やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2004年09月03日
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カテゴリ: 映画鑑賞
小津安二郎監督の映画。

昨日の小津監督「長屋紳士録」(1947年)にひきつづき映画らしい映画を観たのだった。




あらすじは有名な「東京物語」とだぶる。がそれほどシリアスではない。
あの戦後の経済、住宅事情が悪い時代より前の時代でゆとりがあったのか?

東京の財もあり家柄もある家の69歳になる主人が心筋梗塞で亡くなった。
あると思った財も借入金のほうが多く、屋敷、書画骨董も売り払うことになる。残されたのは母と未婚の末娘(高峰三枝子)。しかも、父の亡くなるすぐ前に調いかけていた縁談も破談となる。

長兄、姉二人それぞれ所帯を持って相当に暮らしている。兄のひとり(佐分利信)は少々はずれてきままな暮らし(父亡き後、天津での事業)。家族会議。



両家とも部屋数はあるし、お手伝いさんもいるのにね。ここが「東京物語」と違う。
もうひとりの姉の家にもう世話にならず、一族の別荘だろうが、鵠沼(鎌倉)に引っ込むということになる。

父の一周忌。きままなほうの兄が天津から駆けつけ、事情を知り激怒。

自分と一緒に天津に行かないかと誘う。当時は中国は新天地。母のような老人でも暮らしやすく、妹も誰に気兼ねなく働くことも可能と。(ここらあったりは当時の政策、風潮か。ご存知、その後中国に渡ったために大変な苦労をした人も多かったのだから皮肉だ)

兄妹、お互いに結婚相手を紹介する約束をしてエンドマーク。




いつになくあらすじを詳しく書いたが、二つの点でとても印象的かつ、感銘を受けたので忘れないために。

ひとつ。最近こういう映画があるのだろうか?見終わった後にジーンとして考え込ませるような。これぞ映画映像の正統手法。脚本の妙味。

SFXもカーチェイスも度肝を抜くシーンもいいけれど、やはり感銘深いものもいいのだ。昔の映画以外に無いのではと私に思わせるので(知らないのかもしれないが)。いやいや、アメリカにもヨーロッパにもアジアにもある。日本に最近無いのだと思う。あったら誰か教えて~。

もうひとつは個人的なこと。1941年私の生まれた年。12月に真珠湾攻撃があった年に作られた映画。前にも書いたが私がこの世を認識した時、何もかも乏しかった時代だったのよね。(ちなみに「長屋紳士録」(1947年)が幼児の時こんな風だったのねと)

しかし、この映画にはゆたかにあるではないか。洋風生活、書画骨董、お菓子にケーキ、喫茶室、きれいな着物。まじまじと見とれたね。私の知らない昭和初期の生活ぶりをね。やっと納得した、母や姑の昔話がうそでないことが。






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最終更新日  2004年09月03日 18時02分33秒
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