謹厳な堅苦しいような作家、初期のこの作品はぎやかだった戦前の浅草を描いた、通俗小説のようで意外な気がしたが、作品が書かれた時の作家の身辺を知ればわかる気もする。
思想的なことや妻に去られたことなどで何もかも行き詰っていて、脱却したいために遊興地浅草でブラブラしていたのだが、それでもなお悶々としていた時代を材料に私小説風な作品。
別れた妻への未練、戦争への暗い道の予感、可憐なダンサーに寄せる慕情。時代の背景・風俗がよく書き込んでありおもしろいのはさすが。
昭和14年頃の浅草なんてもうこのような本で知るしかない。有名なのは永井荷風の作品。そういう意味では貴重な文芸作品でもある。
『青春の蹉跌』石川達三 2021年04月10日
No3 石川達三(昭和の作家) 2021年04月07日
No2 高見 順(昭和の作家) 2018年12月10日
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