inti-solのブログ

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2011.07.10
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カテゴリ: 環境問題
福島第一廃炉まで数十年 東電の中長期工程案

朝日新聞が入手した資料によると、福島第一原発1~4号機の使用済み燃料プールに保管されている3108体の燃料を、十分に冷やした後、3年後の2014年度初頭をめどに取り出しを始める。取り出した燃料は敷地内の共用プールに移すことを検討する。共用プールの改造のほか、燃料の輸送容器の製造などが必要になる。
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廃炉まで数十年というと、もの凄く長い期間と思うかも知れませんが、はっきり言ってこの工程案は大甘だと思います。おそらく、数十年は数十年でも、60年70年、いや100年かかるかもしれません。
日本で最初に廃炉の作業が行われている原発は東海発電所です。発電能力はたった16万kw、1998年に運転を終了しています。以来13年が経過していますが、廃炉の作業はまだ終了していません。使用済み燃料棒の搬出はすでに終了しているものの、建物の解体は現在進行形で、原子炉の解体はまだ手も付けられていない。予定では2014年以降に原子炉の解体が始まり、廃炉が完了するのは2020年だそうです。つまり、1998年の運転停止から、廃炉完了まで22年かかる計算です。

しかも、これはあくまでも事故もなく運転を終了した原子炉の話です。スリーマイル島原発の事故では、燃料棒の取り出し完了までに、事故発生から10年以上かかっており、事故から32年経過した現在でも廃炉の作業は完了していません。福島第一原発より事故の規模が一桁以上小さいスリーマイル島の事故ですら、そうなのです。
逆に、福島第一原発より事故の規模が一桁近く大きいと思われるチェルノブイリの事故の場合、原子炉から核燃料を引き出すことができず、原発全体を石棺で囲ってしまうというやり方で事故処理を行いました。その石棺が、事故から25年を経て劣化しつつあることが問題なのですが。

福島第一原発の場合は、どちらの処理方法が選ばれるでしょうか。記事によればスリーマイル島のように燃料棒を引き出す方法を前提に考えているようです。もちろん、その方が遙かによいのは明らかです。石棺は、問題を先送りしているだけで、根本的解決とは言えません。
だけど、核燃料の引き出しは可能でしょうか。燃料棒は、大半がすでに溶融していると見られています。燃料棒自体もそうですが、制御棒や原子炉容器も高熱によって破損している可能性が高い。ひょっとしたら、核燃料・制御棒・原子炉の一部が高熱によって融解し、ぐちゃぐちゃの状態で冷却されて固着しているかも知れません。もしそうだとしたら、そんな状態の核燃料を、どうやって取り出すのでしょう。しかも、人間が炉内に入って作業なんてことは不可能ですから、全部遠隔操作で行わなければなりません。


だから、チェルノブイリでは4月に事故が起こって、早くもその年の6月には石棺の建設が始まった。
しかし、福島の場合は炉内の放射性物質の一部しか放出されていません。大半が放出されていたらチェルノブイリを超える大惨事になっていたところですから、不幸中の幸いではあります。しかし逆に言うと、炉内にはまだ多くの核燃料が残されており、今後の対応を誤れば、これまでより遙かに多くの放射能が放出されてしまう危険性が、まだあるということです。それを避けるためには、とにかく冷やして冷やして、冷やし続けるしかない。核燃料が十分に冷え切るまでは石棺を作ることもできないでしょう。

別のソース によると、福島第一原発の事故処理には、燃料棒を取り出して処理する場合で6兆円、チェルノブイリ式の石棺では20兆円もかかると見積もられているそうです。内訳は、半径20km以内の土地の買い上げ費用が4兆3千億円、住民への10年間の所得補償が6300億円、廃炉費用が、燃料棒取り出しで7400億円、石棺方式で15兆円です。石棺方式より燃料棒引き出しの方が、費用面で見ても遙かに好ましいようですが、実際にはかなり難しいと思われるのは前述のとおりです。
しかも、この計算には、20km圏外の住民に対する賠償が一切含まれていません。だから、実際には事故処理に要する費用はこれより遙かに巨額になるのはほとんど間違いないように思われます。





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最終更新日  2011.07.10 12:43:49
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