極上生徒街- declinare-

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矩継 琴葉

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2007.10.26
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カテゴリ: 小説

あぁ~もう駆け足なので、凄いことになってますが、ご了承をw

徐々に、ご都合主義になっていく気がするw

全12話の予定でしたが、最終的に15話か16話まで行きそうです。

今考えれば、これを12話でまとめようとしていたのかと思うと、何だか怖くなってきますw

ちなみに、最後はオマージュも入れようと思いますのでお楽しみに。

では、どうぞ



第1話 堕ちる闇 明ける未来
第2話 目覚め×サイン
第3話 接触
第4話 クロチェヴィーア
第5話 進展
第6話 救い
第7話 残滓
第8話 加速
第9話 意思
第10話 最後の夢
第11話 始まり
第12話 デモーニオ

 僕がデモーニオという人の声が聞こえるようになってから一週間が過ぎた。
 デモーニオは、僕のことを励ましてくれた。初めて、話を聞いてくれる人に出会えて嬉しかった。だから、僕はデモーニオにいろいろ話した。
 すると、デモーニオが言った。


(もし、お母さんが虐められることに耐えられなくなったら、目を瞑って助けて! と祈るんだ。そしたら、僕が君を助けてあげる)



 そう言ったけど、怖くて祈ることさえも出来なかった。
 日に日に、母さんは痣だらけになり、あいつの暴力も酷くなっていった。
 家に帰ってくると、玄関を開けなくても、あいつの怒鳴り声と母さんの悲鳴が聞こえてきた。聞こえるんだ。
 それなのに、誰も助けてくれなかったんだ。
 そして……。



「オラァ! ふざけてんじゃねぇぞ!? 何度言ったら分かるんだよ! このクソ女! てめぇのせいで、何もかもめちゃくちゃじゃねぇか! どうしてくれるんだよ! もう我慢ならねぇ!」



 あいつは、遂に手や足だけで殴るのに飽きたんだ。もう虐めるだけじゃ収まらなくなっていたんだ。
 蹲る母さんを踏みつけると、フラフラと台所に歩いていき、包丁を持ってきた。僕は怖くなって、目を瞑ってガタガタと震えることしか出来なかった。
 直後、母さんの大きな悲鳴が上がると、もう母さんの声は聞こえてこなかった。
 僕は、ゆっくり目を開けると、母さんが真っ赤になっていた。あいつの握っていた包丁にいっぱい血がついていた。
 あいつは母さんを殺したんだ。
 そして、それを見てしまった僕に近づいてきた。殺されると思った。

(助けて!)僕は強く願った。

(分かったよ信彦……。今、助けてあげる)


 僕はここからあとを覚えてはいない。


「……初めまして、お父さん。僕は、デモーニオといいます。早速ですが、死んでください」








「まず、一人」デモーニオは、頬の血を拭った。
 目の前には、両親の死体が転がってた。
 母親は父親に殺され、父親をデモーニオが殺したのだ。
 酔っていた父親を殺すのは、蚊を殺すよりも容易かった。体当たりし押し倒すと、父親はタンスの角に後頭部を打ちつけ気絶した。あとは、父親の手を使い包丁で自らの心臓を一突きさせた。
 これで、まず一人を排除した。
 表情一つ変えずに、人一人を殺したデモーニオは、部屋の隅に飾られた《過去の遺物》に目をやった。父親が描いた絵だった。


「こんなものの為で、全てがおかしくなったなんて……。僕はおかしくて、たまりませんよ。信彦が苦しむだけの価値はありません」


 包丁で、絵を切り裂いた。



「あとは、あいつらですね……」








 山田拓也はベッドの上で横になっていた。
 学校から、そのままバイトに行き、帰ってきたばかりだった。もう4日も連続出勤で、体力の限界だった。もう動きたくなかった。
 しかし、そんなときに限って、チャイムが鳴る。
 ……あぁ、またあいつか。
 と、対応しないつもりだったが、いつもとは違い、しつこくないチャイムを疑問に思った。
 ……そういえば、もう月末だ。新聞の集金か?
 めんどくさいながらも、ベッドから起き上がり、財布を持って、玄関まで来た。
 一応、のぞき穴から確認する。誰もいなかった。
 ……扉にぶつかりたくないのは分かるけど、せめて見える位置にいろよ。
 こういうことは、前にもあった。開けてビックリ、開けて直ぐの右側に立っていて驚かされことがあった。今回もソレだろと、覚悟を決めて開ける。


「……アレ?」


 誰もいなかった。目線の高さには――。


「こんばんは。やっと、出てくれましたね」


「え――」


 目を落とす前に、包丁が首元を突き、フォークが両目を突き、心臓を突き、頭中を突き刺した。
 考えている暇も無かった。
 まもなくして、山田は絶命した。


「……出るのが遅すぎましたね」


 デモーニオはニヤリと笑った。









 林は書類を読み終えた。初めて、詳しい内容を知り驚愕した。


「ふぉ、フォークに、転落死……これって!!」


「最近、市内で起きた事件に酷似している。正直、盲点だった。須藤が、佐々木の息子だったと知っていたならば……」


 川澄は唇を強く噛んだ。血が滲んだ。


「でも、どうして、この事実を照らし合わせられなかったのでしょうか?」


「生き残っていたのは、佐々木だけだった。考えてみれば、不自然だ。しかし、不自然さを拭うだけの証拠があった」


「子供の力で、数人の大人を相手にし、深い傷を負わせるのは不可能……」



「そうだ」川澄は部屋の隅へと歩を進めた。「子供には、無理だったんだ。大人の犯行と初動捜査で決め付けられた。それに、事件のショックで、佐々木は記憶を失っていて、唯一の目撃者から証言は得られなかった。加えて、包丁には被害者全員の血がついていた。そして、佐々木の母親を殺したのは父親に間違いなかった。佐々木の父親は母親と住人を殺害後に自殺。他の住人を殺す動機は見当たらなかったが、そう取らねば迷宮入りだった……。結局、捜査を長引かせたくなかった当時の上層部の怠慢で、強引に解決に追いやられた事件だったんだ」


「そんな……。あまりにも酷すぎる」林は書類を握り締めた。



「だが、お前の言うとおり、佐々木が解離性同一性障害。つまり、二重人格者だったとすれば、全てが繋がる」



「ですが、二重人格者だったとしても、佐々木は当時子供で、やはり不可能では……?」



「いいや。こんな話を聞いたことはないか? 人は普段、力をセーブして生きている。それは、己の体を守るための防衛反応だ。子供は、体が小さい故に、リミットは低い。だが、外すことは出来る。人格が変わることで、リミットをはずすことが出来たなら……」



「確かに! それならば、可能です!」



「リミットをはずすといっても、ギリギリのラインまでだ。己の体が壊れないところまで。そして、記憶がないのは、普段の生活をしている人格がオフになっていたからだ」


「それならば、辻褄が合います! しかし、何で佐々木は父親を殺して、さらに住人を殺さなくてはならなかったのですか?」



 川澄は、壁にかかった額のほこりを手で払った。


「DV(ドメスティック・ヴァイオレンス)があったそうだ。毎日のように、佐々木の母親は殴られ、同じく毎日のように佐々木は近隣に助けを求めたそうだ。だが、誰も取り合ってはくれなかった。やがて、佐々木は助けを呼ばなくなり、事件が起きた」



「そうか……! 父親に対する恨みと、住人への不信感で! そうなると、二重人格は、あとから作られた。二重人格や多重人格は、辛い現実から逃げるための手段。つまり、自ら人格を作り出してしまった! そういうことですね。まるで、ヒーローのような存在を自らつくり、助けを求めたんだ!」



「そうなるわね。誰も助けてはくれない。味方がいない。孤独さからヒーロー。いや、ただの殺人鬼を作ってしまったのよ」



「あ、でも、佐々木の父親が毎日暴力を振るっていた理由は何ですか? アル中だったとか?」



 額の中のそれを見ながら川澄が答える「佐々木の父親は、画家だったのよ」



「画家……ですか?」林が怪訝な顔を見せる


「大学卒業後、プロの画家を目指しイタリアで修行していたらしい。そこで、奥さんと知り合い、結婚。佐々木信彦が生まれたわ。だけど、結婚してから、精彩を欠いていたらしいのよ。何も描けなくなってしまって、徐々に生活も苦しくなり、帰国。あとは、さっき話したような顛末よ」


 湿ったような重い空気に包まれた。
 川澄が見つめる先に、切り裂かれた絵が残っていた。


「あれ? でも待ってください。 佐々木は予知能力がありましたよね? それは……」


「私にも良く分からないわ。仮説としては、人格が完全にオフにならず、別の人格を通して見ていたのを夢と勘違いしていたのかもしれないわね。ただ、伊藤の事件を予知したことは不可解だけど……」



 絵は日に晒され、色があせ、触ると砂を崩すかのようにボロボロと剥がれ落ちた。










「ん? デモーニオさん、どこへ行かれるのですか?」


 祝杯を交わす3人に加わらず、デモーニオは1人でそっと出かけようとしたのだが、勘のいいマルコシアスは気づいた。

「少し、用事があってね。直ぐに戻るよ」


「まさか……うらぎらねぇだろうな?」


 すっかり泥酔しているイフリートが言う。
 脇で一緒に飲んでいたグレムリンが不安げに見つめている。


「……もし裏切るのなら、自分の手で、あなたたちを殺しますよ」

 デモーニオは苦笑した。


「まぁ、あんたは指揮官だからな。俺たちがいなけりゃ、ただの飾りだ」


 イフリートは下品に笑った。 
 それに、グレムリンは控えめに続いた。
 マルコシアスは、間おいて微笑した。



「それより、イフリートさん、マルコシアスさん、グレムリンさん。例のも仕上げておいてくださいね。そろそろ、決着をつけねばなりませんから(そう。もうゲームはお終いだ)」








「それは少し違うな」


 開け放たれていた玄関で声がした。
 林と川澄が振り返る。


「……お久しぶりですね。林さん。川澄さん」


 佐々木が立っていた。





<第14話へ続く>






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最終更新日  2007.10.26 15:39:29


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