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2004.08.03
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カテゴリ: 江戸時代を知る
江戸三〇〇藩最後の藩主 うちの殿さまは何をした? ( 著者: 八幡和郎 | 出版社: 光文社 ) 江戸三〇〇藩最後の藩主 うちの殿さまは何をした? ( 著者: 八幡和郎 | 出版社: 光文社 )

 幕末から明治にかけて、武家社会でどのような動きがあったのか、各藩はどう対処したのか、すべての藩について述べている。

 最近の江戸時代見直しブームの中で、地方分権が進んだ時代だったかのような印象も受けるが、筆者は、「江戸時代に、日本は藩という三〇〇の地方自治体に分かれていて、充実した地方分権が行われていたなどというのは、まったくの嘘である」(p34)と否定している。

 著者は、明治維新を必然的なものとし、それに抵抗したのは無駄なことであり、無用の犠牲のもととなったと考えているようだ。

 桑名藩のところで、「養子の殿さまが実兄に従い迷走したので藩士に多くの犠牲を出したのだが、殿さまの方は楽しく余生を送っているのだからいい気なものである。明治になって、尾張、会津、一橋、桑名の四兄弟で撮った写真が残っているが、私などこれを見ると腹立たしく感じる。」(p109)とまで書いている。

 松平春嶽についてよく書いたものを読んだことがなかったが、この本では「幕末の名君である」(p133)と高く評価している。

 奥羽戦争については、「状況をいちばんよく知る立場にあったはずの会津のわがままが、他藩を専科に巻き込んだ責任は大きいと感じる」(p206)そうだ。

 会津藩士の行動については、「この不器用で、無用の犠牲を生んだ、しかし、ある意味で純粋な会津藩士の生き方」(p199)と一定の評価を与えているが、容保の資質については否定的だ。佐幕派を否定してもいいのだが、「新撰組などによる厳罰主義も、その是非はともかくとして、後難を考えれば危険な行動であった」(p200)というのには首を傾げる。「その是非はともかくとして」とはどういうことだ。是非など考えず、自分たちが犠牲にならないように立ち回るのが当然ということなのだろうか。

 読んでいると、著者の立場が一貫しているのはわかる。いわば「損得史観」とでも言うべき考え方で、後のことを考えて損をしない生き方をするのが当然という立場で書かれている。

 西国諸藩については、「西日本人的な現実主義でもって、各藩では新しい上青に敏感に反応し、朝敵とされたようなところも冷静な対処で大事にならないように立ち回るのに成功したといえるだろう。」(p334)と書いているのだが、こう書かれると、西日本の人はかえってうれしくないのでは。



 明治に入ってからの各藩への処遇についてもふれている。「宮城県」や「福島県」など、江戸時代の有力な藩の名が県名にならなかったのは、明治政府が悪意でそうしたのではない、また、会津が斗南に移ることになったのも、会津自身が選んだことだ、という。しかし、猪苗代か斗南かどちらかを選べと迫ること自体、敗者への圧迫ではないのだろうか。

 人材についてもかつての朝敵だった地域出身者が要職についている。

 「自分の地元が発展しないのは戊辰戦争のせいだ」というのは通用しないということをくどいほどに述べている。

 著者の考え方に疑問を感じる点もなくはないのだが、「おわりに」はいい。

 まず「歴史小説は真実でない」という自明のことが理解されていないという。「著名な政治家すら、もっぱら司馬遼太郎などの小説を愛読書とし、その知識で歴史を語りがちである。」(p372)というのは、まさにその通り。「正しく歴史を知りたければ歴史小説はよまないほうがよい」とまで言い切る。

 そう言われても、歴史そのものより歴史小説の方が面白いから読みたくなるんだが。



 さて、この本は歴史を知ること以外に、観光案内として役に立つ。

 各藩の城下町が今どうなっているか、かつての城跡がどうなっているかについて触れている。遺稿がほとんど残っていないところについてはそう書いているし、元のものと異なる城が建てられているところではそのことも指摘している。もちろん、ほめているものもある。たとえば、播磨龍野藩のところで、最後に「本丸御殿が立派に復元されていて一見の価値がある」(p315)と付け加えている。

 観光資源としての価値を見いだしているのである。さすが通産省官僚。





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Last updated  2005.04.01 16:48:18
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