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またまた、「SAPIO」の話題です。 2/1・8号は原発特集ですが、興味深い話題が多くて、何回も引用してしまいます。今回は福島製のガイガーカウンターのお話。作ったのがなんと板金屋さんと言うから驚きです。福島県大玉村にある三和製作所というところです。11月に発売されたが、既に6000台のに注文があり、湯役が一時中断されたそうです。売れる理由は、通常同程度の性能で3万円から5万円するものが、なんと表示画面一体型で1万8800円、iPhone接続タイプで9800円という安さ。なんで、板金屋さんが線量計を作るにいたったという理由が切実です。斎藤社長を動かしたのが、「地域が壊滅する」という危機感だったそうです。原発事故から1週間後、避難先から自宅に戻り、線量計を知り合いから借りて、近辺を測定したら、なんと9.99マイクロシーベルトの目盛を簡単に振り切ってしまった。同じころ、自治体の発表する放射線量は2~5マイクロシーベルト程度。これを見て、自治体の発表するデータが信用できないことを知った住民はもう村には戻ってこないという危機感を斎藤社長はもつ。安価な線量計があれば、リアルタイムで計測ができて、対策も立てることが出来る。ならば、自分で作ろうと決心する。しかし、社長以下12名の従業員には線量計の知識も経験もない。製造法を探るうち、東京在住のフリー・プログラマーである森琢磨氏がガイガーカウンターを自作する過程をサイトに公開していることを知る。森氏の話によると、ガイガーカウンターの部品は汎用品が多く基盤だけなら2000円を割るという。森氏は海外サイトでガイガーカウンターの設計図を入手し、ネットで部品を探して自作する。「オープンガイガープロジェクト」として、回路図や部品リスト、自作のソフトまで公開した。斎藤社長はこの森氏の基板を利用することにした。難問はガイガーカウンターの心臓部であるガイガーミュラー管(GM管)の入手問題。GM管は内部に混合ガスが充填され、放射能が管内を通るとパルス電流が発生し、そのときの電圧を図ることにより放射線量を測定できるというもの。GM管は日本では生産されておらず、自作するのも時間がかかるため、ウクライナ製のGM管で作る。制作が始まったのは、昨年秋。10社ほどの協力工場はすべて地元の企業。支援しているのが、非営利活動法人の営業支援隊。企業の技術者や学校の関係者など3000人が参加している。予約受け付けは2月以降に再開する予定で、自社製のGM管の目途もついた。また、アンドロイド携帯への接続や、食品に含まれる放射線量を測定するベクレルモニターも開発中で、近く製品化できる見込みという。いや~、実にすばらしいお話です。「○○の執念岩をも通す」という言葉がありますが、まさしくそれを地で行っている取り組みです。しかし、情報を簡単に入手できるツールが存在したこと、福島というものづくりの盛んな地域であることなど、色々な条件が重なったことが成功した理由であることも確かです。欲しい方は大勢いらっしゃると思いますし、沢山売れることをお祈りします。私もGM管が入手出来るようでしたら、作るかもしれません。。。チェルブイリ事故後にウクライナやベラルーシでは放射線量計メーカーが次々に勃興したと言います。新たな産業を興すことにもなりますので、福島でもそうであってほしいものです。ガイガーFUKUSHIMAの紹介ビデオ販売サイト
2012年01月31日
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以前レビューした、東京での録音がラスト・レコーディングと思っていた、ハンク・ジョーンズ。 本当のラスト・レコーディングが登場しました。これが、チャーリー・ヘイデンとのデュオ。讃美歌やスピリチュアルをとりあげ、淡々と演奏しています。ジャズに期待される要素であるミュージシャン同士の丁々発止としたやりとり、は皆無です。むしろ、両者が寄り添いながら音を紡ぎだしていて、とても味わい深いです。ヘイデンはデュオを数多く録音しています。これほどたくさん録音しているジャズ・ミュージシャンも珍しいと思います。ラスト・レコーディングで思いだすのが、「ゴールデン・ナンバー」でヘイデンと共演したハンプトン・ホーズのこと。彼はラスト・レコ―ディングではありませんが、その3か月前のレコーディングでした。全14曲、長いものでも4分くらいで、全てがゆったりとしたテンポの演奏です。ハンク・ジョーンズは淡々とした演奏ぶりで、晩年の円熟の境地を示しています。アドリブは控えめで、それも殆どが静的なものです。その中から、アメリカの南部あたりの草いきれが感じられ、ほのぼのとした気分になります。ヘイデンは出しゃばることもなく、静かに温かくピアノをサポートしています。ヘイデンの朴訥とした語り口が、ハンクの晩年の境地にふさわしいです。気に入ったのは、タイトル・チューンの「Come Sunday」。これを聴いていたら、マヘリア・ジャクソンの歌声が甦ってきました。エリントンと共演した有名な「BLACK,BROWN AND BEIGE」に収録されている曲です。ここでは、アドリブも少し入り、ジャズらしい演奏です。2曲目の「God Rest Ye Merry, Gentleman 」も涙が出てきそうです。イギリスの讃美歌「Neare my godo to thee」(主よ御許に近づかん)なんて、歌詞を知っていれば、そのまま歌えてしまいます。最後のアルバムが気心の知れたヘイデンとのデュオだったのは、ハンクにとって、とてもよかったことではないでしょうか。聞いてすぐ、ピンとくる演奏でないかもしれませんが、長く聞き続けているうちに、かけがえのない音楽になりそうな気がします。音楽の根源的な意味を聴き手が問いかけられているようです。最初の2,3回は車の中で聴いていたのですが、家でじっくりと聴かないと、その味わい深さが分からないと思います。ご家庭の静かな環境の中で、じっくりとお聞きになることをお勧めいたします。Charlie Haden Hank Jones:Come Sunday(EmArcy B0016390-02)1. Take My Hand, Precious Lord 2. God Rest Ye Merry, Gentleman 3. Down By The Riverside 4. Going Home 5. Blessed Assurance 6. It Came Upon The Midnight Clear 7. Bringing In The Sheaves 8. Deep River 9. Give Me That Old Time Religion 10. Sweet Hour Of Prayer 11. The Old Rugged Cross 12. Were You There When They Crucified My Lord 13. Nearer My God To Thee 14. Come SundayCharlie Haden(B)Hank Jones(P)Recorded February 2 and 3, 2010
2012年01月30日
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彼らの名前と代表的な小説の名前くらいしか知らないのですが、予告を見て面白そうなので見に行きました。 原題は「Les Amants du Flore」(カフェ・ド・フロールの恋人たち)でもともとはテレビドラマです。 結論から行くとかなり面白かったです。フランス映画らしい映画で、渋い色調の柔らかい画像がとても心地よいです。こうしてみると、シャープなアメリカ映画、硬いドイツ映画、暗い日本映画など、映画はお国ぶりがもろに見えてくるようで、大変興味深いです。こうしてみると、ボーダーレス化しているとはいえ、映画の世界は厳然とした国の違いがあるようです。朝1回の上映ですが、結構入りは良かったです。物語は、彼らがソルボンヌ大学で知り合い、紆余曲折の結果新しい雑誌「現代」の創刊を経て、ヴォーヴォワールの「第2の性」の発刊、彼らの自由な恋愛等を描いたものです。契約結婚をしたのですが、結局ボーヴォワールは子供を産みたいがため、アメリカで知り合ったオルグレンと結婚したかったが果たせなかったというところで終わっています。サルトルがメスカリン注射を注射して幻覚に襲われる場面が面白いです。青く描かれた虫や赤いエビが、サルトルの周りをごそごそとさまよっている様子が描かれていて、漫画チックです。この映画は先にサルトルの名前がついていますが、実質的にはボーヴォワールの生涯と言ってもいいように思います。ボーヴォワールは生まれた家は上流階級なのに、働かず、母親も家事だけをやっているような家庭です。何しろ、父親は「女は男の創造物だ」とうそぶく人間です。当時のフランスの上流階級では、女性は家のいいなりで、結婚が最終的な到達点で、自立なんて考えられない時代です。父親の発言「女は男の創造物だ」、がそれを表しています。父親は、母親の持参金目当てで結婚したのですが、それがなかったため、貧しい暮らしをしています。それが、ボーヴォワールの自立の同期になったという描かれ方をしています。サルトルの生い立ちは一切書かれていません。彼らは卒業してアグレガシオン(1級教員資格)に合格します。サルトルが主席、ボーヴォワールが次席での合格でした。そのことを契機として、彼らは恋仲になり、それからの激動の時代を生きていくのです。映画では、ナチ台頭前夜から第2次大戦の終了、そして名声を博す、70年代までを描いています。契約結婚という自由な立場に置かれた二人は、他人とのセックス、レズビアンなど好き勝手なことをします。サルトルは、恋人たちを家族として養い、ボーヴォワールはアメリカで知り合った、作家のオルグレンにより、初めて女としての歓びを体験します。ボーヴォワールはオルグレンの子どもを望み、結婚を考えますが、サルトルはそれを拒否し、二人は結ばれる事はありませんでした。ボーヴォワールはサルトルと同じ墓にな入りますが、オルグレンから送られた指輪をはめた状態で埋葬されたそうです。結局、契約結婚とは一体何だったのか、実験は失敗したのかよくわかりません。しかし、ボーヴォワールの思想は女性の解放という点で大きな功績を残したことは確かです。サルトルを通り過ぎる女たちが沢山出てきますが、一番印象に残ったのはボーヴォワールの教え子ルミ役のクレマンス・ポエジーです。この稿を書くためにちょっと調べてみたら、なんと「ハリー・ポッターの死の秘宝」や、「127H」にも出演しています。主役の二人のキャスティングは素晴らしいです。特にボーヴォワールを演じたアナ・ムグラリスはこの映画を支配していると言ってもいいほどの存在感です。ちょっときつい顔立ちで、実際のボーヴォワールとは違うと思いますが、素晴らしい演技です。サルトル役のロラン・ドイチェは小柄で細身の頼りない男の感じですが、実際のサルトルがどういう人物分からないので、この描かれ方が実物に近いかどうかは分かりませんが、悪くないと思います。グレゴワール・エッツェルの音楽が実にすばらしいです。「Manhattan」「Isn't It Romantic ?」などのスタンダードやジャズ、それにオリジナルの軽くてロマンティックな音楽が違和感なく共存しています。最近見た映画の中でも出色の音楽だと思いました。サウンドトラックを聞きたいと思って探しましたがありません。どうやら発売されていないようです。残念です。。。。公式サイト
2012年01月29日
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ジャズ批評の1月号は「映画音楽とジャズ」という特集でした。映画もジャズも好きな私にとっては格好の特集です。内容は、4つに分類できます。1.ジャズメンや歌手の伝記映画2.ジャズメンが出演した映画3.サウンドトラックに使われたジャズ4.ジャズ記録映画個人的には4→1→2の順で興味があります。1,2に関して言えば、殆ど知識がなく、この特集はとても有難いです。1に属する「ベニーグッドマン物語」。以前レンタル・ヴィデオ店で見かけ、焼いたのはいいんですが、全く見ていません。4のジャズ記録映画として有名な「真夏の夜のジャズ」(1958)はだいぶ昔に、映画館か、何かの観賞会で見た記憶があります。その時印象に残ったのはチコ・ハミルトン・グループのフレッド・カッツがバッハの無伴奏チェロ組曲を演奏するシーンと、アニタ・オデイの本番でした。2のジャズメンが出演した映画は結構あると思います。一番出ているのはルイ・アームストロングで、50本以上出ているそうです。以前「ニュー・オーリンズ」(1947)という映画を見たことがありますが、ビリー・ホリデイも出演していて、とても楽しめました。画像も鮮明だったと思います。「ラウンド・ミッドナイト」と「バード」も見た記憶があるのですが、また見たくなりました。そのほか、ミュージカル映画の紹介もありとても参考になります。ユニークなのは、寺岡ユウジ氏が執筆した「日本映画とジャズ100本」という記事です。映画監督とジャズ、作曲者とジャズなど色々な切り口で書かれていて、「タモリと映画5本」なんてものもあったりして、こんな映画にもジャズが使われていたんだという新しい発見がたくさんありました。そうすると、これらの映画を見たくなります。この雑誌を読んでから、レンタル・ヴィデオ店に行くたびに、それらしいものを見つけようとしているのですが、なかなか見つかりません。古いものが多いため、置いてないのだと思います。私がよく行くところは、複数のテンポがあるとはいえ、そんなに大規模な店ではないので、取り寄せとかできるとは思いません。tsutayaもあるのですが、少し離れているので、あまり行くことはありませんでした。一応ネット会員にはなっていたんですが、好きなものがなかなか見られなくて、現在休止しています。でも、ここは全国規模なので、もしかしたらと思って、調べてみたら、取り寄せが可能なことが分かりました。店で検索可能なものがとり寄せできるというシステムなんですね。以前、見たいDVDがその店にあることを知っていて、場所が分からないので、聞いたところパソコンで検索していただきました。それを発展させて、全国のお店の在庫を調べることができるようになったのだと思います。料金がどうなっているのかは分かりませんが、そのうち頼んで見ようかと思います。ところで、この様な内容の特集が今まであったかどうかは分かりませんが、個人的にはこれは永久保存ものだと思います。多分売り切れ必死です。ご興味のある方はすぐ本屋さんに急げ!
2012年01月28日
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このところ、福島第一原子力発電所の事故関連の会議で議事録がないことが騒がれています。 その道の権威?のような方が意見を述べていますが、言いたい事は皆さん同じで、重要な会議で議事録がないのは考えられないと仰っています。頭のいい方が揃っていらっしゃるのに議事録すら書かれない。皆さん平常心を忘れてしまっているのでしょうか。テレビで映されている官邸での会議の模様を見ると、参加者は最低でも二十人は下らないと思います。そこで、誰一人として議事録が必要なことを忘れていたとは思えません。全員忘れていたとしたら、会議の参加者は即刻退場した方がいいともいます。そもそも、あんなに大勢が集まった会議で、議事録をとることは当たり前のことです。それがないのは理解できません。それとも、出席者全員が一時的に健忘症にかかったのでしょうか?「公文書等の管理に関する法律」の第四条によると、「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。 」と書かれています。第1条の目的とは「行政が適正かつ効率的に運営されるようにすることと、国民に対する説明責任を全うする」ことです。ここで、ISOを持ち出すのは違和感がありますが、ISOでは何かをやったら必ずその記録をとりなさいと定められています。ISOとは国際標準化機構のことで、ここで定められた規格もISOと言われます。何故記録をとるか?それは後から、どんなことが行われたかを確認することがあるからです。ISOに認証を受けている企業は、必要なことに関しては、それを行っています。企業だけでなく、普通の市町村のISO認証を受けているところでももちろん実施しています。ちなみに、日本適合性認定協会のデータによると、ISO9001(品質マネジメント)の適合組織は36820件(1月20日現在)、あるそうです。国別でみるとほかの国は殆どが一桁台で、タイの133件が目立つぐらいで、それに比べると日本はダントツに多いです。ISO14001(環境マネジメント)では、20027件(1月20日現在)とISO9001の約半分です。国別はISO9001と同じで、日本がダントツです。産業別でみると、公共行政はISO14001で168件、9001で35件と数は多くはないですが、ないわけではありません。ちなみに、私の生んでいる市役所では認証を受けていないようです。また、ISO14001では全国の市役所で33件、県庁で3件、国の機関でも、環境省、国土交通省などが認証を受けています。東京電力ももちろん認証を受けています。こういう状態なのに、国の最上位に近い会議で、議事録がないなんてありえません。個人的には意図的に記録しなかったとしか思えません。忙しいと言っても、録音するくらい考えられる筈です。これを見ると、日本人らしい?隠ぺい体質が見えてくるような気がします。重要容疑者?である首相や閣僚のヒヤリングが出来ないことは、その最たるものです。しかし、こういうことを言いだしたのはどこのどいつなんでしょうか。こんなことばかりやっているから、他の国に笑い物になるんです。SPEEDIの問題も根は同じだと思います。ところで、事故調査では、良い悪いは別として、事実を克明に記録することが極めて大事です。記録から、教訓を得ることが出来るからです。そういう点で、この未曽有の事故の記録があれば、教訓がいくらでも出てきた筈です。これから、聞き取りをするそうですが、メモでは概要しか書かれていなかったりするので、あまり多くのことは期待できないと思います。その点で、政府は大きな失態を犯したとしか言いようがありません。大袈裟にいえば、原発事故に関して世界的に大きな損失を被ったといっても、決して言い過ぎではありません。
2012年01月27日
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昨日に続いてSAPIO最新号の話題を少々。 最近のゴーマニズム宣言は些か暴走気味だと思っていました。 原発についても、天皇制についても、TPPについても、自説を曲げないのは立派ですが、エキセントリク気味で、大丈夫かと思っていました。個人的にも、昔は真っ当な意見だと思うことが多かったのですが、最近は疑問に思うことが多くなりました。それでも、見るのを止めていないのは、基本的には小林氏の作風が好きだからなのだと思います。昨年末に「前夜」という雑誌を創刊し、ゴー宣道場も盛況のようですし、精力的な活動は留まることを知りません。「前夜」は「女について」という女をめぐる自伝的な漫画が載っていて、セックスシーンが赤裸々に描かれていて、あまり気持ちの良いものではありませんでした。いままでも、女性との交際を堂々と書いていて、いなれば不倫なのですが、奥さんがよく黙っていると思っていました。とkろが、「女について」はちょっとやり過ぎで、よく奥さんが切れないものだと他人ごとながら心配していました。ところが、最新号のSAPIOを見たら、いつもの脱原発論のほかに、普通の「ゴーマニズム宣言」も載っています。筆者は、ダウンジャケットを着て、帽子を目深にかぶっています。私はテレビを見ていないので、最初分からなかったのですが、「家政婦ミタ」のパロディーだったみたいです。そこでは、「前夜」を創刊した理由を描いています。ようするに、自分の主張通りに世の中が進んでいるのに、新しい題材を取り上げるごとに、読者が減っていくということを描いています。まあ、当たっていることもあり、そうでないこともあると思います。氏の主張は真っ当かもしれませんが、過激で、反対意見は容赦なく切り捨てるという、読んでいる人には痛快かもしれませんが、違う意見の人にとっては、とても乱暴なことともも割れても仕方ありません。特に、意見が異なる人たちをぼろくそにいうだけでなく、当人たちの人格さえ貶めるような絵を描いていて、氏の意見に同意する人でも眉をひそめるようなことが多くなったと思います。その結果、単行本の発行部数がどんどん減り、「WiLL」の連載も止めることになったようです。SAPIOの連載はスペシャルを出版するために続けるそうです。多くのスタッフを抱え、現状は赤字状態になっているそうです。最後は涙を流して「ゴー宣」を信じてくれる読者がいることが奇跡だし、よしりん企画が破綻するまで描き続けると結んでいます。自分の主張を貫くのは人間としては立派ですが、関係者を巻き添えにするのはどうかと思います。経営者は、従業員を首にしないで、いかに事業を継続させるかを、一番に考えなければなりません。その点で、氏は経営者としては失格です。自分の主張を貫き通したいのなら、自分ひとりでやるべきです。一人なら、なんとか食っていけるのですから。しかし、現代の世の中で、このように自分の意志を貫いていけることが、ある意味、立派なことは確かです。氏は、苦しい時から復活した経験もあります。このままでは終わるはずはありません。頑張ってもらいたいものです。
2012年01月26日
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SAPIO最新号が少し硬いのでなんだろうと思ったら、CDが付いていました。 大前健一の講演を収録したものです。色々な話が盛りだくさんで、とても楽しく聞くことができました。フォルクスワーゲンのスズキへのTOBの話など、現実的な予測でとても興味深かったです。講演の日が、大阪のダブル選挙の次の日ということで、選挙についても触れられていました。氏によると、週刊誌が展開した橋下市長のネガティブキャンペーンを橋下市長があっさりと認めたため、週刊誌は二の句を告げることができず、その後追求できなかった、というものです。このキャンペーンによって、少し雲行きが怪しくなったのをいち早く払拭した、橋下市長の手際の鮮やかさを称賛していました。また、東京電力福島第一発電所の事故に関しても触れていました。氏は、状況をアクセスできる環境にあり、逐一モニターしていたそうです。その結果、福島第一発電所にいた職員は良くやったと評価しています。電源もなく、夜になると真っ暗になる環境で、生命の危険にさらされながら、自分たちの車からバッテリーを運んで、懸命に計測をしようとしていたそうです。普通そんな状況ならみんな逃げてもおかしくないのに、逃げずに黙々と作業をしたことを称賛していました。ここまでが前ふりです。本題に入ると、いままでの「リーダーはおれについてこい」と言っていれば通用したと言います。それは、誰が考えても将来の方向性が明らかだから、リーダーについていけば良かったからです。ところが今は、将来どうなるか分かりません。そういう時のリーダーは、ヴィジョンを明確にして、皆を導くことができる人間でなければなりません。どうなるか分からないまま、「オレについてこい」といっても、不安でついていかないからです。また、自ら全ての責任を負うという姿勢が必要だとも言います。これは今に始まったことではありませんが、最近そういう人が少なくなったことを言っているのだと思います。東電のお辞めになった宮本所長もその点で優れたリーダーとして例に挙げられていました。また、この不況が昔のように回復することはないと断言しています。それは、昔と今は社会の構造が違ってきているからだからだそうです。また、就職浪人が多数出ていて、彼らが就職できないのは、いままであった仕事が、賃金の安い国に移転してしまったからで、日本人はそういう普通のことではなく、もっと高度なことを出来るようにならないとだめだと言います。また大企業の経営者も、昔のような現場主義ではなく、会計の数字で物事を判断できる人でなければ通用しないと、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長を引き合いに出していました。それからマルチプル経済ということにも言及していました。私は初耳ですが、氏は5年以上前からこの話をしているようです。『数式上の仮説に基づいて、株価収益率(PER)、ヘッジング、デリバティブなどのテクニックを使って資金を調達し、世界市場を動かしていく経済』というものだそうです。グリーや、横浜を買収したDeNAがその例だと言います。ところで、アメリカのウォールマートなどでは、最近軍人を多く雇うようになったそうです。経済が分かる連中にリスク管理を教えるのは難しいが、リスク管理が身についてる軍人に経済を教えたほうが早いというのがその理由です。リーダーの教育について、サムスン電子とGEの例を出して話をされていました。サムスン電子は売り上げの1%の教育に使っています。GEもそうです。このような企業は、世界にはこの2社しかないそうです。サムスンは売り上げが10兆円ですから1000億円です。また、GEではCEOを選ぶために、世界中から有望な人間を集めて教育し、だんだん絞っていくということをしています。そして、CEO自らが、個別に食事をともにし話を聞きます。こういうことをして、優れた人間をリーダーにするという仕組みが出来ているのです。氏は、現代の多様化した世界では、全知全脳のドラッガーみたいなリーダーはいないので、その目的別にリーダーを作るべきだと言います。そして、最後に、家庭でのリーダーシップについても話されていました。家族皆に役割を与え、良い結果がでたら褒めるということが大事だと言っていました。氏は部下と上司という言葉が大嫌いだそうです。皆が同じ目線で情報を共有し、共に進んでいくというのがいいと言われていました。ということで、ちょっとまとめきれませんでしたが、大変有益な講演だったと思います。もう3回くらい聞いていますが、飽きません。付録とはいえ、とてもいいので、ご興味のある方は、是非お買い求めください。ところで、これを聞いたら、ブレイクスルー大学院に入学したくなりました。。。以前興味を持て、サイトを見たことがあります。でもここ高いんですよね。。。
2012年01月25日
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ジャック・デジョネット久方ぶりのリーダーアルバムが出ました。Kindred Rhythm というアメリカのマイナーレーベルから2009年出ていた「Music We Are」という2枚組のトリオ編成のアルバム以来です。デジョネットのリーダーアルバムと言えば、スペシャルエディション関係が多いのですが、個人的には全く聞いたことがありませんでした。いつもはスタンダーズはじめサイドメンとしてのプレイしか聞いていなかったのですが、今回hmvの強力なプロモーション?につられて、入手してしまいました。1曲だけ共作があるものの、ほかの8曲は全てデジョネットの作品という力の入れようです。バラエティに富んだ曲想で、彼の引出しの多さを感じさせます。演奏もドラムス、パーカッション、ピアノと大車輪の活躍です。デジョネットのピアノは有名ですが、シンプルですが、温もりのあるフレーズがいい味出してます。ジャズ度はあまり高くないですが、ラテン・フレーバーの横溢した作品が多く、そのほかにもカントリーあり、フォーク調ありで、バラエティに富んでいます。全体に軽い作品が多く、ヴォーカル入りも多いですが、メロディックな作品が多く、とても楽しめます。「Salsa for Luisito」は南国の熱帯夜のような蒸し暑さを感じる作品です。メロディックで、気だるいムードがなんとも、いい感じです。エスペランサ・スポルディングとルイシット・キンテロのヴォーカルがいい感じです。3曲目の「Dirty Groound」はカントリー+デキシー風の音楽で、ソプラノの味付けがいいです。Bruce Hornsbyのヴォーカルがいいです。続く、「New Muse」はスパニッシュムードいっぱいのジャズ。2管編成のクインテットの演奏で、このアルバム唯一のジャズです。アンブローズ・アキンムシーレのトランペット、ティム・リースのソプラノとも良いソロを聞かせています。「Snny Light」はまたまたラテンののりです。とても明るいメロディーで聴いているとウキウキしてしまいます。これがデジョネットの作曲とは信じられません。ルイシット・キンテロのラテン・パーカッションが効いています。表題曲「Sound Travel」のラテン風の作品。イントロのリオネル・リルケのギターが素晴らしいですが、いかんせんあまりにも短すぎます。ボビー・マクファーリンをフィーチャーした「Onesess」は、バックがピアノとパーカッションという編成ですが、これがマクファーリンの声にフィットしていて、不思議な感触を感じます。ティム・リースをフィーチャーした「Indigo Dreamscapes」はフュージョン系の曲ですが、ラテンフレーバーが感じられます。ティム・リースのメローなテナーの響きが、曲にマッチしています。ジェイソン・モランの尖がったピアノもなかなかの聴きもの。最初と最後をデジョネットのピアノ・ソロで構成しているところは、アルバムとしての完成度を高めています。とくに最後のゴスペル風の「Home」は味わい深く、次第に心に沁み込んでいきます。1曲1曲が短めであるためか、それほど真剣になって聴くことをしなくてもいいのは、ながらで聴く時には助かります。ブックレットの裏表紙の写真を見ると、デジョネットは、さすがに年とったなと思います。それもそのはず、今年の8月で70歳になります。でもこれが70歳をまじかにしたミュージシャンの演奏とは信じられません。ということで、温もりに満ちたデジョネットの音楽が存分に楽しめる、クロスオーバー作品。現在の感覚から言うと、50分余りという演奏時間は短いように感じますが、もう少し聞きたいというところで丁度いいのかもしれません。是非お聞きになって頂きたいものです。私は過去のリーダーアルバムをあさってみることにします。。。。Jack DeJohnette:SOUND TRAVELS(Entertainment One BOM-CD-2403)1.Enter Here2.Luisito Serena Salsa3.Dirty Ground4.New Muse5.Sonny Light6.Sound Travels7.Oneness8.Indigo Dreamscape9.Home
2012年01月24日
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錦織圭の快進撃が止まりません。 今日夕食時にテレビを見ていたら、ついに全豪でベスト8に進出したというニュースが報じられていました。全豪で4試合勝ったのは日本人では初めてだそうです。ニュースでは昨年からの快進撃について報道していました。そこでは、プレースタイルを攻撃重視から守り重視に変えたことが成績が上がった原因というように報道していました。そして、それは錦織の成長であると結論付けていました。ここで、思いだしたのが「Number」794号での彼に関する秋山英宏氏の記事です。氏の記事を読むと、西織のプレースタイルの変化は、昨年にコーチを変えたことによるものであることが分かります。シーズン開幕前に、アンドレ・アガシらを育てたブラッド・ギルバートをコーチに招きました。ギルバートコーチは「ウイニング・アグリー」(醜く勝つ)という著書を持ち、錦織にかっこよく勝とうとするなと説いたそうです。無駄にリスクを冒さないこと、守備力を上げること、そして全体的にミスを犯さないことを求めたのです。昨年の全豪オープンでは3回戦に進出。錦織は「100%ではないが、理想とするテニスが出来た」と語っています。攻撃的なスタイルが身上の錦織にとっては本意ではない戦いだった。そのため物足りなさが残りました。しかし、新しいスタイルに取り組み意志が揺らぐことはなかったのです。リズムを変えて、敵のミスを誘う。その戦い方が、10月に上海で行われた大会で上手くいきます。1回戦ではロビン・ハーセ、2回戦では全豪の4回戦で破った、ツォンガを破る。準決勝ではアンディ・マリーには敗れるも、ランキングを17人抜きで30位に上がる。そして、次のスイス室内選手権では、ランキング1位のジョコビッチを準決勝で破る快挙。そして、今回ベスト8進出となるわけです。全豪はまだ終わっていませんが、去年から今年にかけての錦織の軌跡を見ていくと、ギルバートコーチの戦略が見事にハマったと言えると思います。しかし、これほどまでにテニスでコーチの力が勝敗を左右するとは思っていませんでした。錦織は昨年12月時点でランキング25位ですが、今年中に15位を狙っているそうです。さしあたって、次のアンディ・マリー戦は、前回の敗戦からどのように戦い方を変えてくるか、とても興味があります。少なくとも、相手のミスを誘う戦い方では、トップ4には通用しないことは、分かっているのでから。。。。
2012年01月23日
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家を出るのが遅れましたが、本編の始まりにはドンぴしゃ間に合いました。かなり観客の入りはいいですが、多分若い人たちはあまりいないと思います。シリーズ第3作目は淳之助の独立と、六子の結婚が中心です。昭和39年のオリンピックのエピソードを交えながら進行していきます。前2作との大きな違いはありません。今回はシリーズ初の3Dで見ましたが、控えめな処理で違和感はありませんでした。タイトルバックでの東京タワーを上から俯瞰する部分は、東京タワーが飛び出ていてびっくりします。また、お得意のCGも良かったです。特に、急行電車や新幹線ひかり号がリアルで、成功していたと思います。ただ、ブルーインパルスは作り物であることがあからさまで、もう少し何とかならなかったのかと思います。相変わらず、映画のツボがしっかり押さえられていて、今回もウルウルしてしまいました。キャストは新メンバーもいますが、大きくは変わっていません。堤真一の爆裂演技は今回も健在です。堀北真希はすっかり大人の女性として成熟し、従来のイメージと少し外れてきたかなと思います。第1作が2005年ですから、もう7年もたってしまったことを思い起こさせました。淳之助の須賀健太はすっかり大きくなりましたが、演技は相変わらずうまいです。それから、六子の恋人役の森山未来、茶川の父親役の米倉斉加年も良かったです。ところで、この映画で生まれた子供は、今年で48歳になります。というのは、SAPIOの最新号で、深川峻太郎の「日本人のホコロビ」というコラムに、このことが書かれていたのを、帰宅してから読んだからです。筆者はこの年に産まれたそうです。それで、自分の人生が昭和半分、平成半分なのに、平成をそれほど生きてきたという実感がないと書いています。私はもちろん昭和の方を10年長く生きていますし、昭和の方が長く感じています。ただ、平成をそんなに生きてきたのかという実感は筆者と同じだろうと思います。公式サイト
2012年01月22日
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見逃していた「ピラニア3D」をDVDで見る。 結構評判の良かったピラニア3D。一言でいえばエロ、グロ満載のスプラッター映画です。DVDは3Dではなかったので、肉片や、血しぶきが飛び出していくることはありませんが、流れた血の量は半端ではありません。それに出てくるおっぱいの数も凄いです。なんと言っても、「オッパイ祭り」というくらいですので。。。筋は難しいところがありません。夏のとある田舎の湖での出来事。直下型地震の地割れによって地底湖と表の湖がつながって、ピラニアが湖に漏れてしまうことによって、大変なパニックになるというもので、筋立てとしては分かりやすい作りになっています。ホラー度は適度ですが、CGが古代のピラニアをはじめ、かなりリアルです。反面、食いちぎられた人間の姿がいまいち。骨があんなに白い訳はありませんし、肉だけがすっぽりと落ちることもありえません。血が真っ赤ですが、あれ程鮮やかなわけもありません。それに、肉が引きちぎられた人間の顔に目ん玉がくっついているのはおかしいです。なぜなら、目玉はおいしいので真っ先にそこから食われてしまうはずなんですが。。。細かいことにこだわるような映画でないことは承知の上で、クレームをつけてみました。この目玉の付いた骸骨は結構笑えます。最も楽しめたのは、映画の撮影に来たポルノ女優2人が素っ裸で人魚よろしく、水中を泳ぎまわるシーンです。そこに何故か聴いたことのある音が流れていて、まったりとした雰囲気づくりに一役買っていました。その音楽が何か、思いだせなくて、調べたら、分かりました。ドリーブの「ラクメ」の「花の二重唱」でした。このオペラ、CDも持っているのですが、あまりまともに聞いたことがなく、曲名も知らなかったようです。。。。全体の雰囲気がお気楽ムードで、それに恐怖が加わるという、なんともけったいな組み合わせですが、悪くないと思います。普通、恐怖映画というと、シリアスムードに陥りがちなのですが、お気楽な雰囲気が、その恐怖を多少和らげる効果があるように思います。キャストの中では。お気楽なムードを一手に引き受けているような自称映画監督デリック・ジョーンズ役のジェリー・オコンネルの馬鹿さ加減が光っていました。それから、主人公ジェイク(スティーブン・R・マックイーン)の母親の警察官ジュリー役のエリザベス・シューが場違いなほどに精悍な役割で目立っています。ということで、映画としてはそう何度も見るような映画ではないと思います。ただ、映画館で3Dで見れば、評価が少しは変わるかもしれません。しかし、キャメロン監督が「3D技術をおとしめた」みたいな発言をするほどの映画とも思えません。公式サイト
2012年01月21日
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今日ネットでニュースをチェクしてたら、思いがけないニュースが載っていました。 橋下市長が19日の市議会決算特別委員会で「直に抱えていく必要はない」と発言、直営方式を見直す方針を明らかにしたというニュースです。これにより、大阪市音楽団(以下市音)の直営方式が見直されることになりました。9100万円の歳出のうち、4800万円、団員(市職員)44人分の人件費3億8700万円を市が負担しています。市音の関係者は「活動は教育現場などで音楽を普及するのが目的で、低料金や無料のコンサートも多い。経営の視点だけで見直されると、存続は難しい」と困惑しているそうです。橋下知事は府知事時代にも、「文化は行政が育てるものではない」と発言し、大フィルへの補助金を全額カットした実績があります。文化への無理解ぶりが際立っていますが、その矛先が市音に向かったというのが今回の事件です。この事件?で思いだすのは、東京都響の場合です。石原知事が財政再建策の一環として文化事業への歳出削減と外郭団体の統廃合を図りました。都響の場合にも、補助金の削減、団員の有期契約制、能力給制への移行などがされました。その当時、都営地下鉄の通路に補助金削減反対のポスターが貼ってあったことを思い出しました。大阪には昔、大阪府音楽団という団体があって、私などは、市音とどっちがどっちなのか分からなくなってしまったことが、よくありました。ここはその後、聴衆のニーズの変化に対応するために、発展的に解消?し、大阪センチュリー交響楽団(現日本センチュリー交響楽団)になりました。大阪府では、日本の代表的な伝統芸能の一つで世界無形遺産の文楽でさえも冷遇されています。文化団体が、国や県から補助金をもらう体質のため、政策が変わると途端に窮地に陥るのは当然のことです。本当は自前でやりくりできるのが理想ですが、興行収入でやりくりはできるほど、入場者が多いわけではないので、別な手を考えなければなりません。手っ取り早いのは、CDなどの録音での副収入ですが、クラシックは売れるはずもありません。海外のオケみたいに自主レーベルを起こすことも考えてもいいかもしれません。市音の場合はそれをやっています。ただ、その団体に自力で生活しろと言ったって限界があります。そのためには、なんとか民間からお金をもらう方法を考えなければなりません。アメリカでは大金持ちのパトロンが多額の寄付をしてくれます。日本でも非課税等税金の優遇処置はありますが、不十分です。一番良いのは、所得税と相続税を軽減してお金持ちを増やし、寄付による税金の控除を厚くして、文化団体への寄付がしやすくなることです。日本でも昔は信じられくらいの大金持ちがいて、そういうところに多額の寄付をしたものです。そもそも、相続税が始まったのは日露戦争の戦費を調達するためで、本来、戦争が終結した時点で、廃止されるべきものです。しかし、GHQの日本弱体化政策で廃止されませんでした。相続税が廃止されているのはスイス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド等です。それらの国は豊かですが、豊かであるために相続税を廃止したのではなく、相続税を廃止したから、豊かになったのです。(出典:http://www.geocities.jp/japan_aristocrat_association/souzokuzei.html)この稿を書くために調べていたら、オーケストラの収支に関するブログを見つけました。詳しいデータが乗っていて、とても参考になります。これを見ていると、経営のプロが楽団をマネジメントすれば少しは良くなりそうな気がしますが、日本にはそういう楽団はないのでしょうか。例えば、サッカーならアルビレックス新潟、野球なら北海道日本ハムなど、コンテンツは違っていますが、成功事例があるわけですから、音楽の世界でも出来ないことはないと思います。実際、入場者が何万人ものコンサートもあるわけで、それはコンテンツの違いだけでかたずけられる問題ではないと思います。
2012年01月20日
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シモーネ・ヤングのリングの第3作「ジークフリート」を聴く。 後でリリースされた「神々の黄昏」を最初に聞いてしまったので、前後しますが、「ジークフリート」の方が出来がよいように思います。この楽劇は、登場人物が少なく、物語の盛り上がりもあまりなく、リングのなかでは地味な部類に入ります。見どころは、大蛇がどのような姿で出てくるかという視覚的な楽しみと、第3幕に入ってからのすっかり視界が開けたような目覚ましい音楽と思っていました。ところが、今回初めてまともに聞いたということもあるかもしれませんが、第1幕と第2幕の音楽もとても面白いことに気が付きました。その第3幕もいいのですが、第2幕の鳥の声とヴォータン、そしてエルダがとてもよかったです。「神々の黄昏」では今一歩だった、クリスチャン・フランツもここではかなりいいです。それにも増して素晴らしいのはさすらい人のファルク・シュトルックマンの強靭で豊麗な声であり、エルダ役のデボラ・ハンブルの性格表現の見事さでした。また、森の小鳥役のハ・ヤン・リーもいいのですが、ちりめんビブラートがちょっと気になりましたファーフナー役のディオゲネス・ランデスの、如何にも邪悪な大蛇が見えるような歌唱も役にはまっています。ミーメ役のペーター・ガイヤールはずるがしこい感じがよく出ていますが、背が高いので、舞台ではちょっと損です。ジークフリートとさすらい人の声質が似ていて、音だけで聴いていると区別がつかなくなることがあるのは惜しいです。ということで、この演奏を聴くまで、ジークフリートは長いし、盛り上がりに欠けるし、あまり面白くないというのが私のイメージでした。ところが、この演奏を聴いて、聴きどころが沢山あることに気が付き、ジークフリートの新たな楽しみ方を教えてもらったような気がします。第2幕の難しいホルン・ソロは素晴らしいです。といって現代ではこれくらいは当たりませかもしれません。欲を言えばもう少し鳴ってくれると最高だな、とは思います。個人的には、次の「神々の黄昏」より上ではないかと思いました。こうしてみると、シモーネ・ヤングの表現はそれほど鮮烈ではないのですが、ある種の安心感が感じられます。表現がきつくならないのがいいです。「指環」4部作を通して聴いてみて、これは個人の資質というよりは性別による差ではないかと考え始めているところです。女性指揮者の方が懐が深いというか、包容力があるように感じます。Wagner Siegfried Simone Young(OEHMS CLASSICS OC927)Christian FranzPeter GalliardFalk StruckmannCatherine FosterWolfgang KochDiokenes RandesDeborah HumbleCatherine FosterHa Young LeeSimone YoungPhilharmoniker HamburgRecorded October 18-22,2009 Staatsoper Hamburg
2012年01月19日
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原題は「NANGA PARBAT」。1970年ドイツ隊がヒマラヤのナンガ・パルバートの初登頂の成功とギュンター・メスナーの遭難という悲劇を描いた作品。ギュンターの死ははっきりとしたことは分かっていませんが、現在の定説に従ったストーリーです。人が集まると、争いごとが起きるのは良くある話です。まして、登山のような極限状態では起きて不思議ではありません。だれがアタックをするか、誰が後方支援に回るかなど、争い事の種は尽きません。その成否のカギを握るのは、もちろん登攀する隊員の実力もありますが、全てをマネジメントする隊長の役割が大きいことを実感しました。ともすれば登頂を果たした隊員だけがスポットを浴びますが、現代の大掛かりな登山では、マネジメントが非常に重要だと思います。この映画では、隊長のカール・マリア・ヘルリヒコッファー博士とラインホルトのアタックに関する確執が描かれています。登頂の合図の狼煙の色の判断の誤りから悲劇は始まります。天候が悪いため、一人だけ登頂することになり、他の3人が眠っている間にライホルトは出発してしまいます。下山の時のロープの確保に回った弟ギュンターは、ラインホルトが心配で、ひとりで彼を追いかけます。すごいスピードで兄に追いついたことも、体力を消耗した理由の一つです。彼らは、登頂に成功したのもつかの間、装備を持たない登頂だったため、悪天候の中ビバークをしながらの下山で、体力を使い果たし、次第に兄に遅れをとります。ギュンターは雪崩にあい、帰らぬ人となります。ラインホルトは弟を懸命に探しますが、見つからず、足も負傷して、登頂したコースから外れてしまいます。ドイツ隊は兄弟が生還しないものと考えて、キャンプを解き、帰国の途につきます。結局この遭難は、悪くいえば自己中の兄のために弟が犠牲になったという見方もできます。歴史に「もしも」は許されないのですが、彼らが下山中に後続の二人と出会った時、後続の隊員たちが自分たちの登頂を優先させないで、救助を行っていればこんなことにならなかったのにと、思ってしまいます。ラインホルトはその後10回ナンガ・パルバートを訪れ、弟を探しますがついに見つけることはできませんでした。ギュンターは2005年に見つかります。19708年にはナンガ・パルバートに2度目の登頂を果たしますが、単独登頂でした。この時の模様をつづったのが、「裸の山 ナンガ・パルバート」です。ラインホルトは後年殆ど単独登頂ですが、人間の争いごとが嫌でそうなったのかもしれないと、ふと思いました。しかし、ラインホルトが負傷しながら生還したのは、奇跡としか言いようがありません。人並み外れた体力はもちろんのこと、強靭な精神力がなければ生還はできなかったと思います。こうしてみると、登山、特に冬山登山は人間の存在全部を動員しないと成功できないものであることを痛感しました。人々は、そこに、魅力を感じるのかもしれません。私も昔少しだけ登山にったことがあります。会社の同僚に山好きの方がいいて、何回か連れて行ってもらいました。そんなに、高い山に行ったことはありませんが、一番つらかったのは夏に行った山形の朝日連峰でた。熱くて体力は消耗するは、最後はへとへとになってしまいました。そんな経験をしても、山に行きたくなるのが何とも不思議でしょうがありませんが、この感情は万国共通なのかもしれません。■キャストは充実 ドキュメンタリータッチの映画で、出演者も適役だったと思います。特に、隊長のカールを演じたカール・マルコヴィクスがよかったです。それから、カールの妻アリス・フォン・ホーベ役のユーレ・ロンステッドは美しかったです。主役ラインホルト役のフロリアン・シュテッターもいのですが、個人的にはギュンター役のアンドレアス・トビアスが悲劇の主人公のようで良かったと思います。公式サイト
2012年01月18日
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今日の産経に販売用のDVDが売れないという記事が載っていました。 グラフを見るとピークは2017年の2600億円、昨年の11月までの集計は1100億円余り、12月分をいれても1300億円に届かない、まさに半減以下です。DVDが出たのが1996年ですから、20年たたないうちに衰退期を迎えてしまったというわけです。この売り上げの落ち込んだ理由は、ハイヴィジョンが普及したため(「DVDナヴィゲーター」小林編集長)と言います。「無料でテレビで見られる映画よりも有料のDVDの方が画質が落ちるのが根本的な問題。昨年後半からの売り上げの落ち込みは、この影響が大きい。」と指摘してます。新作映画でも2,3年前からは発売版年後には3枚3千円という販売スタイルで売られることが定着していたが、1枚1千円というケースもあり、「売上額ダウンの度合いが加速した」と言います。個人的には、最近は映画はすべてレンタルになってしまいました。音楽ものでDVDを買ってあったのに、テレビのハイヴィジョンで見たほうが画質がよくて、日本語字幕もついているケースも多くあります。それをブルーレイに焼いたりすると、DVDの価値がどこにあるのか分からなくなります。たしかにパッケージメディアとしての価値はあるかもしれませんが、中身が決定的に劣ってしまっています。そのDVDで一番いやなのが、字幕の解像の悪さ。字幕を見ると、「この画面は解像が悪いですよ」と言っているようなもんです。レンタルでも、ブルーレイがあるものはそちらを借りることにしています。こうなってくると、DVDがいつまでもつかということになってきます。ブルーレイ・プレーヤーはまだ普及途上です。ブルーレイ・ディスクもDVDとは価格差がかなりあり、おいそれとは売れるとは思えません。こういう状況では、DVDの衰退は確実にしても、今後まだ延命する余地はかなりあるように思います。画質をあんまり重要視しない用途では生き残る余地はありますが、条件は価格だと思います。ブルーレイ・プレイヤーの価格は頭打ちだと思いますが、メディアの価格が下がらないうちは延命するでしょうが、時間の問題です。それに、デジタル配信が伸びてくると、延命もあまり期待できないと思います。かつてレーザーディスクというメディアがありました。これも寿命は20年足らずでした。DVDも同じような運命をたどるのは栄枯盛衰の習いです。それに、1TBの次世代ディスクの開発も行われているようですので、ブルーレイ・ディスクも意外と短命に終わる可能性があります。
2012年01月17日
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小林聡美主演の映画、「東京オアシス」を見る。 トレーラーを見て面白そうなので、日曜日に見に行きました。派手な映画ではなかったのですが、15日はフォーラムデーということで、結構混んでいました。女性客が多かったと思います。松本佳奈(マザーウォーター)と中村佳代が監督と脚本、白木朋子(マザーウォーター)が脚本を担当したものです。トレーラーは小林聡美主演映画では定番であるまったりした雰囲気でしたので、それを求めて見に行ったようなもんです。映画は3つの短編をまとめたオムニバス形式で、小林聡美演ずるトウコが3つの短編すべてに同じ役ででているというものです。期待していたわけではありませんが、やはり何も起こらない映画でした。それで、何が言いたいんだと思ってしまうわけですが、そんなことを求めてるのはお門違いだと言われてしまいそうです。制作チームは、「かもめ食堂」、「めがね」、「プール」、「マザーウォーター」を手掛けたチームです。なるほどこの制作チームなら、こうなるということは事前に知っていれば推測できます。ここでは、最初のエピソードで日常と少し違うことが起きますが、あとはめったに起こらないとはいえ、ごく日常的なことを描いたにすぎません。最初のエピソードはかなり変わっていて、結論も出ないままに終わってしまうので、少し欲求不満になります。次のエピソードで、小林の職業がなんであるか分かります。最後のエピソードが一番面白かったです。5浪の女性の浪人生ヤスコが動物園で偶然主人公と出会って、色々話をするというものです。その中で、ツチブタという動物が話題の中心となり、それが結構面白かったです。ネットを見ると鼻が長くてアリクイみたいな格好をしています。解説には食べ物は自然では白アリだそうですので、アリクイに似ていると思ったのも当然かもしれません。浪人生の描くツチブタのデッサンがとても似ています。キャストでは最後のエピソードに出てくる浪人生ヤスコを演ずる黒木華がよかったです。蒼井優に似ていますが、パーツがすべて大きいので、少しユーモラスな感じがします。映画初出演らしいですが、まったりした雰囲気がいい感じで、これから人気が出てきそうです。そのほか、もたいまさこや加瀬亮、市川実日子など小林聡美の作品によく出ている方々が脇を締めていました。私の好きな原田雅世が出ていたのは嬉しかったです。音楽は大貫妙子。基本的には室内楽編成で、エピソードによって、アコースティック・ギター、アフリカン・パーカッション、ストリングなど楽器が使い分けられています。この中では、アフリカン・パーカッションを使った曲が、異彩を放っていました。全体にシンプルな音楽ですが、それがかえって映画のまったりとした雰囲気にしっくりと来ています。主題歌は大貫自身が歌っています。多少透明感が薄れたように思いますが、昔とそれほど変わらない歌声が嬉しかったです。もともと声帯を酷使する歌い方ではないので、変わらないのも当然かもしれません。ということで、映画に日常ではありえないことを体験したいと思って見に行くと裏切られますが、まったりした雰囲気を楽しみたいのでしたら、悪くないと思います。特に3つ目のエピソードはお勧めです。公式サイト
2012年01月16日
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矢口史靖監督の最新作「ロボジー」の公開初日の一回目を見てきました。映画を見ていて、映画の表題が「ロボット+じじい」からきていることに気がつきました。ネーミングとしてはかなりセンスがいいですし、普通の人たちの興味を引くという意味でもかなり効果があると思います。メディアで結構宣伝していたので、ロボットをめぐるドタバタ劇であることは知っていました。まあ、予想どおりの展開でしたが、全面的に笑える内容ではなかったように思います。発想は骨董無形の部類ですが、その後の展開がいまいちで、見ている方でも気まずい思いをしてしまいます。結局、最初のボタンの掛け違いのためにじわじわと追い詰められていきますが、これで終わりかと思ったところで、主人公の機転で難を逃れるという筋書きで、見ている方もほっとします。そもそも、ロボットを思いつきで、何もないところから3カ月でできるわけはないので、工学の知識を持った方々には骨董無形としか思えなかったと思います。何も知らない方には受けるかもしれませんが、う~んと言いたくなる展開だったと思います。そのため、全面的に楽しめなかったのはとても残念でした。キャストはなかなか良かったと思います。主人公のミッキー・カーチスは別名の五十嵐信次郎で登録されています。これはハマり役と言うべきです。それに、老人特有の歩きかたが、ロボットの歩きかたに似ているのを発見した矢口監督の慧眼というべきでしょう。主人公が決まった時点でこの映画の成功が約束されたようなものです。ロボットおたくの佐々木葉子役の吉高由里子も良いです。個人的にはあまり買っていない女優でしたが、今回はなかなかのはまり役でした。ハマり役と言えば有線テレビ局のカメラマン?伊丹弥生役の田畑智子のとても自然な演技良かったです。そして影の主役と言うべき3人組(濱田岳、川合正吾、川島潤哉)の演技がとてもよかったです。特に、ユーモアあふれる演技と、本当は見たくない、たるんだお腹まで出して頑張っていた太田浩二役の川合正吾が光っていました。主題歌はミッキー・カーチスが歌っていました。ミッキー・カーチスは飄々とした演技がとても自然で、役者としてこれから活躍する予感がします。矢口監督作品はいつも面白いのですが、スイング・ガールズ以来次第に面白さが薄れてきたように思います。パワーも衰えてきたように思います。ちょっとしたスランプでしょうか。これが、個人的な思いすごしであることを、願わずにはいられません。公式サイト
2012年01月14日
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アムランのハイドンのピアソナタ集の2巻目がよかったので、1巻目を購入しました。 最初数回聞いた時は、曲自体は、第2巻の方が優れているように思いました。このところ運動中も運転中もこのCDを聴いていて、じわじわとこの良さがわかった来たように思います。最初はプレストの人間技とは思えないほどのスピードの速さに、口をあんぐりと開けて聞き惚れていました。しかも音の粒がそろっていて、歯切れがいいです。また、音もスカスカではなく中身がギュッと詰まっているような音です。次は、緩序楽章での温もりのある演奏、これは第2巻でも際立った特徴でしたが、第1巻もよくよく聞いて見て、それに気が付きました。そして、ハイドンの曲の素晴らしさにも気がつきました。表情が柔らかく、シンプルで、味わい深く、なんていい曲だと思わずにはいられません。こういう体験は、ほかの作曲家のピアノ曲では感じたことがありません。ここに収録されているのは、装飾音を多用したロココ調の曲と、モーツァルトやベートーヴェンのソナタに似た古典的な曲の2つに分けられます。もっとも、ロココ調と言っても華美で軽薄な音楽ではありません最も気に入ったのは、第47番のソナタ(Hob.XVl:32)。バッハ+モーツァルト+ベートーヴェンみたいな曲です。冒頭はハープシコードで演奏されるバッハでも聴いているような気分になります。モーツァルト風の影を帯びた表情もいいです第3楽章のプレストの16分音符のとんでもない速さと滑らかさはとても人間業とは思えないほどです。第23番のプレストもまけていません。トリルが多用されたロココ調の43番も、嫌みがない表現で爽やかです。これらの曲はモーツアルトを思い浮かべる少し影のある曲想です。最初の第50番はスタカート気味の処理が歯切れ良さを感じさせます。特に、細かい音符が並ぶところは、実に鮮やかです。おそらく、これほどのスピードで弾ける方はほとんどいないのではないという感じがするほどすごいです。52番の第3楽章はそれをさらに上回るスピードで唖然とします。総じてプレスト楽章の指の回り具合は人間業とは思えず、凡百のピアニストとの次元の違いを明らかにしてます。こういう演奏はアムラン意外の演奏家には出来ない芸当だと思います。アムランの演奏を聴くと、他の演奏がもたもたしているように聞こえてしまいます。決してインテンポなわけではなく、所々でほんの僅かだけアゴーギクを付けています。その微妙な解釈が心地よいです。つい最近読んだ雑誌のなかに、カラヤン・アダージョがヒットしたので、フルトヴェングラーでも同じ趣向のコンピレーショを作ったそうです。ところが、これがBGMにはならなかったと言います。演奏がいいので、曲を聴くことに注意が向いてしまったからだというのがその理由です。アムランのこのアルバムも、流しておくと、彼のスーパーテクニックにくぎ付けになってしまいそうです。リラクゼーションはあまり感じられないかもしれませんが、ハイドンのピアノソナタの魅力を分からせてくれたアムランには感謝したいです。MARC-ANDRE HAMELIN HAYDN PIANO SONATAS(hyperion CDA67554)CD1:1.Piano Sonata No.50 in C major2.Piano Sonata No.40in G major3.Piano Sonata No.46 in A flat major4.Piano Sonata No.41 in B flat major5.Piano Sonata No.52 in E flat majorCD2:1.Piano Sonata No.23 in F major2.Piano Sonata No.43 in A flat major3.Piano Sonata No.24 in D major4.Piano Sonata No.32 in B major5.Piano Sonata No.37 in D major Marc-Andre Hamelin (Piano)Recorded in Henry Wood Hall,London,on 13-15 December 2005
2012年01月13日
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先日突然ホルンを再開した旨をブログに書きました。 昨日も30分くらい吹いたのですが、最初の日と違って違和感が薄れていました。いまのところ、これだったらなんとかなりそうだという感触があります。ところが、吹いているときに楽器の不具合を思い出しました。それは第2ピストンの抜差管が動かないのと、第2ピストンを駆動するアームのジョイント部分のワッシャーが一枚なかったことです。抜差管が動かないのは、中断の少し前からの症状でしたが、ワッシャーがないのはもちろん最初からでそれを放置していた自分が悪いのです。それで、抜差管の修理は近所の楽器屋でもできるのですが、ワッシャーをいれるのは製造元でなければならないと考えて、メーカーに連絡を取ろうと思いました。私が買ったのはアトリエ・ハーローという東京の工房で作られたものです。たしか1999年に購入していますから、12年ほどたっています。ただ、実働したのはその半分いかないと思います。当時はホームページがあったような記憶があったので、ネットで検索しました。ところが、引っかかったのは違うサイトでした。それは工房を主催していたKさんが、預かっていた楽器を質に入れたり、楽器を返さなかったりして、都合3000万円ほど顧客に損害を与えたという内容でした。夜逃げしたため、工房の設備は失われ、当人の行方も分からないらしいです。思わぬ展開に驚きました。私が買うために移転前の工房に行った時は、小さな町工場よりももっと小さい工場とも言えないところで、従業員も2人くらいしかいなかったように思います。しかし、そこで作られた楽器は素晴らしいもので、ウイーン・フィルのトップのストランスキーが気に入って、演奏会で使っていたことを覚えています。そんなところがこうなるとは全くびっくりしてしまいます。まあ、ウインナ・ホルンなんて、よほどの物好きしか買わないわけで、それで商売していくのは当時もかなり大変だったと思います。私がアトリエハーローを知ったのは、アマ・オケで一緒に吹いていた方がハーロー製の楽器を吹いていたことに感化されたからでした。結局、工房にはその時行ったきりでしたが、そこで楽器を吹かせてもらって、音の素晴らしさや抵抗感のなさで、購入を即決してしまったことを覚えています。当時、アトリエでナチュラル・ホルンを自分で作るという企画が行われていて、参加していた方の記事をホームページで見ていました。なかなか粋な企画で、私もやろうかなとも思ったのですが、休みの日は帰っていましたので、結局は踏ん切りがつきませんでした。確かにK氏の行ったことは犯罪ですが、個人的には彼の腕を惜しむものです。その後の続報が見当たらないので、どうなったか分かりませんが、自首して、再起してほしいと思うのは私だけではないと思います。
2012年01月12日
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ナンバー794号に、ハンマー投げの室伏広治氏の記事が載っていました。 そこでは、昨年の韓国のテグで行われた世界陸上での優勝と、それまでの歩み、ロンドン・オリンピックへ臨むための調整方法などが語られています。彼の体力的なピークは28歳に訪れる。その年のプラハの世界陸上で84m86の自己ベストを出すが、帰国後のウエイトトレーニングで腰を痛め、パリ大会の1週間前に右ひじを強打する。そのため、銅メダルに終わるが、「けがさえなかったら、間違いなく86m74の世界記録を超えていた」と父親の室伏重信はいう。このため「海外選手が脅威を感じて、ドーピングに走ったのではないか」とも語っている。室伏広治は以前から日本人が伝統的に持つ体の動きや使い方を学んできた。ところが、世界のトップの選手は一人ひとり投げ方が違うことを見ていて、自分の身体にあった動き、人間が本来持っている普遍的が動きがあるんじゃないかと思い始める。そのため、アテネ五輪のあと1年間を休養にあて、より感覚を重視した独自のトレーニング方法を開発する。例えば、現状の反復トレーニングを反復しなかったり、重さよりも軽さで負荷をかけるなど、従来の理論が正しいかを検証していった。だが、北京五輪直前にぎっくり腰のような症状に悩まされ、五輪は5位に終わる。また、加齢とともに回復力が落ちてくる。「ロンドン五輪を集大成にするには・・・」と考え、以前からトレーニングに赴いていたアメリカの「アスリートパフォーマンス社」で「チーム室伏」を結成する。このチームの特徴は日本にはいないスポーツ専門の理学療法士を加えたことだった。そのなかで、赤ちゃんの動きにヒントを得るなど、身体の基礎的な動きを重視するファンダメンタル・トレーニングを実行する。「医者は動いている体を診断できない。鍼や整体を受けても、普段の動きが間違っていればその場しのぎの治療になる。動きの中から客観的な診断をして、体のバランスや姿勢を考えた治療、トレーニング方法を考えていく。悪い癖を取り除き、いい動きに変えていく。」この最先端のシステムを利用したことが、テグ大会での優勝につながったと言います。そんな中で、技のことを考えなくなったという。心技体が独立してあるのではなく、全てがオーバーラプしている。限界以上のものを出すためにはサークルや手の感触、空気、重力・・利用できるものはすべて利用する。全てがうまくいくと、身体にかかる350kgの負荷の重さを感じなくなると言う。筋力に頼ろうという考え方と真向から対立する考えです。日本的な考え方と言えるかもしれません。父の重信は、最小限のエネルギーで最大限飛ばすことを考えていけば、最終的に誰が見ても美しいと感じる動きになると言います。広治の考え方は父とは違いますが、最終形の姿は同じだろうと思います。何か、武士道を極めようと修練を重ねている侍みたいな感じがします。この記事を読んでいると、室伏広治は他のハンマー投げの選手と次元の違う世界にいると思わずにはいられません。この調子だと、ロンドン五輪での活躍も間違いないと思います。ところで、この話を読んでいて、久慈生まれの柔道の達人三船久蔵を思い出しました。あの「空気投げ」(別名隅返し)をあみ出した方です。実際の画像を見るとまさに芸術としか言いようがありません。力を入れているのではなく、あるタイミングで相手の態勢を崩し、絶妙のタイミングで技をかけるという感じです。見ただけでは、ころっと投げられているとしか思えません。とにかく力を入れているとは思えず、動きがすごく軽いです。まさに柔よく剛を制すを体現しているかのようです。youtubeを見ていたら、同じ柔道の映像で木村政彦が指導で出ている映像がありました。それを見ると、力が全てみたいな感じで、三船とは百八十度違っていました。現在までのところ、三船久蔵以外でこの技をマスターした人はいないとか。。。youtube空気投げ(隅返しは3分30秒位のところです)
2012年01月11日
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日曜日映画を見に行く時にラジオをつけたら、マーラーの交響曲第5番の聞き覚えのある演奏が流れています。 5楽章だったのですが、結局最後まで聞いてしまいました。演奏はショルティ指揮のシカゴ響。私が高校の頃レコードで繰り返し聴いていた演奏でした。当時は時間の関係でレコード2枚に収められていて、余白にイヴォンヌ・ミントンの「子供の不思議な角笛」からの抜粋がフィルアップされていました。CDでは初出の形態でのリリースはなく、交響曲だけのリリースになっているようです。個人的にはCDも持っていませんし、最近は聴くこともなくなりました。こうして再会してみると、昔の記憶が甦ってきました。最初出たときのレコード芸術での評価はそれほど高いものではありませんでした。その後の度重なる来日公演で、この演奏はすっかり定番となったことを記憶しています。解説の諸石氏も、今に至るまでこれほどの完成度の高い演奏はなかったと言われていました。来日公演でもこの曲を演奏しましたが、当時実演を聴いた方々はその音量のすごいことに驚いていたことを、何かで知ったことを思い出します。当初は、「金管が優勢でちょっと。。。」みたいな評価だったと思うのですが、年月がたてば評価が変わる見本みたいなものです。ショルティがなくなって結構時間がたっていると思い、ちょっと調べたら1997年ですから、今年で没後15年になるわけです。彼の演奏は、死後あまり聞かれなくなったようにも思います。放送録音なども全く出てきません。生誕100周年ということで、デッカで、BOXを出してほしいです。それから、シカゴの自主レーベルでも出してもらえると、彼の芸術の再評価が行われるかもしれません。ところで、ヴァンド、ザンデルリンク、チェリビダッケ という超大物指揮者も生誕100年だそうです。おまけにラインスドルフも生誕100年だそうです。。。同じ年にこんなに大物指揮者が生まれているというのも特別な年だったんでしょうか。ちなみに、作曲家ではジョン・ケージが生誕100年です。ついでに、ジャズ・ミュージシャンではテディ・ウイルソン、ギル・エヴァンスが生誕100年だそうです。彼らの作る音楽は、ジャズの歴史から言うとすごく離れたものという感覚が私にはあるのですが、ジャズ・ミュージシャンは全盛期のイメージが強いので、こういう感覚になるんでしょうか。テディ・ウイルソンは確かに、スイングで終わっていますが、1980年代まで生きていて、プレイしていたので、それほど古い人ではないわけです。しかし、同じ年に生まれて、これほど違う音楽をしていたという事実には驚かされます。ギルが常に新しいものに挑戦していた印象が強いためでしょうか。。。。
2012年01月10日
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ワルキューレからしばらく出てないと思っていた、ヤング=ハンブルク州立歌劇場管の指環の続編。 ジークフリートが昨年の6月にリリースしていたことは、「神々の黄昏」がリリースされたことを知った12月でした。早速、この2つをPresto Classicalで購入して、ぼちぼち聴いているところです。どちらも長いのですが、どちらかというと、「神々の黄昏」のほうが親しみやすいので、とりあえずこちらから聞いています。ラインの旅や葬送行進曲の前後から拾い聴きを始めて、車の運転中に集中して聴いています。そして、休みの日にCDを通して聴くというようにしています。全体は一通り聞き、一部を何回か聞きなおすということで、全体がやっと把握できたような状態です。しかし、CD4枚ですので、時間がかかることは確かですが、退屈する部分もなく、楽しんで聴くことができました。「ワルキューレ」はレビューを書かずじまいでしたが、基本的には「ラインの黄金」と同じ奇をてらわない妥当なテンポと解釈で、今回の2つも同じだと思います。前2作はテンポ的にも全く妥当だと思ったのですが、少なくとも「神々の黄昏」では、少し速すぎたり、遅すぎたりするところがあるように感じました。また、最初の2作では完璧だと思っていたオケですが、所々弱い部分が出てきたり、表現のぬるいところがあり、そこが惜しいです。歌手は、総じて癖のない歌い手ばかりですし、個性をひけらかすような方もいませんし、音楽の一部として機能しているのは、とても好ましいです。その中では、ブリュンヒルデのデボラ・ポラスキが群を抜いていい歌を聞かせていると思います。最後の長大な「ブリュンヒルデの自己犠牲」も安定した歌いぶりでした。それからグルトルーネのアンナ・ガーブラーも役にぴったりです。ジークフリートのクリスティアン・フランツは声がいまいちで、表現も平板です。映像だったら音を聞くだけなのならまだ聴けますが、小太りで映像が出ても見る気になれません。ハーゲンも同じですが、歌唱は素晴らしく、彼の邪悪な性格がよく出ています。映像で一番見栄えがするのはロバート・ボークのグンターです。威厳に満ちた声もグンターにふさわしいです。オケはヤングの意図を十二分に理解した表現で、突出したパートは皆無で、すばらしいです。ワーグナー、とくにバイロイトでは、オケが暴れ馬?のように興奮して乱れることが以前はよくありました。あのオケは特別とはいえ、ハンブルク州立歌劇場のオーケストラはそんなことはなく、そうかと言って冷たいことはありません。また、決めるべきところはしっかり決めていて、申し分ありません。また、全曲音が濁ることがなく、明晰さが保たれています。この楽劇の場合、静かな場面でも完全な静寂が保たれることが少ないのですが、これはその少ない例のひとつだと思います。140ページのブックレットは、上質な紙を使用し、カラー写真もふんだんに使われた豪華なものです。また、トラック番号と役名を示す文字が違う色に配色されていています。白黒だと、役の名前なのか歌詞なのか分からなくなることがあるのですが、これだと間違えることがなく、とても分かりやすいです。音で聴く「指環」としては、殆ど穴がなく、出色の出来ではないでしょうか。Wagner:Gotterdammerung(OEHMS CLASSICS OC 928)Christian FranzRobert BorkWalfgang KochJohn TomlinsonDeborah PolaskiAnna GablePhilharmoniker HamburgSimone Young(cond)Recorded October 12,14,17,21,2010 Staatsoper Hamburg
2012年01月09日
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キム・ギヨン監督の1960年の名作「下女」を、イム・サンス監督がリメイクした「ハウスメイド」が4か月遅れぐらいで盛岡にやってきたので、早速見に行きました。 ウニ役のチョン・ドヨン見たさに行ったのですが、エロイ場面がありR15指定です。「下女」は見たことがないのですが、リメイクとはいえあまり大したことがありませんでした。チョン・ドヨンの脱ぎプリがよかったのですが、サスペンスにしてはネタが最初から分かっているような描きかたなので、さっぱりサスペンスらしくありません。また、1時間半ほどたって、さあこれからウニの復讐が始まるとわくわくしてみていたのですが、安っぽいホラー映画みたいなしょぼい結末でがっかり。韓国のセレブの生活が描かれていますが、趣味が悪くて、辟易しました。実際、韓国のセレブなんてこんなもんなんでしょうか。キャストの中では主役のチョン・ドヨンの体当たりの演技と肉惑的な表情は、もちろん素晴らしかったですが、脇もなかなか充実していたと思います。ナミ役の子役のアン・ソヒョンがとてもよく、悲惨な物語のなかで、一つの救いになっていました。また、先輩メイドビョンシク(ユン・ヨジョン)の全てを知りつくしているという演技が映画を引き締めていたのが印象的でした。主人フン(イ・ジョンジェ)は韓国の典型的美男子で、身体も鍛え上げられていましたが、胸が少し大きすぎて、キモイです。それに、腹筋も見事ですが、少し下腹が出ていて、う~んという感じでした。典型的韓国美人顔の女優二人は、可もなし不可もなし。しかし、韓国では孫がある女性でもあんなに若々しいんでしょうか。少しキモイです。韓国映画をまともに見たのはこれが初めてですが、どうもベタで湿っぽくていけません。日本映画よりもすごいではないですか。それに、最初の自殺とその後のスト―リがどう関係しているかもさっぱり分かりません。自殺した女性がウニの前任のメイドだとつながりがあると思うのですが、そういう描写もなく、一体なんだったのか理解に苦しみます。フンの弾くベートーヴェンの「テンペスト」と「告別」や多分カラス?の歌などが使われていて、監督のイメージするセレブがこんなものかと思うと、あまりにもステレオタイプで噴飯ものです。ウニの太った友達やビョンシクの醜い下着姿やヘラ(ソウ)の膨れ上がったおなかは見たくないのですが、わざと人が嫌がるものをどうだどうだと言わんばかりに何回も見せつけているようで、悪趣味です。しかし、韓国の家政婦は今でも主人の命令は何でも聞かなければならないんでしょうか。。。公式サイト
2012年01月08日
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アンドラーシュ・シフが昨年ECMへ録音したシューマンの2枚組のピアノ曲集を聞く。 シューマンのピアノ曲集というと「子供の情景」「クライスリアーナ」などが真っ先に浮かびます。今回の曲目の中で、ピアノソナタ第1番は聴いたことがありませんでしたが、とても楽しめました。特に第4楽章が気に入りました。この曲は色々なものが詰め込まれていて、まとまりがなく、問題があると言われています。確かに一つの楽章でも、テンポがガラガラ変わったり、その間に何の脈絡もなかったりと、かなり混乱していることは確かです。たぶん、シューマンは書きたい事がありすぎて、気の向くままに楽想を連ねたといったところでしょうか。第4楽章は繰り返しをしているので、11分という長い演奏時間になっていますが、個人的には繰り返しが必要か少し疑問に思いました。hmvのレビューを見ていると、ポリーニのDGのオリジナルスが圧倒的な出来でいいと書かれていますので、そちらも聴いてみたいです。幻想曲は少し挑戦的な態度で迫ってきますが、こういう解釈も悪くないです。第3楽章は初稿(ブダペスト版)を使っていて、アルバムの最後に決定稿が収録されています。こういう配慮はとても有難いですが、最初は違いが分かりませんでした。他のピアニストは最終稿を使っているのに、シフだけが初稿を使っているようですが、その辺りの事情がシフがブックレットに書いています。それによると、1975年にピアニストのチャールズ・ローゼンと知り合い、彼との会話の中で、幻想曲の自筆楽譜がブダペストのセーチェニ図書館に所蔵されていることを教えられました。シフはその当時ブダペストに住んでいて、その図書館の知り合いから、自筆楽譜のコピーをもらったそうです。初稿と最終稿の違いは第3楽章後半のアチェレランド後、初稿では速度を緩めないで突然パウゼがあり、ベートーヴェンの連作歌曲連作歌曲『遥かなる恋人に寄す』の第6曲「受け取っておくれこの歌を」が引用されていることです。シフの説明を読んだ後、何回か第3楽章のエンディングを聞いて、やっと違いが分かりました。初稿の演奏時間が1分ほど長いのはこのためでした。こういうことがあるので、演奏家が稿の違い注目する気持ちが分かります。私も、ここまでの聴いてきて、一種の謎解きのような興奮を覚えました。ところで、初稿はこの部分、ベートヴェンへのオマージュとかクララへの愛のメッセージだとか言われているようです。個人的には、これを聴いて、例えが違っているかもしれませんが、ブルックナーの交響曲の初稿とそれ以降の稿との違いみたいに思えました。確かに、最終稿の方がすっきりしているかもしれませんが、初稿を聞くと当時のシューマンの気持ちがわかるようで、これはこれで存在意義があると思います。初稿を聴いた後、最終稿を聞くと、やけにあっさりしたものに聞こえるから不思議です。「子供の情景」は少しせかせかした感じがして、あまり宜しくないです。もう少し、歌ってほしいところもさっさと通り過ぎていく感じがするのです。また、第3曲の「鬼ごっこ」は旋律が前のめりで違和感が残りました。「森の情景」はあまり馴染みのない曲ですが、どの曲も適切なテンポとフレージングで、楽しめました。第3曲「もの悲しい花たち」に音がぶつかっているところがあり、ミスタッチかと思ったのですが、楽譜を確認したら音がぶつかっています。シューマンは何故こんなことをしたんでしょうか。。。第7曲「予言の鳥」は、シニカルな味わいを持っていて、シューマンらしからぬ音楽だと思います。半音階的な分散和音の効果でしょうか。表題曲のGeistervariationenはもともとの曲名が「hema mit Variationen」(主題と変奏)でGeistervariationen(幽霊変奏曲)は俗称のようです。この曲は遺作のヴァイオリン協奏曲の第2楽章の主題を使ったものです。ヴァイオリン協奏曲自体あまり有名ではなく、私も聞いたことが多分ありません。もちろん、このピアノ曲も聞いたことがありません。主題と5つの変奏曲からなる10分に満たない作品です。主題は童謡みたいにシンプルですが、あまり魅力的ではありません。変奏曲も穏やかなもので、少し速い3楽章を除いては、刺激が少なさすぎて物足りません。ということで、個人的にはシューマンの知らないピアノ曲を楽しむことが出来ました。特に、ソナタ第1番と、幻想曲の第3楽章の初稿は面白かったと思います。Andreas Schiff Robert Schuman Geistervariationen(ECM New Series 2122/23)DISC1:1.Papillons, Op.22.Piano Sonata No.1 in F sharp minor, Op.11 3.Kinderszenen, Op.15DISC2:1.Fantasie in C, Op.172.Waldszenen, Op.82 3.Thema mit Variationen (Geistervariationen) 4.Fantasie in C, Op.17 - III.(Fassung letzter Hand)Andras Schiff(p)Recorded june 2010 Hisorischer Reitsdel,Neumarkt
2012年01月07日
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昨日、コダックが数週間以内に連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の申請を準備しているという報道を米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたらしいです。 コダックと言うとフィルムの巨人であり、カメラの部門でも先駆的な製品を数多く出しています。倒産の危機に至った理由は、デジカメ時代への対応が遅れたと言われているようです。主力製品が別なものにとって代わるとか不要になった場合どうするかということは、かなりの製造業では技術の進歩に伴って多かれ少なかれ直面する問題だと思います。コダックの場合にはそれが訪れたということだと思います。現在は株価も1ドル以下で、特許を売却してなんとかしのごうと思っているようですが、時間の問題ではないかと思います。しかし、最初にデジカメを作ったのはコダックの技術者だったというのは、歴史の皮肉です。このカメラは、湾岸戦争で使われたもので、ニコンのF3の裏蓋を改造して130万画素のCCDを組み込み、データをハードディスクに保存する方式でした。当時大面積のCCDは非常に高価で、1992年に日本で業務用として発売された時の価格は400万円と非常に高価だったようです。出典:http://www.geocities.jp/nature_photo_technique/digital_camera_history.htmlそんなコダックが何故、技術革新に失敗したのか。色々な要素があると思います。おそらく、当時はフイルムが主流であったため、デジカメの研究を怠ったことなどが大きく影響していると思います。もともと、カメラの世界ではコダックの製品はカメラとしての仕上げが粗く、そういう意味では日本のメーカーの敵ではありませんでした。おそらく、もともとが化学メーカーであるコダックにとってはフイルムを売るついでに売っていたサブ的な存在だったと思います。もっとも、ある業界のトップシェをア握っている企業が、同じ業界で革新的な製品を作ることは不可能というのは、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」などに詳しいです。これがコダックにも当てはまったというべきでしょうか。こういう場合成功するには、業態を変えなければならないようです。例えば、GEしかり、IBMしかりです。この二つの会社は物を作ることを止めて、サービス業に進出したおかげで今も生き残っています。IBMが、当時はシェアが大きかったパソコン事業を中国のrenovoに売却したことを知った時は随分と驚いたものでした。それが確かなシナリオに沿った行動であることは、現在のIBMの繁栄で証明されています。同じフィルムメーカーの富士フィルムがコダックと対比されて論じられているようです。富士フィルムの場合も業態を転換しました。富士フィルムでは写真フィルム事業を極力縮小し、そこで培った技術を液晶ディスプレイの偏光層保護フィルム、医療分野、そして化粧品等に投入していきました。2010年度の売り上げ2兆2000億円の中のフィルムの割合は僅か1%だそうです。選択と集中の見事な成功例だと思います。ただ、3本柱のうちのひとつドキュメント・ソリューション領域は、いずれ紙の利用が少なくなることを考えると、将来も安泰とは必ずしも言えないような気がします。ともあれ、富士フィルムのケース・スタディは、同じような困難状況を打開しようとしている企業にとってはとても参考になると思います。ちなみに、世界最古の企業は西暦578年創業の日本の企業「金剛組」です。創業以来1955年の法人化を経て2005年まで金剛一族が経営してきた建築会社です。家族経営という現在は主流ではない経営形態ですが、1400年以上存続してきた秘訣というものを研究してみることも悪くはないと思います。また、100年企業も日本には二万社もあるそうです。こんな国はほかにはありません。この100年企業を取材した書籍が、色々なところから出版されています。ここからも、色々なヒントがつかめるのではないでしょうか。
2012年01月06日
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リスト生誕200年にちなんだエマールの意欲的なプロジェクト。 通常の企画なら、リストの曲を選んで録音すると思いますが、エマールの企画は全く違っています。個人的には知らない曲がたくさんあり、それらを知ることが出来て、とても有益なアルバムだったと思います。hmvの紹介記事によると、このアルバムは「リスト=アスペクテ」と題された、二晩のライブを収録したものです。内容は、リストの諸作品に、リストの影響の見られる他の作曲家の作品を組み合わせて交互に演奏することにより、リストの音楽の魅力と、その影響の大きさについて示してみせたというものです。昨年の5月18日と5月20日にウィーン・コンツェルトハウス大ホールでおこなわれたコンサートを収録してます。こういう試みは、それほど多くはありませんが、今回のように聴衆の知的好奇心を満足させるような企画は、それほど多くないと思います。聞いてみると、リストと彼の影響下にある作曲家との関係がある程度つかめるので、エマールの試みは成功したと思います。リストの生誕200年を契機としてリストの作品を聴く機会が増えています。リストの曲を知るにつれ、若いころの大向こうをうならせるような派手な曲だけではなく、宗教曲や無調への懸け橋になった曲など、音楽史上での貢献度はかなりなものだということを次第に認識するようになりました。そういうことを音で実感させる優れた企画だと思います。どこまでも明晰な演奏で、全体に冷え冷えとした雰囲気が漂っていて、テンポも安定しています。ただ、私の知識のなさから、リスト以外の作品が、リストからどのように影響を受けているかよくわかりません。特にメシアンの鳥のカタログの第4番「カオグロヒタキ」の無機的な音楽と続く、「オーバーマンの谷」のロマンティックな音楽との間にどのような関係があるのか、まるで想像がつきませんでした。「カオグロヒタキ」は力強い表現で、この曲の良さが感じられます。それに何度も聴いていると、無機的な音楽とは感じられなくなるのが面白いです。個人的には最も楽しめた演奏でした。「オーバーマンの谷」はリストの曲想に込めた心情が分かるような気がします。中間部からの不安な心情を感じさせる曲想が的確に表現されています。決して甘くはないのですが、それが心地よいです。スクリアビンの「黒ミサ」は表現が穏やか過ぎて、物足りないです。あまり無調を感じさせる演奏ではなく、個人的には、もう少しおどろおどろしい表現がほしいところです。ベルクの「ピアノ・ソナタ」は良かったと思います。ただ、高揚したところでの表現がいまいち弱いように思います。リストのピアノ・ソナタは終始明晰で、くせのない表現が、好ましく感じられました。テンポも、妥当だと思います。ただ、大音量で聴いていると、唸り声とまではいきませんが、エマールの口から出ていく息の音が少し気になりました。続けて演奏されますが、楽章ごとにトラックが切ってあるのは親切です。ラヴェルの「水の戯れ」は、リストの「エステ荘の噴水」から大きな影響を受けているそうです。リズムや旋律の音形からそれがとても感じられます。「水の戯れ」はさらさらと流れていく演奏が普通ですが、この演奏は思わぬところで低音を強調して、この曲の別の側面を感じさせる演奏だと思います。しかし、こういう曲を聴くと、エマールの打弦の力強さを感じます。もちろん、音の切れは申し分ないのですが、軽量級のさらさらではなく、重量級のさらさらで、エマールの強靭な打弦が感じられます。第1夜冒頭の「悲しみのゴンドラ]s.200/1の後半の盛り上がりは不気味です。ワーグナーの「ピアノ・ソナタ」は「マチルデ・ヴェーゼンドンク夫人のアルバムのために」という副題のついたソナタです。初めて聞きました。時として盛り上がるところがありますが、穏やかな調べが続く、聴きやすい曲です。 ライブ録音ですがミスタッチもなく、技術的には全く問題がなかったと思います。録音はライブ特有の会場ノイズもあまり聞こえず、快適に聴くことができます。ということで、優れた企画と申し分のない演奏で、個人的にも大変面白いアルバムだと思いました。リストの月並みな曲を集めてアルバムを作るよりは、遥かに時間と手数がかかっていますが、それが報われていると思います。Liszt Project Pierre-Laurent Aimard (DGG 00289 477 9434)CD1:1.La Lugubre Gondola, S.200 No.12.Piano Sonata in A flat major for the album of Frau Mathilde Wesendonck 3.Nuages gris, S.1994.Piano Sonata, Op.15.Unstern! -Sinistre , S2086.Piano Sonata No.9, Op.68 "Black Mass"7.Sonata B minor, Lento assai - Allegro energico - Grandioso8.Sonata B minor, candido espressivo9.Sonata in B minor, Andante sostenuto - Quasi Adagio10.Sonata in B minor,Allegro energico - Stretta quasi Presto - Presto - Prestisssimo - Andante sostenuto - Allegro moderato - Lento assaiCD2:1.Aux cypres de la Villa d'Este No.1 (Thrnodie)2.Assai andante3.Saint francois d'assise la predication aux oiseaux4.Tangatu manu5.Les jeux d'eau a la Villa d'Este6.Jeux d'eau7.Le Traquet stapazin8.Vallee d'Obermann Pierre-Laurent Aimard(p)Recorded May,2011 at Wiener Konzerthaus,Vienna
2012年01月05日
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かねてから、考えていたのですが、なかなか踏ん切りがつかなかった、楽器の演奏。風呂の中や車を運転しているときに、バズィングだけは思いついた時にやっていたのですが、うまくいきませんでした。今日、ふと思いついて、ホルンをのケースを開けてみたら、なんと、動くではありませんか。もう、5年か6年は手を付けていなかったので、サビだらけになったと思っていましたが、昔使っていた状況とさほど変わらない状態でした。2番ピストン(私の楽器はウインナホルンです)が動かないくらいで、他は何ともない感じがします。ピストンを分解して、長年の間についてしまった緑青をグラインダーとピカールで取り除きました。そして、バルブオイルを付けて組み直したところ、OKです。早速、吹いてみたのですが全く駄目。最初に使ったのは、低音を出すために使っていた巨大なリムのマウスピースでした。次にあと2本試しましたが、リムが狭いものは全く駄目でした。結局、バズィングが全く駄目なことがそのまま楽器でも起こったという当然の結果に終わったわけです。バズィングでは以前はメロディーが吹けたのに、今は全く駄目になりました。やはり、ここからなんとかしなければならないようです。ただ、バズィングだと、すぐせき込んでしまうのが、楽器では何ともなかったので、多少は救いがあるかもしれません。これから少し、練習して、いい方向に向く様だったら、楽団への復帰を考えようかと思っている、今日この頃です。しかし、現実は厳しい。。。
2012年01月04日
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ふとしたことから、存在を知ったMNOZIL BRASSのMAGIC MOMENTS。 昨年の日本公演と同内容だそうです。彼らのDVDはすべて持っていたのですが、このDVDが発売されていたことを知りませんでした。いつぞや、盛岡でも演奏会があったのですが、全く知らないで聴き逃したことを思い出しました。オーストリアのペルヒトルツドルフの新王宮ホール?での公演です。相変わらずのエンターテイナー振りですが、前作よりもさらにパワーアプしています。 彼らは本職の楽器のほか、エンターテインメントとしてのショーの水準がかなりのものです。おそらく、プロデュースしているスタッフが充実していると思いますが、これほど楽しいショーが出来るクラシックの演奏家はほかには知りません。というか、こんなことを考えるのは、ブラスアンサンブルの連中だけだと思います。ムーンライトセレナードでもクラリネットをフィーチャーして、それらしく吹いていて驚きました。さすがに本職はだしまではいきませんが、ビブラートをしっかりつけています。それにお得意の振付が笑えます。しかしズボンをたくしあげて、脛を見せるのには笑えます。そのあとのトロンボーン3重奏とコントも笑えます。3重奏は途中から、トミー・ドーシーの「I'm gettin' sentimental over you」がムーディーに演奏されます。クラシック演奏家の演奏で感じられる硬さがなく、素晴らしい演奏です。このステージではコーラスの何曲か演奏していますが、これもとてもうまいです。ウエスタン・メドレーでのシェリトリンドのスキャットも玄人はだしで全く飽きさせません。ハンコックの「ロク・イット」はヴォイパを交えた演奏で、ゾルタン・キスのヴォイパが素晴らしくうまいです。カルテットで演奏される「君のともだち」には癒されます。5重奏のシューマンの「トロイメライ」も、少しうるさいですが、悪くないです。彼らは、ともすると超絶なテクニックの印象が強いですが、こういう優しさに溢れた演奏もできるわけで、個人的には、もう少しこういう曲も演奏してほしいなと思います。このコンサートでは、殆どの曲をレオナルド・パウル画編曲していますが、エンターテインメントでの活躍も凄いです。「ロンリー・ボーイ」では二人羽織ならぬ、足で2本のトロンボーンのポジション変えるだけでなく、なんと両手でトランペット2本のピストンをあやつるという芸当を演じています。こんなことが出来る人がいるなんて驚きました。彼の頭の構造はどうなっているんでしょうか。信じられません。それにマジックも披露していて、かれの才能の多彩さには驚かされます。メンバー紹介の後の「マイ・ウエイ」の終わりの部分でも、彼の驚くべきマジックが出現してびっくりします。EXTRAも充実しています。2009年の日本でのライブツアーの模様も収録されています。その中で、石庭の夕暮れ、リンドベルガーとパウルが浴衣を着て対面しますが、鶏とカラスの声が聞こえます。それも1度ならず2度3度鳴いて、笑わせてくれます。 ただ一つ、不満なのは曲のクレジットが全くないことです。せめて、チャプターもついていればいいのですが、残念です。客席を見ると、若い人たちもいますが、中年の観客が多いです。日本での公演だと、観客の殆どが吹奏楽関係者で占められていることを思うと、日本の観客の成熟度はまだまだだと思います。それが悪いことではないのですが、ブラス・アンサンブルのコンサートでも、もう少し、大人の観客が増えてもいいように思います。無尽蔵のスタミナはもちろんのこと、完璧にショーアップされたコンサートを見るにつけても、彼らのプロ意識のすごさには感服させられます。これほどのショーを演ずることのできる人たちは、ショービジネス広しといえどそうはいないと思います。ということで、大いに笑わせていただきましたが、そろそろ次のCDが出てほしいところです。DVDも確かにいいのですが、音楽だけを楽しむにはあまりにも色々なものが詰め込められていて、純粋に音楽だけを楽しめません。それに、DVDだと画質の点で物足りません。次回あたりブルーレイでの発売を期待したいです。なお、私はこのDVDはMidlandで購入しました。19.4ポンド、邦貨にして2300円程度です。送料は440円程度だと思いますので、合計で2700円あまりと、国内で購入するよりははるかに安いと思います。Mnozil Brass:MAGIC MOMENTS(HOANZL NTSC H-853)1.Prolog - The Adventure pf Robin Hood (Erich Wolfgang Korngold / arr. Leonhard Paul)2.Magic Moments (Burt Bacharach / arr. Mnozil Brass)3.Samba (Thomas Gansch)4.Glenn Miller(arr. Leonhard Paul):Moonlight Serenade5.George Bassman(arr. Leonhard Paul):I'm gettin' sentimental over you 6.Leonhard Paul:Bis zum Himmel hinauf 7.Leonhard Paul:7up 8.Mnozil Brass, go to America! - Western Medley9.Herbie Hancock(arr. Paul&Gansch&Kiss):Rockit 10.The Streets of San Francisco (Henry Mancini / arr. Leonhard Paul)11. Carole King(arr. Leonhard King):You've got a Friend12.Eric Saties(arr. Gerhard Fussl):Gnossienne13.Robert Shumann(Leonhard Paul):Traumerei 14.Paul Anka(arr. Mnozil Brass):Lonely Boy 15.Back to the 80's(arr. Mnozil Brass)16.Claude Francois, Jacques Revaux(arr. Mnozil Brass):My Way 17.Leonhard Paul:Tired BonesMnozil BrassRecorded on September 12,13,2010 in Perchtoldsdorf ,Neuer Burgsaal
2012年01月02日
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シカゴ交響楽団の自主レーベルCSO-RESOUNDから最近リリースされたブラス・アンサンブルのライブ録音。 総勢19人という大所帯で、鍵盤を含むパーカッションに加えて、何故かクラリネットとコントラバスが1本ずつ入っています。曲によってメンバーが変わると思いますが、それにしてもブラス・アンサンブルというよりはちょっとした室内管弦楽団の趣です。ブックレットにもBRASS SECTIONと書かれています。セクションごとのユニゾンが出てくるようなところは、金管好きにはたまらないサウンドです。織り上げられている曲は、ウォルトン、ジョヴァンニ・ガブリエリ、バッハ、グレインジャー、シルベストレ・レブエルタス、プロコフィエフです。全てアレンジ物で、ガブリエリもアレンジされています。シルベストレ・レブエルタスは聴きなれない名前ですが、カルロス・チャべスと共にメキシコ音楽の普及に努めたメキシコの作曲家です。出典:ベスト・クラシック・ナビガブリエリ以外は指揮者が付きますが、全て団員達の指揮です。シカゴのガブリエリと言えばクリーブランド管、フィラデルフィア管とのセッション・レコーディングが有名ですが、今回のメンバーにも加わっている、ホルンのクレヴェンジャーはその時のメンバーでもあったようです。今回のアンサンブル、視聴した時、トランペットのうまさが光ったのですが、まともに聞いてみたら、マスとしてのサウンドがいいことが分かりました。視聴した時に気にいった、トランペットもそれほど目立っているわけではありません。オケで聴くシカゴの金管の、時に力ずくで迫ってくる演奏のようなサウンドではなく、あくまでも力を抜いたアンサンブルが心地よいです。ウォルトンの「クラウン・インペリアル」は分厚いサウンドがこの豪壮な曲にマッチしているのですが、時折フレーズを切ってしまうのが気になりました。吹奏楽とどう違うかと言われるとあまり違いが感じられません。ガブリエリは「ピアノとフォルテのソナタ」とカンツォンが2曲です。ゆったりとしたテンポで、ガブリエリの楽しさが伝わってきます。カンツォンの華やかさも十分発揮されていますが、欲を言えばちょっと落ち着き過ぎで、もう少し畳みかけるような勢いがあっても良かったように思います。バッハの「パッサカリヤとフーガ」はブラス・アンサンブルでよく演奏される曲です。ここでは、ロンドン・シンフォニー・ブラスの指揮者エリック・クリースの編曲が使われています。オルガンの分厚い響きが再現されていて心地よいです。ただ、4分ごろに出てくる唐突なクレッシエンドは異様で、理解に苦しみます。かなり大編成で、金管の豪壮なサウンドが楽しめる、アルバム随一の聴きもの。終結部の盛り上がりは、ストコフスキーあたりのオーケストラ編曲版を聴いているような高揚した気分にさせられます。続いては、グレインジャーの「リンカーシャーの花束」。ティモシー・ヒギンズというかたの編曲です。もともと、管がソロイスティックな扱いをされているので、原曲との違和感はなく、感覚としては、原曲を聴いているのと大差ないです。特に第2曲、第3曲、第5曲あたりのダイナミックな曲が聴きごたえ十分です。シルベストレ・レブエルタスの「sensemaya」は、初めて聞きましたが、メキシコの土俗的な雰囲気がぷんぷんと匂ってくるような音楽です。絶え間ないオスティナートのリズムに乗って、激しい暴力的な音楽が繰り広げられます。「春の祭典」の雰囲気にかなり似ています。原曲のフル編成のオーケストラには負けますが、原曲の野蛮さは結構出ていて、かなり健闘していると思います。また、この曲で使われるクラリネットの高音域の音色や、ところどころに出てくるチューバ・ソロが、実に効果的です。このアルバムで最も特異で、インパクトのある曲です。金管アンサンブルだけで、これほど重量感のある音楽というものもそうはないと思います。最後は、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」から3曲が抜粋されています。この曲も色々な団体が取り上げていますが、他の曲同様、原曲に比べて著しく聞き劣りすることはありません。というか、ほとんど互角に近いのではないでしょうか。特に、最後の「ティボルトの死」はさすがにシカゴだと思わせる迫力です。テンポを引きずらない、クレヴェンジャーの指揮もスッキリとしています。ということで、金管セクションの録音なだけに、従来の金管アンサンブルの軽さを超えた、音楽的充実感があるアルバムで、少なくとも、金管奏者の方々には、是非お聞きいただきたい傑作アルバムです。CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA BRASS LIVE(CSOR 901 1103)1.Wiliiam Wolton : Crown Imperial, Coronation March2.G.Gabrieli:Sonata piano e forte3.G.Gabrieli:Canzon duodecimi toni a 104.G.Gabrieli:Canzon Septimi toni a 8 (No.2)5.J.S.Bach : Passacaglia & Fugue in C minor, BWV 5826.Percy Grainger : Lincolnshire Posy7.Silvestre Revueltas : Semsemoyo8.Sergei Prokofiev : 3 Scenes form Romeo & JulietChicago Symphony Orchestra Brasscond:Dale Clevenger, Jay Friedman, Michael Mulcahy, Mark RidenourRecorded live in Orchestra Hall at Symphony Center December 16,17 and 18,2010
2012年01月01日
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