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淑子が信じられないのも無理はない。第三の目にはまぶたはなく、目玉の上に皮が張っていて、どうみても少し大きく黒いホクロにしか見えない。「あなた、やっぱり変な団体なんかに誘われたりしてない? 真面目に怖いんだけど」「俺も最初はそれが目だとは思わなかったから。証拠見せるよ」肇はゆっくり立ち上がり、懐中電灯を持ってくると、呆気にとられる淑子に手渡し照明を消した。「うつ伏してるから、それを振ってみて」淑子は状況をよく把握できていないようで、懐中電灯を持ったまま突っ立っている。肇はゆっくりと椅子に座り、テーブルに顔を伏せた。「俺の後ろで懐中電灯を点けて、自由に動かしてみて。その方向を言い当てるから」ようやく理解した淑子は、肇の背後に移動する。「でも、こんなことをしなくても。見えるんでしょ?」肇は伏せたまま少しイラついた口調で答えた。「視力が悪いんだよ。ぼんやりとしか見えないんだ。始めて」 淑子は、戸惑いながら懐中電灯を点け、ゆっくりと垂直方向に動かし始める。「縦に振ってる」「うん。じゃ、これは?」淑子は、右手を大きく伸ばし懐中電灯をグルグルと大きく回し始める。「大きく回してる」「当たってる」淑子は、少し考えてから自分の手のひらを懐中電灯の先端にかざし、隠したり開いたりする。「じゃ、これは?」「点滅してるのが見えるよ」「すごい! 見えてるんだ。じゃ、これは?」「もういいだろう? これ結構疲れるんだ」肇は、ゆっくりと立ち上がり蛍光灯をつけると、振り返って淑子の顔を確認する。「わかったろ?」淑子は、頭では何が起こったのか分かっているようだが、それがどういうことなのかを確認している。「座れば?」「あ、そうね」淑子は、思い出したようにテーブルに着いた。「ということだよ」 淑子は、右手でこめかみを押さえじっと気の抜けた顔をしている。取り乱してはいない。むしろ、冷静に状況を判断しようとしているようだ。「言えてよかったよ。聞いてくれてありがとう」淑子は、衝撃を吸収するように一呼吸置いてから顔を上げた。「突然すぎるわよ。ビックリしたじゃない」「そうだな。すまん」肇はビンに残ったビールをグラスに注ぐと、一気に飲み干す。「ふぅ…」肇は溜め込んでいたものを吐き出すように深く息をついた。「自分ばっかり」「珍しいな。飲むか?」「うん。ちょっと飲みたい気分」肇は立ち上がり、冷蔵庫を開けてビールを二本持ってくる。淑子は、注がれるビールを見つめながら、言葉を選んでいる。淑子はひじをつき、少し目を伏せた。「何だろう……まだ、少し混乱してる。頭では分かってるけど……実感がわかないのよ。ごめんなさい」 二人の間にある湿った沈黙に向かって、壁の時計が、ボーンと鳴って日付が変わったことを知らせた。「そうだ、そのこと、お父さんとお母さんは知ってるの?」「ん? いや」「お医者さんに、診てもらわなかったの?」「さんざん診てもらったさ」肇は、時計を見ながら、記憶の中を探りはじめる。「どういうこと?」「最初は、幻が見えるってことで診てもらったんだ」淑子は、グラスを時々口に運びながら、肇の言葉に聞き入っている。「そういうことね」「まったく関係のない映像が、視界を横切るように割り込んでくるようになってね」「いつから?」肇は、すっと顔を上げ、淑子を見つめながら答えた。「中学2年のときだよ」「で?」「眼科、内科、耳鼻科、心療内科……もう、ウンザリするほど診てもらったけど原因不明。結局、心因性のものだろうって」「うん」「病人扱いされるのはいやだし、親がうるさいし、治ったことにしたんだよ」 肇は、椅子の背もたれにダラリと体重を乗せると、天井を仰ぎ見る。電車が駆けていく音が今日はいやに近く聞こえた。「いつだっけかな、ホームルームがあって」「うんうん」肇はまぶたの裏側に、重苦しい空気に包まれたホームルームの時間を再現していた。
2010.04.23
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肇は、濡れた髪をタオルでゴシゴシやりながら椅子に腰かけると、忙しく動き回る淑子に向って低い声を出す。「ふぅ。なつみは寝たのか?」淑子がパタパタとスリッパの音を立ててグラスとビールを運んできた。「えぇ。もう寝たわよ」少しくたびれた青いテーブルクロスの上を、蛍光灯の青白い光が静かに照らしている。肇はグラスにビールを注ぐと、一気にのどに落とし込んで、ふぅと軽くため息をついた。「そか。何か変わったことはなかったか?」淑子はつまみを運びながら夫の顔を横眼で見ている。「疲れてるの? 珍しくよくしゃべるわね」「あぁ。少し……」キッチンに戻る淑子が背を向けたまま夫を気遣う。「最近、忙しかったから。明日は休めるんでしょ? あの子の誕生日だし」「うん。明日は休めるよ」 肇は、再びグラスにビールを注ぐと一気に飲み干し、背を向ける妻に話し続ける。「なぁ……今、幸せか?」「何よ急に」思わぬ質問に振り返る妻の顔をじっと見る。「いや、ちょっと話さないか?」「待って。すぐにできるから」「今話したいんだ」「少しくらい待ってよ。もうすぐだから」「あぁ」 外では、高層階特有の強い風が時折息継ぎをしながら吹き続けている。妻は慣れた手つきでテーブルに皿を並べていく。 淑子は、会社の2つ後輩で、初めての自分の部下だった。決して美人ではないが、頭の回転が速く、気遣いができる、そんなところに惚れたのだ。そんな淑子を妻に持てたことを、そして一人娘のなつみを誇りに思う。「で? 話って何? 悪いこと?」はっとして顔を上げると、正面に淑子が座っていた。「何よ、話があるんでしょ?」「あぁ」「まさか……女ができたとか?」妻が意地の悪い顔をしている。「おいおい、そんなはずないだろ?」「じゃ、何よ?」「まず、質問に答えろよ」「質問って、幸せかってこと?」改めて聞き返されると何となく照れ臭い。「あぁ」「なっちゃんもいるし。不幸せなことは見当たらないわよ」「そか」 不幸が見当たらないから幸せか……。女の幸せとは、そういうものかもしれない。「なら話してもいいな」肇は大きく飲み込んだ空気を吐き出す。「結婚して何年だっけ?」淑子は懐疑的な視線を夫に向けている。「覚えてないの? そんなことも。今年で十五年よ」「そんな変な顔するなよ」「じゃ何よ。早く言ってよ」ゆっくりと天井に視線をやってから妻の顔を見つめる。「まず、信じる、信じないはお前の自由だ。先に言っておく」妻は小さなため息をつくと頬杖をつき、少々怖い顔をしてみせた。「だから何よ。勿体振っちゃって」肇は妻に自分の言っていることが伝わるように、ゆっくりと少々大げさに言葉を口にする。「俺には、もう一つ目がある」「え? 何?」「だから、俺にはもう一つ目玉があるんだよ」妻は見慣れた夫の顔に一応視線を這わせると、呆れたような口調で続けた。「ないわよね? ふざけてる?」「いや、真面目だ」肇は、自分でも顔がこわばっていくのが分かる。何しろこのことを自分から話すのは2人目だからだ。「どこにあるのよ? 透視ができるとか、テレパシーがあるだなんていうのは一切信じないからね」興奮した妻はさらにまくしたてるように続ける。「もしかして、怪しい宗教団体にでも勧誘された?」「落ちつけよ。そんなんじゃない。見せてやる」肇は言葉を切るように割り込むと、後頭部の髪をかき上げる。「頭の後ろだ」肇は顔を上げて、固まって動けない淑子を促すように見つめると、淑子はおずおずと立ち上がり、肇の背後に回って、掻き上げられた髪の隙間を覗き込む。「ちょうど頭の真後ろあたり。ちょっと大きめのホクロがあるだろ?」淑子はよく見えるように髪を掻き分け、ゆっくりと顔を近づけていく。「ホクロはあるわよ。でも、これが目だなんて……」
2010.04.23
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小説『めだま』をインテルの募集に応募してみた。まだ、書きかけだけど(笑)めだま/よしおか ほーすけ著携帯版はこちら
2010.04.22
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昨日、阪神タイガースのアニキこと金本選手がフルイニング出場世界記録の更新を断念して先発メンバーから外れた。いつかこの日が来るんだろうとは思っていた。42歳で、プロの野球選手。満身創痍にも関わらず、誰よりもトレーニングをし、その精神力でリーダーとしてチームを支えていた。すごいことだ。ファンとしてよりも、同年代の人間として尊敬している。アニキが頑張ってるから俺も頑張れる・・・心のどこかでバロメーターになっている。そのアニキが、自分からスタメンを外れることを進言した。すでにこのことはネット上で美談として語られているが、誰も想像も付かないような思いがあったに違いない。そういうことを知らないであまり騒ぎ立てて欲しくないと思う。誰でも物事を選択する瞬間は孤独だ。決めるのは自分自身。選ぶという行為は誰とも代わる事ができない。それがたとえ仕方のないことでも。重要なことは、金本選手が何を選んで、何をしたか。そして、これから何をするか。それをじっと見ていたいと思う。
2010.04.19
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UFO襲来くだらないけど、超楽しー。こういうあほ、好き。
2010.04.18
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いやいや、決してバードウォッチングが趣味になった訳ではないんだよ。たまたま、いたから撮ってみたって感じ。だけど、小倉って、自然が残ってるんだねぇ。この前のキツツキといい、今回のアオサギといい…まぁ、アオサギはさして珍しい鳥じゃないけど、ここまで近づけたことは今までになかった。まじまじと見ちゃったよ。綺麗な青なんだよ、この青。おすまししてて、上品で。いいねぇ、アオサギ。ちとファンになった。
2010.04.15
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4月8日、父方のばあちゃんが亡くなった。78歳の若さだ。本当のばあちゃんは、俺が生まれるずっと前になくなっていて、じいちゃんの後妻さん。とはいえ、俺たち兄弟にとってはばあちゃんに違いない。思い出といえば、正月や誕生日にじいちゃんやばあちゃんと一緒にちょっといいレストランで食事をしたり、旅行したり。父方のじいちゃんは、いわゆるジェントルマンで、じいちゃんの前にいるだけで背筋が伸びたもんだ。そんなばあちゃんが、昨年末、風呂場で転倒し入院。具合はよくなかったが、徐々に回復しつつある矢先に亡くなった。外界のわずらわしさが嫌いで、ひっそりと生きていたばあちゃん。そんなばあちゃんを思う人間5人だけが葬式に出席した。形式ではなく、礼儀でもなく、義理でもなく、対面でもなく、それぞれがばあちゃんと最後の言葉を交わした。
2010.04.10
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先日、シーグラスを買ってくれたこたつむりさんが、早速作品を作って、写真を送ってくれました。なんだか、すっごく嬉しいですねぇ。作り手のセンスによって、いろんな風になるんだなぁと思いました。こりゃー面白いっす。こたつむりさん、ありがとうございました。↓その他の作品は写真をクリック。こたつむりさんのサイト
2010.04.08
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3月に開店したシーグラスクラフト専門ショップのVie lente。まぁ、はじめからそんなに頻繁に売れることを想定していなかったから、焦ってたわけではないけれど・・・。そう、人はお店に来るんだよね。日によるけど、5~50人くらいは。で、店の中をうろうろして帰ると。商品も多くないし、とういうかほとんどないし。当然といえば当然の結果。でもでも、今日、初めて売上が上がった~!!!!パチパチパチ嬉しいねぇ。すごいねぇ。もっと売れたら嬉しいねぇ。へへへ。で、旅に出るぞぉ!!!!!乞うご期待!いや・・・期待してるのは俺か。
2010.04.05
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ちなみにiPhoneで撮影。結構よく写ってると思う。・・・リッチクイーン・・・リッチクイーンニッカの倉庫ニッカの倉庫
2010.04.04
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甥っ子のリオ君、そろそろ生後半年を超えた頃だ。が、もうイチゴを食べている。その動画が可愛くて可愛くて。おじばかのおすそ分け。http://www.youtube.com/watch?v=wBuxIHeWPcg&sns=em
2010.04.03
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え?おわったの?嘘つき忘れた。
2010.04.01
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