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高度成長期に隣町に自動車会社の工場が出来て、産業の無かったこの地域は、一気に活気づいた。そして、私の街だけでなく、近隣から吹き寄せられるように職を求め多くの人々が工場労働者となった。
若者は都会へ流出していたが、都会の夢に破れて、発展していく街へUターンする者もあった。
人が増えるにつけ、ざわついた空気と夢が街に溢れた。若者をターゲットの下映画館もパチンコも競うように立ち始め、飲食業も増えていき歓楽街は、淫猥で猥雑な秘密めかしい雰囲気に変わった。。多くの地域でステロタイプの街が出来、日本中が高度成長期の景気の夢に宇あkされて湧いていたのだ。
だが、私はこの街の変貌に失望し、嫌悪した。そして、・・だが、都会へ出た。
逃げたかったのだ。すべてを捨てて忘れ去りたかった。────
私は、小さな街を足早に抜け、集落へと続く細い一本道を歩き続けた。道端で名も知らない可憐な花が揺れている。その何本かを摘んで片手に持った。やがて私の実家が見えて来た。この小さな集落は、世の中の進歩から取り残されたように、古びた家並みも、細い道も、山も川も使い古されたように、そこに佇んでいる。多分今後も変わり行くことはない。
実家を継がなかった私の代わりに妹が婿養子を取って、家名を継いでいた。
「兄さん、お帰りなさい。」
私の顔を見ると、妹は愛想よく迎えてくれた。
「用意しちょるよ。・・車を貸してあげようか?」
私がメールで予告していたので、華などを用意をしてくれていた。
「いや、歩いていく」
私は、集落のはずれにある墓まで行く道すがら、もの思いに耽りたかったのだ。
妹はそれ以上何も言わず用具一式を手渡してくれた。
縋りつく眼差しが浮かんで来た。因習や仕来り古い者への反発で振り切る様に家を飛び出した。
『絶対帰って来るから!』
私は、若さに任せ激情的に世の中に無鉄砲に飛び出したのだ。