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大みそかですが、大掃除も済ませていたので、見ていなかった「ヤマト」を見に行きました。 行きがけに、「鮨を買ってきてくれ」と言われ、すっかり罠にはまってしまいました。あいにくの大雪にもかかわらず、結構人が入っています。予告編を見た時は、いけそうな感じがしました。実際FSXは日本映画にしては頑張っていたと思います。ところが、人間模様の描きかたがべたで、どうにもスカッとしません。 原作と違って、女性が大勢出ていることに違和感がありました。 私の勝手な思い込みですが、女性が多いと緊張感が薄れ、戦闘場面のリアリティが希薄になったと思います。原作と大きく違っているとことは色々あるようで、突っ込みどころ満載なのですが、目立つのはキャストの変更や役柄の変更です。飲んだくれの佐渡先生が高島礼子になったのは違和感があるかと思ったら、高島礼子は医者の役をしていたこともあってか違和感はありませんでした。ただ、ちょっとユーモアのあるキャラクターではなくなってしまったのは残念。森雪がレーダー担当から、何故かブラックタイガーの戦闘機乗りに替わっているのも解せません。原作のけなげなさが薄れ、強気な面が表に出過ぎていたように思います。そのほかの脇役は充実していました。沖田艦長役の山崎勉は現在だと最もこの役にふさわしい方だと思いますが、なぜ顎髭が灰色なのか、どうして白くないのかわかりません。徳川機関長の西田敏行は絵的にはひげも生えていませんが、適役だったと思います。それから、真田志郎役の柳葉敏郎は、原作のクールなキャラクターとはちょっと違って熱血漢ぶりを発揮していましたが、悪くなかったです。島大介役の緒方直人は原作通りの役作りで、とてもよかったと思います。最も印象に残ったのは、空間騎兵隊隊長斎藤始役の池内博之。原作とは違っていますが、シャープな演技が画面を引き締めていたと思います。デスラー総統はCGですが、声はアニメと同じ伊武雅刀が担当しています。あとは、主役の木村拓哉ですが、この役が一番問題が多かったように思います。結局、古代進ではなく、木村拓哉が木村拓哉を演じているみたいな感じでした。この人の場合、どんな役でも常に木村拓哉という人物が表に出てきて、みんな同じようなキャラクターになるような気がします。それが良い場合もありますが、今回はちょっと合っていなかったように思います。 音楽は佐藤直紀。 宮川泰の遺産を巧みに使って、自らのオリジナリティも出ていて、格調高い音楽に仕上がったと思います。スティーブン・タイラーの主題曲「LOVE LIVES」は、映画にフィットしていなかったように思います。巷では、賛否両論が喧々諤々論議されているようですが、結局、皆さんヤマトが好きだったということがよくわかる、現象だと思います。公式サイト
2010年12月31日
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ミラバッシの新アルバムは、ブルーノート東京での今年4月23日のライブを収録したものです。 ミラバッシのアルバムを購入したのはこれで2枚目です。一昨年亡くなった弟の遺品にミラバッシの「DAL VIVO!」と題された2001年のパリでのライブがあり、それが何とも泣ける演奏で、ミラバッシに開眼するきっかけになりました。それ以来「TERRA FURIOSA」そして、今回のライブ・アルバムを聞くに至りました。聴く前はリリカル一辺倒かと思ったのですが、意外にからっと爽やかで、キラキラしているところもあり、私の感じていた印象とは違っていました。最近の録音を聴いていないせいか、それともここ数年の変化なのかは分かりません。個人的にはこの変化は悪くないと思います。最初の「NY #1」から快調です。レオン・パーカーが時折倍テンポのリズムをたたき出して、ピアノをあおりますが、そこのところが何ともぞくぞくしてきます。2曲目の「It's us」は、哀愁を帯びたメロディーですが、スインギーで、推進力も備えていて、本来のピアノ・トリオとしての魅力が全開です。ジャンルカ・レンジのメロディックなベース・ソロもいいです。「World changes」は従来路線の、甘く切ないメロディーが、心に染み渡ります。ソロは一転してブルージ―に迫り、メロディーとのコントラストを際立たせています。ベースとドラムスは音数を少なくして、間を生かした音作りが心地よいです。ラテンタッチの「Here's the captain」は軽いタッチですが、これもなかなか楽しませます。これが少しテンポが落ちると、途端にありきたりな演奏になる危険性がありますが、さすがに心得ています。ピアノ・ソロの中間部あたりから4ビートでぐいぐい進むところは、何とも快感です。ベースソロのバックの2分3連のコンピングがなかなか印象的です。レオン・パーカーのドラムスも多彩なおかずで、楽しませてくれます。「My broken heart」。4分弱の演奏ですが、この曲も題名通り、リリカルなメロディーが特徴で、前半はピアノ・ソロ、途中からベースが入り、デュオとなります。食器のこすれ合う音が時々聞こえて、この曲にピッタリの雰囲気を醸し出していたと思います。「It is what it is」はダークなムードの横溢した曲で、気分を変えています。ベースのオスティナートが最後まで続き、その間をピアノが最初は淡々と旋律を紡いでいくという趣向。途中からは躍動的なソロに代わり、次第に高揚していきます。洗練された、スタイリッシュなスタイルが実に素晴らしいです。ここでのドラムのタイトなシンバル・レガートが、この音楽のムードに寄与すること大です。このセットの最後の曲は「Six for sex」。どういう意味か分かりませんが、「six」の語源に「sex」が含まれているようです。この曲も、ベースの印象的なリズムに乗ってダークでシリアスなムードが展開します。アンコールは2曲。最初は「Gold and diamonds」。哀愁漂うメロディーと珠玉のソロ、ピアノに絡みつくベースとピリッと辛いドラムスのバッキングが脇を締めます。テーマが帰ってくる前のドラム・ソロが、一つ一つの楽器をフィーチャーしたもので、通常のドラム・ソロとは一味違った趣が新鮮です。最後は「World changes」ショートバージョンとクレジットされていますが、どういう意味なのかは不明です。単音を執拗に繰り返しながら始まる印象的なイントロから、叙情的なテーマへと移っていきます。ピアノ・ソロになると一転してダークなムードに包まれます。ソウルっぽいテイストを感じさせる部分もあり、次第に激しさを増すピアノ・ソロに興奮させられます。全体に3者の力量がそろっていて、インタープレイも見事で言うことありません。私がいままで聞いたミラバッシのアルバムとはちょっと趣が異なりますが、素晴らしい出来で、今後も長く楽しませてくれそうな予感がします。Giovanni Mirabassi Trio Live @ The Blue Note Tokyo(DISCOGRAPH 3230862)1.NY #12.It's Us3.World Changes4.Here's the Captain5.My Broken Heart6.It is What It is7.Six For Sex8.Gold and Diamonds9.World Changes (short Version)GIOVANNI MIRABASSI(p)GIANLUCA RENZI(b)LEON PARKER(ds)Recorded 23,April 2010 at The Blue Note Tokyo
2010年12月30日
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岩手県初の金管バンドのデビューコンサートが26日にありました。 当日は大雪で、20分ほど余裕を見て行ったのですが、5分ほど前にやっと到着しました。雪のためか、知名度のためか分かりませんが、入れ物が小さい盛岡劇場でもかなり空席が目立っていました。2百人も入っていたでしょうか。 肝心の演奏ですが、最初のファンファーレはなかなかのサウンドで「おっ」と思ったのですが、次第に失望へと変わっていきました。 私の先入観からですが、某楽団のトランペット奏者がコルネットで重要なパートを演奏していたので、願望を含めて見ていたのですが、残念ながら期待は裏切られました。そのため、テンションが下がってしまいました。(申し訳ありません) ブリティッシュスタイルを標榜するだけに、パートはパーカッションを除いて、きっちりと既定の人数分が正規団員で確保されています。 まだ、発足後2年を経っていない時点でこれだけの人数を確保することはなかなか大変だと思います。特に、コルネット、テナ―ホーン、バリトンなど吹奏楽で使われていない楽器を持っている人は少ないでしょうから、なかなか頑張っていると思います。ブランスバンドの曲はあまり知らないので、初めて聞く曲が多かったのですが、楽しかったです。気に入ったのはトロンボーン・ソロをフィーチャーしたキャッチーなメロディーを持つ「ブラジリア」。ソロの吉原氏の好演もあり、楽しめました。それから、デボンズのチューバ・ソロをフィーチャーした「アキヤ」。パガニーニの旋律を使ったブルレスケをはじめ3つの部分からなるクラシカルな曲で、これも良かったです。イギリスの場合、ブラスバンドから吹奏楽に編曲されることが多いので、吹奏楽で演奏されている曲もありました。音大出身の方のソロが2曲、それからスパークの「コンチェルト・グロッソ」ではヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンドでも演奏経験のある方が、ソロを取っていて、楽しめました。初めてのコンサートですので、色々文句を言っても仕方がないのですが、中音部から低音部にかけてはなかなか良かったと思います。ただ、テナーホーンがフォルテで音が硬くなったところが気になりました。問題は、コルネットパート。ブラスバンドで主旋律を担当しますが、ミスが多く、音量も不足しています。また、花形であるソプラノ・コルネットが頑張っていたとは思いますが、さらなる精進を期待したいです。バンド全体では、何故か客演のドラム奏者の切れのいいドラミングが光っていました。ということで、最初のコンサートにしては上出来だったと思います。気になったのは、司会がプログラムの解説をそのまま棒読みしているシーンが目立ち、著しく感興を損なったと思います。すこし手間はかかりますが、司会用の台本を作ってほしかったと思います。ところで、指揮者がこれから続くかどうか危惧するような発言をされていましたが、機会をとらえて出来るだけ露出することを考えていかなければならないと思います。来年も演奏会があることを期待しつつ。。。いわてブリティッシュ・ブラスバンド 1st Concert第1部1.J.カーナウ:ファンファーレ アンド フローリッシュ2.G.リチャーズ:「クロスパトンス」より第2楽章『気立てのよい女羊飼い」 3.E.デボンズ:アキヤ4.G.リチャーズ:ロック・ミュージックl5.ホルスト:吹奏楽のための組曲第1番第2部1.ジャーズメル、ファーレル(A.ブライス編):シャイン・ダウン2.R.デューハースト:ブラジリヤ3.スパーク:コンチェルト・グロッソ4.スパーク:オリエント急行アンコール1.ロンドンデリー・エアー2.行進曲(作曲者不詳)2010年12月26日盛岡劇場・メインホール
2010年12月29日
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先日レビューしたヨーロピアン・ブラスバンド・選手権で優勝した、コーリー・バンドのニューアルバムがタイムリーに出ました。 一昨年の課題曲である、ヴァンデルルーストの「いにしえの時から」を含む作品集です。二つの組曲を含む全4曲です。その中では、ピーター・グラハムの「On the shoulder of giants」(巨人の肩の上で?)が面白かったです。「stand on the shoulders of giants」(巨人の方の上に立つ)という言葉は学術界ではよく使われるようです。意味は、「常に先人に畏敬の念を払うべし」だそうです。google の学術用途の検索ページにこの言葉が載っています。1楽章はブルックナーの第8交響曲の最終楽章がいきなり始まり面喰いました。その後は、スピーディーな進行で、ブルックナーはいったい何だったのかと思いました。第2楽章は、ゆったりとしたイントロに始まる叙情的な部分が続きます。第3楽章は急速調の曲で、難しいパセージの連続でスリル満点で、興奮すること請け合いです。続く「Titan's Progress」はHerman Pallbubernoの作曲で、その名の通りマーラーの第1交響曲のモチーフを使った曲です。この曲なんと訳せばいいんでしょうか。「巨人の前進」でしょうか。この曲は昨年の全英オープン選手権の課題曲だそうです。訳はともかく、どうにも居心地の悪い曲です、引用があからさまなことがその原因の一つだと思います。この曲を書いた動機が知りたいところですが、ブックレットでは明らかにされていません。そして、何故かグレインジャーの「リンカーンシャーの花束」の第2曲ホークストウ農場の旋律が出てきます。これがマーラーとどういう繋がりなのかさっぱり分かりません。途中コミカルなところもあり、まとまりに欠けていると思われます。そして最後は「ホークストウ農場」を主題としたフーガで大団円を迎えるのですが、つじつまを合わせているような感じがしてしょうがありません。ヴァン・デル・ローストの「いにしえの時から」は今までの曲と比べると、余計なことを考えなくてすみます。それが普通なのですが、前の2曲がちょっと変わっていたのだと思います。この曲はラッスス・ジョスカンデュプレ、オケゲム、デュファイなどのフランドル学派音楽からインスピレーションを得ています。それから、ブラスバンドの楽器であるサクソルン属を発明したアドルフ・サックスにも敬意を表しているそうです。個人的には、前半がフランドル学派ではなく、チャンスの「朝鮮民謡による変奏曲」の音形が思い出されてしょうがありませんでした。中間部のユーフォニアムの奏でる叙情的な旋律はこの曲のハイライトで感動します。ただ、中間部冒頭のソロの続く部分でのテナーホーンの音程が低いのが気になりました。終結部はつじつまを合わせているようで、作品としていまいちの出来だったと思います。表題曲はガレス・ウッドの作曲で、コーリー・バンド125周年記念コンサートでの委嘱作品だそうです。他の作品からの引用がなく、すっきりとしていますが、どうも、スターウォーズの匂いがします。個人的には「ジェダイの帰還」に出てくる、イオーク族の音楽を思い出してしまいます。残念ながら、曲としては一段落ちる感じがしました。 ということで、曲自体はあまり良い印象がないですが、演奏は素晴らしです。それだけに、もう少し曲がよければと思うと、とても残念です。Cory Band:Triumphant Brass(DOYEN DOY CD247)1.Peter Graham: On the Shoulders of Giants4.Hermann Pallhuber:Titan's Progress5.Jan Van Der Roost:From Ancient Times6.Gareth Wood:Brass TriumphantCory BandRecorded during 2009AT YSGOL GYFUN RHYDYWAUN,ABERDER
2010年12月28日
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今日は子供の下宿の下見に、山形に行ってきました。天気が良ければ車で行くつもりだったのですが、昨日からかなり荒れていたので、やむなく電車で行きました。仙台まではいいんですが、そこから仙山線で1時間以上もかかり、時間的には車で行くよりも時間がかかるような状態です。仙台はどピーカンで、仙山線に乗っていたらいつの間にか雪模様です。山形についたら晴れたのですが、雪が結構あります。今日は3軒回るつもりで、タクシーに乗ったら、タクシーの運転手さんが色々と話されていました。今回山形が結構降ったので、それについてだったり、秋に行われた恒例の「いも煮会」で今年は沢山あまった話とか、青森の落ちた林檎の話とかです。運転手さんが言うには放送局が面白おかしく放送して、そのあと何も責任を取らないことを憤っていました。いも煮会の例だと、盛るのがアルバイトさんで、昨年は気を利かせて一人一人にいもの子を1個余計に入れたら、足りなくなったのだそうです。今年はそれを反省して、厳密に盛り付けしたら、あまってしまったというのが本当かどうかわかりませんが真相だということでした。何の話でしたっけ?あ、全然関係ない話に脱線してしまいました。今回下見したのは全部下宿です。子供は、自炊ができるような人間ではないので、まず下宿でという話で調べました。実際ネットで調べたのと実物を見るのでは、大違いでした。私が良いと思っていたところは、あたらし目なので、部屋はきれいなのですが、クローゼットが狭いとか部屋自体が狭いとかもありましたし、男女が同じ棟に住んでいるというのもちょっと問題があるなと思いました。他の2件はそこら辺はちゃんと考えられていたので、行ってみないとわからない情報で、それもかなり重要な情報だったので行って良かったと思います。結局は、応対してくれた大家さんの接客態度とか、子供たちに対する発言とかを伺って、目星は付けました。幸いにも子供も、ここがいいといっていたので、帰ってすぐ連絡しました。そこは、風呂が共同であるとか、それほど条件のいいところではないのですが、決め手はやはり大家さんの態度だったと思います。もっとも、彼女の場合は、車の中でもらった丹波ののど飴が決め手だったかもしれませんが。。。。なんだかんだ言っても、最後は「人」に尽きることを再認識させられた出来事だったと思います。ところで、そこでもそうですが、別なところでも入居の決まるのが速くなったと話されていました。大学でも推薦などが1カ月ほど早まっているそうで、少子化の影響がじわじわと出ているのかなと思います。山形は昼ごろから雪が降り始めました。行った時にはすでに雪がぐしゃぐしゃに溶けた状態で、歩道が除雪されていないので、歩くのも大変です。それを見て、却って当地の方がちゃんと除雪されていると思いながら帰ってきました。
2010年12月27日
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最近DVDがらみで、ちょっとしたトラブルがありました。 いつぞやはバーンスタインのDVDがDVDの印刷面までは正しく、中身が違っていたというとんでもない出来ごと。問い合わせをしましたが、販売元はクレームの期限が切れているというし、販売窓口のAMZON.COMでも同じようなことで、相手にしてくれませんでした。そのあと、レンタルでブルーレイを借りたのですが、あとで見たら別な作品でした。クレームをつけようと思ったのですが、よく考えると証明のしようがありません。もし、私が借りようとした物がまだ戻ってきていなかったり、別なところにあったりするとどうしようもありません。そして、今日はまたブルーレイを借りようと思って、受付で3枚借りた筈なのに2枚と言われおかしいなと思いつつ別な店に行きました。そして帰りに、だめもとで変えてもらいに行ったのですが、ブルーレイはすべて借りられています。今回も証明のしようがありません。せっかく、印刷面の題名を見て確認したのですが、今回は新たな敵がいました。しょうがないので、今度からは、しっかりと作品名とDVDかブルーレイか見てから借りようと思います。しかし、この問題は店の方でもなかなか悩ましい問題だと思います。おそらく、いままでもクレームがあると思うのですが、結局人間が戻しているわけですから、絶対にミスは発生します。一番いいのはケースとDVD本体がお互いに認識するようなシステムにすればいいのですが、現実的ではありません。作品の間違いをなくすのは難しいですが、DVDとブルーレイの場合は何とかなりそうです。市販の場合には、ケースの大きさが違いますので、DVDをブルーレイのケースには入れられないようにするとかは出来ると思います。いずれにしても、なにか考えてほしいところです。ということで、ついていないことが続きます。これからは、もう騙されないぞ!でいきたいものですが、どうなることやら。。。。
2010年12月26日
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少し前に、ミュージック・ストア・ジャパンで開催された恒例のバーゲンセールで買った一枚。 ダニエル・ケロッグ、カーター・パンという二人のアメリカ人作曲家の2007年から2009年にかけて作曲された作品集です。どちらも1970年代生まれで、パンが38歳、ケロッグが34歳と若いです。全部で4つの作品ですが、みんな長い曲で、「A Tent For The Sun」がライブ以外はセッション録音です。 アメリカの作曲家の作品で、コープランド風の作風なので、抵抗はなかったのですが、最初聞いた時は、あまりいいとは思いませんでした。ところが、何回か来ているうちに、その佇まいが心地よく感じられるようになりました。そもそのこのアルバムを購入した動機は「A Tent For The Sun」でタカーチュSQが共演していたからでした。タカーチュSQと言えば、突然解散し、その後別なメンバーで再結成したような記憶があるのですが、私の思い違いでしょうか。wikipediaで見たらやはり第1バイオリンとヴィオラが替わっていました。もともと、団体名の名前は第1ヴァイオリンの名前から取ったので、その第1ヴァイオリンがいなくなったからには別な名称を名乗ってもよさそうに思います。。。この曲では主役を演じることがなく、何のために弦楽四重奏団を入れたのか理解に苦しみます。この曲は2008年に2週間滞在したコロラドの山々の美しさとそこに降り注ぐ太陽から触発された作品です。第1曲「Form the End of the Heavens」では弦楽四重奏は旋律らしきものがなく、常に4つの楽器がなっていて、それも長い音符がだらだらと続く様な展開で、全く面白くありません。バックもテュッティーの部分がなく、室内楽的な使い方です。静かな第2曲「The Sound of the Sky on Fire」では冒頭、弦楽四重奏のみの部分があり、菅もアンサンブルとしてやっと出て来ます。こうでなくっちゃと思いつつ、やはり弦楽四重奏の扱いに不満があります。クラリネットと弦楽四重奏の部分はなかなか雰囲気がいいです。第3曲「How Powerful the Glorious Sun」では弦楽四重奏の精力的な動きが全曲にわたって続きます。吹奏楽と弦楽四重奏という珍しい組み合わせですが、それだけに終わってしまったような作品でした。 カーター・パンの「吹奏楽のためのセレナード」はなかなかいい作品です。 親しみやすく、夢見るような旋律ときらびやかなサウンドがとても魅力的です。ケネス・ハスケスの「ディアギレフ・ダンス」のサウンドと雰囲気にとてもよく似ていると思います。作曲者が意図しているとは思いませんが、何故かクリスマスに聴くのにピッタリの音楽のように思えてきます。ただ、終わり方がいまいち中途半端です。 3曲目はパンのピアノ協奏曲「コンチェルト・ロジック」。 作曲者のノートによると、古今のゲームに触発された作品だそうです。色々な作風が楽しめるなかなか面白い作品です。1曲目が古代エジプトのゲーム「犬とジャッカル」、2曲目がルービック・キューブ、3曲目の短いピアノのカデンツァに続く4曲目はチェスです。作曲者はここ10年間すっかりチェスにはまっていて、多額のお金と時間を費やしているようです。そのせいか、第4曲が最も精彩があります。目まぐるしく変わる色彩と、スピード感、賑やかなお祭り騒ぎと突如やってくる静けさなどがごちゃ混ぜになって、聴く者を楽しませてくれます。所々聞かれるクラリネットのグリッサンドがとても効果的です。パン自身のピアノは大変うまいです。特に、第3曲目のめまぐるしいスピードで展開するラグタイム風のカデンツァは見事です。 ケロッグの「ピュラモスとティスベ」はシェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」第5幕をマーク・オドンネルが一人の大根役者?のために書きなおした台本によるシアターピース。 もとのギリシャ悲劇のあらすじは次のようです。ティスベが町はずれで恋人のピュラモスを待っていました。その時ライオンがやってきて、ティスベは逃げました。その時ヴェールを落としてしまいます。あとからやってきたピュラモスがそヴェールを見て、ティスベがライオンに食われたと思い、自害します。あとからティスベが来て、ピュラモスの亡骸を見て自分も自害してしまいます。ロメオとジュリエットなどに見られる典型的なお話を一人の俳優がナレーター、壁?、月、そしてピュラモスとティスベに扮してユーモアたっぷりに演じます。あらすじを知ってから聴くと、そのユーモアたっぷりの音楽がかなり面白いです。原曲は管弦楽で2007年3月にスラトキン指揮のナショナル交響楽団により初演され、吹奏楽版は同年の夏に作られました。是非生で見たい作品です。役者の力量に左右されますが、どこかでやってくれませんかね。。。A Tent For The Sun(KLAVIER K 11179)1.Carter Pann: Serenade for Winds2.Daniel Kellogg: A Tent for the Sun I. From the End of the Heavens ) II. The Sound of the Sky on Fire III. How Powerful the Glorious Sun5.Carter Pann:Concerto Logic: I. Dogs and Jackals ) II. Erno Rubik's Magic Cube ( 6:50 ) III. Rondo Capriccio: Rage Over a Lost Pawn ( 2:16 ) IV. Dancing with Caissa ( 7:21 )9.Daniel Kellogg: Pyramus and ThisbeTAKACS STRING QUARTET(2-4)CARTER PANN(5-8)PATRICK MASON(Actor)UNIVERSITY OF COLORAD WIND SYMPHONYALLAN McMURRAY(cond)Recorded live 1-2 March 2009 in Grusin Music Hall,Imig Music,University of Colorado,Boulder(A Tent for the Sun)18-21 April 2009 in Mackey Auditorium,University of Colorado,Boulder
2010年12月25日
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毎年この日になると、色々不備があって満足なイブを過ごすことができていませんでした。 今年は、母親が入院していたせいで、妹が帰省していたので、ある程度満足できるクリスマスを過ごせたと思います。いつもなら、クリスマスケーキを作るぐらいで済ませていたのですが、最近はそれもなくなってしまうような体たらく。今年は状況が違っていて、ロースト・ビーフにロースト・チキンという豪華版で、妻も結構頑張ったと思います。でも、ケーキを作る段になって、なんと小麦粉を入れないでスポンジを焼いてしまった!という失態を犯してしまったそうです。その後作り直しましたが、何とも信じられないミスです。幸い、時間があったので作り直しが出来たようです。私は文句を言うばかりですが、言われる方の身になると結構大変だと思います。個人的には生ベーコンを作るつもりでしたが、結局実現できませんでした。。。。そういうことを考えると、専業主婦とはいえ良くやっていると思います。かくなるうえは、正月までになんとか生ベーコンをしこみたいと思います。まあ、思っているうちが花で、実際に実現してみろと言われればまるで自信がありません。。。書いてしまったからには、その後の顛末も書かなければなりませんね。。。。幸いというか、明日から有給を含めて休みになりますので、言ったからには是非とも実現したものです。ベーコンは出来るのは2,3週間あとになるので、その頃のブログに注目頂ければと思います。
2010年12月24日
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レコード芸術1月号は恒例のアカデミー賞の発表です。 結果を見ると、最近のレコード業界の不況を反映して強力なアルバムが見当たりません。金がかかるオペラなど、3カ月も新譜がないことがあったと選定委員のコメントにありました。さて結果ですが、大賞はアーノンクールの「ドイツ・レクイエム」。銀賞が、チェチーリア・バルトリのカストラートのためのアリア集という副題を持つ「神への捧げもの」。そして、銅賞が、アルカントSQのドビュッシー、ラヴェル、デュティユー作品でした。大賞以外の受賞者は昨年も受賞しているのはご存じのとおりです。バルトリのカストラートは発売当初から関心がありますが、いまだに購入至っていないという状態です。これは映像での発売もあり(全曲ではない)その映像はかなり過激なもので、インパクトから言えば、DVDの方があるかなと思いました。ドイツ・レクイエムは全くノーマークというか、発売そのものを知りませんでした。アーノンクールではむしろ「ポーギーとベス」がアーノンクールらしからぬ?透明でスカッとした出来で、このオペラの田舎臭さを払拭した出色の出来だったと思います。ドイツ・レクイエムは個人的にはあまり好きな曲ではありません。なんと言うか、重苦しい雰囲気がなんとも耐えがたいものがあります。ガーディナー盤がそのうち出るので、それを待っているといった状態でした。総評でも述べられていましたが、今まで名前が出てこなかったアーティストが受賞しているのが、今回の特徴だったと思います。交響曲(クレンツィス指揮)や管弦楽部門(トゥルニエール指揮)の受賞者、そして古楽のオケゲム(カンデル指揮)、現代曲のミュライユ(ギャランティ指揮)と全く知らなかった名前が受賞していてとても新鮮だったと思います。個人的にはミュライユ作品を聞いたことがないので、是非聞いてみたいと思いました。ところで、今回の最大の特徴は吹奏楽部門が加わったことです。ところが該当作なしに終わりました。理由は選定委員のお一人である作曲家の中橋愛生氏がいみじくも書かれているように、「演奏のための参考音源」「自分たちがやりたかった曲を収録したもの」という傾向が見受けられるというのが正直な感想だったと思います。もちろん、他の部門の水準に劣らないものもありますが、それが器楽や室内楽に分類されうるもので、それを受賞作にするのは抵抗があるということでした。また、月評に登場しなかったアマチュアや音楽大学によるCDがプロ吹奏楽団の演奏よりも優れていることがあり、それも選定に抵抗があった原因の一つだと正直に書かれていました。これが現役の作曲家の意見だったことはかなり重要なことだと思います。私も、吹奏楽に対しての評価が、他のジャンルに比べ甘くなるのは仕方がないと思っています。もちろん私の吹奏楽を聴く理由は名演奏を聞きたいことはもちろんですが、新しい曲を知りたいという、いわば演奏者側に立ったものなので、そういう意味からすると、吹奏楽のCDはまだまだ、ごく限られた世界でしか通用しないものであることを改めて認識させられました。来年以降も該当作なしでは、月評欄をわざわざ設けて批評する意味がなくなるというものです。しかし、アマチュアの方がいいという指摘にはプロの皆さんは奮起しなければなりません。アマチュアのひたむきさがプロの技術を上回る感動を与えてくれることは他の部門では合唱界を除くと殆どあり得ないことだと思います。それが、吹奏楽の世界であるということは、やはりプロがぬるま湯につかっているといわれても仕方ありません。個人的には、プロの吹奏楽団を聴いていて、プロ意識の欠落した演奏に出会うことがあり、その面からも遅れていると感じます。この結果を契機に、演奏と作曲のさらなる飛躍を願わずにはいられません。そのためには、聴衆のバックアップもとても大事です。いつまでも、編曲をもてはやしたりするのはやめて、もっと厳しい目で見ることも大切ではないかと思います。ちょっと長くなりましたが、そのほかの部門では、映像部門でムターのブラームスとガランチャの「カルメン」が受賞したのは嬉しいです。特に、ガランチャは映像がDVDにしてはかなり良く、演出も回り舞台を効果的に使っていて良かったと思います。もちろん、ガランチャの素晴らしい歌唱と頼りなさがよく出たアラーニャの歌唱がうまくかみ合っていたと思います。この2作品については機会を改めてレビューします。
2010年12月23日
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今日仙台駅の食堂で食事をしたときに、お酒のチラシがあって、そこに日本酒度というのが書かれてありました。 初めて聞いた言葉だったので、最初はアルコール度に似た用語かなと思ったのですが、アルコール度は別に書かれてあります。+だけでなく-もあります。いっしょに食事していた、会社の同僚と話をしましたが、結局わからず、店の方に聞きました。その方もわからず、帰宅後調べてみました。要するに甘辛の目安として使われる指標のことだそうです。プラスが辛口、マイナスが甘口で、数値によって程度が分かるというものです。数値自体は水に対する酒の比重を日本酒度計というものを使って測定したものだそうです。糖分が多くなると、お酒の比重も重くなりマイナスになるということだそうです。この甘辛ですが、酸が多いと辛く感じ、少なければ甘く感じるということです。測定方法は、15℃のお酒に日本酒度計と呼ばれる特別の浮秤を浮かべて測定します。一方、アルコール度はお酒100mlを蒸留して、揮発成分を集め、水を加えて100mlにした後15℃で、酒精計という浮秤を使って測定します。出典:http://www.kikumasamune.co.jp/toshokan/05/05_06.htmlどちらも比重計の一種ですが、違いがよくわかりませんでした。結局メモリの刻み方が違うことぐらいでしょうか。それにしても、いままで50年以上生きてきて、身近にある言葉で知らないことがまだまだあることを思い知らされた出来事でした。そういえば、昨日話題にした本に載っているオーディ用語の「音場」を「オンバ」と呼んでいたのですが、「オンジョウ」というのが正しい呼び方であることを初めて知りました。もっとも、よく考えれば「音場」は音読みなので、「オンジョウ」としか言えないはずなんですね。。。(閑話休題)日本酒を飲むことも、殆どなくなりましたが、そのチラシを見ているうちに何となく飲みたくなりました。これからますます寒くなりますので、そのうち鍋で一杯飲みたいと思った次第です。ところで、ワインの場合も糖度が多いと甘口ですが、日本酒のような測定器具はないようで、メーカーや輸入業者が独自の判断で決めているらしいです。
2010年12月20日
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1982年に世界初の全面的にCGを使った映画「TRON」の続編。映画を見たかテレビでみたいのかどうかはっきりしませんが、ひたすら暗い画面で、目がチカチカしたような記憶があります。その続編ですが、前作の主人公ケビン・フリンとトロンが登場します。主人公はケビンの息子のサムで、戦う相手はケビンが作ったクルーとトロン。物語はケビンの謎の失跡から20年後。オーナーがいなくなったエンコム社は画期的なゲームを発表しようとするが、大株主のサムにハッキングされ、ネットで大恥をかく。エンコム社の元プログラマーアラン・ブラッドリーがサムを訪問し、失踪したケビンから、20年かかってこなかったポケベルから連絡がきたといわれたサムは、いわれるままに、ゲームセンターに行く。そこは、ほこりをかぶったゲーム機が並んでいたが、一つだけ生きていることを知る。そのゲーム機から、地下に秘密の部屋があることを知ったサムはその部屋に行き、そこからゲームの世界に侵入することが出来ることを知る。はたして、ゲームの世界に入ったサムはいきなりプログラムと対戦させられてしまう。勝負は負けたほうが消去されるという厳しいルールだ。。。。■圧倒的な映像美だが。。。 この映画の売りは3Dです。 ヴァーチャルな世界の物語なので、3Dはうってつけだと思います。そこで行われるゲームの迫力も半端でありません。テクノロジーの発達により、前作で苦労したことは全く問題になりません。カメラのアングルも多彩で、見る者があたかもそこにいるよう錯覚さえ覚えてしまうほどです。確かに、スピード感もありますし、近未来的な映像はなかなか刺激です。しかし、この作品も全体にダークなムードで、映像が暗く、見ている方は気分が高揚しません。ずっと見ていると、次第につかれてきます。今回は、盛岡フォーラムでの鑑賞なので、アクティブ方式の眼鏡のため、重いです。以前つけたときは、重いため次第にずりおちてしまうことがあり、それが結構ストレスでしたが、今回は紐で締める方式に替わり、ストレスが軽減されたと思います。しかし、方式の問題はあるわけで、偏光方式に比べ目の疲れは大きいと思いました。特に、今回は暗い場面が殆どなので、目の疲労は大きいと思います。■はたして3Dは必要だったか 映画の最後の方は2Dの映像だったのですが、それはリアルな世界に戻った時のシーンで、それまでの3Dと違いを出そうとしていたのかもしれません。見ている方も、何かほっとしてしまいました。 こうしてみると、本当に3Dが必要かどうか、かなり疑問があります。DVDが発売されたとしても、2Dで十分楽しめると思います。実際アヴァターでもDVDに関して言うと、3Dでなければという理由はあまり感じられませんでした。■ストーリーは単純だが、登場人物はなかなか魅力的速い話が、ゲームの世界から脱出するというお話で、そのなかで戦いがあるという単純なストーリーです。そうすると、途中のプロセスを如何に楽しませ、クライマックスに向かって盛り上げるかというのが課題だと思います。その点で言うと、戦いの場面はスピードがありますし、テンポがいいです。キャストの中では、女性が魅力的でした。特に、準主役ともいえる偶然に想像された理想のデジタル生命体ISOの最後の生き残りクオラ(オリヴィア・ワイルド)の野性味たっぷりの雰囲気がとても魅力的です。それからキャスター(またの名をズース マイケル・シーン)の使いのサイレン・ジェム(ボー・ギャレット)もボディコンスーツでクールな魅力をまき散らしていたと思います。最近の映画は真っ当な美男子が主人公になることが少なくなったと思いますが、この映画も例外ではありません。最初サムが登場した時は、なんだかな~と思ってしまいましたが、次第にそのワイルドな魅力が好ましいと思うようになりました。それからケビンもなかなか魅力があったと思います。■3Dの必要性を考えさせる映画この映画はアヴァターを超えたといううたい文句ですが、個人的には本当に必要なのかということを思ってしまいました。情報はあればあれほどいいとは言いきれません。オーディオでもかつてそういうことがありました。4チャンネルというのがそれです。要するに、スピーカーが4つあって、その中にいると音楽に囲まれているという体験を味わうことができるというのをキャッチ・フレーズにして、ハードもソフトもそれなりに盛り上がったと思います。ところが、そのが急速に廃れ、ピュア・オーディオに関して言えば。現在も2チャンネルに落ち着いています。映画でも、そのようなことが起きる可能性があります。結局、人間がその情報量に対して、許容できるかどうか、楽しめるかどうかが問題になります。映画で3Dが当たり前になるためには、まず料金を安くする、3D眼鏡なしまたは超軽量になる、このようなことを克服する必要があります。結局、ハードの魅力で人を引き付けるには限界があります。最終的には、作品の魅力だということは、彼らが一番わかっていることだと思います。これからどうなっていくのか、彼らの知恵が問われる時代になるつつあるということを映画を見ながら感じてしました。しかし、こういうことを思うということは、3Dの寿命も意外と早く来るかもしれません。そういう意味で、この映画は画期的だったと後に言われるような映画かもしれません。エンコム社の日本語サイト:ゲームを楽しめます公式サイト
2010年12月19日
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副題が[CDを超えた再生クォリティを楽しもう」となっていて、それに引かれて読んでみましたが、なかなか興味深い内容でした。 簡単に言うと、「現在のiPodの使い方では能力の半分も出していない、使い方を変えればこんなに素晴らしい音が聴けるんだよ」という内容です。iPodというと、ACCに圧縮された音をイヤホンで楽しむというのが通常の聞きかたです。これだと、まあ音質は別として、どこでも手軽に音楽を楽しめるという側面は満足できます。問題は、音を圧縮するということと、再生機器が貧弱だということの2点です。再生機器はオーディオ機器で聴けばいいわけで、私も、以前コンポにつないで聞いた時には、ほどほどいい音が聞けてその潜在能力に驚いたものです。この中で言われていることで重要なことがあります。CDを再生するときのことです。御存じのようにCDやDVDを再生するときは、ピットという窪みの有無をデジタルに変換しているわけです。それが、CDが高速で回転して、1秒間に何万ものピットを読み取っているわけです。そうすると、CDのそりや、回転ムラなどによって、読み取り誤差が出るのは当然です。それを防ぐために、エラー訂正をしているわけですが、そうすると音が悪くなるという話になることがあります。実際は、エラー訂正がある(程盤質が悪い)→サーボ等が頻繁に動作する→音が悪くなるという流れなので、私も含め誤解が入っているようです。その問題を克服するために、リッピング時読み直して、極力エラー訂正をしないデータを再生するシステムが、リンのDSシリーズを始めぽつぽつ出てきました。なぜリッピングした音がいいかという理由を筆者はとても面白いたとえで書いています。通常のCDの再生は、とても忙しい回転鮨屋です。いつもてんてこ舞いの状況なので、ある時は注文を読み間違え、ある時は順番が入れ替わったりします。時には、注文がよく見えなかったので、「烏賊とマグロの間だから、ヒラメだろう」くらいの勢いでつじつま合わせを行います。これに対し、リッピングはお客のいない回転鮨屋です。注文は受けますが、お客はいないので、あわてることはないのです。そのため、注文を間違えたり、順番を間違えることはないのです。また、注文がよく見えなかったときは、はっきりするまで何度でも確認します。こうして出来上がったデータの特徴はネタの順番が正しいということになります。いわば、時系列の正しいデータに仕上がることです。筆者は音の表面に例えて、CDじか読みでは「ざくざく」、リッピングでは「つるつる」と評しています。この本を読んでよかったのは、iTunesでWAV形式での取り込みが可能であることを知ったことです。48KHzの16ビットが最高の音質ですが、やはり音の情報量が違うためか、厚みが全く違ってきます。これの音をコンポで聴くとCDを聞くよりも安定感があるように思います。このことを知ってから、すべてWAVでエンコードしていますが、問題は容量が大きいこととジャケットを表示することが出来ないことです。この本にはおまけとしてDVD-ROMがついています。これは、マイクアレンジの方法を色々変えものと、フォーマットも16ビット44.1KHZから24ビット192KHzまであります。当然再現できるハードは限られますが、現存するフォーマットの実力を知ることができるようになっています。私の場合は、iPodでの再生しかできないので、24ビット48KHzまでですが、それでも録音方式の違い、フォーマットの違いがはっきりとわかり、とても参考になりました。私のオーディオはほぼ10年くらい前で進歩が停まっているので、最近のコンピューター解析によるスピーカーやアンプなどの進歩の恩恵に属していません。この本を見ていたら、久しく忘れていた音に対する関心がむくむくと頭をもたげ始めてきたようです。結論としては、リッピングしたデータを再生するというのがいいということが分かりました。そのためには、簡単な方法としてはUSB DACとADコンバータが必要です。それで、これを実現できるネットワークプレイヤーについて、ちょっと調べてみました。たまたま、雑誌でヤマハn新製品のニュースが出ていて欲しくなりましたが、現在の私の状況を考えると当分無理です。ちょっと、ソフトの購入を減らして、地道に貯めるしかなさそうですが、出来るかどうか難しいですね。。。鈴木裕著 iPodではじめる快感オーディオ術 リットーミュージック2010年7月30日初版発行
2010年12月18日
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昨日のネットの記事を見ていたら、「過酷“就活” 大学生、ハローワークに殺到、1カ月3万人」というヘッドラインに目が吸い寄せられました。厚生労働省によると、全国55カ所のハローワークに設置された大学生向けの窓口「新卒応援ハローワーク」を訪れた人数は、9月下旬~10月下旬までで3万641人に上った。とあります。新卒のうち7万人が就職浪人という状況で、藁をもつかむ心境で、ハローワークに行く学生たちの心境を思うと、なんとかしてやりたいと思ってしまいます。私の場合には、どうにもしてやれないのが残念です。ふと思いついて、試算してみました。子ども手当の総額は5兆8千億円です。これをまるまる雇用のための資金と考えて、一人頭1千万かかるとすると、子供手当で、58万人も雇用することができます。確かに、子どの手当ては大事かもしれませんが、こういうことを考えてほしいと思います。子供手当は何も産みませんが、労働人口が増えるということは、GDPが増大することであり、それにより経済も活性化します。そういうことを考えると、ずっと国のためになると思うのですが、どうでしょうか。私が想定しているのは、既存の会社に入れてもらって、人件費を肩代わりするという方法も考えられます。そうではなく、新しい事業創出や、研究開発の手足になって働いていただくという手もあると思います。とにかく、民主党のお金の使い方は納得のいかない使い方をしている部分が多く、こんなことをしていたら長期的には大きな損失になると思います。ところで、今日風呂に入りながら考えました。自衛隊の定員が15万5000人から1000人減らすという報道が、この前出たのを思い出して、いっそ自衛隊員を1万人くらい大学生用として設けたらどうだろうかと思いました。産業として物を作ったり利益は生み出しませんが、給料の半分くらいは消費に回ります。国防が充実し、消費も上向き、子供手当が消費に回るかどうかもわからない状態であることを考えると、一石二鳥も3鳥もあると思います。それから、海上保安庁の職員の増員もいいですね。。。 カンカラ管はちょっと前「一に雇用、二に雇用・・・」とか力んで言っていましたが、そのあと何か雇用に結びつく施策を行ったとは聞いていません。根本的に原因は単に大学生が増えたことによるもので、募集人員は変わっていません。エントリーシートなるものを企業のサイトから拾ってきて応募するというスタイルもよくありません。このようなことを出来るのはごく限られた企業で、手軽なこともあり、学生がそこに集中するという現象が起きていることも原因のひとつです。パイの小さなところに群がったら、落ちるのは当たりまえです。それに対して、中小企業は学生を獲得するために積極的に行動しているという話もききません。要するに、まだまだ切羽詰まっていないと書いたら怒られるでしょうか。視野の狭い学生たち、積極的にアピールする気力のない企業、そして、それを解決しようとしない政治家、何とも情けない状況です。
2010年12月16日
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クインシー・ジョーンズの「Q's Jook Joint」以来のアルバム。 例によって、豪華ゲストを集めてのアルバム作りです。ただし、今回は若手の有名どころです。当然ながらジャズ色は薄く、ラップやR&Bの色が濃いです。フィーチャーされているミュージシャンで知っているのはごくわずかです。殆どヴォーカルアルバムのコンピレーションみたいなものですが、単独でこれだけのものを作り上げられるのは、世の中広しといえども、クインシーだけだと思います。ただ、それが音楽的な充実につながっているかというとそうも言いきれません。今回は完全セルフカバーというかクインシーへのトリビュートアルバムだそうです。ラップ・ミュージックがかなりの割合を占めてるので、個人的には物足りません。その中で気に入ったのは、やはりソウル系のナンバー。ジェニファー・ハドソンの「You Put a Move On My Heart」がすばらしい歌唱です。ドリーム・ガールズ(2006)でのブレイク以来着実に実力を高めてきたと思います。2009年には第51回グラミー賞最優秀R&Bアルバム賞をデビューアルバムで受賞し、今年はコンピュレーションの「Hope for Haiti Now」での「Let It Be」も耳新しいところです。もともと実力があるのですが、さらにスケールアップし、安定感の増したヴォーカルが実にすばらしいです。ジェイミー・フォックスは俳優としての方が馴染みがありますが、ジョージ・ベンソンのヒットナンバー「Give Me The Night」は、切れがあり、なかなか爽快でした。そういえば、彼の主演した「レイ」ではクインシーがレイから楽譜の読み方を教わるシーンがあったことを思い出しました。ジョン・レジェンドのスタイリッシュな「Tomorrow」はコーラスが入り、和気あいあいという雰囲気が心地よいです。最もジャズ寄りのナンバーは冒頭の「アイアンサイドのテーマ」。これはイントロはラップですが、途中真っ当な?インストのソロがあり、後半、女性ヴォーカルも登場して、フュージョンとして楽しめました。「Secret Garden」では5人の現役と、天国からバリー・ホワイトも参戦?して、華麗なヴォーカルの共演を繰り広げ、聞きごたえ十分です。バリー・ホワイトは「バック・オン・ザ・ブロック」の同曲でもフィーチャーされていたので、同じ音源かチェックしようとしたのですが、CDが見当たりません!?そろそろ、検索システムを考えなければならない時期に来ているのかもしれませんって、その前に整理整頓が必要ですね。。。ディスコ・ナンバー「BETCHA WOULDN'T HURT ME」は比較的素直なアレンジで、MARY J.BLIGEのヴォーカルが冴えています。Q-TIP、アルフレッド・ロドリゲスのピアノもクレジットされていますが、殆ど目立っていません。バラード「Everything Must Chage」も、リズムが強調されていますが、BEBE WINANSの優れたヴォーカルとともに、なかなか感動的です。こうしてみると、編成やアレンジ(ヴォコーダーを何曲か使っているのは気に入りませんが)には色々注文をつけたくなりますが、曲自体、古さを感じさせないのは、クインシーのアレンジャー、プロデューサーとしての力量が優れていることの何よりの証拠だと思います。しかし、全編ヴォーカル曲ばかりで、インスト曲も欲しくなります。肝心のクインシーですが、アレンジが数曲でプロデュースも全曲クレジットが入っているわけではありません。 エグゼクティブ・プロデューサとして名前が載っていますが、本当に全曲コミットしているか不明です。まあ、難しいことを考えなければ、水準は高いですし、流しておくにはとても気のきいたアルバムだと思います。いい悪いは別にしても、音楽が今なおフレッシュなのは驚異的です。 それでも、年も年ですし、いい加減、カバーはいいからオリジナル・アルバムを作ってくれと言いたくなります。QUINCY JONES:Soul Bossa Nostra(QWEST/INTERSCOPE 8001429402)1.Ironside2.Strawberry Letter 233.Soul Bossa Nostra4.Give Me The Night5.Tomorrow6.You Put A Move On My Heart7.Get The Funk Out Of My Face8.Secret Garden9.Betcha Wouldn't Hurt Me10.Everything Must Change11.Many Rains Ago (Oluwa)12.P.Y.T.13.It's My Party14.Hikky-Burr15.Sanford and Son 公式サイト
2010年12月15日
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第8回「このミステリーがすごい!」の大賞受賞作品ですが、題名に引かれて読みました。 前半、これってミステリーだよなと思いながら、そのまったりとした雰囲気に違和感を覚えつつ、読み進んでしまいました。途中から、火事で祖父と従姉妹が焼け死んだり、母親が神社の境内の階段から落下して死んだりと、ミステリーっぽい感じになっていきます。おまけに、主人公も何回か殺されかけたりします。後半まで誰が犯人なのか、わからないまま、最後にあっと驚くどんでん返しが待っています。私はミステリー小説というよりは、音楽小説として結構楽しめました。主人公はピアノをならっていて、全身やけどのために九死に一生を得ました。ところが、かなりの面積の皮膚を移植したために、回復するまでが大変で、その上、死んだ祖父の遺言に応えるため、ピアノニストになることを自分に課します。それからの血のにじむような努力を描いている部分は、まさに鬼気迫るような迫力があります。この小説では、主人公がレッスンする曲や、主人公のレッスンの先生がコンサートで弾く曲などのことが出てきて、音を確かめたくなることがたびたびです。内容に踏み込んだ、かなり詳しい曲の解説がしっかりと書かれていている上に、演奏シーンの描写もリアルで、まるでその場にいるような感じがします。また、演奏上の手や指の動きを詳しく描いた部分もかなり多く、ピアノを弾けない私として、普段何気なく聞いているところでも、難しい箇所があることを知り、とても参考になりました。この小説でユニークなのは、このピアノ教師が、司法試験に合格して将来を嘱望されていたのにもかかわらず、ピアニストとして生きる道を選んだ人間だということです。そして、さすがにその方面では優秀なだけあって、鋭い推理を連発します。ミステリーではお約束の、あまり風采の上がらない、しかし、すご腕の刑事も登場しますが、ステレオタイプです。 最後の、ピアニストによる種明かしによって、すべてが明らかになりますが、なかなか緻密に考えられたプロットだと思います。全体的には微温的な描写に終始し、悪役もたちの悪い人間は登場しない、ホームドラマみたいなミステリーで、刺激が少ないといえるかもしれません。最後のどんでん返しの伏線が何もないのも、ちょっとびっくりします。全体的な出来は悪くないので、ミステリー好きも、音楽愛好家も読んで損はないと思います。おそらく、映画化されると思いますが、どのようなキャスティングになるかとても楽しみです。特に、ピアノ教師の配役がだれになるか興味があります。また、同じ著者の新作が出たので、これも読みたいのですが、amazonのカスタマーレビューを見ると、いまいちかもしれません。。。。中山七里著 「さよならドビュッシー」 宝島社 2010年1月22日 第1刷発行
2010年12月14日
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そのうち見るつもりではいたのですが、子供が見たいといっていたので、本来見るつもりだった「ノルウェイの森」と「ヤマト」を止めて、この映画だけを見てきました。 終始暗い映画で、盛り上がりもなかったです。まあ、前篇なので仕方がなかったのかもしれませんが、それにしては少し長すぎます。もう少し、ストーリーを刈り込んだ方がよかったと思います。 主人公の3人は17歳という設定にしては、すっかり大人になってしまって、魅力がかなり薄れています。 特に、ハリーがハーマイオニーより背が低いのが、気になりました。 いつだったか、テレビでちょこっと昔の映画が映っているところを見かけましたが、その当時のハリーのかわいいことったらありません。今回、劇場のところで、終わった人たちがぞろぞろと退場していくときに、「胸毛がきもい」ということを言っていました。それは、敵から逃げるために、皆ハリーに化けるために服を脱ぐのですが、その時に胸毛が見えることを指してます。個人的には、それほどキモイとは思いませんでしたが、女性がハリーに化けたシーンではブラジャーをつけたハリーが出てきて笑ってしまいました。映画では盛り上がりに欠けるのを心配したのか、ロンの幻覚でハーマイオニーのセミヌードを眺められるとか、話題づくりに躍起となっている感じがしました戦いの物語なので、暗くなるのも仕方ありませんが、初期のころの温もりとファンタジーが薄れたようで残念です。その中で、ハリーたちが魔法省に入るときの仕掛けは結構面白かったです。また、ダンブルドアが彼らに贈った贈り物もなかなかこっています。あとは、ドビーの活躍ですね。最後はホロっときました。ヘドウィグの最後もあっけなかったですね。。。最後は、ついにヴォルデモートが死の秘宝のうちの一つを獲得するところで終わります。あっさりと終わったため、物足りない感じがします前作からジョン・ウイリアムズから替わった音楽ですが、今回はウイリアムズの音楽は一切聞かれず、オリジナルな音楽のみで勝負していました。前作はそういう意味で中途半端でしたが、今回は美しい旋律もあり、よくまとまっていたと思います。一時、3Dとして上映するつもりだったそうですが、個人的には2Dで十分だと思いました。これだと安直な3Dにする必要は全くないと思います。
2010年12月13日
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数日前、ヨーロピアン・ブラスバンド選手権2010のDVDをregzaで見ることについて書きましたが、今日は中身について書きたいと思います。このDVDはいつもと同じく、「選手権部門」、「B部門」、「ガラ・コンサート」、「フェアウェル・コンサート」のハイライト・シーンを収録した物です。個人的には、リラックスした2枚目の演奏はも悪くないですが、やはり1枚目のコンクールの演奏の緊張感がたまりません。2枚目の「ガラ・コンサート」、「フェアウェル・コンサート」はリラックスした演奏が楽しめますが、選曲がポピュラー系なので、1枚目に比べると落ちるのは仕方ないです。今回の指定課題はトーマス・ドスの「Spirit」これがなんともすごい曲です。最初はシリアスで緊迫感のある音楽です。中間部はゆったりとしたテンポ、ユーフォニアムの泡を思い出させるような描写、トロンボーンの間延びしたグリッサン度、コルネットの甲高いメロディー、そしてベルなどが織りなす、水槽の風景が何ともいい感じです。テンポが速くなると、細かいパッセージの中からローブラスによるコラールがつきぬけてきて、最後にブルックナーの第5交響曲の4楽章のフーガに酷似した旋律が聞こえてきて感動的なフィナーレを迎えます。技術的に大変難しい曲で、演奏時間も16分余りと大変長い曲ですが、優勝したコーリー・バンドの息詰まるような演奏のおかげもあって、あっという間に過ぎてしまいました。このバンドはかなり水準が高く、特にコルネットのスキンヘッドとトロンボーンの叔父さんの技量がとても高いです。この曲はノルウェーのエイカンゲル=ビョルスヴィク・ムシックラーグの演奏でも収録されています。「選手権部門では、コーリーバンドが1位、ついでエイカンゲル=ビョルスヴィク・ムシックラーグが指定課題、自由課題とも1点差の2位だったそうです。このバンドを指揮しているは、かのヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド(以下YBS)で栄華を極めたデヴィッド・キングです。従来から、最高のバンドであり、指揮者であったと思っていましたので、このコンテストでの復活はとても嬉しく思いました。引き締まった演奏で、中間部のテンポもコーリーバンドより速いです。比べると、コーリーバンドの脱力感の方が個人的には好ましいですが、これは好みによると思います。後半のジャズがチョロット出てくるところでは、この演奏の方がスイングしています。団員のなかで女性の比率はかなり高いです。リードコルネットが何故か強面のスキンヘッドなのは笑ってしまいます。キング氏は長髪でYBSを指揮した頃よりもむしろ若返ったような感じがします。まだ若いバンドを育て始めたばかりなのが、若く見える原因でしょうか。。。ブラックダイクの自由課題はフィリップ・ウイリビーの「Red Priest」。この曲は題名が示すように「赤毛の司祭」ビバルディの音楽が下敷きになっています。特に四季の「冬」が下敷きになっている部分は、すごいスピードで演奏され、いやがおうにも興奮します。後半のゆったりした部分で、テノール・ホルンとフリューゲル・ホルンが前に出てきてソロを演奏しますが、テノール・ホルンのおっさんの目の動きが面白いです。指揮者と楽譜を交互に見ているのですが、その動き量が大きくて、まるで漫画です。後半テンポが上がってバッハ風のポリフォニーが聴ける部分も、しびれます。最後も大いに盛り上がります。実に恰好いい曲で、実演で聞いたらさぞや興奮すると思います。オーストリアのブラス・バンド・オーバーウストライヒはコルネットのトップがなんとハンス・ガンシュ。参加規程がどうなっているか分かりませんが、これは違反ではないんですか?この団体が演奏するのは、最近吹奏楽でも話題のヴァンデルローストの「いにしえの時から」。これは昨年の『いにしえの時から』は、2009年ヨーロピアン選手権の指定課題曲でしたので、この年のチャンピオンのコーリー・バンドの演奏と比べてみるつもりです。中間部のユーフォニアムの演奏する、崇高で慰めに満ちた旋律が心にしみわたります。ベルギーのブラスバンド・バイズィンゲンはナイジェル・クラークの「Earthrise」。ブラックダイクの「red Priest」とともに世界初演だったそうです。この曲もなかなか面白いのですが、いかんせんそれまでの曲と演奏がすごすぎて、だいぶ損をしています。演奏も、さらにデュナーミクの幅が大きければいうことありませんでした。B部門の優勝はオーストリアのグラーツ国立音楽大学。ちょっと前まで、オーストリアにはブラスバンドはなかったそうですが、選手権部門3位のブラス・バンド・オーバーウストライヒとともに、最近の興隆ぶりを物語っています。コーリーバンドの自由課題はスパークの新曲「まだ語られぬ物語」は3つの曲からなる17分ほどの作品。1曲目は速いテンポでぐいぐいと進むスタイリッシュな曲ですんごくかっこいいです。2曲目はゆったりとしたスパークらしい叙情的な旋律が心にしみます。3曲目はまた速いテンポで、ダイナミックな動きはさすがにスパークらしく、ぞくぞくします。この曲も水準が高いのですが、「Spriti」の驚きはありませんでした。コーリーバンドはミスが殆どないことに驚きます。全盛期の2004年のYBSの「宇宙の音楽」でも、少しミスがあったのですが、この団体は本当にミスが少ないです。多分、この曲もそのうち吹奏楽に編曲されると思いますが、正直言って吹奏楽の表現力がブラスバンドより上かと言えばそうは言い切れないことがあると思います。もちろん、楽器が多くなって全体的に薄味になるのは仕方がないにしても、聞き手が受けるインパクト、音楽的な感動はブラスバンドの方が上であることが多いように思います。とにかく求心力がケタ違いです。原因は演奏のレベルが違うことにあるのですが、演奏者の表現意欲に格段の違いがあるように思えて仕方がありません。私が、オリジナルがブラスバンドの曲を聴いて、こんなもんだろうと思っていた音楽が、ブラスバンドの原曲を聴いて、全く違っていたことに驚いたことを思い出します。吹奏楽の皆さんは、原曲がブラスバンドの場合には、是非、原曲を聴いて、その精髄を体感してほしいと思います。それによって、音楽の理解が深まることは確かですので。。。。 ガラコンサートでは弱冠11歳のセリーナ・オットのコルネットソロをフィーチャーしたオーストリア・ユース・バンドの「Whirlwind」が目を引きました。彼女はピアノもよくし、そのほかに乗馬、スキー、水泳もやるそうです。多少のミスや走るところがあるものの、高い技術と歌心をきくと、これからの成長が非常に楽しみだと思います。それから、ハンス・ガンシュがソロを取るマルチェルロのオーボエコンチェルトの2,3楽章も味わい深く鮮やかな演奏で、さすがです。映像は、1台のカメラが露出オーバーで、ハイライトが吹っ飛んでいます。何故補正しなかったのでしょうか。これはプロの仕事にしてはお粗末です。それに、全体的にカメラのAGCの動作がのろくて、見苦しいです。CDではスティーブン・ミードのソロの『サー・EU』やエイカンゲル=ビョルスヴィク・ムシックラーグの自由課題のブルジョワの『コンチェルト・グロッソ」が収録されていて、そちらも興味がありますが、手が届きそうにありません。ということで、個人的にはコンテスト部門の映像だけで満腹になりました。映像は頻繁に見ることができないので、これから音声だけを取り出して、CDに焼いて楽しもうと思います。以前も音声化したのですが、変換しないでそのままでほったらかしです。今回は、regzaで見るために、いろいろな技?を習得しましたので、チャプターに分離したVOBを音声化することで、編集なしにCDに焼くことができると思います。ところで、youtubeでトレーラーを見ることができます。これを見て興味を方には是非DVDを見てほしいと思います。ブラスバンドをご存じない方には、これをきっかけとして是非豊饒の世界に足を踏み入れてほしいと思います。European Brass Band Championship 2010(WORLD OF BRASS WDB 145)
2010年12月12日
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今日は末娘が来年高校へ入学するので、とある高校のオープン・スクールに行ってきました。内容は、DVDによる学校の紹介や年間行事の紹介、応募要項、在校生のコメント、先生の紹介、それに個別相談というもの。今までも、何回か書いていますが、この子供は小学校5年から不登校で、中学にも2,3回行ったきりで、授業は受けたことがありません。そのような状態ですから、普通の高校に行けるはずはありません。そうすると、そのような子供を受け入れてくれる学校は、ごく限られてしまいます。今回行ったところは、それが可能なところでした。盛岡駅の近くのビルの中にある学校で、某高校の分校みたいな感じです。そこでは単位を取得するためのカリキュラムが組まれたコースがあります。殆ど自宅学習のみのコースと、自分の選択した科目にある日だけ登校するコースです。在校生の話だと、彼女は小学校のころからいじめを受けて、中学になったらそれが激しくなり、最後は、授業を受けることができなくなったそうです。でも、いまのところに入って、勉強が楽しく、いままで2年間休んだことがないと言っていました。 少し前に、岩手県生まれで医師の斎藤環氏の「ひきこもりはなぜ「治る」のか?」という本を読んでいたら、本人を励ましたり、無理強いさせるのではなく、「元気」になるようなことをしてあげることが大事だ、ということが書かれてありました。それをみて、目からうろこでした。また、ギャンブル中毒について書かれた本で、治癒させるためのNPO法人があって、そこで仲間の前で自分のギャンブル歴を告白するということを行っている、と書かれてありました。そのようなことから、出来れば全日型で学校に通わせて、仲間とともに快方に向かっていければいいなと思ったのですが、何しろ今までが今までなので、まず通学できるかどうか全く分かりません。一番問題なのは、通学で他人と向き合わなければならないことです。ことに、昔の同級生にあうことは結構ストレスになります。今後、じっくり子供と話し合って、いい方向に向かってくれればと思っています。ただ、面談のとき先生が全日型に入って、通えなくなって通信型に替わった生徒の話をされていましたので、ことは慎重に運ぶ必要がありそうです。
2010年12月11日
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過去に何回も手を変え品を変え再発されてきたマイルスの「ビッチェズ・ブリュー」。 私も、LPから始まって、コンプリート盤まで、何種類か所有していました。最近40周年記念と銘打って色々なタイプで再発されました。その中に、コペンハーゲンでのライブを収録したDVDが正規録音で含まれているのを知り、またかと思いつつ購入しました。もちろん、LPの入っていない、安価な輸入盤のレガシー・エディションです。パーソネルは、ジャック・デジョネットのドラムス、デイブ・ホランドのベース、チック・コリアのエレクトリック・ピアノ、ウエインショーターのテナーというクインテット。1969年11月4日デンマークのコペンハーゲンで行われたコンサートの全曲を収録しています。幕が上がるところからメンバーがステージを降りるまで途中のカットなしで全部写されています。これは、どのような性格の映像か分かりませんが、編集はあまり手を加えていない感じがします。曲は切れ目なく続き、マイルスのトランペットがキューを出します。このやり方は、この頃から始まったのでしょうか?曲のタイトルすら出てきませんので、ボーナスDVDとはいえ、手を抜きすぎの気がします。もっとも、本編のCDも今回の発売に合わせてマスタリングをし直したわけではないし、価格も安いので、こんなものかもしれません。ただ、没後20年にして作り手のこの手抜きはミュージシャンへの敬意が感じられず残念です。肝心の音楽ですが、CDとは全く違うアグレッシブなもので、驚きました。特に、デジョネットの激しいプレイは見もの聞きものです。チックのエレクトリック・ピアノはこのクインテットではかなりの比重を占めています。バッキングがかなり良いですし、ソロも激しいプレイを聞かせます。ショーターのプレイも、とてもよいです。「It's Time About That Time」でのホランドのアルコでのグリッサンドとチックのエレクトリック・ピアノのデュオの部分が結構新鮮に聞こえます。マイルスは唇の調子が悪いのか、ミストーンがかなり多いですが、汗だくになりながら、一生懸命プレイする姿に、次第に熱くなってしまいました。映像は40年以上前にしては、それほど劣化していません。退色も少ないと思います。ただ、クローズアップが多いので、長時間になると、疲れてきます。5曲目の「I Fall In Love Too Easily」の初めに、カメラを2度急に動かしたため、映像が乱れたのが残念です。会場の雰囲気も全く分からないのも、物足りません。映像を発売しようと考えたものではないようですので、仕方がないです。レビューを見ると、ブートレグに比べて音も映像も段違いだというコメントが多いので、こんなものかもしれません。個人的には、このころの映像は見たことがないので、とても新鮮でした。何しろ皆さんとてもお若い。それにマイルスがセンスのいい服を着て、黒と赤の処理を施したトランペットを吹いていて、すごくかっこいいです。なお、このDVDは普通のテレビを見るつもりで音量を設定していると全く真価が分かりません。出来れば、コンポにつないで、大音量で聴かれることをお勧めいたします。Bitches Brew: Legacy Edition(COLUMBIA LEGACY 88697 54519 2)DVD:COPENHAGEN LIVE 19691.DIRECTION2.MILES RUNS THE VOODOO DOWN3.BITCHES BREW4.AGITATION5.I FALL IN LOVE TOO EASILY6.IT'S ABOUT THAT TIME/THEMEMiles Davis(tp)Wayne Shoeter(tn,ss)Chick Corea(e.p)Dave Holland(b)Jack DeJohnette(ds)Recorded Nov 4,1969 at The Konserrtsal,Copenhagen,Denmark
2010年12月10日
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以前、ウイーンフィルの昨年のシェーンブルンでの野外コンサートのDVDがPALで、私の部屋にあるプレーヤーはPALに対応していないために、NASに入れて、regzaで見ようとして色々試したことを書いたことがあります。画像は映るようにはなったのですが、音声と映像が1秒ほどずれていることに気がつき、それ以来しばらく活動を休止していました。少し前に、イギリスの通販サイトである「midlandcd」から恒例のヨーロッパ・ブランスバンド選手権の昨年と今年のライブDVDが届いたので、見ようと思ったら、PALで自分の部屋では見れないことが分かりました。このシリーズ、しばらくぶりに購入したので、PALであることをすっかり忘れていたためです。PAL対応のプレーヤーは居間にあるので、そうそう見ることもできません。仕方ないので、regzaで見ようと、気が重い作業をまた始めました。ここでの問題はMPEG2にしないと、受け付けてくれないことです。ネットで色々見て、FORMATFACTORYでDVDから直接変換すればいい、と書かれてあったので、FORMATFACTORYで変換することにして、かなり時間がかかるので、夜中にリッピングを行いました。今日帰宅してから見たところ、音声は出るんですが映像が出てきません。色々なパラメーターがあるので、それがちゃんと合っていなかったのかもしれません。パラメータが合えば見られるかもしれませんが、泥沼にはまってしまいそうなので、少し手間はかかりますが非圧縮という方法を試しました。それは、DVDシュリンク(他のリッピングソフトでも可能)でVOBファイルを作成し、それをVOB2MPEGでVOBファイルを結合し、MPEG2に変換するものです。最初全く変換されなかったので、よくよく調べると、Net Framework 2.0 以上がインストールされていないと動作しないようでした。私のPCはOSがVISTAですので、プログラムを許可したところ、30分ほどで生成出来ました。ところが、結合されていません。これが気になったのですが、とりあえず、regzaで見たら、ちゃんと見ることができました。これで、当初の目標が達成されたわけです。しかし、まだ満足できません。理由が分からないまま、今度はMPEGの結合ソフトを探して、「mavica」というソフトで結合を試みました。しかし、ファイルの形式があっていないため、結合できません。他の方からは、これほど苦労してやるなら、単に「DVDに焼けばいいのに」と言われそうです。一時、DVD-RWを使おうかとも思ったのですが、無駄なお金は使いたくないというポリシー(単なるケチともいう)なので、色々試してみたわけです。これは考え方次第なのですが、僅か数百円のために何時間も無駄にするのは馬鹿げている、という意見もあるとは思います。まあ、性分なので仕方がないと思っています。ここまで書いていたら、結合が終わったようです。PCでチェックしたところうまくいっていましたが、テレビでは再生できませんでした。仕方ないですね。。。。とはいえ、簡便ではないまでも、なんとか見られる方法がわかりましたので、他のPALやリージョン違いのDVDをこの方法で変換していきたいと思います。これで、悩み?が一つ消えて、今日は心安らかに眠りにつけそうです。。。
2010年12月09日
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石井隆監督、竹中直人主演の1993年の同名映画の続編。監督も主演もこの作品にほれ込んでいることが理由だと思います。今回は「愛は惜しみなく奪う」という副題がついています。前作のヒロインは余貴美子でしたが、今回はグラビヤ・アイドルで女優業にも進出している佐藤寛子。前作は見ていないのですが、今回の映画は傑作とはいかないまでもまずまずの出来だったと思います。やたらと殺人の場面が出てくる映画で、いきなりバーの2階で男が包丁で殺されるシーンから始まります。そのバーは母親と二人の娘が経営していて、彼女らは2億円のビルを建てるために、別れた?父の保険金を狙っています。殺した男を、風呂場でミンチにして、富士山麓の樹海に捨てます。ところが、男がロレックスの時計をしていたことを思い出し、ミンチと一緒にしてしまった2女のれん(佐藤寛子)が、なんでも代行屋の紅次郎(竹中直人)に、「父親の散骨時に誤ってなくした」と偽って、時計探しを依頼する。次郎は数日かけてなんとか時計を見つけ出しますが、肉片が付着していて薄気味が悪い。以前、逮捕された時にかかわった、警察の安西ちひろ(東風万智子)に調べを依頼する。事件のにおいをかぎつけた安西は、次郎に携帯電話を押しつけて、彼の居所を探る。時計を見つけてもらったれんは、次に、ある女性の捜索を依頼する。おかしいと感じながら、れんの清純さに魅せられた次郎は捜査を始めるが。。。■佐藤寛子の体当たりな演技と肢体が見もの この映画の売りは、佐藤寛子のヌードにつきます。 フルヌードでおまけにヘアまで出しています。それも何度も出てきて、とても頑張っています。修正が一切いらない抜群のプロポーションです。ただ、映画が映画なだけに、あまり楽しい気分にならないのはもったいないですまた、長い髪に隠れて顔がよく見えないのは、明らかにマイナスです。竹中直人は相変わらずの演技で、しょぼい人物が、れんの清純さに魅せられて、落ちていく様子を巧みに演じていました。お金のためには手段を選ばない、母親役の大竹しのぶ、その娘役の井上晴美のふてぶてしい演技も、映画を盛り上げていたと思います。女性の捜索と最後の結末にびっくりしますが、いくらひどいことをされてきた過去を持つとはいえ、なぜそこまでしなければいけないのか、あまり説得力がなかったと思います。以前見かけた顔が刑事役で出ていたと思ったら、昔テレ朝の報道番組に出演していた真中瞳でした。改名していたので、本人かどうか自身がなかったのですが、今回これを書くにあたって調べてみたら、やはりご本人でした。演技は悪くなかったと思います。■映像的に見るべきものがない 全体的に薄暗いシーンが多く、暗い感じがします。 それに、やたらと逆光のシーンも多く、目がチカチカしてきます。日中のシーンでも、薄暗く、いかにもネオ・ノワールらしい、いかがわしさをまき散らしています。唯一良かったのは、嵐の晩、次郎の事務所に設置しているネオンに落雷してネオンが光るシーンでした。暗闇の中に光るネオンがとてもカラフルでした。ということで、後味があまり良くない映画で、万人にお勧めできるとは思えませんでした。
2010年12月08日
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公開二日目の3回目ですが、ほぼ満席という人気ぶりです。 テレビのCMで大々的に宣伝していた効果でしょうか。もちろん大半は中年以降の年配の方々ばかりなのは少しさびしいですが仕方ありません。時代は、幕末の加賀藩。代々、御算用者(経理係)として仕えてきた猪山家の跡取り息子としてそろばんの腕を磨いてきた直之(堺雅人)は、「そろばんバカ」と揶揄されるほどで、剣はからっきしダメでも、そろばんはほかに並ぶものがないほどの腕を持っていた。性格もまっ正直で、そのため加賀藩の御蔵米の不正を暴くが握りつぶされてしまう。それにもかかわらず、性懲りもなく追求するため、煙たがられ、能登への赴任を命ぜられる。折悪しく、幕府にその不正を暴かれ、直之の行いが知られるところになる。直之は、悪事を働いた一味が一掃され、左遷を免れるどころか、異例の昇進を言い渡される。ところが、昇進するにつれ、何かと物入りになる。父信之(中村雅俊)の江戸での借金もあり、結局、息子直吉の4歳の「着袴の祝い」では、直之が熟考の末、鯛の塩焼きならぬ、鯛を絵にかいた「見せ鯛」をお膳に付ける。家の家計の窮乏に困り果てた直之は一代決心をする。それは、たいめんにこだわらないで、なんとしてでも借金を返済することだった。返済しなければ、お家がとりつぶされる運命にあったのだった。そのために、金目のものは一切処分し、倹約生活を開始する。。。。■現代にも通じる倹約生活の知恵 直之がしたことは、上記のことのほかには、入払帳(現代の家計簿)を克明につけることだけだったと思います。現代は、食べた物を記録することでダイエット出来るということを説く方もいらっしゃるほどですが、入払帳も同じような効果があったということではないでしょうか。書く量を少なくしたいと思うのが人間ですから、書く量を減らす→金の出し入れを少なくする→お金を使わなくなる、という循環ではないかと思います。とにかく、一日の収支を書き終えるまでは寝ないという、几帳面な性格が功を奏した?のだと思います。何しろ、親がなくなった日にも、その日かかった費用を記録しているのですから、徹底しています。■豪華キャストが楽しい主人公の堺雅人をはじめ、妻のお駒(仲間由紀恵)、父の中村雅俊、母の松坂慶子、祖母草笛光子、お駒の父西永与三八役の西村雅彦など、芸達者がそろっていて、安心して見ていられる映画です。 特に、草笛光子と西村雅彦の演技は時折ユーモアを交えながらとても味わいのある演技だったと思います。仲間由紀恵も結婚前後の初々しい若さあふれる演技がとても魅力的でした。また、この映画を見た後では、主人公役は堺雅人しかいないなと思うほどはまり役だったと思います。■味わいのある物語 前半は、物語的に大きな盛り上がりがあるわけではありませんが、細かい描写にすぐれ、ウイットに富んだ会話もあり、時間を忘れてしまいます。 後半、息子の直吉への厳しい教育のシーンや幕末の薩長と幕府との戦いにかかわる猪山家の人々の動静を描くシーンは前半のユーモアが薄れ、ちょっとシリアスになりすぎたきらいがありました。後半を見てしまうと、時がゆったりと過ぎていくような気分を味わえる前半の描写がとても好ましく感じられました。ただ、それほど重大な出来事が起こるわけではないので、ストーリーを締めくくるのもなかなか大変だったと、苦労のほどがしのばれます。 ということで、肩の凝らない時代劇、それも今までにない視点で描かれた武士の生活という点で、とてもユニークな映画になったと思います。それに、監督の優しいまなざしが感じられるような、ホンワカとしたムードがなかなか得難いものだったと思います。公式サイト
2010年12月07日
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レビューを見るとなかなか良さそうなので見に行きました。 個人的には筒井康隆は大学のころから読み始め、少なくとも断筆前までの作品は全部読んでいたと思います。たまたま、今年発刊された「アホの壁」はありますが、まだ積ん読状態でした。ところで、この「七瀬ふたたび」は、『家族八景』『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』いわゆる「七瀬三部作」と呼ばれている作品の中の一つです。もう30年も前のことなので、あらすじは覚えていません。映画を見ながら、そういえばここは七瀬が覚醒して新たな能力を身につけたシーンだとか少し思い出しました。「家族百景」は七瀬のテレパスが行く先々で色々な出来事を起こしてしまう物語でしたが、この「七瀬ふたたび」では世界の秩序を乱すとして超能力者狩りを行う集団と七瀬ら超能力者との戦いを描く作品です。■七瀬がいい 主人公は「シルク」でその冷たい美しさが絶賛された芦名星。 個人的にも、七瀬のイメージにかなり近いと思います。惜しむらくは、「シルク」当時から少し太ったのか、彼女の大きな特質であるシャープさが失われていたのが、とても残念です。時間を超えて旅行することができる藤子(佐藤江梨子)はどこかのレビューであまりよく書かれていなかったのですが、個人的には悪くなかったと思います。 同じテレパスのノリオ(今井悠貴)があまり映画向きでないのと、七瀬の愛する予知能力者の了(田中圭)がハンサムでないのは敢えてそうした役者を選んだかもしれません。最初は軽い失望を覚えたのですが、見続けていたら、その方が自然な感じがしてきたのは、監督の意図するところだったのかもしれません。敵の中心人物狩谷(吉田栄作)も悪くなかったと思いますが、刑事山木役の平泉成がいい味出していました。テレキネシスのヘンリー・フリーマン役がソフトバンクのCMのお兄さん役のダンテ・カーヴァーだったせいか、携帯がソフトバンクだったのは笑えました。■テレパスの描きかたはうまくいっている 七瀬が人の心を読むシーンとか、心を閉ざしているシーンの描きかたはなかなか良く考えられていたと思います。 圧巻は、対決の場面での狩谷の深層心理を辿って、幼少の頃差別されたところまで行きつくところは良く考えられていました。もともと原作自体少し薄気味悪いのですが、映像もその気分を忠実に再現していたと思います。特にモノクロの使い方が巧みだったと思います。また、出演者の心理描写、特にエスパーとしてのつらさがよく描かれていたと思います。個人的には、見ているのがつらくなる映画でした。■映画である理由を自ら貶めてしまった 音楽が感傷的で、何かテレビドラマを見ているような感じがしました。 音楽だけでなく、全体の作りがその通りです。映像もあまりきれいではなく、せっかく作家生活50周年記念映画にしては、もう少しお金をかけてほしかったと思います。■プロローグも短編ながらなかなかいいです プロローグとして、少女時代の七瀬を描いていますが、そこではNHKのドラマシリーズで七瀬を演じた多岐川由美が七瀬の母親役を演じています。 若い男に心をときめかせる母親。ルージュを塗っているときに、思わず七瀬が母親に問いかけます。「あの人が好きなの?」この一言によって、母親は七瀬が人の心を読めることを知るのでした。監督は中川翔子。熱烈な筒井ファンらしいですが、不気味さがよく出ていたと思います。映像的にも、よく考えられていたと思います。監督自身も、ギャンブルのシーンでカメオ出演していたそうですが、顔がちゃんと写されていたわけではないので本人とは思えませんでした。 ともあれ、この作品が好きな方は見て損のない映画だと思います。 筒井氏は今年の第58回菊池寛賞を受賞しましたし、これからも元気で作品を生み出し続けてほしいですね。公式サイト
2010年12月06日
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現在TTPに参加するかどうか、農業団体の圧力でなかなか先に進まない状態です。 個人的にも、TTPは発動されると、農業は大丈夫なのかと思っていましたが、月刊「Will」1月号に掲載された浅川芳裕氏の論文を見ると、事実は全く違うことに驚きました。ちなみに、氏は月刊「農業経営者」という専門誌の編集長をされています。以下少し長くなりますが概要を説明します。日本の農業のGDPは経済活動全体に連動し、現在は縮小傾向にある。これは、所得の伸び悩み、少子化などが影響し、それは、農業だけではなく、外食市場などでも同じ傾向にある。他方、高齢化によって、葬儀用の花、「惣菜」用の農作物の需要、特に野菜は伸びている。 日本の農業は「GDPの1.5%だ」という前原外相の発言が農業規模が小さいという印象を与えてしまった。 しかし、実際には日本の農業生産額は世界5位で、先進国中では米国に次ぐ規模である。農業大国といわれるフランス(6位)、ドイツ(13位)より多く、オーストラリアの(17位)の3倍超ある。農業GDPを先進5カ国で比較すると、英国、米国は0.9%、ドイツは1%で日本より低く、日本はフランス(2%)より若干低いくらいである。オーストラリアでさえ、3.1%にすぎない。OECD諸国は1%弱~数%の範囲である。農業GDP比率の大きい国を考えると、全131カ国中、フランスが121位、日本が123位、米国128位となる。一方農業GDPが40~50%を超える上位は、中央アフリカ、エチオピア、コンゴと言った後進国が名を連ねる。農業の生産額は経済市長と連動し、戦後急成長したドイツ、日本の伸び率が大きく、1965年と2005年の比較で、それぞれ4倍、3倍になっている。他方米国は1.5倍、イギリスは3割減である。また、日本の農業は僅か40万戸の主業農家(農業所得が所得の50%以上)が担っている。彼らが、我々の国産の食料の大半を出荷している。例えば酪農は95%、養豚92%、花卉87%、いも83%、野菜82%などである。売り上げが1千万円を超す農家が日本の生産額の6割を稼ぎ出し、1億円超の農場は過去5年で1千件も増加している。こういう状況で、現実の関税は3%しかなく、すでにFTAを結んでいる国は殆ど無税である。にもかかわらず、国産のマーケットシェアは81%もあり、国内産野菜のシェアは700億円も伸びている。中国野菜の輸入比率は国産の10%未満である。過去10年で先進国の生産額の増減をみると米国+16%、英国+3%、ドイツー3%、日本はなんと25%のマイナスである。輸出額から見ると、1965年と2005年の比較で、英国20倍(200億ドル増)、ドイツ70倍(420億ドル増)、日本はわずか17億ドルの増加にすぎない。これから言えることは、国内市場が縮小すると同時に生産性が上がり、国内だけを考えていれば、生産規模を縮小せざるを得ないという状況である。しかし、海外に目を向けると、まったくと言っていいほど輸出がない(世界輸出シェアはわずか0.2%)ことに気付く。そこには莫大な規模の市場があることがわかる。TTP9カ国の農産物輸入額はここ9年でほぼ倍増、ところが日本の輸出額は数十パーセントしか伸びていない。TTP9カ国の輸入は規模の増大だけではなく、質的な転換に移りつつある。こうなると、世界で最も高品質な日本の作物が受け入れられる余地はさらに広がることが予想される。果物、野菜、肉、卵に至るまで、受け入れられる土壌は既にある。ここで問題になるのは、農水省の試算である。TTPに加入することによる生産額の減産は4.1兆円で、その半分がコメだ。コメの減産額は1兆9千700億円であるが、現在の生産額1兆9千14億円よりも大きい額である。つまり、コメの生産がゼロになって、さらに700億円マイナスになる(どうやればそうなるかは??)という試算である。(概要終わり)この論文を見ると、日本の農業がいかにマーケティング能力に欠けているかがよくわかります。結局、何でもかんでも農水省と農協の主導に引きまわされてきたという状況が明らかです。これを打破するためには、出来るだけ農水省の手から離れることが必要です。日本の誇る商社も農産物をただ輸入するだけではなく、積極的に売り込みを図るべきです。何しろ、品質で絶対に負けることはないのですから。この論文を見て、目からうろこがはがれたような気がします。日本の農業はダメだと国民を洗脳していたのは、実は農水省だったということがよくわかります。そこにいかなる権益があるのかよくわかりませんが、脱農水省というのが、日本の農業にとって今後の課題になると思います。
2010年12月05日
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以前から欲しいと思っていた米国空軍バンドのアレンジ物を集めた「INOVATIONS」をやっと入手しました。もともと1999年の自主制作盤で2008年にKLAVIERから再発されたものです。吹奏楽は今年の2月頃以来、本当に久しぶりの入手です。これは20世紀を代表する作曲家たちの管弦楽曲の編曲を集めた、大変意欲的なアルバムです。ストラヴィンスキーの「花火」、グレインジャーの「戦士たち」、ショスタコービチの「10月革命」などが並んでいます。オケと比べれば、編成が少ないことなどから、サウンドの広がりなどが劣っているのは仕方ありません。個人的には、こうした編曲物を買うことは決してありませんでしたが、最近はそういうストイックな気分が全くなくなって、編曲や演奏に対する興味本位で聴くことが多くなりました。もちろん、原曲に比べて劣ることはありますが、吹奏楽ならではの楽しさがあることも確かです。今回の演奏は実に素晴らしいです。技術的に困難な部分も多々あるのですが、そういう困難さを全く感じさせない演奏です。 最初に気に入ったのは、意外にもショスタコービッチの交響詩「10月革命」でした。引き締まったテンポとサウンドが心地よいです。それに、バスドラムの風圧を感じさせるような録音も素晴らしいです。前半の、厳しい音楽運びも吹奏楽にしては珍しいです。この曲は聴いたことありませんでしたが、曲の出来がよくなく、最期のコーダの大袈裟な盛り上がりぶりに笑ってしまいます。 バーバーの「メディア」からの「メディアの復讐の踊り」もいい雰囲気です。初めて聞いた曲ですが、前半のミステリアス雰囲気を醸し出すバックにのって歌われるのびやかな旋律と、後半、テンポが上がってからのダイナミックな動きのコントラストが絶妙です。個人的には、バーバーは柔和な音楽を作る方と思っていましたので、こんなに激しい音楽もあるとは思っていませんでした。エキゾチックなところもあり、とても満足しました。なにしろギリシャ悲劇の「メディア」ですから、これくらい激しくしてもらわないと困る、ということも、もっともではありますが。。。 グレインジャーの「戦士たち~想像上のバレエ音楽」も、ダイナミックな演奏で、スケールが結構大きいです。ゆったりした部分での木管アンサンブルの美しい響きに聴き惚れてしまいます。ビブラートをかけたユーフォニアムの音色がイギリスを思い起こさせるのもいいです。パーカッションのキラキラした多彩な音色もいい感じです。フランク・パパジョンによる編曲は、グレインジャーの吹奏楽作品と同じような響きがしていて、オリジナルと言われてもおかしくありません。後半に出てくる、金管と木管が分かれて奏する2つの旋律が同時進行するところなど、サウンドも前(木管)と奥(金管)に別れて定位していて、グレインジャー独特の雰囲気が醸し出されています。エンディングに向かって進行する部分はとても楽しく、この曲の真価が発揮された演奏だと思います。 バルトークの「中国人の不思議な役人」は、吹奏楽ではよく演奏されていますので、結構耳になじんでいますが、組曲を全曲収録したアルバムは、ほかにはあるんでしょうか?ここでの演奏はテュッティでのダイナミックな演奏よりも、静かな部分の描写にすぐれていると思います。吹奏楽で、このように、じっくりと描かれたことは、あまりないのではないでしょうか。さすがだと思います。 1曲目のストラビンスキーの「花火」も大変難しい曲ですが、ストラビンスキー特有の色彩豊かなロシアの物語の雰囲気がよくつかめていたと思います。この曲でカギとなる金管は重量感こそないものの、的確な演奏で素晴らしいです。 全体的には技術的な破綻や怪しいところは皆無で、米国空軍バンドの実力をいかんなく発揮した大傑作だと思います。音色があまり洗練されていなくて、昔のイーストマンの音色を思い起こさせる、温もりのある木質の音色です。このサウンドは、個人的には決して嫌いではないです。欲を言えば、もう少し柔らかな響きであれば、さらに聴き映えのする演奏になっていたと思います。U.S. AIR FORCE BAND:INOVATIONS(Klavier K 11170)Stravinsky: FireworksGrainger: The Warriors (Music to an Imaginary Ballet) & 3 pianosShostakovich: OctoberBarber: Medea's Meditation and Dance of Vengeance (from "Medea"), Op. 23aBartok: The Miraculous MandarinU.S. Air Force BandLowell Graham,Conductor
2010年12月03日
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中山康樹氏の「エレクトリック・マイルス1972-1975」に続く、自称マイルス新書シリーズの5作目は1975年から1991年までをたどった作品です。晩年の病や交通事故による怪我の手術、それにコカインやモルヒネにより肉体が蝕まれている状況、長い引退、カムバックの模様など克明に描かれていて、目に見えるようです。もちろん、その間の音楽的な活動も詳しいです。 一番印象に残ったのは、マイルスの人間としての弱さが、赤裸々に描かれていることです。自伝もだいぶ前に読みましたが、これほど、ぐさっとはきませんでした。引退して、ニューヨークの高級アパートに引きこもっている時の状況は、まさに凄まじいの一言に尽きます。ヤクと酒漬けで、部屋の中は荒れ放題、大きなネズミやゴキブリが這いずりまわっているという凄惨な状況です。1978年にマイルスを訪れたテオ・マセロは「椅子にもソファにも座る勇気がなかった」と語っているほどです。おまけに、電気料金の滞納で、電気を止められています。また、あれほど有名なミュージシャンでも、いったん引退状態になると、尋ねる人も少なくなり、親身に面倒を見てくれたのは、ドラマーのアル・フォスターくらいでした。結局、この荒れた生活に終止符を打たせたのは、姉のドロシーでした。彼女は、シシリー・タイソン、チャカ・カーンとともに部屋の大掃除を敢行します。シシリー・タイソンは正しい食事と規則正しい生活の面倒をみます。その結果マイルスは次第に健康を回復します。その後の奇跡的なカムバック。以後の活躍は御存じのとおりですが、何故か悲劇的な色合いが感じられます。もちろん、現在から見ているからですが、当時でも華々しい反面どこか影のある活躍だと思ったことは確かです。モントルーでのギル・エヴァンスとのコラボレーションの再現コンサートの2日後、7月10日にパリで「マイルス・アンド・フレンズ」というマイルス・スクールの卒業生たちとの再会コンサートが開かれます。マイルスのレギュラー・グループにショーター、グロスマン、ビル・エヴァンス、ジャッキー・マクリーン、ザビヌル、ハンコック、マクラフリン、ジョン・スコフィールド、ホランド、アル・フォスターなど素晴らしい顔ぶれです。決して過去を振り返らなかったマイルスが、この2つのコンサートで過去を振り返ったことは「死期を予想していた」という見方もありました。面白いのは、金が入るとフェラーリを購入したことです。それも2回もです。楽屋入りするときは、会場が宿の目の前にあるのに、わざわざ遠回りして、会場の正面に乗りつけるということもやっていたようです。ここら辺は、いかにもスタイルを気にするマイルスらしい振る舞いだと思います。そして、最期の様子も書かれています。1991年8月25日のハリウッド・ボールでのコンサートの後の週末、マリブの別荘に滞在していたマイルスは吐血し、サンタモニカの聖ジョン病院に入院。ジョー・ゲルバートによると「最初の1週間は点滴をしながら怒る狂い、部屋中を歩き回っていた」といいます。数日後、脳卒中に見舞われ、身体の左半分が麻痺。そしてツアー・マネージャーのゴードン・メルツァーによると、最期は次のような状態だったそうです。「病院で精密検査をした後で、肺に水がたまってきたから、呼吸を楽にするために、肺に管を入れられた。それを知ったマイルスは、パニックになってしまった。泣きながら「死にたくない」と言った。その恐怖とパニックが心臓発作につながり、昏睡状態に陥った。昏睡状態は1カ月近く続いた。そのまま、危篤状態になり、意識が戻らないまま死んだ。」一方、ゲルバートによると、他界する前日に、マイルスが裸でベッドの上に立ち、怒りに燃えて「ここから出たい!」「死にたくない!」と叫んだといいます。これらの発言は食い違っているので、どれが本当かは分かりません。どちらにしても、精神が尋常な状態ではなかったと思われます。なんとも痛ましい状況です。1991年9月28日、肺炎、呼吸不全、脳卒中などの合併症のため65歳で亡くなります。体重が40キロを下回っていたという記述に、愕然としました。運命とはいえ、あまりにも悲惨です。悲惨すぎます。晩年の唯一の救いは、毎日クラーク・テリーが電話をかけてくることだったといいます。クラークはトランペットの師であり、終生の友人でした。昏睡状態で、「クラークの声を聞くと、動かないはずの左手が動いた」と姉のドロシーが証言しています。復活後の音楽は万全ではなかったようですが、トランペットだけは燦然と輝いていたことは確かです。この本を見ると、後半生のマイルスは、病気などとの戦いの連続で、健康であったら、どんなに素晴らしい音楽を我々に届けてくれただろうか、と思わずにはいられません。この時期のアルバムはあまり持っていないこともありますが、あまりいい印象がありません。モントルーのライブは全く平凡でした。発売当時鳥肌が立った「ツツ」を久しぶりに聴きましたが、その当時のすごみは全く感じられませんでした。何やら古臭い音楽で、突き抜けるトランペットだけが光っている音楽という印象で驚きました。結局、その当時新しいと思われていた音楽が、イコールいい音楽とはなりえなかったことの見本ではないでしょうか。1950年代の名演奏がいまだに色あせないのも、同じ理由だと思います。マイルスの音楽に対する貢献は計り知れないものがありますが、マイルス自身の生涯がはたして幸福だったのか、この本を読んで考えてしまいました。今後、晩年のマイルスを、ちょっと真剣に聞いてみようかと思っています。さしあたっては、マイルス門下との再会コンサートを収録したDVD『ブラック・デビル』を入手したいと思います。中山康樹著 マイルス・デイヴィス 奇跡のラスト・イヤーズ 小学館101新書 2010年10月6日 初版第1刷
2010年12月02日
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制作に7年、手書きで描いた枚数が10万枚とこだわりまくったアニメ「REDLINE」。紹介記事とトレーラーを見た結果、映画館に見に行きました。■あらすじ主人公JP(木村拓哉)はドローシー星で行われたYELLOWLINEというレースに愛車トランザム20000で出場する。このレースで勝てば宇宙最速を決めるレッドラインというレースに出ることができるのだ。ところが、メカニックのフリスビー(浅野忠信)はいかさまに加担し、トランザムに爆薬を仕掛ける。どんけつだったJPは、終盤でトップを走るソノシー(蒼井優)を抜き、優勝目前となるが、直後に爆発してしまう。レッドラインへの出場もついえたかと思われた。ところが、レッドラインが武器搭載OKのなんでもありのレースで、しかも場所がロボワールドと発表されため、出場辞退者が出る。この結果、人気投票上位のJPにお鉢が回る。彼は、ダーティーな行為を行わず、市販車をチューンした車でレースに挑むところに人気があった。いかさまの首謀者イヌキ組長からたんまりと金をもらった彼らは、以外にもクラッシュした車をパワーアップしようとする。レーズ直前になんとかマシーンは出来あがるが、テストは行うことは出来ず、ぶっつけ本番で臨むことになった。いよいよレッドラインのレースが始まるが、コースは宇宙一危険な軍事国家ロボワールドに設けられている。ロボワールドは軍事機密が満載されているため、そこの大統領は軍隊を使って秘密を知ってしまうレーサーたちを抹殺しようと待ち構えている。いよいよレース本番。いかなることが待ち受けているのか。。。。■あくの強い登場人物 マッドハウスなので期待していたのですが、タッチはアメコミ風で、個人的にはあまり好きになれません。 それにキャラクター達も何やらスターウォーズに出てくるような動物と人間の合いの子や、サイボーグみたいなのが登場します。一癖も2癖もあるようなあくの強いキャラクターで、好き嫌いが分かれそうですし、何よりも精緻でないところが印象を悪くしてます。女性はというと、少女コミックに出てきそうな、軽いタッチの描きかたで、胡散臭さ満点です。主人公のJPはといえば、長いリーゼントで皮ジャンという全く時代遅れの恰好で、今思うとプレスリーの雰囲気ですね。そう思う私も相当古いですが。。。原作・脚本の石井克人のキャラクターデザインは個性的と言えば個性的です。ライバルでもあり幼馴染でもあり、恋仲となるソノシー(蒼井優)は人間と海洋族のハーフですが、月並みです。JPの幼馴染でレースのメカニックのフリスビーはやくざっぽい感じで、顔がツートンカラーでなかなかユニーク。一番面白いのはJPの車のパーツ調達係のモグラおやじ。手が4本あって、ムカデのように2本ずつ並んでいるため、車を組み立てるときにはとてもはかどります。なにやら、「千と千尋・・・」の釜爺を連想させるようなキャラクターでした。■声優たちは適役JP役の木村拓哉、ソノシーの蒼井優、フリスビーの浅野忠信ともハマっていたと思います。特に、蒼井優が普段の落ち着いた演技(と声)からすると、キャーキャー言う時の声なんか、とても当人とは思えないほどでした。木村は普段通りで、浅野はちょっと悪ぶっている感じがしました。■スピード感がたまらない絵は赤や青など原色が多用され、輪郭も黒い太い線で描かれているため、長く見ているとくらくらしてきます。レースの場面が2/3はありますが、スピードアップした場面では、見ている方も強力なGがかけられるような感覚に襲われます。ということで、こだわったのが何だったのか観客にはあまりうまく伝わっていなかったのではないかと思います。それにエンディングがお決まりのハッピーエンドで、二流少女子コミック並みの、なんともお粗末な終わり方で、一気に興ざめしました。公式サイト
2010年12月01日
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