真実一路

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2025.01.28
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テーマ: キリスト教(17)
カテゴリ: 映画

復活 [ ジョセフ・ファインズ ]

福音書の映画化はいくつもあるけど、イエスの死から昇天までの部分をじっくり描く作品は珍しい。この作品ではローマ帝国の護民官を話の主役に据え、その護民官が復活の奇跡を目の当たりにし、キリスト信仰の証人となるというストーリーになっている。

最初に熱心党のバラバが戦闘で殺されるシーンがあり、これは福音書には書かれていないエピソードなので、復活物語に独自の解釈による脚色を施した斬新な内容を期待したのだが、やはり教会の批判を受けない護教寄りの作品となっていた。でも、総督側が過激派(熱心党、反体制派)らによる暴動を恐れて秩序維持のためにイエスを処刑したことや、イエスの遺体が弟子たちによって盗まれることを危惧したりといった、史実としてあったと考えられる事柄を取り入れた点は評価したい。それらの点で、この作品は今の時代にふさわしい作りによる聖書物語になっている。
私がもっとも感心したのは壮大な神殿の威容や、枯れ果て荒涼としたかの地の景観など、当時のイスラエル(パレスチナ)のイメージをよく再現した映像美。あの神殿、CGによるものではないし、あれを全部セットとして作ったとも思えない。現実に残っているどこかの城郭でロケしたのだと思うが、そこに行って見てみたいと何とも旅情をそそられる。

復活の奇跡はどう考えたらいいものか...キリスト者なら信仰上の受け止め方があるのだが、キリスト教の一ファンというだけではそこは難しい。
福音書のマタイ伝には、イエスには「4人の兄弟と他に姉妹たちがいた」と書かれている。その4人の兄弟のなかにユダという名前が見られる。 一方、イエスの12弟子の中にトマス(ディディモ・トマスとも)という人がいるが、この“トマス”とはアラム語で〈ふたご〉という意味で、ギリシャ語ではディディモといいやはり〈ふたご〉の意味とのこと。この人物は外典のトマス行伝では「ユダ・トマス」と呼ばれており、ほんとうの名はユダで、トマス(ディディモ)はあだ名ではないかと考えられている。私は、このトマス(ユダ)がイエスの兄弟の一人であるユダと同一人物で、イエスと双子の兄弟ではなかったのかと考えている。そして“復活の奇跡”は、このトマス(ユダ)が双子の利を生かしてイエスの身代わりとなって処刑されたか、もしくはトマスが復活したイエスを演じたのではないかと想像している。

ラスト、ガリラヤの荒れ地を歩きゆくクラヴィアス(護民官)はどこへ行くのか...
ゴルゴタで刑死したイエスに心打たれた百人隊長の言葉は有名だが、使徒伝(ルカ)10章にコルネリウスという別の百人隊長のエピソードがあり、この人はカイサリアでペトロから洗礼を受け回心した敬虔なキリスト者である。ローマ軍には帝国領内での転任があったはずであり、ローマ兵士が小アジアやギリシャ方面へとその信仰を伝えたことは十分考えられる。キリスト信仰は、パウロが長旅の伝道活動をするより前にすでに異邦人の地に伝わっていたのだ。
クラヴィアスが向かったのはダマスコかアンティオキア(ともにシリア)にちがいない。





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Last updated  2025.01.28 12:13:04
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