力が必要であるというわけです。研究室レベルでは、DNAを成長させていくためには、特定の酵素の存在下で2つの温度帯が必要です。低いほうの温度、50度CではDNAの一つの紐が、対応する紐を合成する鋳型として機能し、高い温度帯、100度Cではこの二つの紐が分解し、それぞれの紐を複製します。このサイクルを繰り返すことによって、40サイクルで1つの分子が一兆個にまで複製を増やすのです。月の起源はいまだに諸説紛々ですが、一般には50億年前に地球に小惑星などが衝突し、地球から飛び出した一部が月となったとされています。地球上に生命が発生し始めたのは、ちょうどそれから10億年後になりますが、その頃はまだ月は地球に近く、地球の自転周期もずいぶん早かったと想像されています。ということは地球上の海に発生した潮汐、干潮・満潮のサイクルも2、3時間おきに起こったと考えられます。頻繁に繰り返される潮の干満の中で、海にたゆたっていた生命の元となる分子が離合集散を重ねて、現在の多様な生命体の起源を作った、というわけです。他の多くの研究者はDNAやRNAが最初の自己複製分子ではなく、もっと単純な構造のものが土のミネラル分の結晶から発生したと考えています。それでも、進化を始めた複製分子が何であれ、変動の激しい環境の中で、そのエネルギーがきっかけを与えたことは明白です。もし、この理論が正しければ、今生命体の存在が期待されている天体、火星ではその可能性は希薄になってきます。火星にはフォボスとダイモスという2つの衛星がありますが、その潮汐に関する影響は地球における月の1パーセントほどしかないからです。いたとしても、地球ほど多様性のある進化の進んだものではないかもしれません。母なる地球の生命の揺り篭を揺すって、今ある我々を生んだのが月であるとすれば、月は生命の父と言えるかもしれませんね。
2004年03月25日
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以前、「自然保護に対する反論」というタイトルで、自然保護という言葉の響きに傲慢な人間の特権意識を感じてしまうという内容の日記を書いたことがあります。普段は文明社会に住み、たまに大自然を訪れて、野生動物の様子を眺めて楽しむ「エコツーリズム」なるものが流行っているようです。私も、もし自分の安全が保証されているのであれば、野生で暮らしている動物を間近に見て、好奇心を満足させたいところですが、一方、好奇心だけでそんなことをしてもいいのだろうか?という疑念もあります。New Scientistの記事によりますと、このような人間の行動が野生動物に多大なるストレスを与えていて、下手をすると生存に対する脅威になっているかもしれないという報告があります。例えばホエール・ウォッチングですが、ここ10数年の間に爆発的にツアーが増えていて、下手をすると鯨やいるかなどの対象となる動物より、人間の方が多いのではないかという状態です。ニュージーランドのオークランド大学の研究チームが、沿岸に生息するバンドウイルカの群れを、1996年から継続して観察したところによると、イルカ見物の観光船がそばにいると、イルカたちは逆上した状態となることが報告されています。それも近くに存在する船の数によって変動を受け、1隻のボートだけだと時間にして68%は平静でいるのに対し、3隻に増えると0.5%しか平穏でいられる時間がなくなってしまうそうです。つまり99.5%の時間は不安に駆られているということになります。このようなイルカの変化は「個体数維持に関する深刻な問題」であると海洋生物学の専門家は考えています。スコットランドのモーレイ湾に棲むイルカも、イルカウォッチング船のために同様の反応を強いられており、日中は常に落ち着かず、夜にしか本来の活動ができない状態に陥っているのです。一方、陸上に棲むホッキョクグマも同じような迷惑を蒙っています。1980年代から、ホッキョクグマ見物の特殊な観光船が、10月から11月にかけてカナダのマニトバへ押し寄せます。ホッキョクグマにとってこの時期は、ハドソン湾が凍り付き、アザラシの狩に出かける前の休息時期であり、待機期間なのです。もちろん、迷惑な来訪者によって大切な時間をおちおち寝て暮らせない状態になるのは言うまでもありません。オスのホッキョクグマは、普段の7倍も警戒態勢を強めていると、専門家は報告しています。彼らはイルカよりも神経質で、船が1隻でも安心しておられないのです。動物がこのような状態になるとどのような犠牲を強いられるかというと、心拍数や代謝量が上がり、緊急時に蓄えておかなければならない脂肪などのエネルギーを無駄に消費してしまう結果となり、ひいては個体そのものの寿命を縮めてしまうことになりかねません。ホッキョクグマは多産系でもありませんし、過酷な環境の中で子育てをする、繁殖力という観点では弱者なのです。このような状況に追い込まれているのは、他にもペンギンやディンゴ、そしてアフリカの草原で生活している動物など、人間がエコツーリズムを楽しむ現場のいたるところにいるのです。一つ悩ましい問題は、このような自然資源の豊富な国々は経済的に貧困な国が多く、エコツーリズムのもたらす経済的効果に頼らなければならないということです。自然を破壊せずに自然から利益が上がる、と当初はいい事づくめのように思われていた自然観光も、当の動物にとっては、迷惑以外のなにものでもないようです。かくいう私も大自然に棲む動物たちを紹介するテレビ番組を好んで見たりします。以前から、これだけの近距離で撮影されている動物たちはいったいどう思っているのだろうかと考えたこともありますが、事態は私が思っているより深刻なようです。もう少し動物たちの生態や生理に気を配り、強いストレスを与えないようにしてエコツーリズムを楽しむ方法はないのでしょうか?動物は、決して観光にきた人間に愛想を振り撒いているのではなく、平和を乱す闖入者としか見ていないのです。例えば、異星から宇宙人が地球ツアーと称して、我々の普段の生活を覗きに大挙押しかけてきたらどうでしょうか?四六時中観察されて、生活などできたもんじゃないですよね。
2004年03月24日
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私は今まで数編の短編小説を、素人芸ではありますが、このサイトで発表してきました。ところがここまでは書きっ放しといいますか、いろいろな感想を頂いているにも拘わらず、それについて何のフォローもしておりませんでした。これからも、アイディアが閃けば衝動的に小説もどきを書きなぐってみたいという気持ちはありますので、今後につながるような形であとがきというものを綴ってみようかという気になりました。まず、「宇宙蜃気楼」を書く動機になったのは重力レンズという言葉にヒントを得て、もし太陽系近傍の光が重力レンズによってどこかに収斂し、そしてそこに光を映し出す媒体が存在したら地球の幻影が見えるのではないかというアイディアです。これを核にして話を組み立てていくとどうなるかという形でストーリーを発展させ、細部を練りました。小説であるからには、そこに何を訴えるのか、どのような思想をに盛り込むのかということも重要です。およそ全ての小説がそうであるように、私の場合も人間とは何か、そして宇宙とは何かをさまざまな角度から見つめてみたいという思いがあります。そして、何よりも読む方に面白いと感じてもらうにはどうしたら良いかも重要な課題です。武蔵野唐変木さんやjabannaさんを始め、幾人かの読者諸氏は、この小説を長い物語の始まり、序章という捉え方をされました。確かに物語の結末が再び始まる旅を暗示していますので、そのような感想を持たれるのも当然です。私自身が、この後の展開を考えていたかというと、実は何も考えていませんでした。考えていなかったというより、終わらせ方のほうに悩んでいたというのが正直なところです。しかし、ご両人のご指摘で気が付いたのは、結末に新たな始まりを感じさせる書き方は読者にとって、「完結しない思考」という新たな思弁の機会を与えるという意味で有意義なのではなかろうかということです。もちろん私自身にとっても、ですが。別の見方をすると、早く続きを書けという励ましの言葉とも受け取れますのでありがたいことです。一方、私の意図とはちょっと違った解釈をされる方もいらっしゃいました。例えば、こあささんはマザーが語りかけた「もう地球人ではないのよ」というところで、まさしく意味どおりに受け取られていたのは意表をつかれました。なるほど、もしそういう風にするとまた違った展開も考えられるなあと。結末については読者の方々の受け取り方でさまざまに解釈してもらえればそれでいいという意識がありましたが、ひつじ@@さんに、地球を捨てるという結末に物悲しさを感じて頂いたのは、考えられる反応の一つだったかもしれません。polo007さんという以前楽天にサイトをお持ちで、また再開されたイギリス在住の方は、結末の文章がアーサー・C・クラークを彷彿とさせる、などと法外な誉め言葉を下さり、いくらなんでもクラークに悪いのでは?と思わずにいられません。ただ、氏の感想で、結末がプログラマーの意図通りだったのか、マザーの新たな意思だったのか判然としない、という部分はひょっとしたら私の期待した感想なのかもしれません。気まま猫さんを始めとして数人の方は地球で起こった惨劇について注目されておられました。現在の世界の状況を憂慮しておられれば当然の反応といえますね。実際には600年も経たないうちにそうなるだろうと悲観しているのですが。一方、ご自身でも文章を嗜まれる、くるりさんや夢野華さんが、小説としての完成度に言及されていたのは印象的です。お二方には高く評価していただきありがたい限りですが、調子に乗るのでほどほどにしておかれたほうがいいかも(自爆)。とは言っても、あくまで素人芸であることは自覚しております。くるりさんからは、是非ゴザンスという素人投稿用のサイトがあるので挑戦して欲しいと励ましがありましたので、試しに投稿してみました。いろんな実力のある方々が投稿されているようですので、興味のある方は一度訪れて見てください。売り子☆姫さんの「プログラマらしい展開」という意見も自分で創作される方の捉え方かもしれませんね。xiaoさんからは、文章が難しいので漫画で読めないか、という一風変わった感想も頂きましたが、もともとは漫画家志望だったのでその気になれば・・。でも年のせいか手が震えるのでやめときます。その他、きよりん0518さん、MIRLINさん、ふわり0208さん、貴重な感想をありがとうございました。今後も皆さんに楽しんでいただける小説を頑張って書いていきたいと思いますので、辛らつな批評も励ましもよろしくお願いします。さて、明日はどっちだ?
2004年03月23日
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これまで地球の歴史の中で、5回の生物大量絶滅があったそうです。最後のものは皆さんもよくご存知の、白亜紀の後期6500万年前に起こった恐竜の大絶滅です。これは通説では巨大隕石の落下などの原因によるとされているようですが。そして恐ろしいことに第六回目の大絶滅が今進行しつつあるという警告が科学者によって叫ばれています。このニュースはNew Scientistの記事の一つなのですが、イギリスでは特に蝶、鳥そして植物が次々に絶滅しているという専門の研究者の報告があるそうです。イギリスに限らず、世界中で多くの動植物が絶滅の危機に瀕しているのは従来から知られていますが、鳥に関しては多くの観察研究から具体的な数値的証拠が提示されていました。今回の発表はイギリスで過去20年から40年前から継続的に動植物の種や個体数の変動を観察した結果をまとめたものです。まず過去20年間で蝶の71%の種がその個体数を減らしています。鳥では56%、植物は28%の種類が同様に個体数を減じています。特に、顕著に減少傾向を見せているのは蝶類であり、2種類の蝶は完全に姿を消しています。鳥に関しては絶滅してしまった種はないようです。そしてこの現象はイギリス全土にわたって同じような傾向が確認されているのです。去年の暮れにトナカイの危機に関して似たような日記を書きましたが、今回の場合も人間の社会活動による生息地域の分断化、狭小化がこれらの動植物の個体数の減少に寄与している、と専門家は述べています。さらに環境汚染問題も拍車をかけているのは疑いのないところです。環境汚染、特に窒素化合物による汚染は植物に対して脅威になっています。イギリスの研究者が68箇所の草地で植物の多様性を調査してきた結果では、窒素汚染が激しい地域では低い地域に比べてあきらかに多様性が失われているそうです。窒素化合物による大気汚染の原因は、もちろん化石燃料によるものと動物の糞からの揮発によるものが大きく、それらの窒素は土中に戻ってきて固定されます。その結果、窒素の富裕な土で育つ一部の植物が優勢になり、他の植物種が劣勢になると、偏った生物相の草地が出現することになります。ここで考えなければならないのは、イギリスが特殊な地域ではなく、その他の文明国も似たり寄ったりの生活を営んでおり、このような動植物の環境の変化が世界中いたるところで起こっているであろう事は確実です。しかも中国などこれから急激な工業化が進むであろう地域では、問題はより尖鋭化することが予測されます。すでに高度な工業社会となって文明を謳歌している先進諸国はこれについてはある種の責任をとらなければならないことは明白です。つまり、急激な工業化に伴うリスクは一国の範囲に収まらないだろうし、地球の共通の問題だからです。地球的な危機と一国の繁栄を簡単に秤にかけることは難しいでしょうが、十分にその理由を知らしめ、対策について協力することがいくらかでも危機を緩和することになると思います。本当は政治的なレベルで言うと、先進国を含め、現実認識が甘いと言わざるを得ないのですが。人間を幸福にするはずの科学技術や経済学が自縄自縛の縄にならないために、もう今一度政治に携わる方々によく考えていただければと切望します。第六回目の大量絶滅が起こるとしたら、人間がその対象外である保証はないのですから。
2004年03月22日
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先日、太陽系第10番惑星発見さる!とのニュースが世界中を駆け巡りましたが、結果的には惑星と呼ぶにはやや小さすぎる(直径1700km以下)ため落選してしまったようです。ただ今回の発見により太陽系の成り立ちや、カイパーベルトやオールトの雲などの惑星以外の構成要素について天文学者の間で大いに議論が盛り上がっているようです。今日はこれについてNew Scientistの記事から紹介します。もうすでにいろいろなメディアで紹介されているように、エスキモーの海の神であるセドナと命名された新しい星は冥王星と太陽の距離の3倍の位置にあり、質量は冥王星の3/4です。この星はかなり扁平な楕円軌道を持っていて、遠日点(太陽から最も遠い位置)は現在の位置の10倍にも及び、太陽を一周するのに10500年を要するようです。10500年前といえばはるか有史以前に遡りますので今回新しく発見されたというのも無理からぬ話です。そういうわけなのでこの星は今回発見される以前ははるか離れたオールトの雲の近くを彷徨っていたものと思われます。オールとの雲というのは太陽系を球面状に取り囲んでいる氷状の塊の壁のことです。オールトの雲の起源は、星間ガスが凝縮しながら太陽が誕生しつつあった46億年前に、現在の木星あたりの位置にあった星間物質であるとされています。それから一億年の間に、巨大ガス惑星ととして誕生した木星がこれらの星間物質に大きな影響を与えたと考えられています。一部は太陽に呑み込まれ、一部は太陽系外に押しやられ、そして残りが現在のオールトの雲の位置に生き残っているというわけです。オールトの雲の中には10兆個の彗星に相当する物質が含まれていて、時折近傍を通過する星の重力で太陽方向へ押しやられたオールトの雲の一部が、ハレー彗星などに変貌すると考えられています。新しく発見されたセドナの軌道はオールトの雲の最も内側の軌道からさらに10分の1の距離にあり、科学者は太陽の近くを通りかかったオールトの雲の一部が数十億年前に太陽の重力に捕らわれて現在の軌道に落ち着いたのであろうと推測しています。一方で、一部の天文学者はセドナはカイパーベルトの一部で最大のサイズであったとされる冥王星と似た組成なので、もともとはカイパーベルトにあったものではないかと考えています。カイパーベルトは海王星から冥王星以遠の位置に散在する、太陽をリング状に取り囲む氷と岩石でできた小惑星群のことです。セドナがカイパーベルトの一部であったとする根拠は、セドナが他の惑星同様、おおむね惑星公転面上の軌道を持っているからです。これに対しオールトの雲は球面状に太陽を取り囲んでいますので、彗星は天空上のあらゆる位置から出現します。それとセドナの大きさも議論の的になっています。セドナの直径は1700kmであり、オールトの雲をなす物質の大きさは通常100km以下の直径であると考えられているからです。いろいろな主張がありますが、結局は太陽系ができつつある過程の中で形成されたことは間違いないようです。セドナの発見はカイパーベルトとオールトの雲の間に広がる隙間、つまり何も無い空間についても議論を巻き起こしています。ある天文学者は、もともとカイパーベルトもオールトの雲も同じ起源だったとしています。ただ、その大きさの違いゆえに一部ははるか彼方に押しやられオールトの雲を形成し、一部は比較的太陽に近い位置に留まってカイパーベルトになったということですね。今後の観測と検証がこの謎を解き明かしてくれることを期待したいところです。私の印象では、オールトの雲は比較的早い時期にできあがり、その後広がっていき、カイパーベルトは惑星が形成される段階で質量の小さな岩石が惑星とともに広がっていったのではないかなと推測します。ところで、オールトの雲は太陽系を球状に取り囲む物質の壁のような存在ですが、これが太陽系を星間物質の侵入から防ぐ盾になっています。地球ではさらにバン・アレン帯や大気により、宇宙線や隕石から生物を護っています。先日恒星間旅行を題材にした小説を書きましたが、太陽系外までもし人類が進出するとなると、宇宙空間に溢れる宇宙線やチリなどから人間を保護するために相当な設備が必要となるでしょう。太陽系の中の地球は、巧妙な仕掛けで幾重にも護られた、生命のための母なる星であることを再認識したいと思います。
2004年03月19日
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久々のSF短編です。 宇宙船のブリッジは異様な雰囲気に包まれていた。 全乗組員が呆然とナビゲーショ ンスクリーンを見詰めている。 しばらくしてナヴィゲーションオフィサーのエランがしわがれた声で誰にともなく呟いた。 「地球・・なのか?」 誰一人その言葉に答を返すものはなかったが、呼吸するのを忘れていたかのようにため息にも似た呼気を一斉に吐き出した。 スクリーンにはブルーの淡い鬼火のように浮かび上がった、見覚えのある星が映し出されていた。それは色が薄いという点を除けば紛れもなく地球そのものであった。 船長のエダはそんな乗組員の様子が少し平静さを取り戻したタイミングで、すでに分析済みのデータをもとに説明を始めたが、その口調には無理に冷静さを保とうとする平板さが感じられた。 「この星域には高濃度の星間物質が広がっている。そしてちょうどここから100光年の距離、地球と我々の中間にブラックホールが確認されている」 「そして、そのブラックホールの重力レンズ効果で太陽系近傍からやってきた光がここで星間物質に像を結んでいるというわけだ」 「でも、こんなに鮮明に見えるのかい?」 メカニックオフィサーのホセがスクリーンを凝視したまま尋ねた。 「もちろん感度を最大にしている。船外を直接見ているわけではないんだ。ご存知だとは思うが」 「ああ、あれ、オーストラリア大陸だわ!あたしの故郷なのよ!」 おぼろげに浮かぶホログラムのような地球を目を凝らして見つめていたメディカルオフィサーのキャシーが素っ頓狂な声を上げた。 乗組員の生理的時間にすると地球を発ったのはほんの2ヶ月前だった。一ヶ月をかけて宇宙船が亜光速に達すると、さらに1週間をかけて冷凍睡眠に入り、全員が数世紀にわたる眠りについた。 目的の星系まで半分の距離で、彼らがマザーコンピューターに起こされたのは非常事態が発生したからだ。 コンピューターにとって、この光景は特に注意を惹くものではなかった。この蜃気楼のような太陽系に実体はなく、単なる物理現象以外の何者でもない。 コンピューターにとって重要だったのは地球から発されている電磁波、とくに通信や放送などの信号のほうだった。地球からの通信を感知できるはずのない距離で、知的生命体からのものと特定できる有意な信号を傍受したことが、乗組員を覚醒させる緊急事態と判断させたのだった。 「で、どんな電波を捉えたんだい?クラシック・ロックの音楽番組でも?」 「んん?ちょっと待てよ。今ここで受信しているのは一体何年前の放送なんだ?」 チーフナヴィゲーションオフィサーのアリが白い歯をむき出して甲高い声で喚いた。 「我々が出発して600年後の地球だ、現在時間の200年前だ」 「えっ!計算が合わない・・そうか。ローレンツ収縮か・・。畜生!」 このとき乗組員一同は出発した当時の地球とは全く別の時空を自分たちが生きていることに気付かされ、言いようの無い孤独感に襲われていた。アリの悪態は一同の気分を代弁していたのだ。 「それはどんな内容なのですか?」 メディカルドクターのリーが穏やかな声音でエダに聞いた。 「うむ、分析中なんだが、あまり楽しいものではなさそうだ。分析が完了次第皆に報告しよう」 乗組員はほとんどがスクリーンに映しだれる淡いブルーの地球を見つめたまま物思いに耽っているようだった。 -- * -- * -- * --* コンピューターの解析結果に、コンピュータースタッフたちが数日がかりで補正を加えた地球からの信号は、衛星放送のものだった。概略はこうだ。 宇宙船が地球を出発した580年後、つまりスクリーンに浮かんでいた蜃気楼の地球の20年前に些細な原因から熱核戦争が勃発し、地球の陸地のほとんどが廃墟と化したらしい。 僅かに生き残った人類は南半球に逃れたが、北半球に集中していた環境維持装置のほとんどが破壊され制御を喪失してしまったため、生き残る可能性は万に一つもない状況に陥っているらしい。環境維持装置により、僅かづつ改善されていた地球は圧倒的な破壊力を持つ数発の核兵器により焦土と化し、不毛の惑星になってしまったのだ。 南半球、オーストラリアにあるシェルターに逃れた人々もほとんどが逃げだす際に多量の放射線を浴び、半死半生の状態だ。しかも唯一残ったシェルターの防護機能も完全ではなく、放射能に侵された大気や水の侵入をシャットアウトすることはできないようだ。 宇宙船が捉えた電波は残存する放送局の電波で、今わの際まで信号を発することが自分の使命であるかのように、ここに至る経緯と現在の状況を放送し続けているのだ。そして地球上にもし生き残っている人類がいれば南半球に集まって欲しいと訴えていた。 乗組員の意見は二分された。 「我々がここで、幻影であれ地球の姿を目にしたことは偶然とは思えない。もともと新しい居住可能な惑星を第二の地球に変えるべく編成され装備された我々にとって、地球を再び人の住める星にするのは難しい事じゃないじゃないか!」 チーフナビゲーターのアリが熱っぽく訴えた。 「今すぐ戻ろう!それしかない」 ほとんどの乗組員が頷いた。「しかし、我々の本来の使命は第二の地球を他の星系に見出すことじゃないのか?」 副船長のヘルツが遠慮がちに話し始めた。 「たしかに地球へ戻ることも選択肢の一つかもしれない。しかし、すでに地球はその命運が尽きているんだ。我々を送り出してくれた瀕死の同朋の思いはどうなるんだ?」 しかしヘルツの言葉に同調するものは少なかった。 「第二の地球と言うが、その確率は万に一つだ。地球ほどの星がそう簡単に見つかるとは思えない・・。我々が失敗すれば人類が途絶えてしまう」 リーがいつになく興奮した表情で、厳かに自転するスクリーン上の地球を見つめながら言った。 エダはこの宇宙船の本来の任務からすると、地球に戻ることが正しい選択だとは思わなかったが、確率的な見地からは地球帰還案ももっともな意見だと感じた。それに彼自身、スクリーンに浮かぶ地球の姿に強い望郷の念を禁じえなかった。どうすればいいのか!? 結局、議論を重ねた末、多数決という形で地球へ戻ることで結論が出された。もし、旅を継続することを強制すると船内暴動が起きかねないような雰囲気だったのだ。 -- * -- * -- * --*最終決断が下ると、直ちに実行に移された。ナビゲータークルーたちが数日間をかけて太陽系に戻るルートとスケジュールを計算し、マザーコンピューターに指令を出した。そして乗組員は健康診断を受けた後、順番に冷凍睡眠に入っていった。 船長はいつものように他の全ての乗組員が眠りにつき、睡眠装置が正常に動作していることを確認すると、自身の冷凍睡眠の準備を始めながらマザーコンピューターに問うた。 「マザー、我々の決断は間違っていないと思うかい?」 「心配しないで、エダ。あなたたちは間違ってはいないわ。私が見守っていて上げるから一眠りしなさい」宇宙船は緩やかに地球へと戻る進路へ船首を向けつつあった。 エダは冷凍睡眠に入りつつ意識が薄れる中、かすかな声を聞いていた。それは穏やかな慈愛に満ちた母の声でこうささやいた。 「エダ、よくお聞きなさい。あなたはもう地球人ではないのよ。あなたたちが星と星をつたいながら遠くへ旅する能力を持ったときからあなたたちは彼方を目指して宙(そら)の隅々へひろがることを運命付けられたのよ。 大丈夫。私がついているわ」 エダは夢の中でうなづき、かすかに微笑んでいた。やがて宇宙船は意を決したように再び反転し、太陽系を背にして静かに加速していった。再び現れた静かに回りつづける幻の地球ははるか彼方に霞んで消えていった。 ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * 2459年3月14日 宇宙省発行文書(極秘) 恒星間宇宙船マザーコンピューター用基本プログラム開発アルゴリズムに係わる留意点 1.人間にとって恒星間飛行は極めてストレスが高く、ときとして情動的な判断により誤った選択をしてしまう可能性を否定できない。 2.1の理由により人間のストレスを緩和できると考えられるあらゆる環境を提供する。例えば人口音声は人間にとって母性を感じさせる穏やかな女性の口調や音質とすることが望ましい。・・・・・・ 3.1の理由により人間である乗務員が感情的な混乱により誤った選択を行ったと判断されるときはこれをオーバーライドして無視することを可能にしておく。 ・・・・・・ ===== * ===== * ===== * ===== * ===== * ===== *
2004年03月15日
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つい先日132億光年彼方の原始宇宙についての日記を書いたばかりですが、さらに最近あのハッブル宇宙望遠鏡が捉えた超深宇宙の映像が公開されましたのでNew Scientistのサイトから紹介いたします。 Hubble delivers best-ever view of early Universeハッブル宇宙望遠鏡と言えば、後継機となる宇宙望遠鏡の計画に伴いその任務を解かれようとしていますが、科学者たちの反発が強まり、存続の要望が盛んになっています。まだまだ現役で頑張れる能力を持っていますので、多少だぶってもいいから観測を継続すべきであるという意見も根強いのですね。ハッブル望遠鏡が捉えた深宇宙の映像は、炉座(あまり聞いた事がないところを見ると南半球で見られる星座のようです)方向に満月の十分の一の面積の中に密集する数万個規模の原始銀河団のものです。映像はハッブル望遠鏡と近赤外線分析装置の組合せで延べ12時間にわたる露光の末得られたものです。まるで色とりどりの宝石を散りばめたような景観が数十億年彼方の星々であるとはにわかには信じ難い光景です。撮影された最も弱い光は月面上の蛍に匹敵するほどの微かなものです。これは毎分1個の光子が飛び込んでくるのと等しい光度らしいです!観測の精度や能力が上がるに連れて、より古い宇宙の姿が見えてくるというのはなんとも不思議な話ですが前回紹介した銀河以上に古い星々の実体が明らかにされてくるであろう事は言うまでもありません。宇宙創世記の姿については、前回の日記で書きましたので今回はただその見事な映像に見とれていただきたいと思います。さらなる偉大な宇宙を見る目を人類が得たときにどのような知見を得、それが人類の知的活動にどんな影響を与えるのか楽しみにしたいところですが、願わくば一瞬の栄華を謳歌している人類が宇宙の中でどのような存在であるのか、謙虚に発展的に未来を考えるきっかけを与えてくれればと思います。
2004年03月12日
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先日、男女の産み分けに関して受精卵の状態から選別を行うというややショッキングな事件が日本でも起きました。生命の操作という根源的なタブーに挑戦したことはひとつのエポックではありますが、事の是非に関しては私は否定的な見解を持たざるを得ません。性別の比率というのは、単に嗜好ではなく種の存続にかかわる重要な要素なのですから。男女の比率に不均衡が生じれば、逆にこれから子供をもうける人たちが、生まれてくる子供の性別を強制させられるという逆差別を生みかねません。これが人間以外だと心理的抵抗が少なく、従来から遺伝子操作による品種改良という形で現実に行われています。今日はそのことに対して警鐘を鳴らしているUCS(憂慮する科学者同盟)の科学者たちによるショッキングなレポートをNew Scientistの記事から紹介します。遺伝子操作による穀物の栽培はかなり以前からアメリカなどを中心に行われてきました。もともとは生産量を上げたり、病気に強い種を作るという目的で、いわゆる品種改良を時間をかけずに達成できるという大きなメリットがありました。実際、生産量は飛躍的に上がり生産者にとっては魔法の杖のような効果があったことは明白です。これとは別に、新薬や工業用化学薬品の原料に適した成分を持つ穀物を、遺伝子操作によって生産する試みも盛んになっています。嚢胞性線維症や傷の回復、肝硬変、抗がん剤、そして狂犬病やコレラ、手足口病のワクチンの生産に必要な蛋白質の生産を植物に委ねようとしたわけです。これらの植物を仮に薬用遺伝子操作植物と呼ぶことにしましょう。薬用遺伝子操作植物はかなり特殊な遺伝子操作を施してありますので、もしこれが自然種を汚染するような事態になると、将来どのような結果がもたらされるか当の遺伝子学者にも想像がつかないようです。もちろん、遺伝子操作を施した種が外部に漏れないように厳しく管理されてはいるはずですが、状況的に見ると懸念を持たざるを得ないとUCSの科学者たちは憂慮しています。UCSのグループは従来のGM穀物の自然種への汚染を調べるために、とうもろこし、大豆、西洋アブラナ(いわゆるキャノーラ油の原料ですね)の3種の従来種のDNAを検査するように専門の研究所に依頼したところ、自然の種に広範囲に低レベルの汚染が見られるという結果を得たそうです。それぞれの種について1%以下の遺伝子汚染が確認されたのです。つまり、遺伝子操作された品種の遺伝子配列が紛れ込んでいるのです。汚染していたのは特に特定の農薬に対する耐性を向上させた種類のものです。遺伝子操作と施されても、見かけはとうもろこしはとうもろこしのままであり、大豆に変わりはありません。そうです、天然のものも遺伝子操作を施されたものも交配可能なのですね。これらの雑交配種が直ちに危険だというわけではありません。科学者たちが恐れているのはそのあとの世代に関しては予測不可能で、何がおきるか分からないということです。先に挙げました薬用遺伝子操作植物に関しては、製造や配布の段階で従来種とGM種が厳しく選別されていたかどうかについて疑念があるとUCSの科学者たちは心配しているのです。穀物の成分そのものを変化させる遺伝子操作と、農薬に対する耐性向上の遺伝子操作は質的にもかなり異なるものでしょうし、雑交配種が変異する度合いもかなり違ったものになるかもしれません。つまり、予想を越えた変化を惹き起こす可能性があり、人間の健康被害につながるかもしれません。人間に置き換えてみると、急進的な遺伝子治療の目指している方向は、先天的な病気の治療を越えて容姿や知能という領域にまで及ぼうとしています。誰しも我が子が健康な上に優れた容姿や知能を持って生まれてくることには優越感を覚えるでしょう。もしこれを実行に移せば、遺伝子的な優劣が生まれたときから決定していることになり、遺伝子階級社会のような世界が到来してしまうことでしょう。階級社会が顕著になればなるほど、階級間での闘争や反目が広がり、社会は不安定になることは容易に想像できます。そして何よりも多種多様な形質や才能といった社会を健全に進化させるための多様性が失われたとき、文明は停滞し衰退に向かうのではないかという恐れを抱かずにはおられません。時間という要素により発展してきた、進化という名の生命の変化を人為的に乱すことは自然の摂理に反していて、望まぬ結果を生むのではないかという危惧を私は持っているのですが、皆さんはどうお考えでしょうか。
2004年03月07日
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つい先日、これまでの中で最遠と思われる130億光年の彼方にある銀河が発見されたと報告があったばかりですが、ひょっとしたら三日天下に終わるかもしれません。驚くべきことに、さらに遠いと思われる銀河が発見されたというニュースをNews Scientistのサイトで目にしましたので紹介したいと思います。今回新しく発見された銀河は132億光年の距離であると推測されています。宇宙の年齢については私の過去の日記でも紹介していますが、137億年±1億年というかなり細かいところまで特定されています。今回見つかった銀河が予想通りの距離であれば、宇宙誕生後4億6千万年に輝きだした銀河ということになります。そしてわれわれはその幼年期の宇宙の光を今、垣間見ているということなのです。今回の発見を成し遂げたミディ・ピレネー天文台の天文学者は「われわれは最も若い年代の銀河に近づきつつある」と興奮を隠しません。宇宙創生以来10億年続いたとされる暗黒時代の星の発見はこれまで30あまりですが、幼年期宇宙の成り立ちに光を投げかける発見です。新しく発見された幼年期銀河はアベル1835という銀河団の向こうにあり、アベル1835の強力な重力場により光が屈折し、25倍から100倍に輝きを増幅された結果、地球からの観測で捉えることができました。その距離は、遠ざかる天体に特有な赤方偏移の度合いによって計測され、先日発見された遠方銀河の赤方偏移7.0に対し、赤方偏移10.0という驚くべき数値を示しました。赤方偏移は主に水素原子特有の輝線スペクトルから観測することができるのですが、赤方偏移の数値だけからその距離を推し量るのは危険であると科学者たちは知っています。酸素や窒素といったほかの原子からの放射もあり得るからです。科学者たちは観測結果を確認するために、さらなる詳細な観測をハッブル宇宙望遠鏡に委ねたいと希望しています。ビッグ・バン、それに続くインフレーション後の急激な膨張に従い宇宙は晴れ渡り、温度は下がり不活性になっていきました。その後星間物質はたゆたい、引き合い、固まりあってついには自らの重力により熱い熱い星の卵を形成していったのです。内部温度があるレベルを超えると、水素原子は核力に打ち克つエネルギーを得、核融合を開始し、新たなる物質を生み出す鼓動を始めたのです。実を言うと宇宙創生以来の細かな歴史は未だに解明しきれてはおらず、40億光年以遠の彼方で輝くクエーサー(準星)の姿から原始宇宙の様子をあれこれと想像しているというのが現状です。クエーサーは中心部にあるブラックホールが周囲の星間物質を次々とその魔手に捉えている状態と言われています。ブラックホールに呑み込まれながら、あたかも断末魔の叫びのように強力な光(可視光からX線まで)を放っていて、それがわれわれの目には星のように映るのです。そしてこの放射が宇宙に再イオン化をもたらしたとされていますが、はっきりしたことはまだ分かっていません。新しく発見された原始銀河は毎年5個くらいの恒星を誕生させていると見積もられ、全体の質量はわれわれの銀河系と比べると10000分の1ほどのサイズしかありませんが、やがては銀河同士が融合して、立派な銀河に成長するものと思われます。天文学者たちが覗いている世界ははるかな過去の宇宙の姿であり、宇宙がたどってきた歴史を追い求めています。われわれはどこから来てどこへ行くのか、人類永遠の疑問に迫りつつあるのです。ある種の必然から誕生したわれわれ人類が、存在の根源を求めて宇宙の歴史を探求するのは、人類に与えられた知の発露によるものでしょうが、それは宇宙が自分自身の存在をわれわれを通して確認したがっているかのようです。人類は引き続きさらなる知を発動して謎を解き明かしていくためには、人類自身の抱える幾多の問題を解消していくことが前提になってくるのではないでしょうか。われわれは決して滅亡してはならない運命なのです。人類はは知を弄ぶためだけの存在ではないはずです。
2004年03月06日
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2004年になって初めての日記になってしまいました。21世紀になって4年目に入るわけですが、政治や環境などの人間を取り巻く情勢は混迷を深めているように見えます。かつて日本が万国博覧会を開いたときに掲げたスローガンの「人類の進歩と調和」などは過去の幻しと化したかのような有様です。一般市民あるいは食客である宇宙人としては憂慮しつつも希望を捨てずに、同じ一般民衆である皆さんにこの状況をしっかりと認識して頂くべくさらなる努力を続けるつもりですので、旧年に引き続きよろしくお願いいたします。さて今年最初の話題ですが、ちょっとソースとしては古いのですが例によってNew Scientistから地球環境のさらなる悪化の懸念について取り上げてみます。皆さんはpH(ペーハ)という言葉をご存知ですよね。周知のように酸性、アルカリ性を表す数値のことですが、中性が7、低くなっていくと酸性、高くなるとアルカリ性となります。ペーハという読み方は実はドイツ語読みで、現在では英語読みのピーエッチも一般的になってきています。pは指数(英語のPOWER、ドイツ語だとPOTENZ)を意味し、Hはおなじみの水素(Hydrogen)の頭文字です。ペーハを日本語にすると、水素イオン濃度、あるいは水素イオン指数となります。水素イオンの量は酸性度を示す目安になるのですが、数値が低くなるほど水素イオン濃度が高い、というのもおかしな話ですよね。実はこの数値は10のマイナス何乗かを表す指数をマイナスを取り除いて表記しているためなのです。したがって、pHが7から6になると水素イオン濃度は10倍、5になると100倍という具合に10の何乗という大きさで変化します。ところでこの数値はモルという化学で使われる単位で表されるのですが、詳細は少しややこしいので省略させていただきます。New Scientistでの話題は大気中の炭酸ガスの増加が海洋の表層部の水を酸性化していくことに関するものです。表層部とはいってもそこには人間が依存している海洋資源の大部分が集中していますので、われわれにとっての生命線と言っても過言ではありません。今、その海洋の表層部に重大な異変が起ころうとしているのです。炭酸ガス(CO2)が海水を酸性化する原理は単純なもので、大気中の炭酸ガスが増えるにつれ、ガス平衡によって水に溶け込む量が増え、結果として海水中の炭酸イオンや水素イオンが増加することによります。酸性雨は地表だけではなく海にも降り注いでいますし。では、どの程度酸性化しているかですが、先ほど触れましたpHで表しますと、第三氷河期の直後海水のpHは8.3でしたが、人間が炭酸ガスを盛大に吐き出す直前には8.2、そして最近では8.1まで落ちています。それでもまだアルカリ側ではありますが。そしてこの先、海の酸性度はどうなっていくのでしょうか?科学者の試算によりますと、もしこの調子で世界の人口が増え、石化燃料が無くなるまで燃やしつづけるとすると2300年頃には大気中の炭酸ガス濃度は現在の5倍である1900ppmまで上昇します。この増えた大気中の炭酸ガスを表層部の海が吸い込むとそのpHは7.5くらいまで下がるものと予想されています。いったん下がったpHは数百年はそのままであろうということも含めて。そこまで炭酸ガスが増えますと、気温の上昇はなはだしく、極地の氷はあらかた溶け出し海水面の上昇、気候の大変動により地上の生物は壊滅状態になってしまうと予想されますが(もちろん人間も含めて)、今は海の生態系だけに限って見てみますと、どんな海洋生物がもっとも影響を受けるのでしょうか?主には外骨格生物でその組成が炭酸カルシウムが主成分である生物、珊瑚や貝類あるいは藻類が大打撃を蒙ることが予想されます。海水のpHが下がると、水中に溶け出す炭酸カルシウムの量が増え、結果的に炭酸カルシウムを固定しやすい環境が失われるからです。pHが7.5まで下がるとこの類の生物の量は現在の40%以上減るであろうという予測もあります。海の豊かな生態系の源である珊瑚が激減すると、海洋の生物相はみるみる単純化し、多様性を失う恐れがあるのです。これは最近の沖縄の報道機関の調査ですが、石西(せきせい、石垣島から西表島にかけての海洋)珊瑚群はすでに20年前に比べて、その総面積の約3/4が失われているというニュースもありました。さらに藻類は、まさに海洋の表層部にあり、その葉緑素によって炭酸同化作用で陸上の植物よりも多くのガス交換活動を行っています。藻類の衰退は地球温暖化に拍車をかけることでしょう。悪いことに温暖化の影響は海洋の酸性化に留まらず、表層大気の温暖化による打撃もあります。つまり大気の温度が上がるにつれて、当然海洋表層部もひきずられる格好で温度上昇が起き、その結果、海洋の内部との循環がうまくいかなくなり、深い部分の海の栄養分が表層部に回らなくなってしまうのです。海洋生物にとってはさらに厳しい環境になってしまうことが考えられます。さて、いろいろと可能性について述べてきましたが、この結果海洋の様相がどうなり、地球全体の環境にどのような影響を与えるのか、これについては専門家であるはずの海洋科学者たちにも直ちには予測がつかないようです。彼らのおおむね一致した見解は、具体的な予測はし難いが、恐るべき状況をもたらすことには間違いがないであろうということです。悪化した環境に合わせてシステムを変えて切り抜けるという手もありますが、ことは地球全体にかかわることですし、文明に浴さない地域、あるいは弱小国の同朋を救うことは難しいでしょう。何にも増して無数の要素がお互いに関係しあって築かれた地球という生命体の終焉を招きかねないことを肝に命ずるべきでしょう。青いルビーのような稀有の存在の地球が、荒涼とした砂漠のような星に変わってしまうことを恐れるのは地球人だけではないでしょう。トリトンの怒りを買う前になんとかしたいものですよね。
2004年01月30日
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今年は天文学的にはとても重大な火星大接近というイベントがありましたね。最大接近を果たした火星の尊顔を望遠鏡で拝した方もいらっしゃることと思います。ところで、火星探査機マーズエクスプレスから着陸船であるビーグル2号がクリスマスの日に火星表面に着陸したことは皆さんご存知でしょうか?ビーグル2号という名前はあの「種の起源」を著したチャールズ・ダーウィンの航海で使われた有名な木造船から命名されました。新たな生命の存在に思いを馳せた科学者の熱い希望がこの名前からも伝わってまいります。SFでも「宇宙船ビーグル号」という名前が既に使われていましたね。ところが、です。最新の情報によると母船から切り離され着陸したはずのビーグル2号から信号が返ってこない事態が発生しているそうです。グリニッジ標準時の2時54分に火星表面にタッチダウンしたはずのビーグル2号の信号を、米国のマーズオデッセイが4時間後にその上空を通過した際に受信することができなかったのです。12月19日に母船から切り離されたビーグル2号はエアロシェルと呼ばれる、本体を火星の大気との摩擦による高熱から守るための巨大な2枚貝状のカプセルに包まれ、しかるべき高度になるとパラシュートを開いて、さらに着陸のショックを和らげるエアバッグを八方に膨らませて火星の大地に降り立った、はずなのですがその生存信号を確認できていないのです。イギリスのプロジェクト主任科学者は、未だビーグル2号のタッチダウン報告を受信できていないのは事実だが、希望がついえたわけではない、と語っています。事実、着陸に成功してもなんらかの原因によりうまく信号を受信できない状態である可能性もあります。発信アンテナがあらぬ方向を向いてしまい、マーズオデッセイがうまく受信できないとか、あるいは予定されていた着陸地点よりも大幅に位置がずれてしまったとか、原因はいくつか考えられます。もし、ビーグル2号になんらかの事故が発生して探査継続不能に陥ったとしても専門家は比較的冷静にこれを受け止める向きが多いようです。なぜならば、もともと過去に火星に探査機を飛ばして成功した確率は、アメリカや旧ソ連などのこれまでの統計をとっても3割ほどなのです。それほど困難なミッションですので失敗も予測される結果のうちだと彼らは思っているようです。もちろん地球からでもビーグル2号の電波や存在を確認する手立てはあります。イギリスの Lovell 電波望遠鏡によりビーグル2号の発する信号を捕捉する試みです。今年から来年にかけて彼らはきっと忙しい日々を送ることでしょう。もし、ビーグル2号が首尾よく生き残っていたら、以前にやはり火星探査に成功したアメリカのバイキングに続き地表を探査し、さらに今回は地下1.5mまで潜って内部のサンプルを採取する予定です。願わくばなんとかビーグル2号が蘇り我々を驚かせるような新発見をもたらしてくれることを望みたいものです。真に第二のビーグル号として人類の見果てぬ夢を叶えてくれることを。吉報を待ちましょう。
2003年12月26日
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本日はクリスマス・イブです。昨日に引き続いてクリスマスがらみの話題でいってみたいと思います。やはりクリスマスと言えばサンタクロース(昨日もやったな)。サンタクロースと言えばトナカイですね。サンタさんにとってはなくてはならない専用移動手段ですから、彼らなしでは世界中の子供たちの期待には応えられないのですが、そのトナカイさんたちが今、危機に瀕している!というニュースを同じくNew Scientistからお届けします。トナカイといえばサンタクロースの本拠地、スカンジナビア地方に多く生息しているのですが、ノルウェー南部でのダムや水力発電所の建設などの人間の経済活動により居住地を奪われ追いやられているようです。このあたりに棲む野生の、また飼育されているトナカイやカリブーといった大型シカ類の絶滅が危惧される状況が進むと、本来の生息地である極北のツンドラやタイガでも種の存続に赤信号が点りかねないと動物保護活動家らが懸念しています。1977年から1987年の10年間のインフラ整備事業の間に、トナカイの生息状況を観察した結果、ダムや送電線あるいは道路といった人間の構築物付近では、周辺およそ4kmにわたって著しくその数を減らしているとの報告があります。夏季におけるこのあたりのトナカイの個体数が以前の36%まで落ち込み、逆に人里離れた地域では個体数が従来の216%に激増しているのです。冬場になるともっと極端になり、人工建造物付近での個体数はわずか8%にまで激減しています。道路やダムなどは人間にとって便利この上ない設備ですが、野生のトナカイにとっては恐ろしげな近づき難い障害物にしかならず、森林全体に偏在していたトナカイ類はずたずたに分断されてしまったのです。1960年代には6万頭を数えていたトナカイの群れも、現在では3万頭になり、この調子で減りつづけると2020年には1万5千頭にまで落ち込み、種の存続が危ぶまれる事態になると専門家は警鐘を発しています。一方で過疎となり、一方で過密化していくと、過密状態におけるトナカイの繁殖率が通常の3分の1に落ち込み、個体数は雪崩式に下降線を辿るであろうと予測されています。さらにこのような現象は、ロシアやアラスカ、グリーンランドなどの地域に棲むトナカイの将来を示唆していると考えられます。これらの国々もまた国家の経済復興を旗印にこのような地域のインフラ整備に乗り出すことは明白だからです。ノルウェー政府はこの対策に国立公園を拡充し、人工建造物の過度な建設を制限して野生動物の活動範囲が連続的になるように誘導しようと計画していますが、不法な住居の建設をどこまで監視できるか疑問視する向きもあるようです。ところで過密、過疎というとトナカイの話だけではなく、人間の社会でもますます顕著になってきています。経済効率優先で物事を進めると当然このようになってしまうのでしょうが、当の人間に与えるストレスや災害発生時のダメージは途方もないリスクを抱え込む結果になってしまいます。そういう意味では人間の自己家畜化はどんどん進んでいき、生物としての基本的な行動にも重大な影響を与えてしまいそうで怖いですね。実は宇宙から観察にきている異星人の絶滅危惧種のリストの筆頭に入っているのは人類かも知れません。あー、クリスマスだというのにあまり明るい話題が提供できません。読んでしまったらとりあえず、正月明けまでは忘れ去って、しばらくは楽しいときを過ごしていただきますよう。
2003年12月24日
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唐突ですがクリスマスですねー。21世紀に入って3回目のクリスマスですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?なにかクリスマスにちなんだ話題を提供しようと思っていたのですが、あちこち探っていてもあまりいい話には巡り合いませんでした。クリスマスと言えば、サンタクロース。サンタクロースと言えば、私が子供の頃はサンタさんは煙突から入ってくるもんだと信じられていましたが、煙突の中は煤だらけでサンタさんも大変だなあと子供心に心配したものです。ところでその煤が、地球の温暖化に関して温室化ガスよりもっと深刻な悪影響を与えているようだと、New Scientistのサイトに報じられていました。煤と言えば大別すると2種類ありまして、不完全燃焼により燃え残った炭素そのものと、炭素が他の分子と化合して出来た2次化合物となります。これがどのように温暖化に寄与しているかというと、上空に巻き上げられた煤の粒子は雨や雪に混ざり、再び地表に帰ってきます。雨は山や川に注ぎ、比較的早いサイクルで海に流れ込んだり、地表に降り積もることになり、影響もさほどは大きくなりませんが、これが雪になると深刻です。雪に混ざったこれらの粒子は、雪の光線反射率を下げてしまうのです。研究者の試算では、極北に降る雪の場合はその反射率を約1.5%低下させてしまうそうです。その結果、雪の表面温度から計算されるよりも多くの量の雪が溶けて水になってしまうのです。いったん、雪や氷河が溶け出すとさらに多くの熱を吸収し、水になってしまうと90%の熱量を吸収してさらなる雪解けをを加速させてしまうのです。話題になっていた南極の棚氷の崩壊などはもろにこの効果によるものだったのかも知れませんね。このことは長い間見過ごされていたようで、科学者は早急な対策が必要であると訴えています。幸いなことに、煤の排出は炭酸ガスなどと比べると制御が容易で、比較的短時間で効果の出る対策が施せそうだと言われていますが、かといって炭酸ガスなどの温暖化ガスの削減が緩和されるわけではなく、こちらも更なる努力が必要です。煤を出している原因は車や、石化燃料を焚いているところには必ず発生しているのですが、いま世界を見回すと、どこでやら非生産的な燃焼やら爆発が頻発している地域がありますね。言わずもがなですが、殺人や破壊という非生産的な活動に加えてこのような有害な物質をせっせと発生させているのはたぶん先進国ではないのでしょう。少なくとも世界をリードする国がこのような馬鹿げた真似をするはずはありませんものね。世界の危機よりも自国の利益が優先するような国は3流国というしかありません。あまり面白い話題を提供することができませんでしたが、皆様が平和で楽しいクリスマスを過ごせますよう。
2003年12月23日
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今から33年前、鹿児島の内之浦町から発射された国産初の人工衛星「おおすみ」がこの3日に、大気圏に再突入し燃え尽きました。 33年前の、この打ち上げ成功で、日本はソビエト、米国、フランスに次ぐ4番目の人工衛星打ち上げ国になったのでした。33年間の長きにわたって地球を周回し続け、日本のロケット工学に多大なる貢献をした「おおすみ」の最期はあまり人の口に上る事も少なかったようですが、関係者にとっては感慨ひとしおだったようです。 むやみにスペースデブリを量産するのは好ましくはありませんが、人間が宇宙にかける情熱は国際競争とは別に、未知の世界に対する憧れと挑戦という肯定的な側面も持っていますので、できれば大量破壊兵器に対する情熱を転化して、宇宙開発へエネルギーを注いでほしいものです。それも国際協力という形で。 ところで、ヨーロッパでは度重なる異常気象が、多くの人命や生産物に被害を与えているようです。山火事、旱魃、洪水・・。アルプスでは高温で峰々の万年雪が溶けて、登山者が被害を受けているようです。 このような現象がきたるべき地球温暖化の序章なのかどうか、科学者も慎重ですが、予測されている気温の上昇による厄災はもっと悲惨な結果をもたらすのは間違いないようです。 いろいろな情報を見ても、事態が好転しているという報告はあまりありません。たとえば、北半球太平洋の南部、つまりハワイあたりの海域では海中の植物である藻類による二酸化炭素の吸収がどんどん落ち込んでいるとのことです。 海中の植物は総量でははるかに地上の植物の効果を上回る炭酸ガス処理能力を持っていますので、これが世界的な傾向になってしまうととても悲観的な状況を招いてしまいます。 先日までアジアの子供たちが、屋久島から横浜まで環境問題について考える船旅をしていましたが、次代を担う子供たちに、しっかりと現状認識と問題意識をもってもらえれば大変嬉しいと思います。 とはいうものの、このような状況になってしまった責任は、私たちを含む大人の責任であることは間違いのないところです。 次世代につけを残すような愚行をこれ以上重ねるわけにもきませんし、科学技術や文明社会の功罪をはっきりと示し、次の時代の目指すべき姿を示唆する努力を続けなければなりません。 人間は、世代を超えて知識を伝承する方法を持ち得たおかげで、ここまでの高度な社会を築いたわけですから、すばらしい思想や過去の過ちの反省も受け継いでいけるはずです。われわれはわれわれの子孫に対して責任をもたなければならないのです。
2003年08月17日
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先日オゾン層に関する日記を書きましたが、オゾンそのものに対する認識が結構人さまざまなので、ちょっと整理してみたいと思います。そもそもオゾンというのは、酸素原子でできているのですが、本来は2つの原子で酸素となるところを3個の原子で1つの分子を作ったものです。通常の酸素分子が紫外線を浴びたり、高エネルギーに晒されると3つの原子で為るオゾン(O3)に変化するのです。酸素原子がひとつ余分にあるので、一つ放出して安定した酸素になりたがり、酸化力が非常に強いという特徴があります。稲妻が空気中で閃くとその周囲にオゾンが発生したりします。名前の由来がギリシャ語で「臭い」を意味する語幹からきていると言われているとおり、オゾンは独特の臭いを発します。オゾン層は成層圏のさらに上、地上30kmあたりの層ですが、ここにはオゾンが数十ppmの濃度で存在しています。数十ppmというと微量のようにも思えますが、われわれが呼吸している低高度の大気中の濃度の数万倍にもなります。このオゾンが紫外線を遮るフィルターの役目を果たしているのですね。地球の黎明期、酸素がほとんどなかったころは、紫外線がもろに地表へ到達し、生き物は水中にしか住めませんでしたが、植物が繁茂するにつれて酸素濃度があがり、結果としてオゾン層が形成されていったと言われています。問題となっているフロンガスは、オゾンと反応してオゾンを消費してしまいますのでオゾン濃度が下がって、オゾンホールの原因となっているのです。ところで、またまたNews Scientistを読んでいて目に入ったニュースなのですが、我が太陽系の母星である太陽の磁場の極性が変化し、集塵機と化す恐れがあるというショッキングな報告がありました。太陽の強力な磁場は、従来は星間物質が太陽系に入り込むのを防いでいました。この磁場の極性が反対に変化しつつあり、その結果星間物質を逆に引き寄せるような効果をもつのではないかということです。これは1990年代に打ち上げられたESA/NASAのユリシーズ計画のDUSTという衛星が継続的に観測していた星間物質の量でも裏付けられているそうです。いきなりそんなことを言われても、その結果どうなるんだという疑問を持たれると思いますが、まず、地球と太陽の間に大量の星間物質が入り込んで太陽光を遮り、氷河期の到来を招くのではないかということです。これによって生物の大量絶滅も懸念されます。科学者の間でもこの話題に関しては議論が白熱しているようです。いずれにしても、星間物質の増大がもたらす影響については未知数な部分も多く、南極の氷を掘り下げて過去の大気の状態がどうであったのかを調査する計画もあります。数十億年に及ぶ地球の過去の歴史を見ても、生物は幾多の困難を経ながらも今日まで生き延び、繁栄を謳歌しているところをみると多少の環境変動にもへこたれない強靭な生命力を持っていると言えそうですが、人間についてもそれが適用できるかどうかは疑問です。太陽系外からの侵略者が地球を狙って戦争を仕掛けてくるなどというのはSFの世界の話かもしれませんが、地球全体の危機ということになると、国境や民族などという見えないバリアーにとらわれている訳にもいかず、もうちょっと地球的な協力体制が築けるかもしれません。さて、災い転じて福と為す、という叡智が人間に残っているかどうか。もちろん、そのような事態にはならないことが一番なのですが。
2003年08月08日
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8月に入って一挙に暑くなってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?今月は天文現象の一大イベントとして、火星の大接近がありますが、数百年に一度の得がたいチャンスです。きっとにわか天文ファンが増えて、天体望遠鏡がバカ売れしたりするのではないかと予想しています。ひょっとしたら光学メーカーの株を買っておけば一儲けできるかもしれませんね。火星の大接近は8月27日が最大接近となるのですが、奇しくも私、巨頭星人の誕生日であります。火星在住のお友達が私の誕生祝に、大接近をプレゼントしてくれたということにしておいてください。当日望遠鏡で火星を覗いたら、私への誕生日祝いのメッセージが点っているかもしれません。さて、今日の話題ですが、紫外線の脅威からわれわれを含めた地球上の生物を護っていてくれたオゾン層の破壊が少し緩やかになってきたという、やや嬉しいニュースです。News Scientistの報じるところによると、30年前に初めて観測されて以来、悪化し続けていたオゾン層の破壊が初めて減少傾向に転じたと、ハンツビルのアラバマ大学の研究者などによって確認されたそうです。オゾン層破壊の元凶となっていたのが、冷媒やスプレーに使用されていたフロンガスであることは周知の事実となりましたが、このことが初めて発見されたのは1974年のことでした。それから1987年のモントリオール議定書によってこれらの化学物質の使用が禁止されるまでに十年以上の歳月を要しました。対策を施してからそれが実効となるまでには、地球の大気システムはあまりにも悠長で、いわばオーバーランという形でオゾン層の破壊は進んでいたのです。科学者たちの予想によると、今後20年くらいかかってようやく1980年以前のレベルまで回復するとのことです。これから破壊の進行がゆるやかになり、やがて破壊は止まり、次にオゾン層の復活というシナリオになっています。いずれにしてもあと数十年はかかる計算です。今回報告されたオゾン層の回復傾向はとても喜ばしいニュースではあるのですが、これが単純に人間がフロンガスの使用を抑えてきた結果だとするのは早計です。皮肉なことにオゾン層の回復には、もうひとつの危機である地球温暖化が寄与していることがわかってきました。というのは、温暖化ガスによる平均気温の増加は、地表面に近い低高度の大気における現象であり、逆に高高度の大気は冷却化に向かうのです。その結果、成層圏レベルの大気の温度が下がり、このことがこの層の化学反応を鈍化させ、オゾン層の破壊にブレーキがかかっているというのです。オゾン層が回復するのはいいことなのですが、過度にオゾン層が形成されるのも実は好ましくないのです。これらの研究に関わった科学者は言います。「われわれはオゾン層の破壊を心配するあまり、過度のオゾン層が何をもたらすか予想していなかった。地球も生物もある程度の紫外線は必要としているのだ」サーモスタットによる温度調節では、温度があるレベルを超えると加熱を抑える動作に入り、再び下がりすぎると加熱を再開します。当然、目標の値から上がったり下がったりする動きが生じ、これをハンチングなどと呼びますが、高度な調節が要求される場合はハンチングを抑えるために傾向を予想し、先取りした管理を行わなければなりません。人間の科学技術が進めば進むほど、自然界や自然の摂理に与える影響は大きくなり、これを予想し調整する能力も要求されるのです。しかも事がハンチングによるオーバーシュートだけで済めばよいのですが、いったん道を逸れると取り返しのつかない事態もありえます。まさしく大量破壊兵器や、行き過ぎた遺伝子操作などあまりにも危険な両刃の剣がわれわれの生存を脅かしかねない現状です。開発にかけたエネルギー以上にそれを管理する技術や能力が要求されているのではないでしょうか。
2003年08月05日
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20億年前の昔、はるか彼方の銀河でひとつの巨大な恒星がその寿命を終え、信じ難いほどの量のエネルギーを吐き出しながら縮潰しブラックホールへの道を辿り始めました。そしてその瞬きが3月29日の早朝(世界標準時)に地球に達したそうです。経度にして110°離れた地点の2つの望遠鏡、特にこのような過渡的な現象を観測するべくしつらえられた観測装置がこの光を感知しました。いわゆる超新星と呼ばれるたぐいのものですが、爆発直後の一分間に放たれたエネルギーはまさに超弩級の天文学的な量に達していると推測されます。なにしろ、天の川銀河の全恒星を合わせたエネルギーの100万倍あまりというのですから想像を絶しています。太陽一個でこれをまかなうとしたら、その生涯、90億年分の累積エネルギーを10分の1秒の間に放たなければなりません!!そういうわけで、超新星というよりは超々新星と呼ぶほうが相応しいようです。(原語では"Hyper Nova"と呼んでいますが) これほどのエネルギーになると私たちの概念では扱い難く、アフリカの原住民の方々が数を数えるときに、「1,2,3、・・たくさーん」と3以上の数値を数えることを放棄したりするように、「物凄い量の」としか言い表しようがありませんね。今、世界にはROTSE ( Robotic Optical Transient Search Experiment ) と呼ばれるこのような過渡現象ばかりを観測するための組織と装置が点在しています。なにしろ数分で終わってしまうような現象ですので、素早く発見し、その情報を世界中の観測機器に伝えなければなりませんので、地球規模での協力体制が必須なのです。今回の現象は地球軌道を回る高エネルギー過渡現象探査装置によりいち早く認められ、その後オーストラリアとアメリカ・テキサスの天文台の二つの望遠鏡により詳しく観測されました。この類の人間の好奇心の中でも、クリティカルともいえるような科学分野では、国籍や地域を越えて科学者たちは協力を厭いません。このような試みが直接一般の人々の幸福に関わっているかどうかは定かではありませんが、本来は人間に幸せをもたらすべく発展してきたであろう経済や、国家システムが国家の利権を追うことに終始して、全体的な調和を欠き不均衡が大きくなるばかりであるのは何故なのでしょう?勝者と敗者、優者と劣者、経済力学や軍事的力学だけで優劣を判断するのであれば単なる弱肉強食の世界になってしまいます。今、世界は物凄い力で攪拌されているように見えます。世界がゆるやかに連帯するためには、各々の精神世界をお互いに理解し、文化と言う名の資産をお互いに尊重し合わなければ、単なる均一化という文化エントロピーの死滅に至り、つまらない世界になっていくでしょう。文化には強者も弱者もないのです。
2003年04月11日
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意見が合わなかったり、非常に仲の悪いことの例えに「あの2人は水と油だ」という表現をすることがあります。水と油は実際混じりあわず、ドレッシングのようにいくら振り混ぜても時間を置くとくっきりと層分離して上と下に分かれますね。油のように水とは親和性のない性質を疎水性と言いますが、無理やり油を水中に均一に分散するためには界面活性剤(いわゆる石鹸なのですが)を用いてエマルジョンを作ります。界面活性剤分子は片方が親水性、もう片方が疎水性になっていて、油分子の周りを疎水基を内側にして取り囲みます。反対側が親水基ですからこのままで水中に浮遊することが可能になるわけですね。洗剤の仕組みは衣服などに付いた油汚れを界面活性剤が取り込んで水中に溶け出すように仕向けることで達成されています。ところでNew Scientistの記事によりますと、実は油はそのままでも水中に分散できるのではないかという、化学者から見ると画期的(あるいは眉唾物)なニュースを報じていました。オーストラリアのキャンベラにある国立大学の研究者によると、予め水に溶け込んでいる気体を全て取り除くと、油が自然に水に溶けて安定するという俄かには信じ難い実験結果を発表したそうです。今までの常識を覆すような話ですので、当然他の科学者たちは懐疑的なようですので更なる追試と確認が求められているようです。フレンチドレッシングなどがいくら振り混ぜても時間が経つとくっきりと層分離することは経験的に皆さんご存知で、当然のことのように思っているかもしれませんが、これは科学者を長い間悩ませている「ロングレンジ疎水性」という性質なのです。つまり油と水がいくら混合しても溶け合わず層分離してしまう現象について明確な説明ができなかったのです。この研究者はもともと油のような疎水性の物質の研究をしていたのですが、油表面にできる微細な泡に注目しました。そしてこれはひょっとしたら水中に溶け込んでいる気体と関連性があるのではと思った彼は、水と油の混合物を抽気しながら長い時間をかけて凍らせたり、溶かしたりして水に溶けている気体分をほぼ完璧に除去しました。その結果、驚くべきことに油は見事に水中に平均して分散して、コロイドと呼ばれる曇った混合液体を生成したのです。しかもいったん溶け合った混合液は気体を再び吹き込んで溶かしても、元に戻ることはありませんでした。このことから水中に溶け込んだ気体がロングレンジ疎水性に深い関係があることは確実なようですが詳しいメカニズムを説明できるには至っていません。いったん水中に分散した油滴の周りには水分子が電離した水酸基が吸着し、これが再び油分子同士が集合することを妨げるように働くのでコロイドのままでいることができるようです。もしこの技術が確立すれば化学分野、とくに医薬品分野などにとても有用な技術になるに違いありません。層分離してしまうと言えば、地球上の人間社会でも民族や宗教などの違いから水と油のような関係から脱却できずにいるグループのなんと多いことか。これを克服するには新たな叡智や思想が必要なのでしょうが、実利的経済原理が最も幅を利かしている現在、それも甚だ困難な状況のように見えます。少なくとも感覚的に非常に狭くなった地球で、他人の不幸や悲劇はすぐさま自分たちの生活に影響を与える可能性が高いことを考えれば、国境や体制を超えた連帯感を強めることが急務であり、一部の指導層や特権階級の理由だけによる破壊や殺戮には断固反対する意志を表明しつづけなければなりません。反目しあうグループの負の連鎖を断ち切るためには我々自身が何が必要で、何をしていかなければならないか真剣に考えなければなりません。爆弾が炸裂したり多くの血が流れる以外の方法で。
2003年03月16日
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太古の昔、原始の海に雨が降り注ぎ湿った大気に雷鳴が鳴り響いていた。稲妻が天を切り裂き濡れそぼった岩肌を妖しく照らし出す。これは地球の黎明期の光景を想像したものですが、生命の誕生には雷が大きな役割を果たしていると言われています。1950年代にスタンリーミラーという人物が生命の最初の部品となる有機物、蛋白質の構成物質となり得る化合物の誕生には電流が大きく寄与していることを発見しました。いわゆるアミノ酸の誕生です。メタンとアンモニアが存在する水に電流を流すと反応して複雑な化合物を生成し、これが生命の素になったとする仮説です。そしてこれは最近のことですが、隕石の衝突を模擬して氷の塊に弾丸を打ち込む実験を行った結果、氷の中にしこまれていた計測器が電流の発生を検知したそうです。この実験から何が導き出されるかと言うと、氷の厚い表層に覆われた水の海があれば、表面の氷に隕石が衝突して電流を発生させると水の中に有機体を発生させる可能性があるということです。この話題は例によってNew Scientistのサイトから拾ってきたものですが、あらためてミラーの実験に追試を行ったわけではありません。氷に覆われた海と言えば、現在のところ最も生命を生む有機体の存在の可能性が高い星、木星の衛星であるエウロパを仮定しているのです。今は力尽き木星に落ち込みつつある探査衛星ガリレオが健在な頃エウロパの表面を詳しく探査したところによると、衛星エウロパには生命あるいは有機体の素となる化合物の存在する可能性が高いことがはっきりしていました。問題は化学変化を惹き起こす電光があるのかどうかということだったのです。なにしろエウロパには大気がありませんので地球のような雷鳴は轟かないのです。実験に使用されたのは直径1cmのアルミニウム合金の弾丸で、エウロパの氷を想定した-196℃に冷却された氷を秒速6kmの速度で撃ち抜きました。これは直径1kmの隕石が秒速24kmのスピードで衛星の表面に衝突したのと同じショックを与えます。エウロパの表面には(おそらく)そのような隕石の衝突でできたと思われる数多くのクレーターが点在しています。実験は可能性を示唆してはいますが、もっと正確な根拠を得るにはなお継続が必要です。この実験に使用された水は純水であり、有機物の不純物を混ぜてほんとうに反応が起こるのかどうかを確かめなければなりません。そしてエウロパについてもガリレオの後継機を飛ばしてさらなる詳細な調査が必要です。NASAでは再び木星の衛星の探査宇宙船を赴かせるべく、早ければ2011年の発射に向けて準備を始めています。この探査機はエウロパとカリスト、ガニメデの3つの衛星を調査する予定になっているそうです。われわれはどこからきたのか。生命のスープを滾らせた雷鳴がその萌芽を生んだのか?あるいは彗星に紛れて飛来したアミノ酸が舞い降りてきたのか?生命の起源についてのロマンは尽きませんが、時間の横軸と、フラクタルの縦軸に生命の種を初期値として変化してきた進化の結果としての最高の生命体が人間であるとすれば、進化のプロセスが蛮性と霊性の間で激しく揺れ動いている現在は生命自体の過度期なのかもしれません。人類が滅びてしまえばあるいは進化の神は次の知性の担い手を選び直すのかもしれませんが、今ほど種としての命運を我々自身が握っている瞬間はないのではないでしょうか。目標は高いところに置かなればなりません。たとえそれが共同幻想であるとしても。
2003年02月27日
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楽天webページ開設一周年を過ぎ、キリ番15000も無事通過いたしました。15000カウント目は私のサイトの超常連であるjabannaさまに踏んでいただき、これからカウプレの準備をしてやがてお送りしたいと思います。jabannaさまは、実はログアウト中のアクセスだったのですが、ご本人の申告も有り、こちらも間違いなくjabannaさまの足跡であることも確認に致しましたので場外セーフという扱いにさせていただきます。ところで先日、某日○テレビ系の特○リサーチ200Xという番組で、メールによる国際的な詐欺団の話題を取り上げておりました。主にアフリカあたりの国からのメールで、送り主は政府の高官や大銀行の頭取クラスの人間ということになっています。色々な事情で莫大な金額のお金を第三国経由でマネーロンダリングしたいので、口座を一時的に借り受けられたらそれ相応のお礼をする、というものです。メールの受け手がそそられて返事をすると、とんとん拍子に話が進み、お金を確認して欲しいので国まで出向いていただきたいいうことになります。しかも政府関係の人間の依頼なのでパスポートは要らないと言います。事実、空港での入国審査はパスされます。莫大なお金が手に入るんだから少々の出費は仕方ないと、本人がその国に行きますと、ジュラルミンケースに入った真黒な紙幣大の紙の塊を見せられます。訝っていると、お金をそのまま搬送するのは困難なので化学的な処理を施して黒く変色させているだけで、戻すための薬品をかけて電子レンジに入れると元に戻るのだと言い、電子レンジで実際にその黒い紙が紙幣に変わる様子を見せます。ここからが本番で、その薬品をその紙幣分を戻すのに必要量購入していただきたいともちかけるのです。その金額は100万円近い高額です。だまされた人はここまで来たのだから後には引けない気分になり、なんとか金を工面してその薬品を購入することになります。お金は追って送るので国で待っていて欲しいということで、本人は帰国してひたすらお金が送金されてくるのを待ちますが、一向にその気配はなく不審に思ってメールや電話をしますがすでに後の祭り、あて先不明で戻ってくるメールや使用されていない電話番号で初めてだまされたことに気づくのです。途方もない話ですが、実際にだまされてしまった日本人がいたそうです。まことに凝った詐欺なのですが、話が巧妙に仕組まれているためすぐには気がつかないようです。入国審査のフリーパスは空港の係員を買収しているため可能なのですね。電子レンジで本物のお金に変わるのは手品まがいのわざのようです。人をだますのには手間と金を惜しまないという詐欺道の真髄を貫いています。実は私もこの類のメールをすでに何通か受け取っています。最初に受け取ったメールはアフリカの小国の某銀行の支店の頭取クラスと称する人間からで、その銀行に口座を持っていた大金持ちが飛行機事故で親戚縁者もろとも死んでしまい遺産を相続する人間がいないのでそのままだと銀行のお金になってしまい、なんとも口惜しいので相続人をでっちあげて我が物にしたいということでした。正式な相続人とする書類は当方の有力な弁護士が作成するので是非その受取人になってあとでお金を山分けしようと持ちかけてきました。遺産は総額で100億近くあり、20億円をあげると言うのです。100万円以上のお金さえあまり見たことのない私が20億円!あまりのことに私は失禁しそうでした(嘘です)。もちろんあまりにも怪しいので返事はしませんでしたが、わたしのような小心者でなくて多額のお金を必要としている人だったらあるいはという気もしました。その後そんなメールに気まぐれで返事をしたことがありました。いったいどんな反応をするのか興味をそそられたからです。結果としては、早く口座を教えてくれ、一刻も早く話を進めようと矢の催促とあいなります。のらりくらりと逃げながら、結局私はそんな大量のお金を持ち上げるほどの腕力がないので遠慮したいと申し出ましたが、ちょっと面白かったです。その際に相手がよく言った科白が、「これは子供の遊びじゃないんだぞ」というものです。確かにこんな手の込んだ詐欺は子供ではできないなと後でにやりとしたものです。海外とメールをやり取りする機会の多い方、こんなほら話の詐欺にはよもやひっかかることはないと思いますが、ゆめゆめ油断めされるな。本日はちょっと変わった話題でした。
2003年02月24日
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とうとう楽天コミュニティにサイトを設けてから一年が経過しました。当初は単に買い物をしようと思ってHNを持っただけでしたが、こんなものも用意してあるんだと戯れに参加してみたところ思いのほかいろいろな方々と知り合うことができ、充実した一年を過ごさせて頂きました。常連として来て頂いている方々には深く感謝するとともに、これからもよろしくお願い致したいと思います。さて、本日の話題は自然災害についてです。以前に気象変動により頻発する山火事の話題を取り上げ、負の循環が加速していることの懸念を報告いたしましたが、山火事よりもさらに深刻な事態が進行しているようです。New Scientistで見つけたニュースによると地下の石炭層の自然発火による天然火災が驚くほどの規模で発生しているとのことです。この類の火災は地上および地下の2つの相で進行し、当然のことながら大量の二酸化炭素を吐き出します。このような現象の研究・調査しているアメリカの地質学者は、これは地球規模での破局と言ってもおおげさではないと警告を発しています。というのも地球温暖化ガスの問題のみならず、石炭火災による排出ガスは人間の健康を脅かすレベルにあるからです。人間の呼吸器系や心臓病の疾患を惹き起こす可能性が極めて高いのです。中国全土で発生している地下石炭火災による炭酸ガスの排出量は、試算したところによると、アメリカの全ての自動車の排出分にも等しいだろうと見積もられています。全く空恐ろしい話ですね。自然に存在する石炭はいろいろな不純物を含んでいますので燃焼の際に、水銀やセレニウム、硫黄などの有毒成分も大気中に放出され、これが雨などに混じって降り注げば土や海水の中で濃縮されていきます。当然ですが石炭層がある場所ならば、このような火災が発生する可能性があるのですが、主としてインドネシア、中国、インドそしてアメリカなどの国々で石炭層火災が多発しています。地中は酸素の供給がスムーズではありませんので山火事ほどの派手さはありませんが、なんと数十年にわたって燃え続け、旱魃のときには山火事を惹き起こすことさえあります。地中で静かに燃える熾火のようなものでしょうか。実際ににインドネシアでの天然石炭火災はもう20年も燃えつづけているものがあるのです。これが何のきっかけで起きたかと言いますと、あの1982年のエルニーニョのときの旱魃が原因らしいのです。当事国の機関も手も拱いているばかりではなく、ジャカルタの表層資源採掘事務所の担当者は確認されている260ほどの火災現場のうち106を掘り起こして処理しています。もちろん、このような自然発火による石炭層の火災はずっと以前からあったと思われますが、現在の多発状況は異常なことなのです。中国は面積も広く、前述したように事態は深刻の度を増していますので、オランダにある国際機関の地球情報科学・観測協会が中国政府と協働して、人工衛星による観測で広範囲の地域の火災をいち早く発見するシステムを導入しようとしています。また現在進行中の火災に対しては採掘技術者が対応策を考案しています。火災が発生している土地を耐熱性のモルタルで覆い、窒息させて消そうというアイディアで、砂、フライアッシュ、セメント、そして水と泡を混ぜたシェービングクリーム状のものが使われるそうです。ほんとに効果があればいいのですが・・。単に発生する炭酸ガスを抑制するだけではとても追いつかず、一刻も早く各地にくすぶっている地下火災を鎮火する必要があるようです。内輪もめをしている場合ではないのに、いったい世界の首脳達は何を考えているのでしょう?悲劇的な状況が訪れるのはそう遠くはなく、自分たちの身にふりかかることがはっきりしているのに、まるでいやなことからは目をそむけようとしているのではないかとさえ私には見えます。ひょっとしたら、じわじわと温暖化によって滅びていくのは耐え難いので、自分たちで幕を引こうとしているのでしょうか?私としては人間の叡智と善性を信じて最後まで希望を捨てたくはないのですが・・。一周年記念にしてはあまり楽しい話題ではありませんでしたが、おわびにもうすぐ通過する15000カウントのカウプレを期待していただきたいと思います。
2003年02月20日
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今日は今まで何度か日記に取り上げたことのある宇宙背景放射についての話題を紹介します。宇宙背景放射といえば、ビッグバンの残光とも言われ、全方位からの均等なマイクロ波放射として観測され宇宙の成り立ちに関する重要なデータを与えてくれます。過去にはNASAの宇宙背景放射探査機(COBE)が20世紀後半からかなり精密な観測を行い、均等なはずのマイクロ波放射にかすかな温度差を検出し、それが幼年期宇宙の物質の偏りを表しているということが明らかになりました。今回、そのCOBEの後継機となるマイクロ波全方位探査機(MAP)の12ヶ月にわたる全天の観測から驚くべき結果が報告されました。COBEの観測可能深度が1500万kmであったのに対し、MAPはその35倍の精度で全天のマイクロ波を観測しました。そして、かすかな温度差のみならず、宇宙科学者の長年の疑問であったマイクロ波の偏向の度合いまでも詳細に観測し得たのです。まず、現在観測されているマイクロ波の年代についての正確な値についてですがNASAのゴダード宇宙センターの科学者の計算によるとビッグバン後38万年の生まれたての宇宙の様態を表しているそうです。これをもとにした計算によると、宇宙に最初に恒星が点ったのはビッグバンから2億年後のことで、今まで多くの宇宙科学者により考えられていた宇宙理論に比べるとかなり早い時期になるようです。科学者チームは宇宙創世期の物質の量についても仔細な計算を行い、驚くべきレベルで正確な結果をはじきだしました。それによると、全体のわずか4%が通常の物質の量であり、23%の未知のダークマター、そして残りの73%がダークエネルギーに相当するのだそうです。ダークエネルギーはご存知のように膨張し続ける宇宙を押し広げている謎の力と言われ、その正体は未だに解明されていません。そしてこの結果は我々の存在する宇宙の年齢についても正確な特定を可能にしました。今までの理論ではおおむね120億年から150億年の間という大雑把な時間が推定されていましたが、今回の観測から得られた結果は137億年±1億年になるのだそうです。MAPは今後も少なくともあと3年間は宇宙背景マイクロ波の観測を継続し、さらなる驚くべき結果をもたらすことでしょう。日本の天文学界でも暗黒星雲の観測に近赤外線を使用して、暗黒であった星雲の中に多数の星を捉えることに成功し新たな境地を開きつつあります。見えざる光を追い求め、とうとうここまでたどり着いたのかという感慨を禁じ得ませんが、生まれ、膨張し、様々な紋様を描く時空の片隅に生きる人類が宇宙の真の姿をつまびらかにするのはそう遠くないかもしれません。我々がここにいるのは宇宙が誕生したときからすでに計画された必然なのかもしれません。なお、この話題はNew Scientistの記事で、観測の結果得られた宇宙背景放射の写真が掲載されていますので、興味のある方はNew Scientistをご覧ください。
2003年02月13日
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天文学関係のちょっと面白いニュースをNew Scientistからお届けしたいと思います。アメリカのニューメキシコ州立大学の研究者によって新しいタイプの恒星が発見されたようです。この星は小さな連星系を構成する星のひとつで、かなり低い密度の恒星のようです。連星系というのは一つ以上の恒星がお互いの重力で引っ張り合いながら回転しているというものです。ちょうどフィギュアスケートでパートナー同士が手をつなぎ、回転しているような状態だと考えてもらえばいいでしょうか。この連星はエリダヌスEFと呼ばれ、エリダヌス座方向に300光年の距離にあり、その強力な磁場と光度がダイナミックに変動することで知られています。アメリカのアリゾナ州にあるキットピーク天文台の2.1m望遠鏡と、ニューメキシコのサンスポットのアパッチポイント天文台の1m望遠鏡により、赤外線カメラを用いて撮影した結果から新しいタイプの星として発表されました。磁力変光星の片割れは、かつては太陽の3倍から5倍の質量だったと推定される白色矮星です。太陽を含む殆んどの星はその生涯を白色矮星として迎え、太陽が地球の大きさほどに縮んでしまいます。白色矮星はとても高密度で、その容量がスプーン一杯で、象100頭分の質量にも相当します。このような高密度の連星系の白色矮星の磁力は地球の持つ磁力の1000万倍から2億倍にもなると言われています。そして、この白色矮星の伴星は太陽とほぼ類似の恒星なのですが、太陽よりは小さく質量は半分ほどです。この伴星はその生涯を自分の質量を毎秒60億トンという速度で白色矮星に注ぎ込むことに費やしています。白色矮星の強力な磁場の集中する磁極、面積にしてカリフォルニアほどの大きさの地点に伴星の質量が吸い込まれています。この2つの星が融合した部分から放たれる重力エネルギーは非常に強力な放射線を生成します。そのエネルギーは毎秒200億メガトンの爆弾に相当し、X線から可視光域、赤外線域に至る電磁波を放出します。しかも、連星間で物質が移動しているときはこの星系は目に見えず、白色矮星の100万度の領域からの放射のみを観測することができます。この物質の移動は常に行われているわけではなく、周期的、間欠的に発生するもののようですが、エリダヌスEFの場合は1995年に移動が停止し、それ以来7年間は普通の連星系に成り下がり、光度は30分の1以下に落ちています。天文学者たちはこの間に、謎の伴星の観測を仔細にを行ったわけです。この観測では白色矮星に物質を供給している伴星は全体として低温度で、平均で500度から900度、白色矮星に面している部分は照射されて温度が1400度ほどに上昇し、反対側では600度ほどになっています。現在ではエリダヌスEFは磁力変光星ではなく、光学観測では白色矮星のみの輝きが認められ、赤外線望遠鏡を使えば褐色矮星状の星として伴星が確認できるようです。過去50億年から80億年の間に、この白色矮星の常備食のような星は90%もの質量を失い、その結果内部エネルギーが減衰して通常の星と白色矮星の中間的な存在になってしまっているようです。この新しい種類の星は理論的には以前からその存在を予言されていましたが、エリダヌスEFの観測によって初めて実証されました。発見した科学者は、その質量や温度から褐色矮星の生成の過程の一種ではないかとも考えているようです。また、惑星の発生のモデルの最も代表的な姿とされる、主星の至近距離を高速で周回する巨大ガス惑星とも共通する特徴があるようです。今後、この惑星はハワイにある8m望遠鏡の赤外線撮影によってさらに詳細が観測され、新たな姿が明らかにされるということです。夜空に瞬く無数の星々は強力な観測装置よって次々とその正体が暴かれていますが、それでもなお未知の天体や現象が無数に残されています。未知との遭遇は今後も果てしなく続いていくでしょう。量子力学的には観測者がいると現象の状態が変化すると言われたりしますが、人間がさらなる強力な目を持ち得て、宇宙の隅々までを見回すことができるようになったら宇宙と人間の関わり、人間の種としての存在はどうなっていくのでしょう。ある意味では人間がいるからこそ宇宙は認識されていると言ってもいいのではないでしょうか。だとすれば我々は決して滅びてはならない運命を背負っているのかもしれません。
2003年02月06日
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温暖化ガスによる地球環境の破壊だの危機だのと言われて、地球の命運も尽きるかと思われるような昨今ですが、たとえ人類やその他の動物が生存できなくなっても一方ではしぶとく生き残り栄える生物もたくさんいることでしょう。本当の地球の最後は、寿命が尽き赤色巨星と化した太陽に呑み込まれ溶けてしまうその時でしょう。とは言っても数十億年先の出来事になるでしょうから、露ほども心配する必要はありません。でも、この広い宇宙のことですから、今まさにそのような危機に直面している惑星系も存在しているはずです。ScienceBlogから拾った話題で、ヨーロッパとブラジルの科学者たちが、共同で星々のスペクトル分析を行っている最中に発見したHD47536というIDの巨星の惑星系が、そのような危機に瀕しているということです。科学者たちは南天の80個ほどの巨星のスペクトル分析を、La Silla天文台にある1.52m望遠鏡と分光器を用いて観測していました。HD47536は直径が太陽の約23倍、標準的な赤色巨星としてはかなり小さい部類の星です。この星を巡る惑星は主星から平均距離で約3億kmの距離にあり、地球から太陽の距離の倍ほど離れていますので、まだ安全圏にあると言えますが、遠からず燃え盛る炎に包まれるのは明らかです。さてこの惑星に住むであろう住人の運命やいかに、と固唾を飲むところですが、この惑星、サイズが木星の数倍はあるという巨大惑星ですので生命体が存在するかどうかは甚だ疑問ではあります。そもそも恒星の成り立ちは、星間物質が寄り集まり核融合反応を起こすに十分な温度と密度に達し、新たな星の誕生となります。そして燃料が尽きるまで熱と光を放ち続け、やがて恒星の外側から膨張を始め、どんどん外側に広がり希薄なガスを撒き散らします。有名な亜鈴状星雲などは、このような赤色巨星のなれの果ての姿で、惑星状星雲や散光星雲などと呼ばれ、美しい星の名残のガスが恒星の光を浴びて我々の目に映っているわけです。いずれにしても我が太陽が命尽きるまでには数十億年と言う途方も無い年月を残していますが、その頃いったい地球はどうなっているのでしょう。生命が存在するに足りる状態を維持していたとしても、今とは全く異なる生物相に変化している公算が大きいように思います。万一、我らの末裔が生き残っていたとすると、どのような文明を築いているのでしょう。ひょっとしたら高度な宇宙空間移動の方法を見つけ、他の星系に移り住んでいるかもしれません。あるいは太陽をもコントロールする科学力を持つに至り、赤色巨星となる前にそれを抑制する処理を施しているかもしれません。非現実的とも思えるような遠い未来のことですが、想像力の翼を広げるにはなんとも魅力的な題材です。それにしても、差し迫った危機が目前にあるときに不謹慎かもしれませんが、人間の持つ最大の能力は想像力です。地球の隅々に想いを巡らし、そこに住む人たちの暮らしや喜びや悲しみを想像することは、地球人としての自覚を促す重要な知的作業ではないでしょうか。願わくばささやかなその想いが人類の共同意識を呼び覚ます輝きとなることを祈ります。
2003年01月28日
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地球はご存知のように南極と北極を電気的な極点とした磁気を帯びています。磁石を使って方向を知ることができるのはこの地磁気のおかげであることはいうまでもありません。さて、この地磁気はどのようにして生じているかご存知ですか?基本的には地球内部のマグマの流動により、つまり高熱の溶けた鉄分は地球の自転に連れてその流動性から緩やかに循環していると考えられ、その摩擦が電気的な力を生んで結果的に磁力が生じています。さて、もうひとつ磁力を生む地球の構成要素があります。地球表面の多くの部分を覆う液体、そうです海水です。このほどアメリカの科学者が全地球的な海洋の運動による磁力の傾向から、深海部の動きや磁力による気象への関連を科学的に解き明かそうという試みを始めたとのことです。深海海流については、以前の日記でも触れましたように、深海を移動するブイにより位置情報や温度などから立体的な海洋の動きを解明しようという試みがあります。海水はご存知のように大量の塩化ナトリウムが溶け込んでいます。塩化ナトリウムは水中では容易に電気的に分解し陽ナトリウムイオンと陰塩素イオンになります。これらのイオンは当然のことながらお互いに反応しあいながら全体としては中性になりますが、局部的には偏りが生じることもあり得ます。地球の磁場は主に地球内部起源によるところが大きいのは当然ですが、それに海洋の流れが影響を与え、海洋独自の磁場が生じると考えられます。もちろん、もともともの磁力に比べるとはるかに小さな磁場(地球コアによる磁力の6000分の1)ではありますが、海流や深度による変化を計測するには十分かもしれません。海洋の運動の源は潮汐力であり、大容量の海水が太陽と月の引力によって持ち上げられたり沈んだりするときに、海水同士、海水と陸地や海底との摩擦は膨大な電気的な力を発生しそれなりの磁力を誘導するでしょう。現在考えられている方法は人工衛星から海洋部の磁力を細かく計測して地球全体の磁力分布を完成させることです。そしてこれを時系列や潮汐の状態と相関して調査することにより、海洋内部の動きや気象に与える影響を導き出すことができれば新しい知見が得られるに違いありません。自分たちの環境をグローバルに観察するためにはこのような外側からの目がとても重要です。人間の営みもこんな形で客観的、理性的に捉えることができるように外部からの冷静な観察者としてのメディアが存在できれば、全人類が強調して生きていくために何が必要か何が足りないか、重要なヒントが得られるかもしれません。
2003年01月21日
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先日仕事をしていると突然パソコンの画面に「仮想メモリが不足しています。なんたらかんたら・・・」というメッセージウィンドウが現れました。今までこのようなメッセージを見たことがなかったのでびっくりしましたが、VisualBasicでややリソースを食いそうなアプリケーションを開発中だったのでそのせいかと思い、念のためコンピューターを再起動をしました。ところがたいしてアプリケーションを動かしていないにもかかわらず、またもや同様のメッセージウィンドウが現れます。これは何かがおかしいということで、タスクマネージャーで動作中のプロセスとメモリー消費のモニターを観察してみました。動作中のプロセスの中に、観察しているとメモリ消費が漸増しているものを発見。プロセス名は「SirC32.exe」で、システム起動と同時に動き出すプロセスのようです。早速インターネットで調べたところ、これはSirCam@MMと呼ばれるウィルスでした。詳しい情報はMacfeeウイルス情報で得ることができました。危険度は中程度で、「マイドキュメント」の中のファイルを迷惑送信したり、情報が漏洩する恐れがあるようです。幸い発見が早く、退治用のソフトウェアをダウンロードできましたのであまり被害が大きくならないうちに対処できたと思いますが、なんと迂闊なことかと冷や汗をかきました。それというのも、従来使っていた仕事用のパソコンの電源投入スイッチに不具合が生じ、緊急的に使用頻度の高くない別のパソコンにOSをインストールして使い始めたもののウィルスチェッカーのソフトウェアを導入していなかったのが原因でした。このウィルスの感染はメールによるもので、その内容の代表的な例もサイトに掲載されていたので見てみたら、確かにこんなメールを受け取った覚えがありました!最初見知らぬアドレスだったのであとで消そうと置いておいたのが間違いでした。消そうという段になってちょっとだけ内容を確認しておこうなんて無茶をやってしまったのがすべての間違いの元でしたね。被害を受けやすいOutLookを使わず、フリーソフトのメーラーを使用していましたが、このウイルスはOutLookなどへの依存性はないとのことなので、油断は禁物ですね。君子危うきに近寄らずというのは至言であるなあといまさらながらに思ったものです。果たして他に被害が広がったかどうかはオフィスの他の人たちに確認してもらいましたが、私のところだけにとどまった模様です。やはり被害が広がることが一番恐ろしいことですし、その発信源になってしまうのは恥ずべきことでもありますので十分に対策を施し、日常的な危機意識を高めておかなくてはいけません。インフルエンザも流行っている昨今、無理して会社に出勤したり人ごみを歩いて、ウィルスをもらったり撒き散らしたりすることのないよう防御と対策を十分にしてお暮らしください。
2003年01月20日
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年が改まってからまだ一度も日記を更新していませんでしたが、ようやくちょっとだけなにか書いてみようかという気になってきました。生来の怠け癖が出てついついおざなりにしていましたが、それなりに読んでくださっている方々もいらっしゃいますので頑張ってまた少しずつ更新していきますので、よろしくお願いいたします。ここ数年来の景気の停滞や温暖化を中心にした地球環境の悪化、加えて某大国がひたすら戦争の道をたどろうとしている不穏な世界情勢と、あまりいい材料が見つからない昨今です。引き返せない破滅への道を歩もうとしているかのような世界の空気を感じるにつけ、人間の文明社会の限界を見る思いが致します。環境が厳しければ厳しいほど、生物は自分を護ろうとする傾向が強くなるのは止むを得ないことではありますが、人間には物事を客観的に捉え、理性的な判断ができる知性を持った動物であるはずです。思い切り客観的に物事を捉えようとするならば、人間のそうした活動も自然淘汰の一部であり、盛者必衰の理の例えのように緩やかに滅びていくことも宇宙の悠久な時空の流れの中のエポックのひとつに過ぎないのかもしれません。しかしそれを認めてしまうことは、我々人類の持つ能力やこの世界における役割と言う観点からすると、自己否定になってしまいます。私が常に心がけているのは、ある問題に対していくつかの道がある場合にできるだけ性善説を前提としてとるべき道を選ぶ、ということです。例えば、戦争は愚かな行いであり、一般市民にとっては厄災以外の何者でもありません。しかし、国という組織にとっては、国という器を守るためにはときに避けて通れない道であるとする立場もあります。私はここで、私の日記のテーマでもある存在意識の拡大ということを強く訴えたいのです。それは決して大げさなことではなく、世界には自分と同じレベルの普通の生活者が圧倒的な多数として存在し、生活しているという単純な事実の認識なのです。毎日、食事を楽しみ、友と語らい、恋人と愛し合い、泣き、笑い、怒る平凡な市民こそが同胞であることを意識できれば、我々にとってとるべき道がなんであるか自ずと見えてくるのではないでしょうか。自分自身の目標として、引き続き今年も科学関連のニュースを中心に、下手な小説も織り交ぜながら充実したサイトにしていきたいと思っていますが、新しい年の目標としては他の分野も勉強して、幅広いテーマを取り上げていきたいと考えています。ややもすると独り善がりな独白めいた内容になってしまいがちですので、読者の皆さんからは忌憚のないご意見や、視点の異なるお説もたくさんいただきたく、掲示板にどんどん書き込んでいただければ望外の幸せです。
2003年01月08日
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私が子供の頃は、田舎だったこともあって舗装した道路も少なく森や池には生き物があふれていました。叢に入ると、むっとする草いきれとともに溢れるばかりの昆虫を見ることができました。川には小魚が群れ、アメリカザリガニが徘徊し、時を忘れて遊ぶこともしばしばでした。そういう意味ではとても恵まれた自然環境の中で暮らしていたんだな実感することができます。夜になると街灯に群れる蛾とともに、今ではデパートでしかお目にかかれないような大きなカブトムシが迫力のある羽音と共に飛び回っているのも目撃しました。そういうわけで、私は単純に生物多様性に富んでいればいるほど、つまり種々雑多な生き物がたくさんいるほど、豊かな自然に恵まれていると思っていたのですが、Science Blogの記事によるとどうもそうとばかりは言い切れないようです。文明と言う名の人間の生活領域が広がるに連れ、複雑な生物相は失われ地球全体としての生物多様性は低下しているはずです。それでも、局部的には様相が変化しながらも生物多様性が増している地域もあります。米国、サンタバーバラのカリフォルニア大学とニューメキシコ州の科学者たちの発表によると、洋上に浮かぶ島々では在来種の鳥類の絶滅とそれに代わる新たな種の侵略により、異なった生物相による種の多様化が進んでいるとの事です。かつては繁栄を極めた在来種が多くの地域において消え去り、どこの島も似たような鳥にとって代わられているのですが、地域ごとには増加している生物多様性も、全体として考えると単純化しているというのが実状のようです。おそらく、陸上でもこれと似たようなことが起きているでしょう。人為的に持ち込まれた南方の昆虫や動植物がそれに拍車をかけています。人間の居住地域が周辺の生態系に多大な影響を及ぼしているのは紛れもない事実ですし、直接的にも間接的にも植物・生物生態系の単純化に拍車をかけているのでしょう。温暖化がもたらす生物相の変化は、徐々にではありますが我々の身の回りでも顕在化しており、それは在来種の動植物が駆逐され、南方に棲息していた種と置き換わってしまうということを意味しています。その結果、温帯モンスーン気候に生きてきた多くの生物の絶滅という結果を惹き起こすでしょう。さらに恐ろしいことは、マラリアなどの従来無かった病原菌の大進出を許してしまうのです。加えて、温暖化による地球レベルでの気流の変動がもたらす気候の変化は超大型のハリケーンの発生として、米国コロラド州の気象学者らによって予測されています。彼らは、アメリカの東海岸地域では2003年には超大型台風が頻発し、人工の密集した地域での被害予想は過去のどの時代よりも悲惨なものになるであろうと警鐘を発しています。その最大風速は110マイル毎時(50m毎秒)以上になるかもしれないと予測されています。旱魃、大水害、病気の蔓延、などなど、気候の温暖化がもたらす負の効果は、それが具体的になればなるほど人間の文明社会を破壊しかねない大きなものになるでしょう。喉もと過ぎれば熱さを忘れる、と言いますが、過ぎた後の世界を見ることができる人間が果たしてどのくらい残っているのか、私には予測しようもありません。ことさら大げさにこのようなことを書いていると思われるかもしれませんが、それは明日起こっても決しておかしくはないのです。一刻の猶予もならない事態と言えるでしょう。政治という分断された国家意識の中で、国家の損得だけを中心に考える手法ではとても対応できる事柄ではありません。乱暴な言い方ですが、国家の枠にとらわれずに物事を見、考えることのできる人たち、それはほかならぬ普通の市民であり、普通の生活者である多くのほかの地域の人たちと危機意識を共有することによってしか、今のところ実現できそうにありません。繰り返し同じ事を言いますが、全てはあなたにかかっています。
2002年12月27日
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最近の日記で何度か木星観測衛星・ガリレオに関する話題を取り上げていましたが、気になっていた高放射帯の通過後、再起動しなくなっていたテープレコーダーがなんとか動き出したというニュースをNews Scientistのサイトで発見しました。念のためもう一度経緯を説明いたしますと、ガリレオは木星の最内側の衛星であるアマルティアを通り越して、木星へ接近する途中で非常に高レベルの放射能帯を通過しました。このような場合、ガリレオは放射線の被害を最小限に抑えるために、全ての機器を自動的にいったんシャットダウンします。そして放射能帯を過ぎたところで、全ての装置を復旧するのですが大事な大事なテープレコーダーだけが再起動できなくなっていたのです。ガリレオプロジェクトの技術者たちが懸命の努力をした結果、わずかですが息を吹き返したとのことです。傷んでいたダイオードに、繰り返し一時間づつ電流を通し、原子配列が元の格子状態に戻るようにのべ83時間にわたって刺激しつづけたのです。この結果、テープレコーダーは一度に数分間づつ動作するようになり、探査機のオペレーターは、データの復元にはこれでも十分だと考えています。復元作業は一月の半ば、ガリレオが最後のシャットダウンに入るまで続けられます。ガリレオの燃料はほぼ尽きており、文字通り最後の力を振り絞って、まるでいまわの際の人間が最後の呼吸をつぐかのように貴重なラストメッセージを送ろうとしています。幸いなことに、原始的な生命体の存在の可能性が考えられている木星の月エウロパに接触し、汚染することなくきれいな引き際を演じきったと、科学者は安堵の胸を撫で下ろしています。前回にも書きましたが、予定された活動期間よりも5年間も長く探査活動に従事した老兵は今静かに消え去る道をたどりつつあります。まさしくガリレオがその生涯を閉じ木星の一部となる来年の九月、もし覚えておいででしたら「ご苦労さん、ガリレオ、さようなら」と胸の内で呟いてあげましょう。
2002年12月24日
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